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黒川博行さんインタビュー「破門」

ヤクザの桑原と建設コンサルタントの二宮。相性最悪ともいえるコンビが、映画の出資金を持ち逃げした詐欺師の行方を追う中で、さらなる窮地に追い込まれて……悪人たちの命を懸けた騙しあいが今始まった!大阪発ハードボイルド小説の第一人者・黒川博行さんの「疫病神」シリーズ第5弾、『破門』がこのたび直木賞を受賞しました。予想を裏切るストーリーとテンポの良さ、大阪弁の軽妙な会話にハマる人が続出中です。候補6度目にして直木賞に輝いた黒川さんに、創作の裏側について伺いました。

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破門
破門
【第151回直木賞受賞作品】金と暴力と仁義を争う、ハードボイルド巨編! 映画製作への出資金を持ち逃げされたヤクザの桑原と建設コンサルタントの二宮は、資金回収のため、関西とマカオを奔走する。巨額の資金をめぐる争いはやがて組同士のトラブルに発展し、桑原にも絶体絶命の危機が!
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注目の本

疫病神
疫病神
建設コンサルタント・二宮啓之が、産業廃棄物処理場をめぐるトラブルに巻き込まれた。依頼人の失踪。たび重なる妨害。事件を追う中で見えてきたのは、数十億もの利権に群がる金の亡者たちだ。なりゆきでコンビを組むことになったのは、桑原保彦。だが、二宮の“相棒”は、一筋縄でいく男ではなかったー。関西を舞台に、欲望と暴力が蠢く世界を描く、圧倒的長編エンターテインメント。
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国境
国境
衝撃だった。ここまで悲惨な状況だとは思ってもみなかった。それでもなお、この国は“地上の楽園”なのか。建設コンサルタント業の二宮と暴力団幹部・桑原の「疫病神コンビ」が、詐欺師を追って潜入した国・北朝鮮で目にしたものは、まるで想像を絶する世界だったー。読み出したら止まらないサスペンス超大作。
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暗礁(上)
暗礁(上)
疫病神・ヤクザの桑原保彦に頼まれ、賭け麻雀の代打ちを務めた建設コンサルタントの二宮啓之。利のよいアルバイトのつもりだったが、その真相は大手運送会社の利権が絡む接待麻雀。運送会社の巨額の裏金にシノギの匂いを嗅ぎつけた桑原に、三たび誑し込まれる契機となったー。ベストセラー『疫病神』『国境』に続く人気ハードボイルド巨編。
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プロフィール

黒川博行(くろかわ・ひろゆき)
1949年3月4日愛媛県今治市生まれ。京都市立芸術大学美術学部彫刻科卒業。大阪府立高校の美術教師を経て、84年、第1回サントリーミステリー大賞佳作を受賞した『二度のお別れ』でデビュー。86年、『キャッツアイころがった』で第4回サントリーミステリー大賞を受賞。96年、『カウント・プラン』で第49回日本推理作家協会賞(短編および連作短編集部門)を受賞。2014年、『疫病神』『国境』『暗礁』『螻蛄』に続く、「疫病神」シリーズ第5弾となる『破門』を刊行。本作で第151回直木三十五賞を受賞。他の著作に、『悪果』『繚乱』『落英』『離れ折紙』など。今年、作家デビュー30周年を迎える。

インタビュー

■次々にページをめくって読んでもらえるように書く

--直木賞受賞、おめでとうございます。受賞されて一番良かったことは何でしょうか。
黒川さんほっとしたことです。候補も何度目にもなると、辛いものがありますから。もう候補にならないのが一番ありがたいですね。
--本作は「疫病神」シリーズの5作目ですが、映画製作に絡む詐欺を題材にした理由とは?
黒川さん自分がよく観るからです。DVDがほとんどですが、年間150本ぐらいは観ます。アメリカ映画が圧倒的に多くて、日本映画よりも韓国映画をよく観ますね。日本映画は私小説的なものが多いのでね。ウェットな作品よりも、ドライな映画のほうが好きなんですよ。ただ、この小説で映画の内幕を書いたのは最初の20ページだけ。つまり映画は物語のとっかかり、あくまでも二宮が桑原に巻き込まれるきっかけです。二宮はいつも桑原から逃げようとしているので、桑原に巻き込まれる口実がいるんですね。今回はそれが映画だっただけで、麻雀でもいいし、要は違う場所に連れて行ければいいんです。
--イケイケのヤクザ桑原と、何事にも及び腰に見えて、いざとなると人間の太さを発揮する二宮。このユニークなコンビのアイデアはどこから生まれたのですか。
黒川さん『悪名』という映画をご存知ですか?二宮と桑原は、あの映画における田宮二郎のヤクザと、勝新太郎のカタギの男ですよ。カタギがヤクザに巻き込まれるというね。あの二人がそのままモデルというわけではないですが、そういうシチュエーションのコンビがいてもいいなと思い書き始めました。『悪名』はシリーズ化されていて、最初の2作はよく出来た映画で、わりあい好きですね。
--なるほど。桑原が嫌いだと言いつつ、なんだかんだ二宮が巻き込まれて行くのが面白いですね。
黒川さん桑原は二宮が好きだけど、二宮は桑原が徹底的に嫌いでしょう。でも「あの男にもええところはあるな」という気持ちはある。それが大抵の男の人間の見方ですね。女性はいったん嫌ったら徹底的にシャットアウトしませんか?
--確かにそういうところ、ありますね。「疫病神」シリーズの大きな魅力でもある桑原と二宮の大阪弁での軽妙な会話は、自然に浮かんでくるのでしょうか。
黒川さん次々にページをめくってもらえるように、気軽に読まれるせりふを書くために、ものすごく時間をかけてますよ。ああでもないこうでもないと一生懸命考えます。僕の小説は会話で転がす小説ですから、会話が転がらないと意味がないし、小説として値打ちがないと思います。
--本作しかり、黒川さんの小説を読むたびに、ページをめくる手が止まらなくなります。
黒川さんそう言われるのが一番嬉しいです。小説を書く上で最も意識しているのはリーダビリティ、次々にページをめくってもらえるようにすることなので。だから会話がある程度続いたらアクション、アクションが続いたら会話というふうに、繰り返すようにはしています。その間に場所を変えて読者を引っ張っていく。そこは常に意識していますね。
--映画をたくさんご覧になると伺いましたが、小説を書く上でヒントになることはあるのでしょうか。
黒川さんハリウッドの映画はかなり参考にしていますよ。せりふの面白さ、場面転換の早さなど、観客を楽しませようということを徹底的に追求しているので。観終わった後にほとんど何も残らないのもいいですね。ああ面白かった?で終わる。僕は自分の小説をそういう風に書きたいんですよ。テーマがどうのとか難しいことは考えずに、読者が5、6時間読んで、ああ面白かった?けれども何も覚えていない、それでいいんです。
--小説に社会に対するメッセージやご自身の思いを込めることは?
黒川さん一切ないですね(笑)。昔からそういうスタイルです。ただ、テーマはないけれども、何を書いたら面白いかというのはやっぱり考えますね。『疫病神』で題材にした産業廃棄物処理場の裏側は、小説を書いた当時一般の人はあまり知らなかった。それが国の資金源になっているというのはね。だから書いてみるのがいいかなと。そんな思いつきです。シリーズ2作目の『国境』の時は、北朝鮮についてみんな知らないから、書いてみたら面白いだろうなと。いつもそんなもんです。

■エンターテイメントだからこそ、リアリティが必要

--小説を書く際には、取材に時間をかけられるそうですね。
黒川さん取材には一番時間をかけます。一を知って一を書くのと、五を知って一を書くのとではどえらい違いがありますから。取材はたくさんして、その中から使えることを書く姿勢でずっとやってきました。
--取材は楽しいものですか?
黒川さんいや、いやなだけです(笑)。知らん人に話を聞きに行くわけですから。でもそれが小説には必要なので、複数の人に話を聞きます。産廃業者なんて、自分の悪いことはまず言わないですよ。だからAという業者に話を聞いて、Bという業者の悪口を聞く。次にCのところに行って、今度はBの悪口を聞くんです。自分のことは言わないけれど、人のことはいろいろ言いますから。そういうことをやっていくと、大体、その世界の本当のことが分かってきます。
--エンターテイメントであってもリアリティが必要だと?
黒川さんエンターテイメントだからこそ、リアリティが必要だと僕は思っています。逆の考え方もあるでしょうが、僕は自分が知っていることを書いた小説を読んで、ちょっと違うなと思うと取材不足を感じて、読む気がなくなりますね。ここで嘘を書いているってことは、他の部分でも嘘を書いていたっておかしくないわけですから。
--今回、修羅場をくぐり抜けるために桑原と二宮はマカオに飛びますが、カジノのシーンは臨場感たっぷりですね。
黒川さん読者が喜んでいるかどうかは知りませんよ。けれど「カジノに行ったら、あなたは勝てませんよ」ということはお伝えしようかなと。僕自身は1万円も負けたら、クーッと泣いて帰るタイプですけどね(笑)。
--(笑)ずっと大阪弁で小説を書かれていますが、かつては「大阪弁の小説は売れない」と言われたそうですね。
黒川さん30年前、僕がデビューした頃は、吉本の芸人さんたちは今のように東京で活躍していませんでした。大阪弁で書く小説家は田辺聖子さん以外になかったですし、大阪弁というだけで毛嫌いする人は多かったと思います。だから「標準語で書いたら」とよく言われましたよ。
--それでも大阪弁を貫いたのは?
黒川さんこれしか書けないからですよ。大阪が舞台の小説を東京弁で通していらっしゃる作家の方もおられますが、僕は無理です。時代小説で坂本龍馬が出てくるのに、みんなで標準語をしゃべっていたりするとダメですね。
--大阪という街の空気が、小説の執筆に与える影響は大きいですか。
黒川さんそうですね。まず人と人とのやり取りが全然違いますから。大阪の人は普段の会話でも「これうけているかうけていないか」をひどく意識しますよね。で、自分の失敗談を面白く聞かせる。今、こうして僕が話したとして「ここがうけたなあ」というのを覚えているんです。それで、また別の人にもっと面白くしてやろうと思って同じ話をする。そうするうちに話がどんどん洗練される。それが芸になっているんです。
--とても興味深いです。さて、多くのファンが気になる桑原と二宮の今後ですが、このコンビの再結成はありますか?
黒川さん今後、二人がどうなるかは本の売れ行き次第ですね。売れ行きが悪ければ、これで終わっていいと読者が判断したのだと思う。そうであれば、この作品でシリーズを終えてもいいという思いで書きました。でも今回、直木賞を受賞しましたから、今までよりは売れてたくさんの人に読んでもらえるんじゃないかと。そうなると今後も続けられる終わり方をしていますから、いずれ近いうちに続きを書けるのではないかと考えております。
-- 楽しみにしています!本日はありがとうございました。

【取材・文】宇田夏苗

破門
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内容紹介
【第151回直木賞受賞作品】
金と暴力と仁義を争う、ハードボイルド巨編! 映画製作への出資金を持ち逃げされたヤクザの桑原と建設コンサルタントの二宮は、資金回収のため、関西とマカオを奔走する。巨額の資金をめぐる争いはやがて組同士のトラブルに発展し、桑原にも絶体絶命の危機が!

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