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著者インタビュー 綾辻行人さん 登場人物全員が鍵付きの仮面を…!!あなたは真犯人が見抜けるか!? 綾辻行人が前代未聞のシチュエーションに挑んだ「館」シリーズ待望の書きおろし最新作 『奇面館の殺人』

6年の時を経て、ファン待望の「館」シリーズ最新作が登場!作品中の登場人物が全員「鍵付きの仮面」をかぶるという類を見ない設定に「手足を縛って泳ぐ」ような難しさがあったと語る綾辻さん。これぞ本格ミステリ、と新旧ファンをうならせること間違いなしの『奇面館の殺人』、執筆秘話やこれまでの「館」シリーズについて、また作家生活24年目に入っての心境をたっぷりお伺いしました。
名探偵・鹿谷門実は自分とよく似た男から、「奇面館」と呼ばれる館で開催される集いに代理で行って欲しいと頼まれる。当初は渋っていた鹿谷だったが、その館が建築家・中村青司の手に成るものだと知り、依頼を引き受けることに。「奇面館」に招かれた客は全部で6人。そこでのルールは全員、鍵付きの仮面をかぶること。異様な状況の中、凄惨な殺人事件が発生する――。

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プロフィール

綾辻行人(あやつじ・ゆきと)さん
1960年、京都府生まれ。京都大学教育学部卒業。同大学院修了。京大の推理小説研究会に所属し、在学中の87年に『十角館の殺人』でデビュー。『水車館の殺人』『迷路館の殺人』と続く「館」シリーズを中心に、現代本格ミステリを牽引する。92年には『時計館の殺人』で第45回日本推理作家協会賞を受賞。ほかに『緋色の囁き』『暗闇の囁き』などの「囁き」シリーズ、近著に『Another』『深泥丘奇談・続』などがある。

インタビュー

綾辻行人さん

■「すごく“不自由な小説”でした」



−−6年ぶりの「館」シリーズ、待ちわびていたファンも多かったと思います。登場人物全員が「鍵付きの仮面」をかぶっているというシチュエーションも相まって、思いもよらないトリックの連続、最後まで驚かされました。
綾辻さんありがとうございます。この「奇面館」のアイデア自体は、90年代半ばに思いついたんです。全員に鍵のかかる仮面をかぶらせた状態で犯人捜しをやってみたら面白いな、と思いついて、以来ずっと温めてきたんですが、実際に書くのは簡単じゃなかったですね。「館」シリーズの中でも2番目か3番目に難しかったかな。1番は『暗黒館の殺人』、2番を競うのが『時計館の殺人』。
−−推理作家でもある探偵役の鹿谷が、事件を振り返って「この事件を小説化しましょうと云われたとしても断固、願い下げ」とぼやく場面がありますが、そこに綾辻さんの苦労が垣間見える気がしました。
綾辻さんとにかく特殊な設定なので、ストレートに書けない部分がすごく多かったんです。「手足を縛ってプールを泳ぐ」ような苦労とでもいえばいいのかな。そういう意味ではすごく「不自由な小説」でした。このひと言を入れることで読者に企みがバレてしまうんじゃないか、と一言一句、心を砕きながら書いていた感じ。でも、ある種の本格ミステリには必ずそういう苦労がつきまとうものなんですよ。
−−構想段階で、執筆の難しさはある程度予想されていたと思うのですが、そこをあえてチャレンジされたわけですね。
綾辻さんこの種のミステリを書く作家ってね、やっぱりちょっと頭のおかしなところがあって(苦笑)。わざわざ自分の手足を縛って泳ぐことに喜びを感じる、みたいな。だから、「願い下げ」なんて言ってる鹿谷も、本当は書いてみたい気持ちがあるんだと思いますよ。ミステリ作家の性(さが)ですね。
−−その鹿谷ですが、性格が以前と少し変わったように感じました。昔のひょうひょうとした雰囲気から少しクールで理知的なイメージに変わったような…。
綾辻さんそうですか?今回初めて鹿谷を視点人物にしたので、そう感じられるのかもしれませんね。これまでの「館」シリーズでは、鹿谷以外の人物に語りの視点を置いていて、鹿谷はその人物の視点を通して描かれていないんです。それを今回は、鹿谷自身の視点を中心にして書いているんですね。だから、鹿谷の性格が変わったわけではなく、見え方が変わったんじゃないかな。他者の目には鹿谷はひょうひょうとして映るけれども、内面ではけっこうクールに論理的に物事をとらえている。まあ、そうじゃないと名探偵は務まらないわけで(笑)。
−−紅一点である奇面館のメイド「新月瞳子」(にいづきとうこ)も、物語の牽引役とも言える重要な役割を果たしていますね。
綾辻さん実は今回、彼女を最も必要としていたのは僕なんです。登場人物全員が仮面をかぶって声のくぐもった40代のオッサンばっかりって、なんか嫌でしょ(笑)。1人くらいは若い女性が欲しいなと思って。それと真面目な話、読者を物語の特殊な世界に導く案内役としての役割。この2つの意味を持たせながら彼女のキャラクターを作っていったんですが、意外に楽しかったですね、彼女を書くのは。
−−今回の作品はこれまでの「館」シリーズに比べるとホラー色が抑えられてるようにも感じました。
綾辻さん前作、前々作は怪奇幻想色がかなり強かったので、今回はちょっと抑えめにしてパズラー的な要素を前面に出した、というところはあります。作家は作品ごとに打ち出すカラーを決めるものですが、『奇面館の殺人』ではまず、軽やかに読めるパズラーを書きたかったんですね。
−−今まで「館」シリーズを読んだことがない人でも楽しめる内容になっていますね。
綾辻さんそのはずです。職業作家としてはやはり新しい読者にも手に取ってほしいので、「館」シリーズは一応、どの作品から読んでもわかるように書いています。だから、作品中で過去作品のネタを明かすことは基本的にしていません。なおかつ、これまでの読者がにやりとできるように、過去作品とリンクさせたりもしています。僕が読者時代に経験してうれしかったことを、自分の作品にも取り入れているんですよね。
−−ちなみに今作の年代設定を「1993年」にされたのは、携帯電話やインターネットがない時代のほうが書きやすいから、でしょうか?
綾辻さんよく言われるんですが、そういう理由じゃなくて。シリーズにおける時系列を考えると、今度は1993年あたりだから、というだけのことです。携帯電話の存在は、実はさほど大きな障壁でもないんですよ。現代の日本でも、携帯が圏外になる場所なんていくらでもありますから。圏外じゃなかったとしても、あらかじめ携帯を全部取り上げるとか壊すとかいう手続きを踏めば、そこにまた新たなサスペンスが生まれるでしょう。インターネットについても同じですね。

綾辻行人さん

■「館」シリーズは本当に全10話完結?



−−今回で9作目となる「館」シリーズですが、そもそも建物を主軸にしたミステリというアイデアはどのようにして生まれたのでしょうか?
綾辻さん同じ名探偵が事件に挑むシリーズはたくさんあるけれども、殺人の舞台となる建物を設計した建築家が同じ、というシリーズは前例がない。そう思いついたわけです。名探偵を固定しないことでいろんなことができそうだな、というふうにも。
−−「館」シリーズといえば、巻頭に折り込まれる平面図も特徴ですね。
綾辻さん僕はもともとミステリファン上がりの作家なので、自分が読者だったらどう感じるかな、という気持ちでいつも本を作ります。自分が読者だった時、平面図が付いた本を読むのがすごく楽しかったので、やっぱりあったほうがいいだろうと。それにこういう物語って、文章でひたすら説明するよりも、ぽんと平面図を出しちゃったほうがわかりやすいですしね。
−−とはいえ毎回複雑な構造の平面図を作成するのは、大変な作業なのでは?
綾辻さん平面図は毎回、家人の小野不由美に手伝ってもらいながら作っているんですよ。彼女は昔からこういう作業が得意なので、たいへん助かっています(笑)。執筆と並行して図面のラフを作成していって、最終的な仕上げは小野さんにお願いしています。
−−ところで、かねてから「館」シリーズは全10作完結と公言してらっしゃいましたが、本当に次回10作目でピリオドを打たれるんでしょうか?
綾辻さんとりあえず10作で蹴りをつけたいというのは本当です。もしもアンコールの声があれば、そこで検討すればいいかと、そのくらいの構えで。シリーズの次作についてはまだ、アイデアのかけらがいくつかあるくらいの状態なので、いずれにせよ書くのは少し先になりそうです。しばらくは『Another』方面の新作に取り組むつもりでもあるので。
−−その『Another』は現在TVアニメ化され大変な反響を呼んでいますが、「館」シリーズはこれまでほぼ映像化されていませんね。
綾辻さん基本、映像化は不可能ですから(笑)。典型的なのが『十角館の殺人』。実は昔、映像化の企画が何度か来たことがあるんですが、「どうやってこのトリックを実現させるんですか?」と質問して、ちゃんとした答えが返ってきたことは一度もありませんでした。「館」シリーズは「文字だからこそできるトリック」を意識して取り入れているので、映像化が難しいのは当然といえば当然。映像化する側が何か独自の解決法を案出してこなければ、うまく成立しないんですね。一方で、有栖川有栖さんと一緒に原作を手がけているTVドラマの『安楽椅子探偵』シリーズなどでは、ドラマでしか実現できない映像トリックを仕掛けるようにしています。そういうふうに、各メディアの特性を活かしたトリックを考えることに喜びを感じるタイプのようですね、僕は。

綾辻行人さん

■「ミステリは“一生ものの友達”」



−−『十角館の殺人』でデビューされてから24年目、今年は節目の年でもありますね。
綾辻さん9月でちょうど25周年になるのかな。基本的には楽しかったはず、ですね。自分の好きなことを仕事にしてるんだから。でも、小説を書くのってやっぱり苦しいんですよ。長くやればやるほど、自分が設定するハードルもどんどん上がっていくし。だけど、筆を折りたいと思ったことは一度もないですね。できれば死ぬまで書き続けたい。ただ、「休みたい」っていうのはあります(笑)。常に締め切りに追われているので。
−−もしまとまったお休みが取れたら、何をしたいですか?
綾辻さんまずは、大ざっぱな蔵書数さえもはや把握できていない書庫の整理をして、ゆっくり本を読みたいですね。執筆中は集中して本を読めないタイプなので。この年齢になるとね、読めずに終わってしまう本のほうが多いんだろうなと書庫を見渡しながら思うんですよ。未読の本だけじゃなくて、昔読んだ古典ミステリ、エラリー・クイーンとかディクスン・カーとかも読み返したいですしね。
−−先ほどのお話で「ファン上がり」とおっしゃっていたんですが、ミステリ作家を志すきっかけとなった作家は?
綾辻さん小学生の時に読んだ江戸川乱歩ですね。あとはやっぱり、エラリー・クイーンとかディクスン・カーとか。そのあたりの海外本格をかっこいいと思って真似しはじめたのがきっかけですね。
−−初めて小説を書かれたのは、小学校6年生の時だとか。
綾辻さんそうです。詳しい内容はもう忘れましたが(笑)、乱歩作品の真似、模倣が始まりでしたね。最初は何でも模倣から始まるものでしょ。歌でも絵でも。それと同じです。
−−そして京大推理小説研究会に所属、大学院在学中に『十角館の殺人』でデビュー。デビューまではご苦労もあったのでしょうか?
綾辻さんあの時代は今みたいにいろんな新人賞があるわけでもなく、発表する場も限られていた。情報も少なくて、作家になりたくてもどうやればなれるのかよくわからなかったし。趣味としてコツコツ書き続けていたのが、たまたま運良くデビューできたという感じですね。
−−長い作家生活の中で、同じく小説家である奥様の存在も大きな支えになったのではないでしょうか。
綾辻さん小野さんとはもう30年来のつきあいになります。気心が知れていて、彼女は大変な才能の持ち主でもあるので、本当に心強い存在ですね。お互いに作品についての相談もしますし、共通の趣味も多いから毎日会話が尽きないんですよ。あのトリックがどうだ、このホラー映画がどうだ、ってね(笑)。
−−毎回、綾辻作品のトリックには驚かされますが、今後手がけてみたい設定などはありますか?
綾辻さん「館」シリーズで書くかどうかはわかりませんが、昔からマジックが趣味なので、マジック尽くしのミステリを1本は書いてみたいですね。ミステリ作家でマジックに詳しい人って、意外と少なかったりするんですよ。
−−綾辻さんの書くマジックミステリ、楽しみにしています。最後に綾辻さんにとって「ミステリ」とは?
綾辻さん「人生」なんていう大袈裟な答えもちらっと浮かんだんですが(笑)、そうだな、「一生ものの友達」でしょうか。やっぱり僕は、自分が読者だったころにミステリを読んで感じた喜びを、自分の作品を読んでくれる人にも感じてもらいたい。ミステリ作家であると同時にミステリファンでもあるという、その感覚を忘れたくないですね。
【編集後記】
綾辻作品に必ず「あとがき」が付いてくるのは、綾辻さん自身が読者時代、あとがきを読むのをとても楽しみにしていたからだとか。読者時代の気持ちを忘れないことこそが、綾辻作品の面白さと人気の秘密なんでしょうね。複雑に絡まった糸をほぐすような緻密なプロット、トリックに「一言一句に心を砕いている」というのがひしひしと伝わってくる本作。綾辻さんの仕掛けた謎、あなたは解けるでしょうか? Written by Shinobu Nakagami


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