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伊藤英明主演 2012秋、禁断の映画化
学校を舞台に繰り広げられる戦慄のサイコホラー
『悪の教典』著者・貴志祐介に迫る!

晨光学院、町田高校の英語教師・蓮実聖司は爽やかなルックスと、巧みな弁舌で生徒や同僚をとりこにする人気教師。だが、彼には共感能力の欠如した“サイコパス”という裏の顔があり…。貴志祐介が手がけたサイコホラー傑作が、今秋、伊藤英明主演で映画化される。今回は原作『悪の教典』の著者である貴志祐介さんにインタビュー、本作、そして映画化に込めた思いをお聞きしました。

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プロフィール

貴志祐介さん
1959年大阪生まれ。京都大学経済学部卒。1996年『ISOLA』が日本ホラー小説大賞長編賞佳作となり『十三番目の人格―ISOLA―』として刊行される。1997年『黒い家』で日本ホラー小説大賞、2005年『硝子のハンマー』で日本推理作家協会賞、2008年『新世界より』で日本SF大賞、2011年『ダークゾーン』で将棋ペンクラブ大賞特別賞受賞。他に『青の炎』『天使の囀り』『クリムゾンの迷宮』『鍵のかかった部屋』など。2010年に刊行された本作『悪の教典』は、山田風太郎賞受賞、「このミステリーがすごい!2011」国内編第1位、週刊文春「2010年ミステリーベスト10」国内部門第1位に選ばれた。

インタビュー

■“サイコパス”蓮実を通して描きかたかったのは、学校問題や銃社会への警鐘



−−一見朗らかで生徒にも人気のある教師が、実は“サイコパス”と呼ばれる人格異常者だっら…。本作は “学校生活”に潜む危険性を凄惨に描き出していますね
貴志さん“学校”というのは社会から隔絶された特殊な場所なんじゃないか、というのを以前から感じていたんです。最近のイジメ問題もそうなんですが、世間一般の常識が通用しない閉鎖的な空間だなと。その閉鎖された空間の中に、規格外の怪物を放り込んでみたらどうなるだろう、っていうのが発想の原点でした。
−−本作でもイジメに始まり、カンニング、生徒に興味を持つ教師、学校にまつわるあらゆる問題が描かれていますが、主人公である蓮実は問題をいち早く察知し、うまく立ち回りますね。
貴志さん今の学校が抱えている問題を、作品の中にひと通り入れてみたんですよ。しかし皮肉なことに、善良な普通の教師よりも蓮実のような教師のほうが上手く対処している。ただ、対処の方法があまりにも問題ではありますが。
−−他人に対する良心や善意を持っていない“サイコパス”である蓮実の人格を描くのは、難しくなかったですか?
貴志さん蓮実の人格は、悪魔を心に入れて出来上がったわけではなく、心の中にあるものを一本抜いただけなんですよ。何を抜いたかっていうと“共感能力”なんですね。足し算というより引き算で人格を形成していきました。普通の人間から、他者に対する同情とか共感能力をすべて取り去ったらどうなるのか。残るのは戦略や計算だけなんです。だからどんな残酷なことも平気でできる。そういう意味で、普通の人間より競争で優位に立てる可能性も高い。
−−こういったサイコホラーを描いている時の心境というのは?
貴志さん私は蓮実とは距離を置いていましたし、足し算ではなく引き算で描いていたので、客観的に書くことができましたね。それに、最初から残酷な話を書くのが狙いだったわけではなく、学校という閉鎖環境、作中でも学校を海辺の小さな水たまりに例えるシーンがあるんですが、そういうところに巨大なサメをぶち込んだらどうなるのか、と考えると結末はこうならざるを得なかったんですよ。
−−作品には数多くの生徒が登場しますが、たとえわずかな登場シーンでもきちんと肉付けされていたのが印象的でした。これだけ多くの登場人物のキャラクター設定をするのは大変な作業だったのではないでしょうか?
貴志さんそうですね、だから最初に生徒たちの名簿を作ったんですよ。この作品は、ある種のキャラクター小説的な性質も持っていますから、名前だけであっさり殺されてしまうんじゃあまりにかわいそうだなと。だけど面白いのは、名前を決めるとキャラクターが自然と思い浮かぶんですよ。そうすると殺される時の様子もそれぞれに違う。
−−にも関わらず、カウンターで数えながら淡々と殺人を繰り返す蓮実には薄ら寒いものを感じました。
貴志さん銃を使うと、あんな風に簡単に人を殺せてしまうんですよね。実はこの作品を通じて、銃の危険性も訴えたかったんです。日本はアメリカに比べて銃の所持に対する法律が厳しいので、まだそこまで問題は起こってないですが、それでも猟銃免許を持っている人なら誰でも自宅保管で銃を持つことができる。でももし強盗が入って銃が盗難されたら?以前、銃はすべて警察で保管するという案があったのですが、いつの間にか立ち消えてしまった。今ならまだ間に合うので、銃所持に対する制度をもっと整備してほしいと思います。
−−なるほど、昨今の学校問題に加え、銃社会への警鐘…。様々な思いを込めて書かれた作品なんですね。
貴志さんとはいえ、やっぱりエンターテインメント作品なので、とにかく一気に読んで楽しんでもらえたらなと思います。その上で、色んな社会の矛盾や学校制度への疑問、そんなことに少しばかり思いをはせてもらえたらうれしいですね。

■まさか実現するとは思わなかった『悪の教典』映画化



−−ところで今秋、文庫版の後書きを書かれた三池崇史監督の手により映画化が実現しますね。
貴志さん「映画化するなら蓮実は誰がいいか」と編集者の方と冗談まじりに話してはいたんですが、実際に映像化されるとは夢にも思っていなかったですね。担任教師が生徒を皆殺しにする話の映像化なんて、実現は難しいだろうと考えていたので。試写で見た今も、映像化されたことがまだちょっと信じられないです。
−−実際、映画化されたものをご覧になっていかがでしたか?
貴志さんもう、呆然としましたね。ここまでやるかって(笑)。三池監督には、良識や抑制は捨てて突き抜けて下さいとは言ったものの、ここまでとは思わなかったので。殺されていく生徒が可哀想で可哀想でしょうがなかったです。何とか救ってあげたいと何度思ったことか。
−−貴志さんも、映画に少しご出演なさったとお伺いしました。
貴志さん私には一つだけ自慢できることがありまして、それは学校の先生に見える、ということなんですよ(笑)。以前、『青の炎』が映像化された際もカメオ出演させていただいたんですが、他の出演者から本職の教師だと勘違いされていたくらいなんです。だから今回も古文の先生という設定で。ちゃんとセリフもあるんですよ(笑)。
−−これまでも、ご自身の映像化作品には数多く出演されているそうですね。何かこだわりがおありなんでしょうか?
貴志さん映像化された自分の作品には、全部出演したいと思ってるんですよ。最終的に出演シーンがカットされてしまうこともあるんですが(笑)。みんなで一つのものを作り上げる映像の現場の雰囲気が好きなんですね。やっぱり小説を書く作業は孤独なので、最後にそういうご褒美があってもいいかなと。
−−三池監督も後書きで『悪の教典』続編を待望されていましたが、続編の予定はありますか?
貴志さん書きたい気持ちはありますね。凶悪犯罪者を英雄視するようなネットの風潮や、復讐に燃える生徒の父兄など、構想もないわけじゃないですが、問題はクライマックスなんですよね。今回の『悪の教典』を超えるクライマックスを思いつくかどうかに、続編の命運はかかってます(笑)。
−−今後、『悪の教典』以外で手がけたいテーマなどは?
貴志さんテーマや構想は山のようにあるんですが、とりあえず今手がけている連載『新世界ゼロ年』と『We are all alone』に注力したいですね。『We are all alone』は前世をテーマにしてるんですが、ちょっと普通じゃない扱い方なので、オカルト好きな人は拍子抜けするかもしれません。その他にもアイデアは沢山あるんですが、どう考えても死ぬまでに書ききれないだろうな、と(笑)。
−−小説のアイデアはどのように思いつくのでしょうか?
貴志さん私の場合、一番多いのは入浴中ですね。あとはウトウトしてる時とか。要するに、頭が少し“無”の状態になった時に変なアイデアが浮かぶんですよ。そういう変なアイデアって、上手く補完して他のアイデアと結びつけると小説のモチーフになりうるんですよね。ただ、一度忘れると二度と思い出せないので、メモは手放せないですね。
−−最後に、貴志さんにとって“小説”とは。
貴志さん作品数が少ないのにこんなことを言うのはお恥ずかしいですが、“人生そのもの”でしょうか。自分には一番向いている仕事だと思いますし、小説家以外できないですね(笑)。先日も『新世界より』というアニメ化作品のアフレコに初挑戦したんですが、これが想像以上に難しくてね。自分には声優としての資質もゼロだということがわかったので(笑)、これからも小説家として頑張っていきたいですね。
−−ありがとうございます。今後の作品、そして出演された映画も楽しみにしております。
 
Written by SHINOBU NAKAGAMI

悪の教典(上)
悪の教典(上)

内容紹介
晨光学院町田高校の英語教師、蓮実聖司はルックスの良さと爽やかな弁舌で、
生徒はもちろん、同僚やPTAをも虜にしていた。
しかし彼は、邪魔者は躊躇いなく排除する共感性欠如の殺人鬼だった。
学校という性善説に基づくシステムに、サイコパスが紛れこんだときー。
ピカレスクロマンの輝きを秘めた戦慄のサイコホラー傑作。

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