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●稲子美砂

(本誌副編集長。主にミステリー、エンターテインメント系を担当) |
山には
何があるのだろうか?

山といえるような山に登ったことのない私にとって、冬山の恐ろしさや山の事故の悲惨な現状にまず驚いた。そういう意味では非常に重いマンガである。しかし、本作の読後感はよく、それは主人公・三歩の、誰に対しても変わることのない温かさと救助のプロとしての行動力にある。死と隣り合わせのたいへんな仕事をなんの気負いも驕りもなく、淡々とこなす三歩。残念ながら助からず死体となって発見された遭難者を背負い、危険な崖を昇り降りすることもある。山に肉親を奪われた人たちにも、また山に来てほしいと願う彼。自分の愛するものを多くの人に愛してほしい、その気持ちが彼の原動力なのだろうか。山岳救助ボランティアという仕事も今回始めて知った。
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●岸本亜紀

(本誌副編集長。大田垣晴子さん、根本きこさんの新刊を担当しました。幸せな本ができあがりました。1 6 日発売です。どうぞよろしくです。) |
山は怖い。それでも、
人は山を目指すのだ

7年前くらいに、突如、本格的に山に登りたくなり、学生時代に登山で足を慣らしていた父に白山に連れて行ってもらった。白山を選んだのは、「初めての山は美しい山がいい」と父が言ったからだ。独立峰で花々が咲く、信仰の山である。翌年、穂高へ向かった。けれど、台風が近づいていた。登っている人もいる。登山口近くで、父が言った。「今日はやめだ。こんな天気で山に登るのは、素人がすることだ」と。山は怖い。だからか、山は人を狂わす。この本には山に呼ばれた人間のさまざまなドラマが描かれている。ひとつひとつの話にいちいち感動して涙が出る。雪山や山岳救助のノウハウを知れるのも楽しい。無念にも助からなかったり、奇跡的に助かったり、それら全部、山が用意したドラマなのだ。
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