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辻村深月さんインタビュー「家族シアター」

2004年のデビュー以来、ミステリーや青春などのジャンルを超えた作品で、多くのファンを持つ辻村深月さん。デビュー10周年を迎えた今年は、それぞれまったく色合いの異なる新刊3冊を上梓。さらに『太陽の坐る場所』の映画が公開になるなど、作家として輝きを増す辻村さんに、7つの家族の物語を集めた最新作『家族シアター』について、さらに作家としての今の心境をうかがいました。

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プロフィール

辻村深月(つじむら・みづき)
1980年2月29日生まれ。山梨県出身。千葉大学教育学部卒業。2004年に『冷たい校舎の時は止まる』で第31回メフィスト賞を受賞しデビュー。他の著作に『子どもたちは夜と遊ぶ』、『凍りのくじら』、『スロウハイツの神様』、『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』、『島はぼくらと』、『盲目的な恋と友情』、『ハケンアニメ!』など。『ツナグ』で吉川英治文学新人賞、『鍵のない夢を見る』で直木賞を受賞。

インタビュー

■みんなが自分の役をやりながら、家族になっている

--家族をテーマにした7つの短編からなる『家族シアター』の構想はいつ頃考えられたのでしょうか。
辻村さんこの作品はアンソロジーなどに収録された6作と、書き下ろし1作の短編をまとめたものなんですね。短編の依頼をいただいて、執筆する時に、いずれ1冊の短編集にまとめられたらいいなと思いついたんです。そこでもうひとつのテーマとして“家族”を置きました。ひとつひとつの短編は、もともとは“青春”や、“時”というテーマをいただいた上で書いた作品です。“家族”というテーマを置いたことで、ひょっとしたら10代の女の子とか、似た立場の主人公の視点ばかりで書いたかもしれないところを、父親や母親、それこそおじいさんのようなこれまで書いたことのない主人公を書いてみようと思えて、すごくバリエーションに富んだ家族の関係性を描くことが出来ました。結果的にはいいテーマだったと思っています。
--この本を読ませて頂くと、『家族シアター』というタイトルそのままに、何気ない家族の出来事が実はとてもドラマティックなのだなと感じます。
辻村さん家族って、それぞれに役割を演じているところがあるのではないでしょうか。私には3歳になる息子がいるのですが、それまでずっと家族の中で自分が子どもの立場だったのが、息子に「これやって」とものすごい信頼感に裏打ちされた口調で言われると、「私もお母さんなんだから、やってあげなきゃ」という気持ちになります。子どもを産んだからといって、急に母親になれるわけではなく、中身はあまり変わらない。大人って子どもの延長だったんだなと気がつきました。それまで自分が仰ぎ見ていた両親、おじいちゃんやおばあちゃんを万能だと思っていたけれど、みんな頑張ってかっこつけながら傍にいてくれたんだと気付いたんですよね。子どもにしても、両親をがっかりさせたくないから頑張ってみたりとか。そうやって家族みんなが自分の役割を果たしながら、家族になっているのかなと。だから、自分でも気に入っているタイトルです。
--この作品には、まさにそんな家族が直面したさまざまな事件が、姉や妹、父親や母親と1作ごとに異なる視点で描かれていますね。
辻村さん例えばアイドルオタクの弟とバンギャルの姉を描いた「サイリウム」は、もともと“青春”をテーマにした短編ですが、少女を主人公にした小説はこれまでにも書いてきたので、弟を視点人物にして、弟から見た姉を書いてみようとか、あえて今までとは違う視点人物を選びました。自分がなり得ない立場になって書いたことで感じることも多くてとても楽しかったですし、執筆中はそれぞれの家族を眺め見ているような面白さもありました。
--読み手としても、そういう感覚が味わえる上に、大好きなのに大嫌いだと思ったり、恥ずかしいけれど誇らしかったりする家族へ複雑な心情が描かれていて。「ああそうだよな」と頷くばかりでした。
辻村さん例えば「『妹』という祝福」の真面目な姉と、その姉をちょっと恥ずかしく思う妹との関係性のように、家族って面倒くさいものだと思うんです。でも、絶対に切り捨てることはできないし、家族の問題はどうでもいいという結論では済まされないんですよね。どうでもいいと思っても、学校や職場に行ってまた家に戻るとまだ喧嘩が続いていたりするので。「絶対に口をきくもんか!」と思っていても、そうこうしているうちになし崩し的に話すようになったり、でもある時、また噴き出したりとか、その繰り返し。例えば、それぞれが違う海原で最大限泳いできた後に、船着き場に帰ってくる場所が、家族のイメージでもあります。お互いが別のところにいる間は、傷ついても苦しんでもお互いに何もできないので。それを持ち帰ってくる場所としての家族を、書いてみたかったんですね。
--辻村さんが描く登場人物は、子どもも大人も「まさにそこに生きている」と感じさせてくれます。キャラクターを描く上で心がけていることはあるのでしょうか。
辻村さん登場人物も彼らなりに「生きている」と思うようにしています。作家の都合で主人公を苦しめるためだけに悪役を登場させたくはないんです。現実の世界でも、誰もが自分の価値観や正義を持っていて、よかれと思って動いていると思うんです。それが時に事件に繋がることもあるわけですが。明確に悪意を持って生きている人はそうそういないはずなので、「何もこの小説のために悪い人間になることはない」という気持ちで人物を書いていますね。

■子どものおかげで、ひとつの原稿に悩みすぎなくなった

--ご自身は3歳の息子さんの子育て真っ最中ですね。にもかかわらず、今年はこの作品を含めて新刊を3冊発表されています。ペースは落ちるどころか……
辻村さん上がってますよね(笑)。
--(笑)。そのエネルギーはどこから来るのでしょうか。
辻村さんひとつには、私にとって、小説を書くことが今も喜びだということです。私は10代の頃からずっと作家に憧れていて、なりたくてたまらなかったんです。いまだに1週間に一度ぐらい、朝起きると「自分の本って出版されているんだよなあ」と思い出すくらい(笑)。もうひとつは、子どもが産まれて、育児に時間をとられるようになったことです。ひとつの原稿に悩みすぎることがなくなったんですよね。保育園の送り迎えとか、「この時間までに、絶対に原稿を書き上げないと!」という時は、いったんそこで原稿を編集者に送ってしまうと、子どもが寝る頃には頭が切り替わっていて、「あの部分は、やっぱり前のほうがよかったな」と気がつくことも。普段、夜は子どもと一緒に寝てしまって朝の4時くらいから起きて仕事をするんです。すると、夜型の編集者の方とメールで邂逅することも(笑)。すでに原稿を読んでくれていて、そこからまた直すことができるので、仕事量もあまり変わらずにいられるのかなと。
--なるほど。お子さんとの生活によって、仕事にメリハリがついたんですね。
辻村さんそうなんです。それに、息子を保育園に送り出したからといっても、その時間が彼にとってなくなるわけではない、ということは常に考えています。母親と離れてお友達や先生と遊んだりして、作ってくれている時間なんですよね。つまり、一緒に仕事をしてもらっているようなものなので、「その大事な時間に書いているんだ」という感謝を忘れずにいたいです。『家族シアター』のような小説を書いている時は「お母さんも頑張って仕事するからね」と晴れ晴れとした気持ちで保育園に送り出せるのですが、不倫や殺人を扱った小説を執筆する時は、「この子を預けて私は不倫を書くんだなあ」と複雑な気持ちになりますね(笑)。

■嫌いだったはずの教室になぜか戻っていく

--作家としては、今年デビュー10周年を迎えられましたが、初めて小説を書いたのは小3の時だったそうですね。
辻村さんはい、ホラー小説でした。その頃から、周囲には自分が書いたものを読んでくれる友達がいたんですよ。その人たちが面白いから続きを読みたいと言ってくれるものを書きたいと思った。つまり、すごく近いところに目標があったんですよね。今、小説を書いている方たちには、自分の作品に自信があるがゆえに人に見せなかったり、逆に一足飛びにブログやネットで発表して不特定多数の意見に急に触れてしまったりする人が多いのかもしれません。そうではなくて、信頼できる身近な読者に読んで面白いと言ってもらえる経験が、私にとっては小説を書く上での楽しさにつながりました。
--この作品しかり、教室における閉塞感、生徒同士のヒエラルキーといった目に見えない関係性を描かれることが多いですが、それはなぜなのでしょうか。
辻村さん私は中学時代、教室の中では全然自分は特別な存在だと思えなくて、今振り返ってもあの頃は楽しくなかった(笑)。にもかかわらず、教室を舞台に小説を書いているし、大学も教育学部を選んでいたり、なぜか、大人になっても教室に帰り続けている感じがあるんですよね。いまだにあの頃の空の青さを思い出したりします。当時はほとんど故郷の町から出たことがなかったのに、すごく外に出ていた気もして。それはなぜかと思うと、人生で一番本を読んでいた時期だからなんですよ。そういう時に本を読むのは逃避だ、と言われたりするけれど、私自身は現実といろいろな本の世界を並行して生きていたんですよね。それこそ先生に怒られただけで、「この失われた信頼をもう取り戻せない」と思っていくらでも泣けたりするような日々の中で、本の世界から一番強く影響を受けたのが中学時代です。学生時代がすごく楽しかったという人が、おそらく一生思い出すことのない時代を反芻しながら、私はずっと書き続けていくような気がします。
--子どもの頃から読書を存分に楽しんでこられた辻村さんが、これから目指すものとは?
辻村さんデビュー10周年の今年は『盲目的な恋と友情』、『ハケンアニメ!』、この『家族シアター』と新刊3冊のリレーフェアというのを開催して頂いて、それぞれ出版社が全部違うのですが、3作を紹介する素敵なチラシを作って頂いたんですね。それを学生時代の友人が見た時に「大学時代の君が、これを見たらどう思うだろうね」と言われて。確かに、これだけの出版社とお付き合いさせてもらっていて、大好きな漫画家さんに挿画までやってもらっている。当時の私が見たらすごくうれしいだろうなと思ったんです。しかもテーマが、“家族”もあれば“女の妄執”もあるというのが、あの頃の私にとっては驚きでもあるはずで。だから、次の10年後にも、いますぐには書いていることが想像できないようなジャンルやテーマに常に挑んでいたらいいな、と思います。今の自分をまた驚かせるような小説を書いていたいですね。

【取材】 宇田夏苗

家族シアター
家族シアター

内容紹介
すべての「わが家」に事件あり。ややこしくも愛おしい家族の物語、全7編! 著者デビュー10周年を記念する作品。心にじんわり響きます!

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