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姜尚中さん『続・悩む力』万部突破の『悩む力』から7年――「戦後」よりも憂鬱な時代を生き抜くヒントを姜尚中さんがひも解く

大ベストセラーとなった『悩む力』から4年。世界経済が混迷し、さらに3.11の大震災が起こるなど、私たちをめぐる状況がますます深刻化する中、再び“幸福”の感情に浸ることなどできるのか?このテーマのもと、姜尚中さんが『続・悩む力』を上梓。漱石をはじめ先人達の言葉をヒントに、新たな生き方を見出した1冊には、誰もが大きな不安を抱えた今、私たちを力づけてくれる言葉が詰まっています。姜尚中さんに、本作に込めた思いを伺いました。

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プロフィール

姜尚中 (カン・サンジュン)さん
1950年、熊本県熊本市に生まれる。早稲田大学大学院政治学研究科博士課程修了。東京大学大学院情報学環・学際情報学府教授。専攻は政治学、政治思想史。テレビ・新聞・雑誌などで幅広く活躍。主な著書に『マックス・ウェーバーと近代』(岩波書店)、『愛国の作法』(朝日新書)、『姜尚中の政治学入門』『日朝関係の克服』『ニッポン・サバイバル』『あなたは誰? 私はここにいる』『在日』『母-オモニ-』(集英社)など多数。

インタビュー

 

■非常事態に生きる私たちの幸せとは?



−−前作『悩む力』は2008年の刊行以来、多くの読者の心をとらえて90万部を突破したそうですね。
姜さん『悩む力』を書いた当時は小泉改革の後、その評価は別として、世の中が低迷しているようなイメージがありましたよね。そんな状況にあって、「頑張っても上手くいかない」と落ち込む人が結構多かったと思います。でも、誰もが自分なりに一生懸命やっているはずで、だから「落ち込むことは決して悪いことではない。悩んでもいいんだよ」というメッセージを形にしたのが『悩む力』だったんですね。ところがあれから4年が経ち、世界はカオスのようになり、本当に明日、何が起こるか予想がつかない状況になってしまった。そこに3.11の大震災が起こり、拍車をかけたというね。
−−その3.11の後、『続・悩む力』の執筆を始められたそうですね。冒頭の「私たちは非常事態の最中を生きている」という言葉に、頷くばかりでした。
姜さん“非常事態”という言葉には「例外的な状態がそのものの本質を照らし出す」という意味があるんですね。3.11はまさにそれで、原発をはじめ日本の統治機構があぶり出された。レントゲンを見せられたかのように、「自分たちはこんな社会の中に生きていたのか」と知った時には、ものすごい落胆と驚き、戸惑いが、どんなに安全地帯にいた人にも大なり小なりあったと思います。 といっても、すべては3.11以前から累積されてきたことでもあり、それを一挙に可視化したのがあの大震災だったとも言える。そして、こうした状況は、おそらくこれからも続くのではないかと。そうだとすれば、一体これからどうめげずに生きていけるのか。そのためには、これまで自分が一番大切だと思っていた価値、幸福の合格基準にしがみつかずに、それをふるいにかけたほうがいいんじゃないかと思うんですね。
−−本書の中でも述べられている“幸福の合格基準”とは?
姜さん私たちは、ある時から「健康で収入もあり、社会的地位、恋人や伴侶にも恵まれて、老後もまあまあ良くて……」というのが、幸福だという基準を設けたわけです。それがいわゆる中流の姿でした。でも今はもう、それは限られた人たちだけが得られる特権になってしまった。 今、何が辛いかと言えば、万人にそうした幸せを得る可能性があると信じていたのに、そうではなくなってしまったことで。例えるならばタウン誌を見て、こんな素敵なレストランがあり、美味いものが食べれると散々知らされていたのに、どこにも行けないみたいな(苦笑)。でも、どうやら幸せな人は確実にいるらしいと。実際に、同窓会に行ったりすると、自分の幸せを語る人がいて、それを聞いて卑屈になったりいじけたり、憎悪を抱いたり。そういう妬み、自分は幸福ではないと思っている人は、以前よりも増えている気がします。
−−それにしてもうつ病患者が100万人、自殺者が毎年3万人を超えるなど、世界的に見ても日本人の幸福度が低いのは、なぜだと思われますか?
姜さん一言でいうと、親方日の丸的な官僚制が大きな力を持っていることと、自由放任主義が生み出した、最悪な状況、ということでしょうね。私見では、ヨーロッパで言うと、フランスが日本に近いと思います。フランス国立行政学院という、東大法学部のような高級官僚養成組織があり、そこを出た人たちが国の羊飼いのように、人々が柵の中で安全にいられるようにしている。でもグローバル化が進むと、柵の先の未知の世界に行かざるを得ないし、向こうから柵を乗り越えて来たりもする。すると羊飼い達は従来の役目を果たせなくなり、自分達でリスクを負えと言いつつ、引き締めは緩めないという。その辛さがあると思います。加えて、例えばアメリカには偏見も人種差別もあるけれど、建前上は自分に力があるかぎり、いつでも敗者復活できる社会なんですね。40歳で一念発起してハーバード大に入って弁護士の資格を取っても、誰も何とも思わない。反対に日本の社会は、最速で幼稚園から大学まで出ることが一番いいとされていて、その間、どこかを放浪していたとなると、ある種の落伍者のように見られてしまう。22、3歳で人生が決まってしまって敗者復活戦がない状況も、幸せを感じにくい原因だと思いますね。

■悩んだ時にこそ、見えてくるものがある



−−これまでの幸福の方程式を疑ってみる大切さを書かれる中で、その試みをした先駆者として夏目漱石を挙げられていますね。漱石がまるで予言者のように、小説の中に今の私たちと重なる、悩む人間たちを描いていたことにあらためて驚かされました。
姜さん母が高齢で自分を生んだことを恥じていたという漱石は、出自に悩み、親の愛に飢えていた人でした。その漱石はイギリスに留学して変わった。僕も1979年に初めてイギリスに行って漱石に近い体験をしたので、彼の気持ちが何となくわかるんですよ。漱石は当時、アジアで最高水準の英語力を持っていたと思いますが、実際には相手に訛りなどもあるし、英語がよく聞き取れなかったんじゃないか。それでバカにされて、しかも19世紀末には極東の国というだけで、日本がどんな国かもまだ判別されていなかったでしょうから、大変な屈辱とストレスを感じたはずです。それで彼はノイローゼになるんですね。病の心で物事を見ると歪むと言うけれど、健全な心よりも、見えるものがあると僕は思うんです。好きな人といると心が浮き足立って、周りでおかしなことがあっても気づかなかったりしますよね。それは幸せなことだけど、幸せというのは鈍感だとも言える。漱石も悩んだからこそ、見えてきたものがあったのではないかと。
−−まさしく“悩む力”ですね。
姜さんそうですね。でもイギリスを去る時には、彼はある種の愛着を感じていたと思います。近代という時代は人間を不幸にするけれど、もう後戻りはできないと。それは我々も同じで、グローバル化はこんなに自分達をひどい目に遭わせているけれど、後戻りはできない。市場経済が人間にとって最適なシステムではないことは、ヨーロッパの現状を見れば明らかですが、これに替わるシステムがない。といっても今のままでは社会が破綻してしまう。だからまずは自分の一つの考え方を変えることから始めるしかない。そうした小さな変化が累積されて、何十年後かにはシステムが変わるかもしれないので。そのために従来の幸福の方程式をふるいにかけて、新しい方程式を作る手がかりを掴む。その手がかりは、これまで価値がないとされていたものの中に見出せる気がします。
−−「3.11の経験を“生まれ変わる”機会にしなければ」とも述べていらっしゃいますね。
姜さん3.11後、生と死の近さを誰もが肌で感じたと思います。あの時、科学技術への信頼も揺るぎましたよね?自分を保護してくれると信じていたものが当てにならないとわかった。とはいえ、誰もがお金があって海外に逃げられるわけじゃない。だとしたら、少し覚悟を決めたほうがいいのかなと。僕も明日死ぬと言われれば怖いし、ビビりますよ。でも、だからといって死を極度に恐れて、生だけを見て自然を放逐する生活を続けても、何も生まれないし、そういう生き方からそろそろ卒業しないといけないのではないかと思うんです。 自然災害、社会のシステム、世界の経済状況と、ありとあらゆるものが鎖で繋がっていて、どこか一つがおかしくなると、その影響を受けざるを得ない時代を私たちは生きているわけです。もはや絵に描いたような幸せは考えられないのだとしたら、実際には生まれ変われはしないけれど、それぐらいのつもりになってみようよと。この本は、僕からのそうした問題提起でもありますね。
−−『悩む力』の続編ですが、読んでいる間、「この時代を生き抜こう」という姜さんのメッセージ、新たな決意のようなものをひしひしと感じました。
姜さん僕自身、二匹目のどじょうを狙ったつもりはないんですよ(笑)。去年、被災地を何度か訪れた経験がやはり大きかったですし、還暦を過ぎたので、もう一度本気で生まれ変わろうと思って。日本の社会と運命共同体で生きているかぎり、この社会がダメになれば自分もダメになる。僕はあと10年動ければいいなと考えていますが、こういう時代が来た以上、あと10年のために、何とか生まれ変わりたいなと思っているんです。
−−まずは、自分なりの幸せの形から考えてみたいと思います。ありがとうございました!
 
 
【編集後記】
混沌かつ鬱々とした時代、一体どう希望を持てばいいのだろう……そう感じているならぜひ『続・悩む力』を手に取ってみて下さい。中でも人間の価値について述べられた終章では、現実と向き合い力強く生きていくため大きなヒントをもらった気がして、胸が熱くなりました。すべての人にとって今、欲しい言葉が必ず見つかるはずです。                           
取材・文/宇田夏苗


続・悩む力
続・悩む力

内容紹介
ある意味、第二次大戦後よりも憂鬱なこの時代のただ中で、私たちがふたたび、幸福の感情に浸ることなど、果たして可能なのだろうか?
そのヒントは、夏目漱石の100年前の予言と、「二度生まれ」というキーワードにこそある!

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