楽天ブックス 著者インタビュー

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ジョン・レノンの「イマジン」といえば、誰もが知っている名曲。最近ではトリノ冬季オリンピックの開会式でジョン・レノンの妻、オノ・ヨーコ氏が歌詞を引用し、平和へのメッセージを語っていた姿が記憶に新しいところです。1971年に発表された当時、ニクソン米国大統領に政治的理由で敵視され、1980年に彼が凶弾に倒れた時には世界中の人々が冥福を祈って口ずさみ、また2001年の米国同時多発テロ事件の際にも脚光を浴びた「イマジン」。時代を越え、人々に愛され続けてきたこの名曲の解釈に、作家の新井満さんが挑んだ1冊が『自由訳 イマジンです。わずか26行の原作詞を、イマジネーションを広げながら270行に綴った新井さんに、自由訳に込めた想いを伺いました。

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プロフィール

新井満さん (あらい・まん)
作家、作詞作曲家、写真家、環境映像プロデューサー、1998年長野冬季オリンピック開閉会式イメージ監督など、多方面で活躍中。1946年新潟市生まれ。上智大学法学部卒業後、電通に入社。音楽・映像プロデューサーとして200タイトル以上の環境ビデオを製作し、この分野の草分け的存在に。小説家としては1988年『尋ね人の時間』(文藝春秋)で芥川賞を受賞。2003年に発表した写真詩集『千の風になって』(講談社)が話題を集め、自ら曲をつけ歌唱したCDシングルとアルバム、DVD、絵本などがロングセラーを続けている。日本ペンクラブ常務理事として平和と環境問題を担当。最近作に『自由訳 般若心経』(朝日新聞社)、『青春とは』『千の風になって ちひろの空』(ともに講談社)など。
公式ホームページ「マンダーランド通信」 http://www.twin.ne.jp/~m_nacht/ 

インタビュー

荒井満さん

‐‐「イマジン イメージすること 心の中で想い描いてみること そして 現実の向こう側に隠れている 真実の姿を 見きわめること」――ジョン・レノンが遺した歌詞に“Imagine”とだけ書かれていた言葉が、新井さんの自由訳ではこんな風に具体的に表現されていることに、まず驚かされました。新井さんは「般若心経」の自由訳にも挑戦されていますが、“自由訳”の定義とは何でしょう?
荒井さん“自由訳”には2つの定義があって、1つは原作者のコンセプトを絶対に厳守すること。2つ目はできるだけわかりやすく、美しい日本語に置き換えること。この2つにつきますね。今回も26行の歌詞を膨らませようとしたのではなく、「ジョン・レノンはこういうことを言いたかったんだろうな」と考えて、イマジネーションの翼を広げていったら270行の訳になった。そもそも「イマジン」の歌詞は、ちょっとわかりにくいんですよ。
−−たとえば「殺したり死んだりする必要もないんだ」と、戦争というものをかなり意識させる部分もありますが、どのように解釈を進めていったのですか?
荒井さん「イマジン」は1971年に発表された時から何千回と聴いているので、メロディも歌詞も身体に染み込んでいるんです。それでも、歌詞の意味を考えると、すぐにはよくわからない。だからジョン・レノンが伝えようとした思想や哲学を自分なりに分析し、想像しながら日本語に置き換えていきました。
−−実際に訳すにあたり、難しかったところはありますか?
荒井さん この歌詞の最も特徴的な部分、“Imagine”の言葉についてはよく考えましたね。とりわけ難しいのが1番目の歌詞で、「天国がないってことを想像してごらん」というところで一見、宗教を否定しているんだなと思う。僕自身、ある時期までは無宗教の人が作るとこうなるのかな、と思っていました。ところが、よくよく考えるとそうじゃないんです。世界の歴史をみると、政治家や独裁者というのは大衆を自分の意のままに操ろうとして、「私と一緒に立ち上がろう。正義のために戦争を始めよう」と演説するわけですよ。「そうすれば、あなた方は将来天国に行けますよ」とも言う。一方で戦争を続けるために、「言うことを聞かないと地獄に落ちるぞ」と脅したり、アメとムチとして天国と地獄が使われてきた。ジョン・レノンは「だからそんな言葉の魔力に惑わされてはいけないよ」という意味で、あのフレーズを作詞したわけです。
−−2番目の歌詞にある「国境がないことを想像してごらん」というのは?
荒井さん国境がない状態を想像するというのは、世界がひとつの国であるということです。3番目の「財産がないことを想像してごらん」というのは所有、分かりやすく言えば、1つのパンに大勢が群がれば、パンは足りなくなり争いが起こる。逆にお互いに譲り合えば足りる、ということですね。3番まである歌詞を通してみると、非常に短い詞の中に、過不足なく平和を実現するために必要な条件が書かれているのです。
−− この自由訳は、長野冬季オリンピック開閉会式のイメージ監督を務めていた時、すでに執筆されていたとそうですね?
荒井さん 開会式のオープニング曲に「イマジン」がいいのではないかと思って、何十回、何百回と聴いて訳しました。でも結局、使われたのはベートーベンの「歓喜の歌」で、この自由訳のことは、長い間ずっと忘れていました。ところが、今年の2月に開催されたトリノ冬季オリンピックでオノ・ヨーコさんが「イマジン」の詩を読み上げているのを見た時、自分が8年前に考えていたシナリオとほぼ同じ演出だったことに驚いて、とても感動したんです。それをきっかけに「自由訳」を発表しよう決意して、ニューヨークのオノ・ヨーコさんの所に会いに行きました。
−−この本にはその時のお2人の対談も収められていますが、オノ・ヨーコさんはこの自由訳をとても喜ばれたそうですね。彼女が1964年に出版した作品集『グレープフルーツ』に、「イマジン」の原型があったというのは意外だったのですが。
荒井さん「この歌は2人の共作とすべきだ」というのは、レノンが亡くなる2日前に遺した言葉です。「歌詞のコンセプトもヨーコから出たものなのに、この歌を発表した当時の僕は身勝手で、男性上位で、彼女に負っていると認めなかった」とね。
−−あとがきを読むと、新井さんの「イマジン」への想いとともに、この自由訳を発表した理由が意外な展開とともに描かれて、かなりハッとさせられました。
荒井さんコンセプトが明確でなければ、本にしてはいけないんです。今、純文学が売れないでしょう? 著者に「誰に向かって書いているのか?」と聞くと、「自分のためだ」と言う。そんな本が売れるわけはありませんよ。本を出す上でのコンセプトが明確じゃないんです。僕は『イマジン』も『千の風になって』も、自分以外の人のために書いた実用書だと思っています。
−−ここ数年、こうした「自由訳」に取り組むようになった理由とは?
荒井さん分厚い本を読んだり書いたりするのが嫌になった(笑)。それに1週間で得られる感動を、通勤時間の30分で得られるとしたら、そのほうがいいでしょう? 僕は1冊の本で1個の感動が得られればいいと思いますね。それから、自分の役割は美しいもの、価値あるものを伝達することだと考えるようになった、というのもあります。

新井満さん

−−いつ頃からその役割を意識し始めたのですか?
荒井さん 19歳の時、故郷の新潟で大震災に遭ってから、精神的ショックで病気になり、1年間大学を休んだことがあったんです。当時は80キロぐらいあった体重が半分になりました。病気が回復した後、大学の近くの土手をフラフラ歩いていたら、そこに咲いていたレンギョウがものすごく綺麗でね。療養中は「このまま死んでも誰も悲しんでくれないんじゃないか」と思っていたのに、「こんな美しいものがあるなら、生きているのも満更でもない」と思って。おかしいのが、その美しさを多くの人々に知らせたくて、道行く人に「綺麗だから見て下さい」と呼びかけたんです(笑)。変なヤツだと思われましたが、最後に1人だけ、「確かにあなたが言うとおり美しい。ありがとう」と言ってくれたことに勇気づけられました。大学を出て、電通に入ってからはCMを作りましたが、商品の良い部分を知らせる、伝達することが広告の役割なわけです。そういう意味ではこの本も含めて、これまでやってきたことはすべて繋がっていると思います。自分のオリジナルにこだわっていた時期もあったけれど、その時期を抜けて、今は伝達するのが役目だと思っています。
−−“I hope someday you’ll join us”を「君も仲間になってくれないかなあ」と呼びかけ文にしたところに、そうした新井さんの姿勢がよく表れている気がします。
荒井さん 控え目な人間だから(笑)。今、こうして椅子に座っているけれど、椅子のことは忘れているでしょう。でも、椅子は椅子の役割を1時間以上も前からしっかり果たしてくれている。僕は椅子や空気や水のように、控え目だけど、存在感のある人間になりたい(笑)。もしみんながそう考え始めたら、もう少し地球は平和になると思いますよ。
−−収入、身長などたくさんの条件を挙げて、自分にピッタリの男性を探そうと婚活している女性には、耳が痛い話かもしれません。
荒井さん条件も選択肢のひとつだとは思うんですが、最終的にはお互いに話し合うしかないですよね。僕は、草食系男子って実はほとんどいないと思ってるんです。この人を僕の彼女にしたい。僕の家族になって欲しい。そう思ったら、男は動きますよ。だから、そうじゃないんですよね。そう思える女性がいないから、草ばっかり食べてるんじゃないかなと。でも、好きになったら積極的に動くだけの行動力はあるはずだと思うんです。

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