雑誌「ダ・ヴィンチ」編集部がONLY ONEの“輝き”を保証する!「絶対はずさないプラチナ本」特集
今月のプラチナ本は『岳』/ 楽天ブックス

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雑誌「ダヴィンチ」編集部がONLY ONEの“輝き”を保障する!「絶対はずさないプラチナ本」
>>最新号の特集 >>バックナンバー 2007年3月7日更新
膨大な数の本が出版されつづける現在、その中から本当におもしろい本に出会うのはなかなかむずかしい。そう思っているみなさんに、本の情報誌「ダ・ヴィンチ」の編集部員が厳選した本を“プラチナ本”としておすすめするのがこのコーナー。ごく少数の人に激賞される本、というものが存在することは承知のうえで、あえて誰が読んでも「絶対はずさない」高クオリティ作を見つけていきます!さて、今月は…?
『岳』
『岳』


石塚真一
エンターブレイン


あらすじ
 世界中の山々を登り、故郷の長野県で民間のボランティア救助員を務める島崎三歩。登る者すべてを受け入れる山と同じく、彼は遭難した人々を優しく包み込む。長野県警の山岳救助隊であり、三歩とは幼なじみの野田正人。野田の部下で山は初心者の椎名久美。三歩のアメリカ時代の山岳救助チームメイト、ザック。心強い仲間たちと協力して遭難者を救助し、救助者の背景とともに険しく厳しい山を、そして山の素晴しさを余すところなく描きあげてゆく。『ビッグコミックオリジナル』本誌と増刊号で連載中の山岳救助物語。
著者紹介
ういしづか・しんいち
1971年、茨城県生まれ。米国に留学し、気象について学ぶ。帰国後、会社員を経て漫画家へ転身。2001年に「This First Step」で第49回小学館新人コミック大賞一般部門入選。03年からデビュー作『岳』を連載開始。
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横里隆 横里隆

(本誌編集長。新海誠監督『秒速5センチメートル』を観ると、山の景色と同様、都会の街並みや田舎の風景も等しく美しいと実感!)
三歩の魅力の秘密、それは
彼が山に登っているから


いつも常念岳を見上げていた、あの頃。僕は大学4年間を松本で過ごしており、夏はよく北アルプスに登った。初めて松本に立った日、常念岳に向かって将来のことを祈った。北アルプスの威容があまりに神々しかったので、気がついたら祈っていた。そして、お礼参りのように登山をするようになった。山登りはいつもつらかった。縦走するときの荷物は重く、脚も重い。しかし、ふとした瞬間に景色に魅せられたり、登頂の達成感に満たされたりした。僅かな喜びだった。確かに山登りは人生に似ている。苦しいことばかりがつづくけれど、稀に神が舞い降りる。それでまた次の一歩が踏み出せる。一歩、二歩、三歩と歩いていくうちに、これが生きることだと腑に落ちて、やがて苦楽や悲喜の混沌を、美しいものと感じられるようになる。だから本書の主人公“三歩”は、いつも微笑んでいられるのだろう。山に対しても、人生に対しても。
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稲子美砂稲子美砂

(本誌副編集長。主にミステリー、エンターテインメント系を担当)
山には
何があるのだろうか?


山といえるような山に登ったことのない私にとって、冬山の恐ろしさや山の事故の悲惨な現状にまず驚いた。そういう意味では非常に重いマンガである。しかし、本作の読後感はよく、それは主人公・三歩の、誰に対しても変わることのない温かさと救助のプロとしての行動力にある。死と隣り合わせのたいへんな仕事をなんの気負いも驕りもなく、淡々とこなす三歩。残念ながら助からず死体となって発見された遭難者を背負い、危険な崖を昇り降りすることもある。山に肉親を奪われた人たちにも、また山に来てほしいと願う彼。自分の愛するものを多くの人に愛してほしい、その気持ちが彼の原動力なのだろうか。山岳救助ボランティアという仕事も今回始めて知った。
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岸本亜紀岸本亜紀

(本誌副編集長。大田垣晴子さん、根本きこさんの新刊を担当しました。幸せな本ができあがりました。1 6 日発売です。どうぞよろしくです。)
山は怖い。それでも、
人は山を目指すのだ


7年前くらいに、突如、本格的に山に登りたくなり、学生時代に登山で足を慣らしていた父に白山に連れて行ってもらった。白山を選んだのは、「初めての山は美しい山がいい」と父が言ったからだ。独立峰で花々が咲く、信仰の山である。翌年、穂高へ向かった。けれど、台風が近づいていた。登っている人もいる。登山口近くで、父が言った。「今日はやめだ。こんな天気で山に登るのは、素人がすることだ」と。山は怖い。だからか、山は人を狂わす。この本には山に呼ばれた人間のさまざまなドラマが描かれている。ひとつひとつの話にいちいち感動して涙が出る。雪山や山岳救助のノウハウを知れるのも楽しい。無念にも助からなかったり、奇跡的に助かったり、それら全部、山が用意したドラマなのだ。
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関口靖彦関口靖彦

(自宅の書棚を整理していて、マンガの読み直しに没頭。『闇金ウシジマくん』、何度読んでもおもしろいです)
一際くっきりと描かれる
死体が浮き上がらせるのは


わたしは山に登る人の気持ちがわからない。本作に登場する警察官・クミも言う。「わからない……どうして人はこんな危険な場所に、自ら来るんだろう……」。その危険の結果は、本作で容赦なく描かれている。全体的には写実というよりも、いかにもマンガらしいディフォルメの利いた絵柄である。なのに滑落して折れ曲がった手足や、命綱に切断され臓物をさらした上半身だけの死体などは、生々しく描かれているのだ。このように山の厳しさをきちんと見せた上で、著者が伝えようとしていることはなんだろう。風景の美しさなのか、苦難を乗り越える達成感なのか……登場人物のひとりひとりが考え、語り、読者に訴えかけてくる。もちろん答えはひとつではなく、だからこそ一気に読み進めてしまった。
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波多野公美波多野公美

(生活がかわり、朝焼けの時間に起きる毎日。早寝早起きの気持ちよさを実感中)
「良く頑張った」が沁みる

『岳』には、本当はいつだって絶対に忘れてはいけない大切なことが、丁寧に描かれていた。たとえば、自然の厳しさや美しさ。人間が一歩一歩、自分の力で歩いたときに見える景色。命の重さや尊さ。全部の巻で、私は泣いた。泣きながら、忘れかけていた大切なことをたくさん思い出させてもらった。三歩が完璧じゃないのがいい。彼は、「できるだけ頑張る」ことの尊さを知っている。そして、さまざまな事情で、それが報われないことがあることも、知っている。だからこそ、遭難者たちにかける「良く頑張った」という言葉が本当に心に沁みた。
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飯田久美子飯田久美子

(さとう珠緒さんの名著『超教養』よろしく!)
三歩は究極の癒し系

誰に何を相談されても絶対に「大丈夫」という友だちがいる。わたしは、そのコの適当さがわりと好きだけど、ときどき不評を買っている。「大丈夫」と言って混乱している誰かを安心させるのはけっこう難しい。だけど、三歩が口にする「大丈夫」の安心感はどうだろう。山登りがいかに厳しいものであるか強く感じさせられたが、それに対峙してみせる三歩の強さにはもっとびっくりした。「大丈夫」「よくがんばった」こんなありきたりの言葉に凄みを感じた。疲れてるのかな?と自分を訝しく思ってしまうほど、心にしみました。
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服部美穂服部美穂

(来月号から始まるメルシャンとのコラボ企画に先駆けて3/20よりあの人気作家3名による短編付きワインが全国酒店で発売開始です!)
山に登りたくなりました

航空法上死んだ人間は“物”として扱われるため、ヘリコプターに吊り下げられたまま運ばれる決まりになっているということを、私はこのマンガで初めて知った。本書の中では、山の厳しい掟がいくつも、さらっと、登場する。最初、私も新人山岳救助隊員の久美と同じく、なぜ命の危険を賭けてまでみんな山を登るのだろうと思った。だが、誰よりも山の厳しさを知る主人公・三歩は、常に「みんな山に来ればいいのに」という。巻を進むごとに山の厳しさは重みを増すが、日本アルプスの美しさは、私の中で益々美しく胸に迫るものになっている。
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野口桃子堀田香織

(学生の時に北アルプスに登ったことがあります……が、今はとてもじゃないけど無理です)
彼女に感情移入します

この物語の主役は言うまでもなく島崎三歩なのだが、椎名久美の成長物語でもある。初めは山の訓練に文句を言い、山は嫌いと言っていた久美だったが、数々の事故や遭難者、その家族や遺族、そして何より山(と三歩)と接していくうちに山に対する意識が変わり、2巻では自分から志願して山へ登るようになる。3巻の久美には「よくがんばった!」と心から拍手を送ってあげたい。何があったかをここで書いてしまうにはもったいないくらいいい話なので読んでほしいと思います。私も山に行きたくなりました!……でもまずは高尾山からかな。
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似田貝大介似田貝大介

(第2回『幽』怪談文学賞では、現在作品を募集中です。ぜひご応募ください)
山への飽くなき憧憬

冬山登山の話を訊くと、すごく不安になる。彼らは山の怖さを熟知しているはずなのに。なぜ、わざわざ危険な場所へ行くのか。でも、彼らはそれを嬉しそうに語る。本作では、登山者が皆とても生き生きとして見える。三歩が山で飲むコーヒーやバナナも異常なほど美味しそうだ。いや、実際に楽しくて、旨いのだろう。それは無理をしていないからだと思う。無理をしたところで、自然に対抗できるはずがない。三歩も無茶はしない。不運にも遭難した人々だって、山を侮っていたわけではないのだ。自然の脅威を知れば知るほど、山へ行きたくなった。
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宮坂琢磨宮坂琢磨

(中学の集団登山で、6時間排便を我慢した。もう二度と山には登らない。『幽』で連載中「山の霊異記」もぜひ)
山に登る人々

大学時代、周囲には山男がたくさんいた。決まって酒に強い彼らは、ウィスキーのビール割りなんてひどい飲み物を手に、自分が死にかけた話を続ける。山にまったく興味のない僕も、やがて話に引き込まれていった。その時、胸に去来した温かい気持ちがこの作品を読んだとき呼び起こされた。『岳』で三歩は遭難者を助け出し、また、死体となった彼ら、彼らの家族と遭遇する。しかし『自然を甘く見た』『自業自得』とは言わない。三歩は自然の厳しさを知りながら、それでも山に登りたい、登った先にあるものを理解しているからだろう。山男の暖かさは山、自然に対する抗いがたい憧憬からくるんだと気付かされた。
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