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ヨシタケシンスケさんインタビュー「ぼくのニセモノをつくるには」

昨年、初の絵本『りんごかもしれない』が大人気となり、「発想えほん」という独自のジャンルを切り拓いたヨシタケシンスケさん。待望の第2弾『ぼくのニセモノをつくるには』は、「じぶんについて考えてみよう!」がテーマです。大人もハマる人続出中の新刊について、ヨシタケさんに伺いました。

プロフィール

ヨシタケシンスケ
1973年、神奈川県生まれ。日常のさりげないひとコマを独特の視点で切り取ったスケッチ集や児童書の挿絵、装画、広告美術などを手がける。自身初の絵本作品となる『りんごかもしれない』(ブロンズ新社)が、第6回MOE絵本屋さん大賞第1位、第61回産経新聞児童出版文化賞美術賞など、数々の賞を受賞。絵本という新たな表現の場を得て、ますます才能を発揮している。著書に、『しかもフタがない』(PARCO出版)、『結局できずじまい』『せまいぞドキドキ』(講談社)、『そのうちプラン』(遊タイム出版)などがある。

インタビュー

■自分について考えるって楽しい

--何の変哲もない“りんご”が、不思議なものに見えてくる…そんな想像をめぐらす楽しさを描いた『りんごかもしれない』に続く、待望の絵本2作目ですね。
ヨシタケさん1作目の『りんごかもしれない』が思いのほか評価して頂けたので、こういう形で「発想えほん」のシリーズができるなと思いました。そこで担当の編集さんと第2弾のテーマを考えていく中で、アイデンティティを扱ってみるのはどうだろうと。僕自身、昔から「自分とは何だろう?」とよく考えていたので、これなら描けるなと思い、このテーマでいくことに決めました。ただ、テーマが難しいだけに、小学生ぐらいの子どもたちが「自分とは何か?」と思える理由を考えるまでには、時間がかかりましたね。子どもって少しでもお説教じみていたりすると、すぐに「そういう本だな」と察知するので。僕がそうだったので、それで興味を失わせることだけは避けたいと思いました。たとえテーマが伝わらなくても、最後まで読んでもらえて、くだらないと笑ってもらえるような本にしたかった。アイデンティティに触れるなら、子どもたちが納得できる設定にしたかったんです。
--そうして生まれた設定が秀逸ですね。主人公のけんたくんは「自分のニセモノをつくって、やりたくないことを全部やってもらおう!」とお手伝いロボを買います。するとロボは完璧なニセモノになるために「あなたのことを詳しく教えて下さい」とけんたくんに質問し始めるという。仕事でも家事でも「誰か代わりにやって欲しい!」と思うことは大人にもよくあるので、けんたくんの気持ち、すごくよく分かります(笑)。
ヨシタケさん楽をしたいというのは、僕自身の気持ちでもあるので(笑)。他にも宇宙人がやって来て「お前は人間か?」みたいな職務質問をされるとか、バイトせざるを得なくなって、面接官に「君は何者なの?」と聞かれて、自分について答えなくてはいけなくなるとか、いろいろな設定を考えました。でも、それだと主人公がちょっとかわいそうだし、ロボットに自分のことをインプットしてニセモノになってもらう、というのが一番しっくりきたんです。今回にかぎらず、絵本を描く上では僕が子どもだったら嬉しいだろうなとか、納得できるかが、設定や構成を考える時の判断基準ですね。
--難しいテーマだけに、どう締めくくるかを考えられたと思いますが、オチも最高ですね!
ヨシタケさん結局、ロボは完璧なニセモノにはなれないですからね。けんたくんの作戦は失敗に終わる、というのは最初から決めていました。そもそも四角い顔のロボを買う時点で、似せる気があるのか!って(笑)。でも、いい友達にはなれたっていうね。本来とは違うところに着地したけれど「これはこれでいいよね」と思ってもらえたらいいかなと。 「自分とは何か?」というテーマ自体、どこまでも掘り下げていけるので、当初はこれよりも深いところ、「どうなると自分ではなくなるのか」といったことまで描くことも考えました。でも僕自身、アイデンティティについて専門的に勉強したわけではないし、それよりも、子どもの目線でこのテーマにアプローチして、答えは出ないにせよ、「自分について考えていくのは楽しいよね」と感じてもらえたらと思いました。

■「自分は特別ではない」と知ることから始まる

--イラストレーターとして活躍されていますが、いつもかなり小さく絵を描かれるそうですね。
ヨシタケさん(手帳に描いた日常のスケッチを見せながら)普段がこのサイズです。
--一つのイラストがほぼ親指ぐらい?でしょうか。本当に小さい!ですね。こういったスケッチを常にされているのですか。
ヨシタケさんこんな風にスケッチし始めたのは、学校を出て半年間会社勤めをしていた時ですね。以来、電車に乗っている間などに気付いたことを日記代わりに描いています。最初、職場で企画書を書くふりをしながら描いていて、先輩たちに見られそうになったら手で隠せるようにしたので、絵が小さいですよね(笑)。
-- 「こういう人いるよなあ」「こんな瞬間あるな」というスケッチばかりで、見入ってしまいます。
ヨシタケさんでも誰かを見ながらだと警戒されるので、パッととらえて、あとは見ないで描きます。変な髪型をしているとか、しゃがんでいる姿がおかしいなとか、記憶に残るところだけを描いて。僕はすごくネガティブなものの考え方をするところがあるんですね。ほおっておくと「もうダメだ。おしまいだ」ってなる(苦笑)。だから「そんなことないよ、世の中探せば面白いことがあるでしょ、ほらっ」って自分自身を盛り上げるために、一生懸命描いているところがありますね。
--ヨシタケさんにとって、無くてはならない時間なのですね。
ヨシタケさんそうですね。それにこうして描き続けていると、自分が何に興味があるのかが分かるので。すごく面白いことを思いついた気がしても、3年前にまったく同じことを描いていたりとか、自分が見えてくる。するとあまり変わっていなくて安心するし、絶望もするし(苦笑)。引き出しも思っているほど多くはなくて。だから僕は人と自分は違わないし、同じでもないなっていう。それを浮き立たせるための作業ですね。
実はこの絵本で一番言いたかったのも、「あなたみたいな人は、いっぱいるよね」ということで。「でも細かく見ていくと、それぞれに違いがあるよね」と伝えたかった。大人たちは「あなたは世界で一人だけ、特別なんだ」とよく言うけれど、そう思って学校に行くと自分だけ秀でているものもないし、どうしたらいいのか…とプレッシャーを感じてしまう。それで落ち込まされている子もたくさんいるはずで、僕がそうだったんですね。「あなたは大したことないんだよ」とは、普通大人としては言ってはいけないことかもしれないけれど、そう言われることでほっとする子もいるだろうし、そこから自分でどうしていくか。それが大事だし、この本の中で、ワニが子どもたちを見ながら「たべちゃうんだったらべつのどの子でもいいなー」という場面に、その思いを込めたつもりです。
--今回、絵本を作る上で大切にしたことは何でしょうか。
ヨシタケさん1作目は「●●かもしれない」、今回はアイデンティティがテーマなので、「自分は●●である」をキーワードに、まず絵にできそうな項目を箇条書きにしました。それを実際に描いた時に、例えば「自分にはいろいろな感情がある」といった概念が1枚の絵に落とし込めていて、なおかつ面白いか。この2点は大事にしたところです。言葉で説明するのが難しい概念も、1枚で面白く見せられることが、絵が持っている力だと思うので。
--そうして描かれた絵に、ページを開くたびにハッとさせられます。2冊を作り終えた今、絵本への興味は?
ヨシタケさん深まっていますね。僕はストーリーを作るのがあまり得意ではないので、ワンテーマで描くのが好きなんです。だから絵本を作る時も32ページ、順を追って読ませるようにするのが一番のハードルでした。でもやってみて、全体のリズムの作り方をはじめ、すごく勉強になりましたし、面白かったですね。子どもの頃から絵本が大好きで作ってみたいと思いつつ、僕にはイラストに色をつける習慣がなく、要は色のセンスに自信がないので、ずっと絵本は無理だと思っていたんです。でも、色をつけるのが得意なデザイナーさんにつけてもらえばいいんだという、目からウロコの発想を担当の編集さんからいただいて「そうか!」と。だから、もしデザイナーさんと編集さんに「こんな絵には色はつけられないな」と言われたらおしまい。そこが毎回心配で(苦笑)。だからまあ、いろんな意味で、珍しい絵本作家だと思います(笑)。
--そんなヨシタケさんの今後の野望は?
ヨシタケさん今回、アイデンティをテーマに絵本を描いている時に、ほかにもいくつかテーマを思いつきました。それを実際に形にするかは別としても、世間一般で言われている物事のアプローチとはまた別の言い方、選択肢を増やせたなら、絵本を作る意味があるかなと思っています。今後も「発想えほん」のシリーズで、ちょっと別の物の見方を提案していきたいですし、あかちゃん向けの絵本なども出していけたらいいですね。いろんなジャンルのことをやって、失敗も成功もしたいと思っているので、温かい目で見て頂けたらありがたいです。

【取材】 宇田夏苗

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ぼくのニセモノをつくるには
ぼくのニセモノをつくるには

内容紹介
大ヒット『りんごかもしれない』に続く、ヨシタケシンスケ発想絵本第2弾。

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