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和田竜さん インタビュー「村上海賊の娘」

戦国時代、瀬戸内海で最も恐れられた存在“村上海賊”。その娘・景(きょう)は海賊働きに明け暮れる、荒くれ者の醜女(しこめ)だった――。織田氏と毛利氏の水軍が大阪湾で激突した<木津川合戦>を題材に、型破りなヒロインの活躍と成長を描いた『村上海賊の娘』が大きな話題を呼んでいます。作者は、映画化もされた『のぼうの城』をはじめ、躍動感溢れる歴史小説であらゆる読者層から熱い支持を集める和田竜さん。4年半の歳月を本作一本にかけたという、和田さんにお話を伺いました。

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村上海賊の娘(上)
村上海賊の娘(上)
2014年本屋大賞受賞作!戦国時代の乱世を舞台に、織田氏と毛利氏の水軍が大阪湾で激突した<木津川合戦>を題材に、村上海賊の娘・景の活躍を描く大作!
 
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村上海賊の娘(下)
村上海賊の娘(下)
2014年本屋大賞受賞作!戦国時代の乱世を舞台に、織田氏と毛利氏の水軍が大阪湾で激突した<木津川合戦>を題材に、村上海賊の娘・景の活躍を描く大作!
 
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のぼうの城
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戦国時代の余談のよだん。
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プロフィール

和田竜(わだ・りょう)さん
1969年大阪生まれ、広島育ち。早稲田大学政治経済学部卒。2007年『のぼうの城』で小説家デビュー、同書は累計200万部(単行本と文庫)を超えるベストセラーとなり、2012年に映画公開された(脚本も担当)。著書に『忍びの国』(新潮社)、『小太郎の左腕』(小学館)、『戦国時代の余談のよだん。』(ベストセラーズ)がある。本書『村上海賊の娘』(新潮社)は小説第四作となる。

インタビュー

■現代の女性たちへのエールも込めた主人公

--『村上海賊の娘』の本屋大賞と吉川英治文学新人賞のダブル受賞、おめでとうございます!“村上海賊”を題材に歴史小説を書こうと思われたきっかけから教えて下さい。
和田さん僕は大阪生まれですが、生後3ヶ月から中2の終わりまで広島で過ごしました。その間に家族で村上海賊の拠点だった因島を訪れたことがあり、両親から「ここには昔海賊がいてね……」という話を聞いたことがそもそものきっかけです。その時に買ってもらった村上家の家紋入りの赤ふんどしが自宅の階段の壁に飾られていて、それを見るたびに村上海賊がカッコいい存在として刷り込まれたところもありますね(笑)。その後、歴史小説を書き始めてから、いつか村上海賊のことを書きたいと思っていましたが、『信長公記』などを読むと信長勢と大阪湾で激突した<木津川合戦>という史実が出てくる。調べていくと面白いことがどんどんわかってきて、この戦いを題材に小説を書くことに決めました。
--主人公は20歳の村上海賊の娘・景(きょう)ですね。
和田さん海賊モノを書くなら、主人公は女の子がいいと最初から思っていました。海賊というと髭面で屈強な男たちのイメージがありますよね? そんな奴らが姫様には頭が上がらない。しかも姫様も荒くれ者で男たちをひっぱたいたりしたら面白いだろうなと。そこで村上海賊を最盛期に導いた、歴史的にも有名な海賊王の村上武吉に娘がいないかと調べ始めました。ところが実の娘がいたという記述がなかなか見つからない。途中、諦めて武吉の長男の元吉を主人公にするしかないかなと考えたこともありました。
--架空の娘を主人公にしようと思ったことは?
和田さんそれはないですね。もちろん、合戦シーンなどは史実をもとに想像を膨らまして書いていますが、存在自体がないものを描いてもつまらないと思うんです。むしろ史実をひも解く中で、出会ったことに触発されて書いていくほうが面白い。幸い武吉には養女と実の娘がいることがわかり、景を主人公にすることができました。
--景は地元では嫁の貰い手がない“醜女”という、かなり型破りなヒロインですね。屈強な男たちと肩を並べて海賊働きをする一方で、容姿を気にしていたりする乙女心には、思わず共感してしまいます。
和田さん景は自分のような女性を好む男たちがいると聞いて、つまりモテたくて大阪に出かけて行くんですよね。後半は壮絶な合戦の場面が続くとわかっていたので、前半の彼女が大阪に行くくだりはあえてくだらない理由にしました(笑)。
--けれど大阪で景は本物の戦いを目にし、社会を知ることになります。その姿は社会に出たばかりの頃の自分にも重なる気がしました。
和田さんまさにそう感じてもらえたらと思い、景には社会人になった女性と重ねあわせて書いたところがあります。学校を卒業して社会に出ると、自分の思い通りに行かなかったり先輩に腐されてヘコんだりする。僕もそのクチでしたが、女性はなおさら辛かったりヘコむことが一杯あるだろうなと想像していました。それで仕事を辞めたくなったり、結婚して専業主婦になろうという発想になるかもしれない。実家に住んでいたら両親に泣きついてみたくなるかもしれないけれど、それでも女性には頑張って働いて欲しいなと。そんな自分の思いが景には投影されていますね。
--景にかぎらず、登場人物は皆個性的で魅力的です。中でも景と心を通わせながらも宿敵となる海賊の当主、織田方の真鍋七五三兵衛(まなべしめのひょうえ)は人間力に溢れていて、非常に面白い人物ですね。
和田さん七五三兵衛の人物像は、大阪の繊維業界紙の記者時代に出会った関西の人たちから発想したところがありますね。関東人は仕事ができる、できないということが自分のプライドであり、柱になっているけれど、関西人はそうではない感じがしたんですよ。じゃあ何が柱になっているかといえば、自分が面白い奴だと人に知らしめることではないか。仕事がダメになるとポッキリ心が折れてしまう人もいますが、大阪の人はそうはなりそうになく、そういう心の置き方がすごくいいなと。もう一つ、お笑いが好きなので、笑わせることを第一に生きている人が単純に好きだというのもあります。加えて、真鍋海賊が拠点とする泉州というのは大阪の南部、岸和田に代表されるように、わりと荒っぽい土地柄で、史実をひも解いていくとある種、七五三兵衛は清原のような人だったのかなと想像がつくんですね。結果、あのような人物になりました。

■アクション映画の発想で小説を描く

--和田さんはもともと映画監督を目指していたそうで、これまで書かれた3作の小説は脚本がもとになっているそうですね。
和田さんそうですね。『村上海賊の娘』が最初から小説として依頼された初めての作品ですが、週刊新潮での連載を書き始めるにあたり、やはり脚本を一度起こしたほうがいいと思い、1年かけてまず脚本を書きました。映画化したら5、6時間ぐらいの文量ですね。
--それを書き上げるだけでも相当な作業ですね。
和田さん時間的には余計な作業ではありますが(苦笑)、結果的には脚本から始めて良かったと思っています。僕自身、初めての連載小説だったので、あらすじだけ書いて始めたら、途中で矛盾が出て来ても処理し切れなくてぐだぐだな作品になってしまっていたと思います。敵方の泉州弁指導を口伝えで受けられたのも良かったですね。NHK連続テレビ小説『カーネーション』の方言指導もされた方にお願いしたのですが、脚本が先にあったので、それを見ながら直接何度かお会いして、本物の話言葉にしていくことができた。それによって登場人物たちがどんどん生き生きしてきたんですね。さらに脚本化する時には、全体のリズムを把握しながら書いていくので、余分なセリフやシーンがなくなるという収穫もありました。
--興味深いお話です。今回は登場人物も多く参考に読まれた資料も膨大だと思いますが、史実からどのように題材を選び、人物を造形されるのでしょうか。
和田さん史実からその人物を想像したり、資料に人物像があまり書かれてない場合は、環境から人物をイメージしたりします。この作品にかぎらず、僕の小説は描く期間はかなり短いんです。今回も千ページを費やしながら描かれているのはわずか3ヶ月の出来事だというのは、映画的な題材選びをしているからだと思います。特にアクション映画が好きで、こんな風に合戦に焦点をあてた小説を書いているわけですが。アクション映画ではまず事件が起きて、それが解決するまでをあまり時間をとばすことなく2時間半ぐらいで見せていく。村上海賊を扱うにしても、小説風に考えるとたぶん村上武吉を主人公にして、彼の半生を描くと思うんです。自分が他の人と選ぶ題材がなぜ違うかといえば、小説的な発想をしていないからかもしれません。
--なるほど。和田さんが描く合戦シーンはアクション映画さながら、まるで登場人物たちと共に戦っているような臨場感があり、読みながら身体に力が入るほどです。
和田さん合戦はいろいろな描写ができますが、僕はそれぞれの事情を抱えた者たちが合戦の場で相まみえ、バトルと思いが入り乱れるからこそ面白いと考えています。歴史小説における合戦は、史実だけをなぞって短く書いて終わりにすることもできますが、僕は合戦のディテールこそが歴史小説の醍醐味だと思うんですね。
--戦国時代を舞台にされることが多いですが、どこに魅力を感じていますか。
和田さん自由な雰囲気があるのと、人間が小粒ではないところですね。景にしても不真面目で自己チューで従来の主人公の枠組みからはかなり外れているはずです。他の人々も利己的で。でも戦国時代の人たちを調べると実際にそうなんですよ。自分の家を守るためなら何でもする。後ろめたさを感じずに裏切るんです。それができない人間は器量がないという。逆に江戸時代になると、どうしても忠義という言葉が一人歩きして、どんなに悪い器量のない主君にも仕え続けるの忠義だという発想になってくる。世の中が治まってくるとそうなるのは当然なのですが、だから江戸の家臣たちは陰惨ですよね。逆に乱世には明るさを感じて、そこに惹かれて戦国時代を描いているところはあります。
--男たちが自分の家を守るために戦う一方で、景は一向宗の門徒たち、つまり他人のために戦いますが、こうした彼女の生き方に込めた思いとは?
和田さんこの小説を書いている時、クレーマーなんかはそうですが、今はみんな自分のことばかりだなと感じたことがあって、小説の主人公は他人のために戦うようにしたいと思いました。一方、敵方の七五三兵衛などは、自家保存を目的にしながらも、その行動の根底には信念と理念があるようにしたつもりです。
--あらためて、長編を書き終えた今の気持ちをお聞かせ下さい。
和田さんほっとしていると同時に、ちゃんと史実を調べじっくり考え、時間をかけて書かなければダメだなとますます思うようになりました。この4年半は、こんな風に著者インタビューを受けることもなく、この一作だけに注いでいましたが、手を抜かずにやり通せばこうして評価もして頂ける。そもそも僕は人の2倍の努力をして、ようやく人並みのことができる人間で、それはわかっているつもりでしたが今回、痛感させられました。次回作のことをよく訊かれますが、いまはひたすら休みたくて、新作のことを考えると、この4年半を思い出し、「またあの日々が来るのか?」とクラクラしてきますが(笑)。でもこれからも、戦国時代を舞台に小説を書いていきたいと思っています。
 

【取材】宇田夏苗

村上海賊の娘(上)
村上海賊の娘(上)
村上海賊の娘(下)
村上海賊の娘(下)

内容紹介
2014年本屋大賞受賞!大ヒット作『のぼうの城』の作者・和田竜さんが 戦国の世を舞台に、海賊王の娘の活躍を描いた歴史エンターテイメント

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