トップ > >特集 >著者インタビュー >恩田陸さん

楽天ブックス 著者インタビュー

  • バックナンバー
  • 最新号

夢は外からやってくる…。 恩田陸待望の幻視サスペンス、ついに登場! 『夢違』

近未来、夢を「夢札」と呼ばれる映像として記録し、再生できるようになった世界…。「夢判断」を職業とする浩章は亡くなったはずの女の影に悩まされていた。その女こそは人類で初めて「予知夢」を見るとされ、その生涯のほとんどを研究対象とされてきた結衣子。そんな折、小学校で奇妙な集団白昼夢事件が多発する。「夢札」を分析するべく調査に向かった浩章を待ちうけていたのは…。
 恩田陸さん待望の新作『夢違』がいよいよ登場!「夢」をテーマにした理由など、たっぷりお話をお伺いしました。独特の浮遊感あふれる恩田ワールドを、とくとお楽しみください。

今週の本はこちら

夢違
 恩田陸夢違
約2年ぶりの恩田陸の新作は、驚愕の幻視サスペンス大作!
1,890円(税込)
ご購入はコチラ

注目の本

不連続の世界 恩田陸不連続の世界
旅先で次々と起こるミステリー。短篇5編を収録。
600円(税込)
ご購入はコチラ
夜のピクニック 恩田陸夜のピクニック
本屋大賞を受賞した永遠の青春小説。
660円(税込)
ご購入はコチラ
ネクロポリス(上) 恩田陸ネクロポリス(上)
懐かしい故人と再会できる場所「アナザー・ヒル」。文化人類学者のジュンは、否応なしに殺人事件に巻き込まれて行くが…。下巻はこちら
756円(税込)
ご購入はコチラ
チョコレートコスモス 恩田陸チョコレートコスモス
興奮と感動の演劇ロマン。
820円(税込)
ご購入はコチラ
不安な童話 恩田陸不安な童話
溢れるように広がる、かつて殺された画家の記憶。記憶が解き明かされる時、禁断の事実が明らかに。
540円(税込)
ご購入はコチラ
恩田陸の本をもっと探す!

おすすめ特集

【10周年記念】セール開催中!
【10周年記念】セール開催中!
楽天ブックス 文芸サロン【楽天文芸倶楽部】
楽天ブックス 文芸サロン【楽天文芸倶楽部】

プロフィール

恩田陸(おんだ・りく)さん
1964年宮城県生まれ。1991年、日本ファンタジーノベル大賞の最終候補作となった『六番目の小夜子』でデビュー。2005年『夜のピクニック』で第26回吉川英治文学新人賞、第2回本屋大賞を受賞。2006年『ユージニア』で第59回日本推理作家協会長編賞及び連作短編部門。2007年『中庭の出来事』で第20回山本周五郎賞。

インタビュー

■自分の夢をもう一度見てみたいと思ったのがきっかけ



−−今回の『夢違』、約2年ぶりとなる新作ですね。書き終えての感想を。
恩田さん正確には1年8カ月ぶりくらいかな(笑)。この作品は昨年5月から今年5月まで約1年間新聞に連載していた作品なんですが、やっぱり新聞連載は辛いなーって思いました(笑)。長いような短いような…でも終わってみるとあっという間でしたね。
−−新聞連載ならではの難しさ、というのはあるのでしょうか?
恩田さん1回の掲載量が原稿用紙2枚半なので、なかなかペースをつかみにくいっていうのはありましたね。だいたい1週間分ずつ書いてお渡しするんですけど、その1回をどうまとめるかが難しくて。次を読みたいと思ってもらえるように山場をどこに持っていくべきか、ちょっとずつブレーキかけながら進むんですけど、その感覚がなかなかつかめなかったですね。
−−今回の作品で「夢」をテーマにした理由は?
恩田さん専業作家になってからものすごく複雑な夢を見るようになったんですよ。常に小説のプロットを考えているせいなんじゃないかと思うんですが、ストーリーも複雑だし、ビジュアル的にもすごく鮮明な絵を見るようになって…。それはもうブルーレイ並みに鮮明なんですよ。それで、もう一回自分の夢を見てみたいと思ったのがきっかけですね。
−−今まで見た夢が創作のヒントになったこともあるのでしょうか?
恩田さんなったこともありますね。あまりにも夢が鮮明だと「夢日記」をつけることもあるんです。絵とか描いてみたり。この『夢違』の執筆中も、夢に何かヒント出てこないかなと思ったんですが…、それは残念ながら見られませんでしたね。
−−今回の小説ではデジタル化された夢の映像「夢札」を解析、カウンセリングする「夢判断」という国家資格士が登場します。設定としてはどれくらいの近未来を想定されているのでしょうか?
恩田さん20年以内くらいでしょうか。私自身も夢を映像化するなんて絵空事のような話だと思っていたんですが、先日アメリカのカリフォルニア大学で、脳活動を映像化する技術が開発されたというニュースを聞いてすごくびっくりしたんですよ。小説が現実になる日もそう遠くないかもしれないですね(笑)
−−恩田さんもご自身の「夢札」を引いてみたいと思われますか?
恩田さんすごく引いてみたいです!ちょっと怖いですけど、もう一回見たい夢は結構あるんですよね。禅寺に泊って夢判断プランとかあったらいいな〜って思いますよ。
−−主人公の結衣子は「人類で初めて予知夢を見た人物」という設定ですが、もしかして恩田さんも予知夢を見られたことがあるのでしょうか?
恩田さんそれはないですね。予知夢を見るのは怖いです…ひどい目に逢いそうだし(笑)それに昔から、予知夢は凶夢っていうのが世界の共通認識なんですよね、なぜか。
−−作品中に「夢は外からやってくる」というフレーズが度々登場しますね。これは恩田さんご自身の実感でしょうか?
恩田さんそうですね、夢のみならず、インスピレーションのようなものって、内側にあるというよりも、どこかからやって来るっていう印象が以前からありましたね。
−−それは「自らの願望が夢に表れる」とするフロイトの思想とは真逆の考え方ですね。
恩田さん最近はフロイト的な夢理論が広まっていますが、本にも書いたとおり日本では昔から「相手が自分のことを思っていると夢に出てくる」という考え方をしていたんですね。誰かが自分のことを好きだったり、心配していたら夢に出てくるという。「夢枕に立つ」っていう言葉があるくらいですから。だから私自身もフロイト的な考え方よりも「夢が外からやってくる」という考え方のほうがしっくりくるんですよね。
−−本作の執筆前に、「イエイツの詩集にあるエピグラフ『夢の中から責任が始まる』という言葉の意味を考えながら執筆していきたい」とおっしゃっていましたね。
恩田さん執筆前から彼の言葉がすごく気になっていて、自分なりに解釈してみたんです。「夢で見たことであっても責任は生じる」ということかと思いまして。たとえば、夢の中で誰かを怒ったとしますよね。するとそれは、現実とは無関係ではなく、実際にも怒っているということなんじゃないかと。夢で見たことでも、その人の考えていることだから責任はある、という解釈ですね。
−−その解釈を予知夢を見る結衣子にあてはめると、非常に辛いですね…。
恩田さんそうなんですよ、彼女は悪い夢を見ること自体に罪悪感を持ち、責任を感じているわけです。もし予知夢を見続ける人がいるとしたら非常に辛いだろうなと思いますね。
−−結衣子という人物はそのほとんどが第三者による言葉で形作られていきますが、キャラクターの造形は難しくなかったですか?
恩田さん難しさはそれほど感じませんでしたね。子供の頃から予知夢を見続けていたら、きっとこういう人になるんじゃないかな…という想像で形作っていきました。かなり辛いだろうし、孤独だろうし、すごく達観した感じの人になるんじゃないかしらと思って。
−−一方で夢判断士である浩章の結衣子を思う気持ちに救いを感じました。
恩田さん兄の恋人を、亡くなってもなお10数年想い続けるわけですからね…、ある意味理想的な男性像かもしれないですね(笑)。そういう意味ではミステリーというだけではなく恋愛小説っぽい要素も入れられたのかなと思います。

恩田陸さん


■常に「書きすぎないこと」を意識している



−−今回、奈良が重要な舞台となっていますが、何か思い入れなどが?
恩田さん昔から奈良が好きで、よく散歩していたので親しみがあるんですよ。奈良には日本人の原風景みたいなものがあるように感じますね。今回、吉野にも何度か取材に行っていますし、悪い夢を良い夢に変えるという法隆寺の「夢違観音」にもお参りに行きました。
−−『夢違』の連載中に「東日本大震災」が発生しましたが、震災による心境の変化やラストシーンへの影響などはあったのでしょうか?
恩田さんラストシーンは前から決まっていたので、震災によって変化したということはないです。ただ、あの日を境に「世界が変わってしまった」感覚は小説と重なる部分があるかもしれないですね。もう後戻りできない変容した世界にいるという感覚は、小説のラストシーンでの世界観に通じるものを感じます。望むと望まざるにかかわらず、変容した世界と折り合いをつけてやっていくしかない…、小説を書きながら感じていた思いが震災によってより強くなりましたね。
−−ラストシーンは様々な解釈が可能かとは思いますが、結局結衣子が夢見ていた幸せな世界は実現した、のでしょうか?
恩田さん私としては一応ハッピーエンドのつもりなんですけど…、詳細は読者一人一人の御想像にお任せしたいと思います。
−−という意味では作品中、真相が不明なままのエピソードがいくつかありますね。これも読者の想像力に任せる、という狙いが?
恩田さんそうですね、やっぱりこの作品を書く上で一番難しかったのは「書きすぎないこと」なんですね。これは他の作品にも通じることなんですが、細かい部分まで全部説明するのはちょっと面白くないなと思っているので(笑)。どこまで説明するかっていうのはいつも迷うところですが、今回はまあこんな感じかしらって。あとは読んだ人の中で完成してもらえればいいと思ってるんですよ。
−−タイトルの『夢違』は当初からイメージされていたものですか?
恩田さんどの作品もタイトルはいつも最初に決めるんですよ。普段から何かいいタイトルないかなというのは考えてるので、タイトルだけあって中身がない話も結構あるんですね(笑)。今回もタイトルはすぐ決まって、じゃあどんな話だろうって思いながら書き進めた感じですね。
−−新聞連載ともなれば連載期間中、読者の反応なども気になるところだったのでは?
恩田さんそれはあまり気にならなかったですね。ファンタジーはファンタジーなんだけれど、それなりのリアリティも出したい、そのあたりのバランスには割と気を使いましたが。
−−『夢違』映像化されたらユニークなものになりそうですね。
恩田さんどうなっちゃうんでしょうね…。「夢札」とかどう表現するんだろうなあ、ちょっと見てみたい気持ちはありますね(笑)。
−−ところで、恩田さんにとって「小説を書く」ということは?
恩田さん私は読むことと書くことが一緒になってるんですよ。「読みたいから書く」っていう感じで、やっぱり読者なんだなあと自分では思っています。小説を書いているというよりは小説を読んでいるという感じで、あまり作者であるという自覚がないんですよ(笑)。
−−やはり読者としてもお好きなのはミステリーですか?
恩田さんそうですね、ミステリーが好きなのでこれからもミステリーを書いていきたいとは思いますね。でも、ノンフィクションなんかも読むんですよ。最近読んで面白かったのは『呪われたナターシャ』。ロシアでソ連崩壊以降、土俗的な呪術への興味が復活していることについて書いた民族誌なんですが、これは結構面白かったですね。
−−ちなみに今回の『夢違』、読者として恩田さんが読んだ感想は?
恩田さんそうですね、雰囲気は出たかなと思います。夢に関するちょっと不思議な小説にしたいという当初の目的は達成できたかな。皆さんには「色付の夢を見るのは悪いことじゃありません」とだけお伝えして(笑)、是非手にとって読んでいただきたいですね。

恩田陸さん

Written by Shinobu Nakagami



この本を立ち読み

『夢違』
『夢違』

『夢違』を読み解く三つの「夢」に関するキーワード
【1】「夢札」…夢を映像として記録し、デジタル化したもの。
【2】「夢判断」…夢を解析する職業。
【3】「夢違観音」…悪しき夢を良き夢に転じるという観音。法隆寺に現存。

ご購入はコチラ

このページの先頭へ