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自意識の変容する瞬間が一番美しい 垣根涼介の新境地 『月は怒らない』

一見、地味で何の華もない市役所勤務の女性・恭子に不思議と惹かれていく3人の男たち。一人はヤクザまがいの仕事をする梶原、一人は派出所勤務の警官・和田、そしてもう一人は大学生の弘樹。まったく毛色の違う3人の男と同時に付き合い始める恭子だが、その過去は隠されたまま。恭子の何が男たちを惹きつけるのか…。過去に何があったのか…。『ワイルド・ソウル』『ヒートアイランド』など人気作多数の垣根さんに1年半ぶりの新作となる本作についてたっぷりお話をおうかがいしました。

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プロフィール

垣根涼介(かきね・りょうすけ)さん
1966年長崎県生まれ。筑波大学卒業。旅行会社勤務の傍ら書き上げた2000年『午前三時のルースター』でサントリーミステリー大賞と読者賞をダブル受賞。2004年『ワイルド・ソウル』で大藪春彦賞、吉川英治文学新人賞、日本推理作家協会賞を受賞し、史上初の3冠受賞。2005年『君たちに明日はない』で山本周五郎賞受賞。ヒートアイランドシリーズ、君たちに明日はないシリーズなど人気シリーズ作品多数。

インタビュー

■恭子みたいな女、俺なら絶対いやですよ(笑)

垣根涼介さん

−−服装もメイクも地味、さしたる夢もなく市役所の戸籍係として慎ましい日々を生きる恭子。実は垣根さんの理想の女性なのかなと感じたのですが。
垣根さん 俺はイヤですよ、恭子みたいな女(笑)。だって3人の男と同時に関係持つ女なんて、嫌でしょう。でも、服装にも無頓着で何が楽しみで生きてるのか分からない地味な女…だけどどうしようもなく男が惹きつけられる何かを持っている。こういう女がいてもいいかなとは思いながら描きましたけどね。
−−3人の男たちのみならず、読み手である私たちも知らずのうちに恭子に惹き込まれる不思議な感覚を覚えました。男たちは恭子の何に惹かれたのでしょうか。
垣根さん それが物語の核心でもあるんですが、恭子は「誰の人生も背負わないし、背負われたくない」という自立した精神の持ち主。あと過去に対するスタンスですよね。恭子は自らの過去についてほとんど語りませんが、これは僕自身の考え方でもあるんですよ。同窓会なんかで過去のことに話が終始したりするのが本当に嫌でたまらなくて。「20歳過ぎたら全部自分の責任」だと思っているので。そのあたりの恭子の凛とした姿勢には、異性ならずとも惹きつけられるものはありますね。
−−恭子に惹かれていく男の数が「3人」だったのは?
垣根さん 恭子の行動レベルを多面的に見せるためです。梶原1人じゃどうしても役不足なので、あと2人くらい必要だった。もちろんメインは梶原なんですが、梶原を代表とする3人の男を通じて彼女という人間を行動レベルで多面的に表現してみたかったんです。
−−さらに物語の重要な要素として恭子が公園で出会う「老人」の存在がありますね。
垣根さん そうですね、先ほどの3人だけでは恭子という人間を表現しきれないので、彼女を彫り込むためのもう一つの手段として「老人」を出しました。他の3人に教養がなさすぎるので(笑)、老人の存在がないと恭子の内的世界も暗示しきれないと思ったので。そしてさらに老人からワンクッションおいて「浮浪者」の視線をはさんだ。老人は非常に小難しいことを言う可能性があったので、老人をより平易化させる存在としての浮浪者を登場させました。
−−タイトルの「月は怒らない」の意味が解き明かされる終盤にかけてゾクッとしました。
垣根さん 最初は「戸籍係の女」っていうタイトルにするつもりだったんですよ(笑)。でもそれだと事象だけ表してて、物語の流れは表してないなということになって。本のタイトルに合わせて、章立ても「遊星」「日輪」「東天」…全部天体にかけた名前をつけてるんですよ。
−−読む人によっては恋愛小説ともミステリーとも受け取れそうな今作ですが、ご自身の中でこの作品のテーマのようなものはあるのでしょうか?
垣根さん よく僕の作品はジャンル分けが難しいって言われるんですが、書くときにジャンルはまったく意識してないんです。読みたいように読んでいただければと。ただ、デビュー当時から一貫して「自意識の変容」をテーマにしてきました。どんなノワールであったとしても。今回の作品でもそれは同じです。誰と結婚しても、どれだけお金持ちになっても、自意識が変わらない限り、結局違う世界は見えない。変えられるのは自分の心だけ。僕は、自意識が変容していくときが人間の一番美しい瞬間だと思ってるんです。
−−今回の作品には垣根さん自身の「自意識の変容」は表れていますか?
垣根さん そうですね、表面的な話でいうと登場人物が昔の作品と違って穏やかになりましたよね。暴力的な人間が内省するようになってたり(笑)。内面的な部分でいえば今回「人として○○すべき」といった言葉を一回も使ってないんですよ。昔の作品なら「恥を知るべきだ」とか書いてそうなところをね。


■作品テーマは一貫して「自意識の変容」

垣根涼介さん

−−こうしてお会いすると梶原と垣根さんのキャラクターが少しかぶるような気がします。
垣根さん よく言われるんですよね(苦笑)。ですが僕と梶原はまったく違う人間ですから!僕は長崎の諫早で生まれ、地元の名門校に進学し、学級委員も務め、心理学やりたくて筑波大学に入り、浪人も留年もせずにリクルートに入社しました。小説家としても珍しいくらい堅気の道を歩んできてるんじゃないでしょうか(笑)。梶原と僕が唯一かぶっている点があるとすれば車が趣味、ということくらいですかね。執筆の息抜きがてら神奈川環状線を湾岸線まで2〜3周したりしてますね。
−−ご経歴の話が出ましたが、小説家としての活動当初はサラリーマン生活をおくりながら執筆されていたそうですね。
垣根さん 実は30歳の頃、投資で失敗してまとまったお金が必要になりまして(笑)。それで「公募ガイド」を見て一番賞金の高かったサントリーミステリー大賞に応募したんです。ただ、賞金を本気で狙っていたのでそれはもう真剣に挑みましたよ。応募締め切りの1年前には作品を完成させて、その後は友人に作品見てもらっては書き直し…の連続。
−−とはいえ賞金狙いで小説を書こうと思ってもなかなかできるものではないと思いますが(笑)。
垣根さん 当然、元々小説が好きというのはありましたね。田舎の出身ですから娯楽なんて小説くらいしかない。一番最初に感動したのは小学校6年生くらいで読んだサマセット・モームかなあ…。あとはカポーティ、ガルシア・マルケス、とにかく何でも読みました。だけど一番量を読んだのは社会人1〜2年目。2年で700冊読みました。

垣根涼介さん

−−2年で700冊!それだけの時間を捻出するのも大変だったと思うのですが…。
垣根さん 通勤の往復2時間と寝る前の1時間、これでだいたい1冊は読めるので、足りない分は土日に補うという感じでしたね。当時リクルート社でコピーライターをしていた関係もあって、とにかくいろんな文章に触れたかったんですよね。逆に自分が小説書き始めてからはあまり読まなくなりました(笑)。
−−そんな垣根さんにとって小説とは。
垣根さん やるに足る仕事。ですかね。やる意味がなくなったらやめるでしょう。でも多分意味がなくなることはないんです。僕の扱っている「自意識」の問題を最初に扱ったのってお釈迦様なんですよ。自意識の変容を突き詰めると、悟りをひらいて解脱の境地に至る……。だけどお釈迦様以外、解脱した人間はいないわけですから、僕みたいな凡人が20年30年書いたところで自意識の変容を描き切れると思えないんですよね。
−−今後挑戦していきたいジャンルなどはありますか?
垣根さん 今たまってる仕事がかたづいたら歴史小説に挑戦したいと思ってるんですよ。まだ全然着手はしてないんですが、室町中期〜末期。足利義政とか日野富子の時代です。あの頃、政治が一番愚劣だった時代なんですよね。無政府状態で今の日本に近いといえば近いのかな。
−−小説に映し出される垣根さん自身の今後の「自意識の変容」も楽しみですね。
垣根さん 自分が変化する過程を追って行くにはちょうどいい仕事ですよね。そういう意味では一生やるに値する仕事だなと思っています。書いても書いてもお釈迦様の境地に至るわけもなく、永久にこの畜生道から逃れられないんだろうなと。だからこそ描く価値がある。少しずつ上に行っていつか人間界くらいにはたどりつければいいですね(笑)。

Written by SHINOBU NAKAGAMI



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