楽天ブックス:松岡佑子さんハリー・ポッター7巻『ハリー・ポッターと死の秘宝』インタビュー 楽天ブックスはコンビニ受取で、日本全国送料無料!

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楽天ブックス:松岡佑子さんハリー・ポッター7巻『ハリー・ポッターと死の秘宝』インタビュー
 
『ハリー・ポッターシリーズ』が、イギリスで出版されたのが1997年。
その瞬間、世界中の人々に、ステキな魔法がかけられました。
額に傷のある小さな少年が魔法学校に入学し、驚くような冒険と魅惑の魔法の物語がはじまったのです。世界中で出版され、あっという間に大ベストセラーとなりました。毎年、たくさんのファンが、続巻の出版をいまか、いまかと待ちつづけました。本を手にしたことがなかった子供たちも、ファンタジーを忘れた大人も、読書を楽しむようになりました。そして、それから早10年。
2007年、ついに第7巻出版!一日も早く結末を知りたい、待ちきれない気持ちでいっぱいですが、ところが逆に、シリーズが終わってしまうのも淋しい気がするものです……。
そんなあなたに、『ハリー・ポッターと死の秘宝』日本語版翻訳作業の真っ只中の、静山社社長で翻訳家の松岡佑子さんのインタビューをお届けしましょう。『ハリー・ポッターシリーズ』10年間の思い出、それぞれの巻に寄せる思い、そして待望の第7巻『ハリー・ポッターと死の秘宝』について……。たっぷり、お話を伺いました!

 
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『ハリー・ポッターと
死の秘宝』

2008年7月23日(水)
発売

3,990円(税込)
送料無料
全世界を熱狂させた『ハリー・ポッター』シリーズ、ついに完結。
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『ハリー・ポッターと賢者の石』
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松岡佑子さん(まつおか ゆうこ)

同時通訳者。翻訳家。国際基督教大学(ICU)卒、モントレー国際大学院大学(MIIS)国際政治学修士。aiic(国際会議通訳者協会)会員。ICU卒業後、海外技術者研修協会(AOTS)常勤通訳。上智大学講師、MIIS客員教授、日米会話学院同時通訳科講師として通訳教育の経験も深い。国際労働機関(ILO)では1981年以来年次総会の通訳を続けている。
ハリー・ポッターシリーズの翻訳者として講演も多く、エッセイストとしても活躍中。日本ペンクラブ会員。亡夫の意志を継ぎ、日本ALS協会を支援。



−−1997年の第1巻発行から10年を経て、いよいよ人気シリーズの完結ですが(日本版は2008年夏発売予定)、松岡さんにとって、振り返るとどんな10年でしたでしょうか?

ハリー・ポッターシリーズではおなじみのスポーツのオブジェ
ハリー・ポッターシリーズではおなじみのスポーツのオブジェ
松岡さん 長かったですね。最初は、7年で終わる予定だったわけですが、著者のJ.K.ローリング自身も、あれだけの人気になってしまいますと、1年に1冊というわけにはいかなくなって、もともとの計画よりも長い物語になったのではないかと思うんですよ。7年でも長いかなと思っていましたが、本当に10年は長かったですね……。
  10年の間には、さまざまな変化がありました。周囲の環境も自分自身の生活も変わりました。でも、物語の中のハリーたちも変わっていくわけですから、自然なことかもしれませんね。映画に登場するハリーやハーマイオニーたちも、どんどん育っているのですから。
  でも、時間をかけて熟成していく物語というものは、非常に貴重なものですね。

−−私たち読者も、この10年に立ち合えて幸福でしたね。

松岡さん この物語が出版される時代に生まれ、それを読んで楽しめる心を持っていたのは素晴らしいことでした。幼すぎたら読めなかったでしょうし、年齢が高すぎても、感性があわなかったかもしれませんね。
  もっとも、ハリー・ポッターのシリーズは、読者層が非常に幅広いですから、小さなお子さんから、70〜80代の方まで……私の父も90歳でしたけど、楽しんでいましたから。そんな具合に、読む側の年代を選びませんし、これから次の世代が10歳頃になると、また新しい読者として読んでくれるでしょう。その意味では、本当に時代を問わない物語だと思います。たまたまその最初の1ラウンドに出会えて良かったですね。

−−この10年、次の本をじりじりと待つという楽しみもたくさん味わいました。

松岡さん そうですね。“待つ”というのも、なかなかいいものですよね。

−−社会現象にまでなったハリー・ポッターですが、ハリポタ以前とハリポタ以後で、なにが変わったのでしょうか。

松岡さん なにかを変えたなどというおこがましいことはあまり言えないですけどね。時代からいうと、私が児童書で育った時代と今とは、子供が本を読む感覚そのものも当然ちがっています。現代という時代の中で、なにが変わったか考えてみますと……。
  私の時代は、テレビもなかったので、児童書を読むことが唯一の娯楽でした。ですから、本を読むことそのものがファンタジーの世界に入り込むことだったのですね。ですが、今の時代はそれに競合するような、子供の心を惹きつけるものがたくさんあります。テレビゲームや、アニメーションや映像の世界もそうですね。それを打ち負かすほどの読書の楽しみ。ハリー・ポッターはそれを再発見させてくれた本だと思うのです。
  たくさんのお母様方から「子供が本を読まなかったのに、ハリー・ポッターだけは読みます」とか、お子さんからも「こんな長い物語を読んだことはなかったけれど、ぼくははじめて読みました」などという声をいただきました。読書の楽しみを再発見させる役割をはたしたというのは、ハリー・ポッターだからこそできたのではないかと思います。  また、社会現象と言われたのは、本が売れない時代にあって、本が売れたということでしょう。しかもこれまでにない爆発的な売れ方をしたということで、大きな社会現象になったのだと思います。  でもそれよりも、私の心の中では、子供が本を読むようになったということが、一番印象の強い出来事でした。
  さらに言うなら、大人も子供も一緒に楽しめる本だったというのが不思議な現象でしたね。「親子の会話が成り立った」とか、大人は大人なりに「勇気づけられた」とか、「なぐさめられた」という方もいて、児童文学が幅広い層に訴えかけるジャンルだったというのも、これも再発見なのでしょうね。
  もっとも、古典といわれるような児童文学は、大人になって読み返しても楽しいものがたくさんありますね。イギリスには児童文学の名著がたくさんありますが、そういったものが現代にもまたひとつ生まれたということでしょう。  さらに、それが爆発的に売れた背景には、テレビやインターネットなどの新しいメディアの効果がありました。今まで子供たちの心を本から奪っていたメディアが、本を手にとってもらうための役に立ったわけですね。それもまた新しい現象だったなと思います。

−−たしかに、インターネットでいつでも本が買える時代になりましたね。

松岡さん 昔は本屋さんに通って、ポツンポツンと好きな本を買っていたわけですが、それから考えたら本当にすごいスピードで簡単に買えるようになったと思います。昔は昔で楽しかったし、ゆっくり時間の流れる社会だったわけですが、現代は、より早くより多くの人に知ってもらえるメディアがあるので、ハリー・ポッターも大きな社会現象になったのでしょうね。

−−『ハリー・ポッター』は、予約しておくと発売日に自宅に届くという、ネット書店の予約機能がいち早く使われた本でもありましたね。

松岡さん そうです。本の楽しみを届けることに、新しいテクノロジーが活躍したわけですね。古いメディアを新しいメディアが届けてくれたということかもしれません。

−−どんなに新しいメディアが発達しても、この本という形の魅力はすたれませんよね。なかでも 『ハリー・ポッター』シリーズは、いつまでも手元に置いておきたい、自宅の本棚に並べたいという魅力を感じます。

松岡さん 本の重さ、ページを開く指の感覚、それこそインクの匂いとまではいきませんが紙から立ち上る匂い、そういうものが香ってくるような、からだ中の五感を使って楽しめるという魅力がありますね。最近では、ケータイで読む小説なども流行っているようですが、それとはまったく異なる本の楽しみ、読書の体験があると思います。ですから紙の本は、どんなに時代がたっても、決してなくならないメディアだとも思います。  だからこそ、五感に訴えかける色や形や感触を選んで、本作りをしました。第1巻から、お金もないのに、表紙には特別な色のインクを使ったし、色むらがないよう丁寧に仕上げてもらったり、目に優しく裏にインクが透けない良い紙を使ったり、最高の作り方をしたんですよ。コストをかけて質の良いものを作ってきましたから、やはり長く手元に置いて欲しいと思います。良い本を手元に置くことは、読書家の楽しみのひとつだとも思います。
  お子さんたちには重い本になったかもしれませんが、それを考慮して、途中から、1巻本を2冊にわけて持ちやすくする工夫もしました。この本を入れる専用の袋をお母様に作ってもらって、学校に下げていくというお子さんもいたぐらいですから、本を持つ喜びや感触の楽しさをお子さんにもあじわってもらえたと思います。本棚に並べても、いいなと思っていただける本ができたと思います。

−−ですから、たくさんの人が本棚の最後の巻の厚みだけ、棚を開けて待っているんですね。

松岡さん 原書の厚さでは、5巻が一番厚くて、4巻と6巻がその次ぐらい。7巻はページ数だけで考えると、その中間ぐらいなのですが、7巻の原書の1ページをみると、これまでの巻にもましてビシーッと書かれています。ですから、原書のページ数だけでは、翻訳書の厚さがどうなるかはまだ、わかりませんね。本当に、訳しても訳しても訳し終わらないという気がしています。内容的な長さでいうと、5巻と同じような感じがしますね。また、読者としては、長くあって欲しいという気持ちもありますね。いつまでも、終わらないで欲しい……というような。

−−そういった翻訳のご苦労や楽しみには、どんな思い出がありますか。それぞれの巻にさまざまな思いやエピソードがあると思いますが……。

今まで刊行した6巻を横置き、最終巻について語る松岡さん
今まで刊行した6巻を横に置き、最終巻について語る松岡さん
松岡さん 今はちょうど7巻の翻訳の最中で、前を見て進んでいるので振り返る間もないのですが、ただいつでも、みんなが集まると、どうしても第1巻の思い出話がでてきます。
  本当になにもかも0(ゼロ)からの出発でした。だれも知らない出版社が、日本ではまだまったく知られていない作家の処女作をだすわけですから。素人が集まって、どうやったら翻訳ができるのか、本を本屋さんに並べてもらえるか、そんな疑問をひとつひとつ苦労して片づけていったのですね。亡くなった主人から引き継いだ出版社をなんとかつないでいきたいと思う、私一人の情熱ではじめたことですが、きっと天国から助けてくれたのでしょうね。それでこれだけのビッグなタイトルをとることができ、1年間本づくりに専念して、やっとなんとか形にすることができました。  そうして、1999年12月1日に、1巻を発売することができました。そうしたら、そこから1カ月の間に、たちまち20〜30万部売れてしまったわけです。そのときは、小さなマンションの一室で、みんなでジャンジャン鳴る電話に飛びついて、注文を受けました。ハリー・ポッターという名前をまだみんな知らないし、賢者の石もなんのことかわからないので、めちゃめちゃな書名で注文がきたのを覚えています。「ハリー・ポッターと経済学の本ください」とかね(笑)。
  本当に、なにも知らなかったからこそ、感激もまた一入(ひとしお)だったのでしょう。書店さんもかわいそうに思って助けてくださったり、先輩から翻訳のことならご指導しますよと言っていただいたり。いろいろな方が出版業のことを教えてくださったり、大学の後輩に応援を頼んだり。私が教えた大学院で同僚の教授だった人に翻訳のチェックをお願いしたり。 
  今、静山社にいるスタッフは、みんな、そういったマンションの一室時代からの経緯を知ってる人達です。今でも鮮明に思い出しますが、その頃の思い出は、やはり強烈ですね。

−−翻訳作業はたいへんでしたか?

松岡さん 翻訳は楽しかったですね。これだけ力のある、どんなに苦労してもやり遂げたいと思わせる力のある作品でしたから。訳しても楽しかったし、本を作っていても楽しかった。売れることを期待せずに、全力でいい本を作るということからはじめたわけですから、作る過程そのものも楽しかったのです。

−−各巻のタイトルのつけ方にも、さまざまな悩みやご苦労があったのですね。

松岡さん 1巻は、Philosopher's Stone(賢者の石)をどう訳すか考えました。当時はまだ作者が無名ですから、タイトルをどう変えても良かったんです。日本では、翻訳物を出す時に、原題とちがうタイトルをつけることもよくあります。映画の邦題でもよくありますが、よりよく売れる、人目につくタイトルにするということもできたのです。そういった意味で、「ハリー・ポッターの冒険」なんてアイデアもあったのですが、やはり原題に忠実に「賢者の石」としました。ちなみに、アメリカ版とフランス版はちがう題になっているんですよ。2巻からは人気がでて、著者の意向が強くなりましたから、原題のままの題にしなくてはならなくなりました。ですが今度は秘密主義で、どういう内容なのか、事前に教えてもらえなくなりました。題だけ見ても、どういう内容かわからないとタイトルの翻訳はできないですよね。
  それで一番困ったのが、5巻の「Order of the Phoenix」でした。Orderという単語を辞書で調べても、ごまんと意味がでてくるんですね。いままでの内容から類推しても、そのどれがあてはまるのかわからないんです。意味がわからないと訳しようがありません。結局、「不死鳥の騎士団」と訳しました。合っていてよかった。
  どのタイトルも、翻訳を工夫するときには、きちんと作者の許可をとります。第6巻を「謎のプリンス」と訳した時にも許可をとりました。  7巻に至っては、「Deathly Hallows」なんて、誰も知らない単語なんですね。イギリス人でも知らない単語です。Hallowsは聖人などという訳があるので、新聞などでは、いち早く、英語のタイトルの発表をみて、聖人と訳したりしていましたが、「秘宝」という意味はよほどの教養人でも知らない訳です。私の知ってるイギリスの知識人でも思いつかなかったですから。ですが、一番身近な英語国民からとてもいい情報が入り、発売の次の日には、これは聖人ではないなと判断して、最も最適だと思われる訳を考えました。結局、それが当たっていましたが、作者に問い合わせても教えてくれませんから気をつかいましたね。
  タイトルを秘密にすることで、読者の興味は大きくなりますけれど、翻訳者にとってはいい迷惑でしたね(笑)。

−−ご苦労のかいあって、どのタイトルも想像が広がるタイトルですね。

松岡さん ハリーの名前ひとつ考えても、ベアトリクス・ポターに習って、ハリー・ポターと訳すことも可能だったんですが、それではなんだか口調が悪い。私は、音に出しても読みやすい口調というのを常に考えます。通訳をしていましたので、原文を裏切らず、頭の中で読んでも口に出しても大丈夫な口調や音やリズムというものを、大事にしました。

−−おかげで、音読しても、小さな子供が読んでも、スッと頭にはいってくる読みやすい文章になっているわけですね。

松岡さん 読みやすい文章にするということは、本当にたいへんなことでした。意味だけ伝える翻訳でしたら、もうとっくにできあがっていますが、練りに練るということを考えると、一日中考えていても、かけた時間に比例して、いい案が出てくるわけではないですからね。本当に、翻訳のクリエイティブな作業というものは、作家と同じようなところがありますね。

−−ほかにもどんな思い出がありますか?

細かい部分まで作りこまれている、校長室のオブジェ
細かい部分まで作りこまれている、校長室のオブジェ
松岡さん 2巻は、「秘密の部屋」でしたね。これは、表紙に苦労しました。おどろおどろしくない絵にして欲しくて、表紙の絵を描く友人の横に並んで座って、いろいろ相談しながら作業してもらいました。いざとなると、私が横から手をだすものですから、「佑子はアーティストじゃないんだから手をだすな」と言われるんですけど(笑)。表紙のアートデザインを担当してくれる人も、各巻の表紙の枠色を選ぶのに苦労したと思います。表紙の絵に合う色で、しかも印象的な色を選ぶわけですからね。結局、不死鳥とちょっと怖い銅像の組み合わせの表紙が仕上がりました。この色合いをきれいに出すために印刷でも苦労しましたね。

  3巻の「アズカバン」は、内容がたいへんおもしろかったと思うんですよ。1巻・2巻ももちろんおもしろかったですが、3巻になって、「おおっ」と思うような展開がありましたね。とくに、シリウスが登場して世界が広がりましたね。死神犬(グリム)が出てきて、誰かと思ったら、それがシリウスだったんですから。それから、ハーマイオニーが逆転時計の魔法を使って、授業を倍ぐらい受けたりもしましたね。そういった豊かな創造力が、3巻になっても、まったく衰えないことに、すごさを感じました。表紙の絵はね、私はシリーズ中で3巻が一番好きなんですよ。2巻で苦労したので(笑)、これは良かったなぁと思います。

  4巻の「炎のゴブレット」は、はじめて2巻本にしたものです。これは、前半と後半で物語のトーンがちょっとちがっているんです。J.K.ローリングもそれを認めていて、初めに考えていた構想がうまくいかないことに途中で気が付いて、つなぎに苦労したと語っていました。最終的にはもちろん、前半と後半がひとつのまとまった話になりますが、ふたつの物語を一度に訳させられたような、翻訳者にしてみるとちょっとソンしたみたいな(笑)。長いんですから、4巻と5巻に分けてくれても良かったのに(笑)。
  物語の後半は、学校対抗の試合でしたね。登場人物に、マッド-アイ・ムーディもでてきました。思わぬどんでん返しがありますし、この巻あたりから、闇の魔術に対する防衛術の先生が、毎年変わるということがハッキリしてきて、それじゃあ、次は誰だろうという期待感を抱かせます。
  4巻は7巻シリーズの折り返し地点となる本ですから、今後がどうなるだろうという期待を、ますます高めてくれた本でしたね。

  5巻の「不死鳥の騎士団」は、シリウス・ブラックが……悲しい悲しい物語でしたね。たくさんのファンの方々から、なぜ? どうして? と言われましたが、私のせいではないんですけど(笑)、みんなの気持ちはわかります。ずいぶん泣かされた物語でしたね。
  ハリー・ポッターはハリーの成長の物語ですから、成長するにつれて大事な庇護者を失わざるをえないのですね。親を失った1巻、親とも慕う人を失ったのがこの5巻でした。5巻の物語の中ではそれが一番際立っていて、訳しながらも泣きました。

  ところが6巻の「謎のプリンス」になりますと、もっと悲しいことが待ち受けていました。みんな信じられない!信じたくない!と思いましたよね。不死鳥がいるのだから、きっと甦るにちがいないとか……しょうがないですね、物語も終わりに近づいていたのですから、こういうことも起こります。
  一方、謎解きがすすみますから、1巻の予言の謎がだいぶ解けてきます。ハリーの運命がはっきりしてきて、いよいよ7巻につながる本になっています。まだ解けない謎はなんだろう、ハリーはどうするのだろう……。そんな中で、また大切な庇護者を失いました。

 そして7巻「死の秘宝」では、J.K.ローリングはほんとうに、ふんだんに、惜しげもなく、たくさんの人を殺してくれました……。実は私は、次に死ぬのはハグリットしかないと思っていたんですよ。原書をお読みになった方は、誰が亡くなったかわかっていると思いますが、きっとJ.K.ローリングも、殺したい人と殺したくない人といろいろあったんでしょうね……。ネタバレ情報も出回っていますし、結末がわかっている方も多いと思いますが、でもそこに至る過程を丁寧に読んでいくと、結論だけ読むのとぜんぜん感覚がちがいます。深い感動があると思います。

−−本当に7巻を通して、ハリーもずいぶん成長しましたね。

松岡さん J.K.ローリングの心の中でも、ずいぶんハリーのイメージが変ってきたのじゃないかと思いますね。最初のころの、たどたどしい書き方から、今ではハリーそのものになりきったような、心のひだまで感じさせる書き方になりました。
  やせこけて栄養失調の小さな子供だったハリーが、立派な青年に成長しましたね。もともと心の成長の物語でもありますが、ハリーは安定感のある大人になりました。それでもまだハリーには弱点がいろいろあります。1巻でも、真実を性急に知りたがり、ダンブルドアに「真実とはとても美しく恐ろしいものじゃ」と言われていました。「答えてやることができん。もう少し大きくなれば……その時がきたらわかるじゃろう」という言葉の意味がハリーにはわかってくるんですね。物語を読み進むうちに、ハリーの出生の謎とともに、成長していくあかしも見えてきます。  一方、女の子は一般的に早熟ですから、ハーマイオニーは、登場した最初から精神的に成長していてみんなをリードするような存在でしたね。登場してすぐは、知識ばっかりのガリ勉でしたが、ハリーやロンと仲良くなることで、勉強よりも大事なことがあるということを理解する。得難い存在ですね。  あの三人の組み合わせがあってはじめて、ひとつのチームが出来上がるんですね。その友情がうらやましい、あんな友達が欲しいという子供たちがたくさんいました。
  そのほか、たくさんの子供たちが登場しましたね。男の子も女の子も、魔法学校のいろいろな生徒たちが、みんな見事に書き分けられ、それぞれのキャラクターがはっきり目に浮かぶようでした。
  まるで自分がその人になったような感じで読んでいた人もたくさんいらっしゃるんじゃないでしょうか。私は、自分自身がハーマイオニーだと思っていたんですけどね、大きくなったらマクゴナガルでしょうか……年齢的にはもうそうなっているかもしれないけど(笑)。  みんなそれぞれ、なくてはならない役割が与えられているんですね。意外なところでは、スネイプに人気がありましたね。複雑なキャラですが、役者だったら一度はやってみたい役でしょうね。私はどうがんばっても、似ているところがまったくないので、スネイプにはなれないと思いますけど、魅力的な存在ではありますね。

−−本当に、一緒に成長するような気持ちで読んでいた子供たちもたくさんいたと思います。もしも、ホグワーツに入学して組分け帽子をかぶったら、どこの寮にはいると思いますか?

松岡さん ハーマイオニーだから、グリフィンドールでしょうか。ただ、レイブンクローもあるかもしれません。レイブンクローは、いろいろなことを考える、まじめで頭でっかちの人がはいる寮で、勇気ある者がはいるのがグリフィンドール。私は頭を使っていろいろ考えるのが好きなので、レイブンクローかもしれません。  4つの寮の中では、スリザリンは悪役の寮にみられることがありますが、どんなことをしても目的を遂げるということは、けっこう大切なことなんですよ。どんな手段を使っても……となると悪役になることもありますが、たとえば、私の親しいイギリスの弁護士は、「自分はぜったいスリザリンだ」と言っていましたね。弁護士ですから、どんなことをしても依頼者を守り、目的を達成しなくてはいけませんからね。
  4寮にはそれぞれ創始者がいます。創始者が女性のハッフルパフも、癒し系の捨て難い味がありますね。

−−これを機会に読み直そうと思っている読者も多いと思います。どんな楽しみ方をしたらいいでしょうか。

松岡さん 翻訳が待ちきれなくて、英語版を読んでいる方もたくさんいらっしゃると聞いています。辞書を片手に原書を読むのは、おもしろい挑戦だと思います。読んでわからなかったところ、読み違えたところを、私の翻訳が出た時に確かめていただくといいかもしれません。原書で読んでわからない単語は、過去の巻の訳を参照すると、ヒントになったり、わかる場合もあると思います。
  それから、待っている間に、もう一回全巻通して読んでみるのもお薦めですね。通して読むと、不思議に、これまでわからなかったことが、いろいろ見えてくると思いますよ。謎解きは巻毎に小出しにでてきますが、通して読むことで、全体の筋がハッキリ見えると思います。  ハリー・ポッターのファンクラブ(「ホグワーツ校友の会」)で7巻の予想を募集しましたら、なるほど……と思う内容を書いてくださった方々は、やっぱりよく読み込んでいらっしゃいますね。通して読み込むと、7巻の内容もある程度は見えてくると思います。  これまでの本を買ってくださっている方々は、本に折り込まれている「ふくろう通信号外」を読み直す手もあるでしょう。さまざまなおもしろい内容が掲載されていますから、それを読んで楽しんでいただけると嬉しいです。新しく発売されている携帯版は、翻訳者のあとがきも新しくなっていますし、「豆フクロウ通信」というのがついていて、ひとこと豆知識が書かれていますから、携帯版も楽しんでいただけると思います。
  「ふくろう通信」の本体は、ファンクラブ「ホグワーツ校友の会」が、年2回発行する雑誌です。会員の方は、有料でバックナンバーの購入もできますので、それもあわせて楽しんでいただけたらと思います。
7巻が終わった後は、今後もイギリスの良質な児童書などを発行していくつもりです。これからも、英国のファンタジーがお好きな方に楽しんでもらえるような本をたくさん紹介していくつもりですから、期待してお待ちください。

−−今日は、たくさんのお話をありがとうございました。7巻『ハリー・ポッターと死の秘宝』の発売を、それからまたもっと楽しいファンタジーの出版を、わくわくしながら楽しみに待っています!ありがとうございました。


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