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特別対談 マーティ・キーナートさん×玉木正之さん

■マーティ・キーナートさん 『スタンフォード流 議論に絶対負けない法 “勝ちグセ”をつけるセオリー!』発売!!

■プロフィール



マーティ・キーナート Marty Kuehnert

アメリカ生まれ。スタンフォード大学政治学部卒。
慶応大学インターナショナルセンター日本語コースを修了。
プロ野球解説、スポーツキャスター、アメリカでの球団経営などを手がけたのち、
東北楽天ゴールデンイーグルスの初代ゼネラルマネージャー に。
現在は東北楽天ゴールデンイーグルスのシニアアドバイザーを務める。
仙台大学副学長、東北大学特任教授。



玉木正之(たまき・まさゆき)

1952年京都市生まれ。
東京大学教養学部中退。大学在学中から新聞(東京新聞)で演劇・音楽・映画評、コラムなどを執筆。
スポーツライター、音楽評論家、小説家、放送作家として活躍。
著書に『スポーツ解体新書 正・続』(財界展望社)、
『ニッポンはどうすれば勝てるのか?』(アスペクト)、
『ベートーヴェンの交響曲』(講談社現代新書)ほか。
近々『大相撲八百長肯定論』を上梓予定。

■特別対談 マーティ・キーナートさん×玉木正之さん

「八百長」か「情け相撲」か

玉木さん ■『スタンフォード流 議論に絶対負けない法』(イースト・プレス)読みました。面白かったですよ。よくあるアメリカ人が書いた本のような押しつけがましさがなかった。マーティらしく、日本人に敬意が表されていて、「ありがとうございます」と言いたくなりました(笑)。

キーナートさん ■こちらこそ、読んでくれてありがとう(笑)。

玉木さん ■この本に書かれているように、日本人はディベートや議論が苦手だ、というのはその通り。大切なのは、議論の前提となる情報や知識をたくわえておくことだ、ということにも共感できた。
 ところで、この前、例の大相撲の八百長問題にからんで、シカゴ大学の先生が「大相撲は7勝7敗の関取の千秋楽での勝利が多すぎる。おかしい」という統計学の論文を書いていたことが話題になったけど、「情け相撲」という言葉を知らんのか、と腹が立った(笑)。

キーナートさん ■ちょっとだけの知識は危ないんですね。外国人に会うと「私は10年間日本に住んでいます。日本のエキスパートです」と言われたりするんですが、私はこう答えるんです。「そうですか。私は45年日本に関わっていますけど、まだほとんど知らないんですよ」(笑)。
 少し知っただけで「ぜんぶ知っています」と思うことには気をつけないと。

玉木さん ■子供がよく言うね。「ぜんぶ知ってる」とか「みんな言ってる」とか(笑)。ウソつけ(笑)。

キーナートさん ■みんなが言っていることでも間違っていることはよくありますよ。気をつけて判断しないと。

玉木さん ■相撲を知っている人なら、大相撲に八百長もどきの勝負があることは昔からはわかっていた。そのうえで、この一番が良いか悪いかを議論してきたんです。相撲の歴史にはそういう部分があるんですよ。

キーナートさん ■今回の八百長事件が画期的なのは、ケータイメールの記録という証拠が出てきたこと。いままで、いろんな力士が「あった」と言ってきたけど、証拠がなかった。臭いものに蓋をしてきたんです。

玉木さん ■臭くないよ、あれは。「情け相撲」は日本の伝統文化なんだから。

キーナートさん ■そういう考え方もある。でも、スポーツとしてはダメでしょう。私が日本に初めて来たときから持っていた大相撲のイメージが壊れてしましました。

玉木さん ■大相撲はスポーツじゃないからね。伝統文化ですよ。



“なにも知らない”者同士の議論は建設的ではない

キーナートさん ■私が初めて日本に来たとき、1970年の大阪万博のアメリカ館の通訳兼ガイドをやったんです。

玉木さん ■そうなんだ。僕は京都に住んでいたから万博には三回行ったけど、アメリカ館には行かなかった。あんなに並ぶのは無理だと思った。

キーナートさん ■私は人気者だったんですよ。友だちになると、裏口からこっそり入れてあげた(笑)。

玉木さん ■マーティとその頃から友だちになっていればよかったな(笑)。

キーナートさん ■僕は大学でスポーツをやっていたので、スポーツ選手をよく案内したんですが、そのなかにジェシー、つまり高見山関(元関脇・高見山大五郎。ハワイ出身の関取)がいたんですよ。彼と友だちになって、ハワイ勢の関取たちを紹介してもらった。それ以来、相撲が好きになって、ずっと見てきました。でも、その後にいろいろな不祥事があって、イメージが壊れてしまいましたね。

玉木さん ■今回の八百長事件はちょっとヘンなところがあるんですよ。というのは、証拠が出てきた八百長の試合は、普通の人が知らない関取の、話題にもならなかった取組ですよ。なのに、そのことに対してマスコミも一般の人たちも怒ってる。これはヘンですよ。手に汗握って見ていた大一番が八百長だったら怒って当然だけど、肝心の試合を見ていないのに怒っている。  つまり、大相撲をずっと見てきた人たちではなく、大して見ていない人が批判している。マーティが本で書いている通り、よく知らない人たち同士で議論しても、建設的な結果は得られないですよ。正しい知識と正しい情報を得るのは難しいけれど、少なくとも得る努力はしなきゃね。

キーナートさん ■いま、玉木さんは良いことを言った。批判はしていいんです。でも、建設的な批判を聞きたいんです。大相撲がまた人気のあるスポーツに戻ってほしいと思うけど、なかなか……。

玉木さん ■難しいね。僕には一つだけ秘策がある。新聞にも書いたけど、相撲協会を宗教法人にする。神道だから、明治神宮の下部組織に入る。

キーナートさん ■宗教だと思っている人もいるよね。相撲は天から降りてきたスポーツだ、と。そう思っている人はいるけども……。

玉木さん ■相撲には宗教、興業、スポーツという三つの側面がある。この三つのバランスが取れているのがいい状態なのに、近代になってスポーツの側面が大きくなりすぎたところに、興行的な八百長問題が出てきた。そうなったら、もう一つの側面である宗教を持ってこないとバランスが取れない。

キーナートさん ■玉木さんの意見にすぐには賛成できないけど、その案も含めて抜本的に変えないと大相撲が復活することはないでしょうね。まさにいま、議論が必要な話題だと思います。

日本に世界的なリーダーがいない理由

キーナートさん ■ところで、この本はリーダーシップについても書いているんです。ちょっとここでリーダーシップとマネジメントは違うという話をしたい。日本には良いマネージャーは出てきますけど、世界的なリーダーは出てきませんね。誰か思い浮かびます?

玉木さん ■うーん。

キーナートさん ■世界に知られているリーダーというと、たとえばガンジー、チャーチル、マーティン・ルーサー・キング、ジョン・F・ケネディ、アウン・サン・スーチー……。

玉木さん ■日本の場合、政治家はいないね。優秀なセクレタリー(官僚、事務官)はいるけど。第二次世界大戦中のエストニアで、ナチスからユダヤ人を逃すために個人の判断で大量にビザを発給した杉原千畝のような人は世界に誇れる人でしょう。

キーナートさん ■国連難民高等弁務官を務めた緒方貞子さんもそうですね。国連の難民救済活動を改革した彼女の活躍は、欧米でもよく知られています。彼女の名前は歴史に残るでしょうね。

玉木さん ■でも、彼女も政治家ではなくセクレタリーだね。あとは軍人。日露戦争の東郷平八郎とか、優秀な将校はいた。  戦後、GHQにいた米軍将校が「世界で陸軍を指揮する人は、日本の陸軍を指揮したいと思うだろう。日本の陸軍ほどすばらしい兵隊はいない」と言ったらしいけど。

キーナートさん ■兵隊がみんな忠実だからね(笑)。

玉木さん ■その通りなんだよ(笑)。兵隊は優秀。でも、トップがいなかった。トップが悪かった、という言い方はできるんですよ。それはいまの政治家も同じ。

キーナートさん ■良いリーダーは先見性があるんです。ディスティネーション(目的地)がわかってる。彼の後についていきたいと大勢の人に思わせるのがリーダー。ところが、日本にはリーダーがいない。マネージャー・クラスはたくさんいるんだけど。

玉木さん ■日本と同じようにリーダーがいない国を探すと、イタリアが思う浮かぶんです。

キーナートさん ■いるじゃない。立派なリーダーが(笑)。

玉木さん ■ベルルスコーニ(イタリア首相。奔放な発言と数々のスキャンダルで知られる)?(笑)

キーナートさん ■ガールフレンドには支持されてる(笑)。

玉木さん ■ハハハ。ベルルスコーニはもちろん、歴史を振り返っても、ムッソリーニなんかも大したことはなかったからね。ルネサンスに貢献したメディチ家とか、地域単位の優れた統治者はいるんだけど、世界的に名前を残した政治家はいない。日本と一緒ですよ。日本も、土佐藩の藩主はすばらしかったとか、そういう評価はできる。でも、インターナショナルじゃない。  イタリアにはリーダーはいないけど、天才はいるんです。ダ・ヴィンチ、ガリレオ……。イタリア人に言わせると「一人の天才のために一万人のバカがいる」(笑)。日本もアーティスティックな人材は豊富でしょう。でも、政治家はいない。  日本はインターナショナルなリーダーを必要としなかったんでしょうね。国際的なリーダーがいなくてもいいくらい、幸せな国なのかもしれない(笑)。「和」を大切にする文化があるから。

海外に関心がない若者たち

キーナートさん ■和、つまりハーモニーね。それは良くも悪くも日本人の特徴ですね。  では、国際性についてはどうですか? 先日、ニュージーランドで地震が起きて、日本人留学生が大勢被害にあいましたが、僕が心配しているのは、その影響で、海外は危ないから留学するのはやめましょう、なんて風潮になるんじゃないかということ。日本の若者はどんどん海外へ出て行ってほしい。
 日本人のネックはまず言葉。そして、海外についての知識が乏しい。グローバリゼーションの時代なのに、日本人がますます海外に行かなくなっている。だから、ニュージーランドの地震の影響が心配なんです。
 私は仙台大学の副学長をやっているんですが、うちの学生を見ても、海外へ行こうという発想があまりない。仙台大学は東北で唯一の体育大学なんですが、学生によく言うんです。
「日本で生まれたスポーツは武道だけ。野球、サッカー、バスケットボール、ぜんぶルーツは海外。スポーツを学びたいなら海外へ行きなさい」
 でも、最近の学生はまったりしていてアクションを起こそうとしない。現状に満足しちゃってるんですよ。

玉木さん ■海外への関心が乏しいだけじゃないですよ。歴史への興味も薄れてるでしょう。

キーナートさん ■学生がよく言うんです。「知りません。それは私の生まれる前のことです」。あきれて言い返すんですよ。「生まれる前のことは何も知らないの? 知りたくないの?」。もうそろそろ、長嶋茂雄、王貞治を知らない若者が出てきているでしょう。過去に関心がない。困ったことです。

玉木さん ■その通り。本当に困る。過去を知らないと現在が見えてこない。僕も大学で教えているからよくわかる。なぜ彼らが過去に興味がないかと考えると、知る喜びを経験していないんです。過去の知識を得ることで「うわあ、面白い」という経験をしていない。教育の仕方がヘタなんです。

キーナートさん ■知識がないだけじゃない。主張をしない、議論しようともしないということも深刻ですよ。東北大学のような偏差値の高い大学でも、「質問はありますか」と聞いても誰も手を挙げない。文章を書かせれば上手いですよ。バカじゃないんです。ただ、主張することにも議論することにも慣れていない。

グレーゾーンか、白黒はっきりか

玉木さん ■主張する喜びを知らないんだね。でもね、主張しないけど、世界有数の経済大国なんだから、それでいいんじゃないの?

キーナートさん ■これからはそうはいきませんよ。ほかの国が伸びているんですから。

玉木さん ■日本人はイエス・ノーがはっきり言えないって言われるよね。

キーナートさん ■日本人の好きなグレーゾーンね。そのことはこの本のなかでも書いたけど。

玉木さん ■僕は日本人が大好きなグレーゾーンの面白さを海外に発信すべきなんじゃないかって最近考えるんですよ。グレーゾーンがない限り、世の中は面白くないということを教えてあげたほうがいい。

キーナートさん ■はっきりしないほうがいいのね。議論の決着がつかないよ(笑)。

玉木さん ■日本には「預かり」という考え方があるんです。審判が「この勝負、預かり」と宣言すれば、勝ちも負けもない。これからは、そういう解決の仕方アリなんじゃないかと思うんですよ。
 アメリカ人は「Yes or No」かもしれないけど、イギリス人は「Yes and No」という言い方をするよね。正しいとも言えるかも知れないけど、間違ってるかもしれない、と。

キーナートさん ■アメリカにもグレーゾーンはありますよ。アメリカ人だってみんながみんな白黒はっきりさせているわけではない。It's depending on the case。つまる「場合による」。case by caseだってよく使う言葉ですよ。日本ほどはグレーゾーンが大きくはないにせよ。

玉木さん ■モダンサイエンスでもファジー、不確定性原理が注目されている。白黒つけるよりもグレーゾーンのほうがいいって考え方はあちこちで出てくるんじゃないかなあ。

キーナートさん ■本当にいいかどうかはもう少し考えないと(笑)。

玉木さん ■グレーゾーンの良さを、もっと上手く表現する表現の仕方があると思うんですよ。

キーナートさん ■もちろん、結論を出さなくてもいいことは日常生活のなかでたくさんありますよ。だけど、僕がこの本のなかで言いたかったのは、日本人もイエス、ノーをはっきりさせる議論をしたほうがいいということ。議論にははっきりと勝ち負けがありますから、勝てるようになってほしい。とくに交渉ごとでは勝たなくては意味がない。  日本人は議論の結論をなかなか出せないし、自分の主張を通すことも難しい。コミュニケーション力に難あり、なんです。秋田にある国際教養大学という公立大学は、ほとんどすべての授業を英語でやるそうですけど、そういう大学が増えていったほうがいいと思いますね。コミュニケーション力の基礎は言葉ですから。

玉木さん ■僕は反対だな。英語で授業をするより『源氏物語』を読めと言いたい(笑)。

キーナートさん ■グローバリゼーションの時代には、『源氏物語』より英語力でしょう。

玉木さん ■グローバリゼーションの限界がもうすぐ来ると思うんですよ。インターナショナルとグローバリゼーションはぜんぜん意味が違う。日本の文化にどっぷりと浸かったうえで、異文化ともコミュニケーションができる。それがインターナショナルでしょう。

キーナートさん ■言葉はあくまで道具ですよ。でも、絶対に必要な道具なんです。私の友人にスイス人がいるんですが、スイス人はたいてい、三、四ヶ国語がしゃべれます。英語、ドイツ語、フランス語。イタリア語。それでも、外国語をマスターしたからといって、スイス人としてのアイデンティティが消えてしまうわけじゃない。日本人もそうなったほうがいいんじゃないですか?

玉木さん ■マーティの言ってることはわかるけどね。素直にうんって言いたくないんだよなあ(笑)。

交渉力の基礎には英語力がある

キーナートさん ■スポーツに話を戻しましょうか。  スポーツの国際ルールが変わると日本人は不利になるとよく言われますよね。説得力のあるプレゼンができない。交渉力を発揮できない。そこにはやっぱり英語ができないという問題が大きいと思います。
 玉木さんはよく知っていると思うけど、1968年のメキシコオリンピックのとき、田口信教が平泳ぎの準決勝で失格になりましたよね。田口の足がドルフィンキックになってると判定された、あのとき、すぐに日本が抗議したら失格にならなかったんじゃないかと思うんです。でも、抗議できなかった。うまくコミュニケーションができなかったのは、英語の壁もあったと思う。
 同じことは、2000年のシドニーオリンピックのときの、柔道の100kg超級決勝の篠原信一にも言えますよ。誰が見たって篠原の勝ちなのに、ミスジャッジで負けた。大騒ぎになりましたけど、日本選手団が抗議の手紙を出したのは一週間後ですよ。なぜ、そんなに時間がかかったのか。

玉木さん ■英語ができる人が日本側にいなかったからですよ。フランス語でもよかったけど、無理だった。それで、反省して、日本選手団の監督だった山下(泰裕)がニューヨークに留学するんです。英語ができないと抗議もできないということを思い知って。その結果、シドニーでは大失敗したけど、アテネで取り返した。日本の柔道界はよくやったほうですよ。
 でもね。英語で抗議をするしないの前に、日本のスポーツの独特のあり方もあるんですよ。日本でスポーツは学校で教えるところから始まる。審判、ルールの解説はぜんぶ先生。先生の言うことはぜんぶ正しい、というのが学校のルールです。だから、日本の選手はルールに疑問を持たないんです。このルールはおかしい、なんて発想は絶対に出てこない。

キーナートさん ■疑わないのはおかしいんです。知りたがる、疑う。どちらも大切なんです。
 学校の先生はスポーツのプロじゃない。数学の先生がテニスを教えてる、とか、趣味の延長ですよ。一生懸命やっているけれど、限界がある。僕の息子も日本の中学で野球をやっていたけれど、先生の指導法がおかしいときもあった。情熱はあるけれどいつも正しいとは限らない。そういう意味でも、疑わないのは困るんです。

玉木さん ■学校の部活もそうだけど、日本の社会は全体的にスポーツに対して理解していないね。海外、とくに欧米では、スポーツは経済であり、政治であり、外交でもある。日本で考えているより、スポーツはもっと広くて深いものなんです。だから、柔道のような日本から生まれたスポーツでも、グローバルになったいまは英語とフランス語で重要なことが決まっていく。そうなってきた時代に「柔道は日本のものだ」と言い張ってもナンセンスなんだよね。

キーナートさん ■1988年のソウルオリンピックのとき、開催地に名古屋も立候補していていたけど、蓋を開けてみればソウルの圧勝だった。このとき、ソウルのオリンピック誘致委員会のトップはアメリカのエリートの大学を出て、韓国語の他に英語、フランス語、日本語ができた。でも、名古屋のトップは日本語しかできなくて、いつも通訳付。コミュニケーション能力がぜんぜん違った。オリンピックを誘致するためには、世界中を回って自分の国に一票入れてくれるように頼むんだから、やはりトップが直接しゃべれるかどうかは重要なんです。

選手へのリスペクトが足りない

キーナートさん ■もう一つ問題があるよ。スポーツ選手に対するリスペクトがなさすぎる。

キーナートさん ■同感です。2004年に日本のプロ野球でストライキがあった。選手会長が古田敦也選手のときですよ。そのとき、巨人軍のオーナーだった渡邉恒雄会長が「たかが選手が」と言ったことがいまだに忘れられない。
 僕は講演するときに、オーナー、選手、ファン、どれが一番大切かと観客によく聞くんですよ。でも、オーナーが一番大切という人はいません。選手とファンが半分半分。でも、考えてみてください。もちろん、ファンは大切ですが、選手がいなかったら、スポーツは始まらないんですよ。玉木さんが言うように、選手へのリスペクトが足りないんです。
 そして、その認識をあらためるためには先見性のある本当の意味でのリーダーが必要ですよ。尊敬できるリーダーがいないとなかなか前に進まないんです。

玉木さん ■日本人のつきあい方は、仕事の前にお酒を飲んで仲良くなってから、なんだよな。それも、日本人がディベートが下手な理由の一つだと思う。ディベートをしたら友だちでなくなると思っている人がいるんですよ。
 議論のとき、反対の意見に言い負かされることもある。でも、それで「ああ、そうか」と納得できれば自分を高めることになる。相手を言い負かしたときでも、相手の意見のなかにいい意見を見いだせばプラスになる。ところが、そういうつきあい方は日本人は下手ですね。

キーナートさん ■日本人が面白いのは、お酒が入ると議論ができるようになることですよ(笑)。日本人と議論をする秘訣はお酒です(笑)。

玉木さん ■ハハハ。僕も仕事を始めた頃に編集長に言われましたね。日本人には本音と建て前がある。本音を聞くためにはお酒を飲ませろ、と。それは、僕はいちばん嫌だった。お酒なんか飲まなくても、野球の話をきちんと聞けば、ちゃんと答えるはず。ちゃんと答えないやつはインタビューなんかしなくていいと思っていた。それはいまでも間違っているとは思わない。最近は若い人は飲まなくなってきているから、ますます酒は不要ですよ(笑)。

海外ニュースから日本を知る

玉木さん ■話を戻すけど、僕も旅行でも留学でもいいから海外へ行ったほうがいいという意見には賛成。日本のことをわかるためには海外に行ったほうがいい。海外から日本を見てわかることはけっこうありますよ。

キーナートさん ■その通りですね。私もアメリカから出て、いろいろな国を回ってわかったことは多い。アメリカしか知らなかったときの私はバカでしたよ、はっきり言って(笑)。日本に住んでからも、フランス人、カナダ人、いろんな国籍の友人ができて、アメリカはこう思われているのかと勉強になりました。日本人も、海外からどう見られているかを知ったほうがいい。日本にいて新聞やテレビを見ているだけで、本当に正しい海外の情報を得られているかといったら大きな疑問ですよ。

玉木さん ■まったくそうだね。

キーナートさん ■アレックス・カー先生の『Dogs and Demons』(邦訳は『犬と鬼 知られざる日本の肖像』講談社刊)という本があるんですが、これは日本人は絶対に読むべきです。日本がどのくらい必要のないダムを作っているか。必要のない公共施設を作っているか。どれくらい必要ないものを作って美しい自然を破壊しているかをはっきり書いています。ここまではっきり書けるのは外国人だからですよ。何人が書こうと、建設的な批判であれば読むべきなんです。

玉木さん ■英語の勉強するよりも源氏物語、と言ったけれど、そう言いたくなる気持ちは間違っていないと思う。だけど、外国のことを知らなくていいと言っているわけじゃないい。どっちも忘れちゃいけない。

キーナートさん ■日本の文化はもちろん大事ですよ。内向きに、引きこもってほしくないんです。『スタンフォード流 議論に絶対負けない法』で僕が伝えたかったことは、外に向かって言うべきことは言う。外から聞くべきことは聞く。そのためにはコミュニケーションのスキルが必要だということです。ぜひ、僕の本を読んで、そのスキルを身につけてほしいと思いますね。
 おっと、もうこんな時間だ。あっという間だったね(笑)。玉木さん、今日は話につきあってくれてありがとう。

玉木さん ■意見は違っても、マーティと話すのは楽しいね。また議論しよう(笑)。



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