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著者インタビュー 最新号 バックナンバー
ネット連載の長編小説。 「雀」と4人の女友だちの恋と冒険。30代の貴女の今を描いた谷村志穂さんの最新刊『雀』
商品情報

『雀』
『雀』
谷村志穂

河出書房新社
1,600円 (税込:1,680円)買い物かごにいれる

その他の著作
『海猫(上巻)』
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谷村志穂

新潮社
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『イギリス、湖水地方を歩く』
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谷村志穂

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『靴に恋して』
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谷村志穂ほか

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『黒い天使になりたい』
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谷村志穂

河出書房新社
1,600円 (税込:1,680円)買い物かごにいれる

『妖精愛』
『妖精愛』
谷村志穂

河出書房新社
1,600円 (税込:1,680円)買い物かごにいれる

『Curtain』
『Curtain』
谷村志穂

実業之日本社
1,500円 (税込:1,575円)買い物かごにいれる

自由奔放に生きる「雀」と、大学時代からつきあいが続く4人の女友だち。30代の彼女たちが抱えるそれぞれの事情と、新しく見つけた生きる糧…。谷村志穂さんの最新長篇小説『雀』は、インターネットサイト「日経スマートウーマン」に連載され、メッセージボードにはさまざまな声が寄せられたという。『海猫』の映画化でも話題の谷村さんに、『雀』執筆の裏話を聞いた。 谷村志穂
プロフィール
谷村志穂 ■谷村志穂
1962年札幌市生まれ。北海道大学農学部にて応用動物学を専攻し、修了。出版社勤務を経てフリーライターとなる。ノンフィクション『結婚しないかもしれない症候群』(90年)がベストセラーに。91年、処女小説『アクアリウムの鯨』で作家デビュー。以後、小説を中心に、紀行、エッセイ、進化論、訳書、対談集など著書を発表している。2003年、北海道を舞台とした大河恋愛小説『海猫』が、第10回島清恋愛文学賞を受賞。森田芳光監督・伊東美咲主演により映画化され話題を呼んでいる。小説の主な作品は『十四歳のエンゲージ』 『妖精愛』 『黒い天使になりたい』ほか多数。

インタビュー

――『雀』はインターネットサイト「日経スマートウーマン」に連載されたものがもとになっていますが、執筆にあたってどんな構想をお持ちだったのでしょうか。

谷村さん 「日経スマートウーマン」のメッセージボードを読んでいると、知的な、教養のある人が読者に多かったんですよ。ちょっと理屈っぽくもあった。そういうメディアに波紋が広がるような小説を書いたら面白いんじゃないかなと思ったのが最初の発想ですね。
 メッセージボードみたいなところって、少し理屈が目立ちますね。だから、理屈とは正反対の女を描こうと思ったんです。理屈はこねない。身体だけで生きている。気が向けば誰とでも寝る。でも、真ん中にものすごく透明なものがある。そういう女性を描きたかった。
 私自身も40代になりました。女の人って長く生きているといろいろ言われたりすると思うんですよ。とくに独身が長かったりすると、風当たりが強くなってきたり。そういうものを全部、全身で受け止めているような女を描きたかった。

――5人の女友達が登場して、やがて砂漠に緑を取り戻す運動に関わっていきますが、全体の流れは最初から構想されていたんですか。

谷村さん 最初に「雀」という女性がいて、次に、ストーリーに広がりを持たせたかったので、雀を取り巻く4人の女友達を考えました。リストカットの癖がある女性、年下の男と鴨川で暮らす環境活動家の女性。平凡な人妻の道を選んだ女性。ハーフで一見派手だけれど、実は一途に男の帰りを待っている女性。それぞれ極端に違うキャラクターです。
 5人のキャラクターができると、何かやらない? っていう気持ちが芽生えてきたんです。それで、砂漠を緑にするっていうことが浮かんできて、そこに向かって物語が進んでいくようにしました。それは連載途中からそういう感じになっていったんです。

――5人の女性の人生がどう転んでいくかわからない。それが小説の面白さになっていますね。

谷村さん 小説と同時進行で、サイトのメッセージボードにいろいろなメッセージが入ってくるんですよ。「私はこう思う」「こうなのではないかと思う」とか。そうすると、ときどき、ぞっとするほど面白い書き込みがあるんですよね。「そうだよね、人間ってそういうところあるよね」というような。その驚きが、登場人物たちに多面的な面を与えられたように思いますね。私自身がメッセージボードを面白がって、ときどき何か投げかけたり、投げかけられたりとかしていたんですよ。昔なら、連載中に読者から手紙がたくさん来るということだったのかもしれませんが、いま、小説誌ではなかなかそんなことがない。オン・タイムで感想が読めるのは面白かったですね。

――登場人物の名前がカタカナやニックネームだったり、漢字のフルネームだったりしますね。一人称の「雀」の世界観が反映されているように感じました。リアルなん だけど、どこかファンタジックでもあるというような。

谷村さん 私にとって、いま生きている自分の温度とか肌触りに、この『雀』はすごく近いんです。たとえば私の携帯電話のアドレス帳って、あまりフルネームで入ってないんですよ。長年つきあっているのに、そういえばなんて苗字だったの? ってことがよくあるんです(笑)。自分のなかで名前のイメージが記号化されているんですね。誰でもそうだと思いますけど、いつも下の名前で呼んでる人のフルネームを漢字で書くとイメージが違うってことがありますよね(笑)。
 会社とか役所で名前を呼ばれる時のほうが、自分にとってよっぽど違和感を感じるという生き方をしてる人って多いような気がするんですよ。『雀』は雀の一人称で書かれている小説なので、雀という人がフルネームにこだわっているとは思えない。雀の見た世界を描いているので、雀の生き方はすごくリアルなのに、どこかファンタジーであるというような部分もあるんでしょうね。
 本来、本を読むときというのは、本一冊そのなかだけがリアルな世界なんだと思うんですよ。私はたとえばジョン・アーヴィングの小説が好きですけど、現実にはありえないようなことでも、小説のなかではあたりまえのように感じられますよね。日本語で小説を書いていると、漢字の名前は意味がありすぎて厄介に思えることがあります。名前をカタカナにしたり、いろいろ工夫する必要が出てくるんです。

――『海猫』が映画化されて、谷村さんの小説の読者になった方もいると思うんですが、『雀』は『海猫』とはまた違うイメージの小説ですね。

谷村さん 『海猫』を映画化した森田芳光監督に言わせると「谷村さんが『海猫』を書いたことが信じられない」って(笑)。『雀』のほうが私自身の現実感に近い小説ではあると思いますね。
 『海猫』を出したときに、「代表作ができましたね」ってよく言われたんですけど、私にとっては『海猫』はオーソドックスな小説だから、ある意味で書きやすい小説だったんです。人間にあたる光があれば、影もある。あれくらい陰影がはっきりしている小説は全力でさえ向かえば書きやすいんです。外見はそうは見えないかもしれないけど、それくらいの悲しみは私にもあるんです。
 ただ、私自身は作家として、オーソドックスなものに飽き足らなくて書いているところもある。でも、『海猫』のようなオーソドックスなものを書いたおかげで、小説を書くことにもっと自由になれたような気がしますね。

──『雀』の世界はご自身の現実に近いということですが、小説を書くことであらためて気づかれたことはありますか?

谷村さん 作家は書くしかないんですよね。それで面白くなければだめなんだろうし、面白いと言ってもらえたら次があるだろうし、言ってもらえなくてもまた書くんだろうし。まだまだ書きたいことがたくさんあるんですよ。
 『雀』の主人公もいつもノートを持っていて、切れ切れに言葉みたいなものを書いていくんだけど、まとまっていかない。私自身のなかにはそういう側面もあるんですよね。やってることにすぐ飽きちゃうし、根気がない。なのに、いくつかのことだけは終わりが見えないのに続けているっていうのは、面白いことだなあと思うんです
よね。
 みんな何か透明なものを求めて、その場にたどりつきたくて何かをしているんだと思います。私にとっては夫や子どもを愛するということだったり、「書く」ということだったり。でも、真ん中にぽっかりした水みたいなものを抱えているような気もするんですよ。
 じゃあ、なぜ私は書いているんだ、とか。なぜ毎日同じ人といられるんだろう、とか考えますよね。そんなことを考えながら『雀』を書くのはとても楽しかったですね。

――最後にこれから予定されているお仕事について教えてください。

谷村さん 今月『白の月』(集英社)という短編小説集が出ます。表題作の『白の月』は、妊娠中の女性が主人公なんですけど、妊娠している人もいれば、出産した後の主人公もいて、私自身がたどったここ数年の日々とちょっと重なるところもあるんですけど。心と身体が連動していくような小説集です。
 来年の2月には、1年間女性週刊誌に連載していた『余命(仮題)』というタイトルの長篇小説が単行本になる予定です。連載が終わったので、これから直して本にします。ここ数年がんばっていた作品が次々本になって、しばらく空っぽになるんじゃないかな(笑)。
 いくつか書きたいこと、書こうとしていることはあるんですけど、とりあえず、その2冊が出てから考えようと思っています。

――今日はありがとうございました。

女性の作家で、積極的にネットで活動している人はあまり多くはない。ホームページを作っている人はいても、直接、読者とメッセージボード(掲示板、BBS)でやりとりする人は、もっと少ないだろう。日経新聞の女性向けサイトという場所ながら、そこでの書き込みに対応しつつ、連載をまとめられたというのは、読者にとっても、作家にとっても貴重な体験だったにちがいない。「雀」と彼女の友人たちが、貴女や私のだれかに似ていたり、気分にシンクロするのは、そんな希有な「今の場」から生まれた作品だからかもしれない。

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