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「ロトの紋章25周年記念」藤原カムイ先生特別インタビュー

国民的人気を誇るロールプレイングゲーム「ドラゴンクエスト」シリーズ(スクウェア・エニックス)の世界観をベースにした、漫画『ドラゴンクエスト列伝 ロトの紋章 ~紋章を継ぐ者達へ~』。その最新巻=第25巻が8月25日に発売された。シリーズ第1弾『ドラゴンクエスト列伝 ロトの紋章』の誕生から25年を経たいま、作者・藤原カムイさんは何を思うのか。

プロフィール

  • 藤原カムイ
    藤原カムイ(kamui fujiwara)漫画家
    59年、東京都荒川区生まれ。79年に、集英社が主催する第18回手塚賞で佳作に入選。81年『バベルの楽園』(マンガ宝島)でプロとしてデビューを切った。80年代には、多くの読み切り作品を手がけ、優れた画力、構成力で注目を浴びた。代表作は、アニメ化された『チョコレートパニック』(双葉社、85~88年)、『雷火』(角川書店、87~97年)、『ドラゴンクエスト列伝 ロトの紋章』(スクウェア・エニックス、91~97年)など。近年は『精霊の守り人』(スクウェア・エニックス、07~08年)も評判となった。
 

シリーズ開始から25年、ファンタジー作品の地位が向上

----スクウェア・エニックス『ヤングガンガン』で連載中の漫画『ドラゴンクエスト列伝 ロトの紋章 ~紋章を継ぐ者達へ~』や、シリーズ作『ドラゴンクエスト列伝 ロトの紋章』は、藤原さんの漫画家人生の中で、どんな位置づけの作品ですか。

藤原カムイさん

藤原さん“紋継ぐ”の前作にあたる“ロト紋”がスタートした91年から、気付けば25年も経ってしまいました。前に描いていた『雷火』で王道の少年漫画に挑んだのですが、個人的にやや消化不良な部分があったので、“ロト紋”は「やってやる!」と意気込んでスタートした覚えがあります。それ以前はサブカル系の作品を多く描いていたのですが、“ロト紋”と“紋継ぐ”のおかげで、いつの間にか「藤原カムイといえばドラクエ」というイメージに。2作は、世間での僕のイメージを変えた作品と言えると思います。

----25年前に『ロトの紋章』はどんな経緯でスタートしたのでしょうか?

藤原さん月刊『少年ガンガン』(スクウェア・エニックス)が立ち上がる時に声を掛けてもらって、ミニコミで描こうとしていたドラクエ漫画のネームを持ちこんだのがきっかけでした。ただその時は、「ドラクエ漫画は他の作家さんで決まっているから」と断られたんです。ところが話が流れたらしく、僕のところに「やってくれないか」と連絡が。ゲームの原作者・堀井雄二さんも、僕の作品を知っていたらしく「藤原カムイなら大丈夫だろう」みたいな感じだったみたいで。

----『ロトの紋章』は97年に完結。04年から、続編となる『~紋章を継ぐ者達へ~』が、『ヤングガンガン』(スクウェア・エニックス)でスタートしましたね。

藤原さん編集部から声を掛けてもらったのが、ドラクエ「Ⅷ」の発売時期だったので、自然と「ドラクエで」という話になりました。「Ⅷ」の作中に新登場した要素を、積極的に取り込んで物語を作った覚えがあります。

アロスと前作『ロトの紋章』の主人公、アルス

----それにしても、シリーズの連載が決まる前からドラゴンクエストをテーマにした漫画を構想されていたとは驚きです。

藤原さんドラクエは、「Ⅰ」からすべてリアルタイムでプレイしてきました。一番ハマったのは「Ⅲ」で、仕事に影響が出るほどのめり込みました。それ以前から、トールキンの『指輪物語』をはじめとする冒険ファンタジー系の作品も大好きでしたね。

----『ロトの紋章』以前に、ファンタジーを題材にした漫画を描こうと思ったことはありましたか?

藤原さん 編集部にネームを持ちこんでいたのですが、すべてボツで。僕がデビューした70年代後半から80年代は、ファンタジーって下の下だったんです。編集者さんから「どうせ描くんだったら、こういうのは?」って、テニス漫画を見せられたこともありました。「無理!」って断りましたけど(笑)。

----ドラゴンクエストは長年続くシリーズになり、『指輪物語』も「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズとして映画化されいまやメジャーに。かつてファンタジーが下の下だったなんて、若い世代には想像できないかもしれません。

藤原さん昔からファンタジー小説は人気があったんですけど、質の高いビジュアル作品は少なかったんです。近年は映像技術が進んだので、見応えのある作品が増えて、ジャンルとしての地位が確立されたんだと思います。

----技術の進歩と言えば、『~紋章を継ぐ者達へ~』はすべてパソコンで描かれていると聞きました。

藤原カムイさん

藤原さん前作の“ロト紋”で、単行本の表紙絵にパソコンでエフェクトをかけて仕上げたりし始めて、いまの“紋継ぐ”はすべてデジタルで描いています。ただ、修正も簡単にできるようになったので、何度もやり直しをするうちに、アナログでやっていた頃より時間がかかってしまうなんてことも(笑)。

----漫画の現場も、すっかり技術革新が進んでいるんですね。ちなみにデビュー当時はどんな環境でお仕事されていたのでしょうか。

藤原さんデビュー間もない頃は、早稲田の四畳半のアパートで描いていました。当時は“みかん箱を机代わりに…”みたいな貧乏漫画家のイメージがイヤだったので、部屋中の壁に銀色の断熱材を貼り付けて雰囲気づくりをしていました。ニューウェーブ系の漫画に傾倒していた影響ですね。安っぽいSF映画のセットみたいな部屋で、未来を夢見ていました(笑)。

ストーリーは「フッ」と降りてくる

----『~紋章を継ぐ者達へ~』は、主人公・アロスと仲間たちの成長や、手に汗握る展開の連続、重厚な世界観などに引き込まれます。すでに25巻に及ぶ大作となり、さらに前作とつながりがある部分も多いので、どうやってストーリーを考えているのか興味があります。

藤原さん 物語を練る時は、“ロト紋”と“紋継ぐ”をジックリ読み返します。そうすると「あ、コレ使える!」っていう要素が見つかるんです。また本シリーズは、ドラクエ「Ⅲ」の世界観が元になっているので、「Ⅲ」の攻略本も手放せません。

謎の男ベゼル。典型的な口先男だが・・・?

----ゲームの攻略本を参考にしているとは意外でした。とはいえ、行き詰まることもあるのでは?

藤原さんたまに行き詰まることもありますが、何気なくタバコで一服しているときにアイデアが浮かんでくるんです。実は後付けも多くて…。“紋継ぐ”の“呪文が使えない世界”という設定は当初からのものですが、“呪文を復活させるためには、ジパングから盗まれた三種の神器を取り戻す必要がある”という設定は、後から考えました。

----いいアイデアが思いついた時は、テンションが上がったりしそうですね。

藤原さんところがそうでもないんです。アイデアは「あ、いらしてくださった」みたいな感じで、「フッ」と降りてきます。その一方で、ノッているときはキャラクターが勝手に動いてくれることも。もっとも激しく動いてくれるのは、アロスの仲間・ベゼルですね。描いているうちに、キャラクターに引っ張られて予定外の方向に物語が動いてしまう場合もあります。

----作り手の意思を越えてキャラクターが動き出す!それが『ロトの紋章』『~紋章を継ぐ者達へ~』の面白さの理由と言えそうですね。シリーズを通じて、一貫して大事にしてきたことはありますか?

藤原さんドラクエの世界観がベースではありますが、便利すぎる要素は取り入れないようにしてきました。2作とも、生き返り効果のある葉をつける“世界樹”が枯れている設定ですし、生き返りの呪文“ザオリク”もナシ。すぐに生き返れる世界だと、バトルの緊張感がなくなってしまうので。登場人物たちの成長についても、実世界のリアリティを意識して描いています。

ロト紋”世代と、その子どもにも“紋継ぐ”を

----シリーズ作として、一貫した部分がある一方で、『~紋章を継ぐ者達へ~』は前作『ロトの紋章』とテイストが異なる部分も。『~紋章を継ぐ者達へ~』は、読み応えが強まった印象です。

双子の姉アニス。二人は相対することに

藤原さん “紋継ぐ”は青年誌に連載しているので、「大人も楽しめるように」と意識しています。勇者たちと魔物のバトルだけでなく、国と国の争いも描かれますし。諸悪の根源が人間であるといった面も強調していますね。さらには、善と悪、人間の裏表、鏡の世界といった、森羅万象の“二面性”も本作の重要なテーマです。主人公のアロスに、双子の姉・アニスがいることも“2つ”というテーマに結びついています。

----深いですね。さらに25巻では、登場人物たちの恋模様も盛り上がるようですが。

藤原さん壮絶なバトルの中でも、愛には抗えないといった面も描きたいと思って、恋愛要素を物語に盛り込んでいます。この手のストーリーに、恋愛フラグを立てるのはなかなか難しいのですが…、頑張りました(笑)。

----『~紋章を継ぐ者達へ~』は「子ども時代にドラクエを満喫していたけど、近頃は漫画を読まなくなった」といった大人にピッタリの漫画だと思います。『ロトの紋章』とあわせて、大人買いもアリですよね。

藤原さんそう言ってもらえるとうれしいです(笑)。25年前に“ロト紋”を読んでいた人が、自分の子どもと一緒に読むというパターンもうれしいですね。

----ところで、25巻は物語全体のどのあたりになるのでしょうか?

藤原カムイさん

藤原さん地下世界が舞台となる最終章の直前といったところです。完結まで残り3~4年といったところでしょうか。ハッキリしたことは言えませんが、全巻数は35巻を越えないかなと。その後は、現在のスタジオを解散して、宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』をモチーフにした作品を手掛けようと構想しています。黒い紙に銀色のインクで描いて、幻想的な作品にしたいんです。

----藤原さんが描く『銀河鉄道の夜』、とても楽しみです。でも、『~紋章を継ぐ者達へ~』が完結まであと数年と聞いて、ファンはちょっぴり複雑な心境かも。

藤原さん実際のところ、今後のことはまだ分かりません(笑)。ドラクエが続く限り、僕も描き続けるのではないでしょうか。軽い展開の新作ドラクエ漫画や、ギャグが多めのタイプなども描いてみたいですしね。これからも応援よろしくお願いします。

【取材】澤井 一

   

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