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女優・浅丘ルリ子の半生を林真理子が小説化!石原裕次郎、美空ひばり、小林旭……昭和を彩った大スターたちの素顔を大胆に描いた話題作『RURIKO』スターが光り輝いていた時代の伝説が人気作家の手でいま、生き生きとよみがえる。

昭和19年、満州の首都、新京。満州映画協会のスタジオで、浅井源二郎は満映理事長の甘粕正彦に娘の信子を女優にすると約束する。やがて終戦。信子は美しく成長し、製作を再開して間もない日活撮影所に入り、少女スター「浅丘ルリ子」として脚光を浴びる。石原裕次郎へのあこがれ、小林旭との恋、美空ひばりとの友情。女優として成功を収め、さまざまな恋をしてきた彼女の胸に去来するものは? いま、大女優の知られざる半生が初めて明かされる。


林真理子さんの本


『RURIKO』
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1,575円(税込)

『秘密』
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『夜ふけのなわとび』
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490円(税込)

『美か、さもなくば死を』
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1,050円(税込)

『美貌と処世』
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1,250円(税込)

『もっと幸福になっていいよね!〜生き方名言新書〜』
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1,260円(税込)

『林真理子 ×江原啓之〜超恋愛〜』
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1,100円(税込)

『本朝金瓶梅(お伊勢篇)』
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1,380円(税込)

『「綺麗な人」と言われるようになったのは、四十歳を過ぎてからでした』
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1,470円(税込)

『Anego』
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【DVD】『Anego[アネゴ] DVD-BOX』
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18,060円 (税込)


林真理子さんのオススメCD

『イタリア・オペラ・アリア集〜「椿姫」他』
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2,800円(税込)

『ある晴れた日に〜誰も寝てはならぬ/珠玉のオペラ・アリア集』
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1,800円(税込)
よく聴くのはクラシック。オペラのアリア集はとくに好きですね。作曲家ではモーツァルトが好きです」


林真理子さんのオススメDVD


『憎いあンちくしょう』
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3,990円 (税込)
「ルリ子さんと裕次郎さんが共演した傑作。スピーディな展開で、いま見ても面白いですよ」

『男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花』
『男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花』
2,800円 (税込)
「日活を離れた後、ルリ子さんの映画での当たり役となったのが『寅さん』のリリー役。リリーが登場する4本の中でもとくにこの作品がおすすめです」


プロフィール


林真理子さん (はやし まりこ)
1954年山梨県生まれ。日本大学藝術学部文芸学科卒業。82年にエッセイ集『ルンルンを買っておうちに帰ろう』を発表し、ベストセラーに。初めて書いた小説『星影のステラ』が直木賞候補に挙げられ、以後は作家活動に専念。「最終便に間に合えば」「京都まで」で第94回直木賞を受賞。『白蓮れんれん』で第8回柴田錬三郎賞、『みんなの秘密』により第32回吉川英治文学賞を受賞。そのほかの作品に『不機嫌な果実』『ミカドの女』『葡萄が目にしみる』ほか多数。「美女入門」シリーズなどのエッセイも好評を博している。

インタビュー


始まりは満州

−−浅丘ルリ子さんといえば日本映画の黄金時代に光り輝いていた大スターであり、現在まで息長く活躍されている大女優です。林さんが浅丘さんをモデルに小説を書くことになったきっかけはどんなことだったんでしょうか。

林さん (角川グループホールディングスの)角川歴彦会長から「書いてみませんか?」と言われたことが直接のきっかけです。そのお申し出にとても興奮して「ぜひ書かせてほしい」とお答えしたんです。ルリ子さんが日活で活躍されていた時代は私はまだ子供で、世代的にはちょっとズレているんですが、テレビのドキュメンタリー番組でルリ子さんのお父さんのことを知っていて興味があったんです。


 −−ドキュメンタリー番組は、作中にも登場するNHKの「父の面影を追って 浅丘ルリ子・中国への旅」という番組ですか。

林さん そうです。お父さんが満州国の官吏だったということを知っていたので、満州映画協会理事長だった甘粕正彦と結びつけて書いてみたいと思いました。ルリ子さんはただの女優さんではなくて、生まれも育ちもドラマチックなんですよ。


−−『RURIKO』は終戦間近の満州、それも満映の撮影所でルリ子さんのお父さんと甘粕が語り合うところから始まります。甘粕といえば大杉栄と伊藤野枝を虐殺した甘粕事件を始めとして、いわくありげなエピソードには事欠かない人物ですね。

林さん ルリ子さんのお父さんと甘粕が本当に仲が良かったかどうかは確証がないんですが、昭和13年に満州国外交使節団の一員として、一緒に訪欧団に参加しているので、接触があったのは確かです。ルリ子さんはお父様からは何も聞いていらっしゃらないって言ってましたけど。


華麗なる恋愛遍歴

−−『RURIKO』は驚くべき内容で、かつ、主要人物はすべて実名で登場します。『RURIKO』は小説ということですが、読者としては、率直にどこまでは本当のことなのか気になるところです。

林さん 小説家、見てきたようにウソを書きって感じですけど(笑)、ルリ子さんにお会いして、いろいろとお話をうかがいました。最初はルリ子さん以外の登場人物は仮名で、ほかの方に迷惑がかからないように、というお話だったんです。でも、「渡り鳥」シリーズでスターダムにのし上がった俳優で歌手で、って書いたら誰だって小林旭さんのことだってわかりますし、ルリ子さんが石坂浩二さんとご結婚されていたのも事実。石原裕次郎さんをとっても好きだったというのもご本人からうかがいましたし、美空ひばりさんと仲が良くて、ひばりさんが死ぬ間際にお話しされていたのも本当のことです。ですから、基本的に実名で書いています。
 でも、ルリ子さんは、連載中にお読みになって「こんなことは言ってない」ってずいぶんびっくりされていて。


−−え! そうなんですか(笑)。

林さん たとえば、美空ひばりさんとの会話も私がぜんぶ考えて書いたんですが、連載を読んだお友達がルリ子さんのところに電話をかけてきて「あんなことまでしゃべることないのに」って言われたそうです。


−−そうですか。小説家の想像力おそるべしというか、リアリティをすごく感じました。ルリ子さんには何度かお会いになったんですか。

林さん そうですね。何度かお目にかかって、旅行をご一緒したりもしました。いろんなことをうかがいましたが、暴露話をするという雰囲気でもなかったし、ルリ子さんご自身がすごくあっさりした方なんですよ。恋の話をお聞きしていても「そういえば男の人とのおつきあいは途切れたことはないけど、この次の人は誰だったのか忘れちゃった……思い出すわね」みたいな感じで(笑)。


−−『RURIKO』に描かれているままの方なんですね。ルリ子さんの華麗な恋の遍歴もこの小説の魅力の一つです。

林さん 小林旭さんとおつきあいされていたことはよく知られていますよね。登場人物のなかでも、小林旭さんのことはとくに愛情を込めて書いたつもりです。我ながらとても魅力的な男性として描けたと思いますね。
 ルリ子さん、小林旭さん、石原裕次郎さん、美空ひばりさん。四人の男女がもつれあいながら物語が進みますが、二人は亡くなって神格化されている。作中で旭さんが「俺が裕ちゃんに勝つ時もあると思う。だけどやっぱり勝てないんだよな」とつぶやくのは、そういうことなんです。ルリ子さんもひばりさんにはなれなかった。でも、お二人とも幸せに人生を送っていらっしゃる。


−−スターたちの人生の軌跡が光と影のように交錯するさまはこの小説の読みどころの一つですね。また、林さんの小説には「女性の生き方」というテーマが通底していると思います。ルリ子さんはこれまでの林さんの小説のヒロインの中では異色で、男性的というか、さっぱり、あっさりしていますよね。しかも、ハッピーな人生を堂々と生きている。

林さん ハッピーですね。しかも美女! それはルリ子さんのメンタリティなんです。彼女は「私は他人を羨んだり、妬んだりしたことはありません。自分はいつもなんて幸せなんだろう。映画に出れば主役で、みんなに大事にされる。映画が傾けば今度はテレビ、その次は舞台。本当に幸福な人生だと思います」とおっしゃっていました。


見てきたようなウソ

林真理子さん−−林さんはこれまでも評伝三部作(『ミカドの淑女(おんな)』『女文士』『白蓮れんれん』)をお書きになるなど、実在の人物を描いた作品も発表してきましたが、今回のように生きていらっしゃる方を実名で描くということは初めてですよね。やりやすかったこと、やりづらかったことはありますか?

林さん やりやすかったことは、読者のみなさんが誰でもご存じの方たちが登場するので、ムダな説明をしなくていいところですね。ただ、みなさんがご存じなだけに「私の知っているあの人はこんな人じゃないわ」と言われたら私の負けだなと思いましたけど。
 作家って本当につまらないことを覚えているなあ、と思うんですけど、たとえば、入院している裕次郎さんがベッドでしたうんちを奥様の北原三枝さんが手で受け止めてあげたって話も、週刊誌かなにかで読んだんです。あれがあるとないとでは印象が違うと思うし、そういうエピソードが、ふっと頭の中に浮かび上がってくるんです。私たち小説家はディテールが命だと思って書いているんですよ。
 美空ひばりさんにどういう役割を与えようとか、ひばりさんだったらどんな会話をしただろうか、と想像しながら書くのは楽しかったですね。やりづらかったのは、やっぱり、実在する人物のことを書いているので、どこからも文句が出ないように気を遣ったことですね。


−−登場される方も、ファンの方も、決して不快には感じないような気がしますね。反響が楽しみですね。

林さん どうなんでしょうね。この本が出るということで、テレビ出演の依頼もあったんですが、お断りしたんです。活字で書くならいいけど、テレビに私が出て「裕次郎さんが、ひばりさんが」ってペラペラしゃべったら反感を買うと思うんですよ。


−−芸能の文脈で見られてしまうと誤った受け止められ方をしてしまいそうですね。個人的なことになりますが、ぼく自身、日本映画が好きで、『RURIKO』に出てくる映画のほとんどを見ているんです。もちろん、世代的には後から見ているんですが、映画を通してイメージしていたスターたちが林さんの筆で生き生きと描かれていることに感動しました。

林さん そう言っていただけると嬉しいですね。私自身は撮影所に行ったこともないし、ましてや当時の日活撮影所の雰囲気がどんなものかはわからないですけど、そこは私の真骨頂だと思うんですけど、見てきたようなウソをぬけぬけと書く(笑)。自分でいうのもなんですけど。
 私たち小説家っていくらでもウソを書けるんですよ。それがすごく楽しい。しかも『RURIKO』はそのへんのふつうのおばさんやおじさんのことを書いているわけではなくて、誰もが知っていて、自分も大好きなスターたちを勝手に動かして書いているわけです。おもちゃ遊びをしているような楽しさですよね。こんな楽しくて良いのかな、と思ったくらいです。月刊誌に連載していたので、締め切りが毎回来るのは苦しかったですけど(笑)。


最小限の文章で時代を描く

−−映画顔負けのラブシーンもあって、まさに古き良き時代、日本映画の黄金時代はこうだったんじゃないかな? をイメージさせてくれますね。

林さん 60年代、70年代の日本がどんな時代だったかを感じさせるようなディテールには凝ったつもりです。キスと言わずキッスだったり、アベックという言葉とか「月刊平凡」が「ルリ子ちゃんのお部屋」みたいな記事を載せるとか。いかにもその時代を感じさせるものってありますよね。


−−林さんはデビュー当初から時代に対してとても敏感なアンテナを持っていらっしゃいますね。たとえば『アッコちゃんの時代』という作品ではバブル時代を象徴する女性を主人公にしてあの時代を鮮やかに描いています。『アッコちゃんの時代』のヒロインも実在のモデルがいますが、その時代は林さんご自身もリアルタイムでご存じですよね。一方、『RURIKO』は林さんにとってまだ生まれていない時代から、少女だった頃までの時代にかなりの紙幅が割かれています。ご自身が経験した時代と、そうでない時代を描くことは違うと思うんですが、『RURIKO』の場合はいかがでしたか?

林さん 『アッコちゃんの時代』は、私自身もあの時代を経験しているので、ある意味では簡単に書けるんですが、知っているだけに饒舌になりすぎないことを心がけました。あれも知ってる、これも知ってる、と書きすぎないように。
 『RURIKO』でも、しゃべりすぎないように、最小限の文章で雰囲気を出すことを大切にしましたね。作家としてやってはいけないことは、あれやこれやと調べたことを詰め込みすぎて、学者さんの本みたいな説明調の本になってしまうこと。資料を集めてずいぶん読みましたけど、書くときにはいったん忘れて、私の記憶とからみながら浮かび上がってくるものだけをすくい上げるようにしているつもりです。


−−たしかに『RURIKO』はノンストップで読んでしまうような、小説ならではのドライブ感がありますね。それと、『RURIKO』は女優という職業について書かれた小説でもありますよね。林さんにとって「女優」という存在はどんなものですか?

林さん 素直に、いいなあ、羨ましいなあと思いますね。別の人格になるという意味では、私たち作家と同じ。似ているところがすごくあると思います。ただ、女優さんのほうがもっと楽しいと思う。私たちは部屋で一人で黙々とある種のトランス状態に入って書いているけれど、女優さんは映画やテレビ、舞台のスポットライトを浴びながらでしょう。作家はみんな器量が良ければ俳優になりたいと思っているんじゃないかしら(笑)。昔から「文士劇」をやったりしてますもんね。


浅丘ルリ子という美女

−−林さんといえば『美女入門』シリーズもあり、美女には一家言おありですけど、ルリ子さんの美しさについてはどうお感じですか?

林さん 美女評論家ね(笑)。ルリ子さんの美しさは、いまの女優さんにはないかもしれない。とくに『絶唱』『執炎』、『憎いあンちくしょう』の頃は本当に息を飲むほどきれい。ルリ子さんは本物、天然の美女ですね。だから、ルリ子さんのような本当の美女はどんなことを考えているのかなあ、って思って書いていましたね。


−−浅丘ルリ子という女優そのものがとてもミステリアスですよね。インタビューにお答えになったり、個人的なことを話される機会も少ないですよね。

林さん RURIKOさんってご自分のことをあまりお話になってこなかったものね。でも、これだけドラマを持っている女優さんは、いま、なかなかいないと思う。
 さっきの難しかったことに戻りますけど、難しかったのは、『RURIKO』をどこまで私が作っていいのかということ。でも、ルリ子さんの像を傷つけるような書き方はしていない自信はあります。主要人物の心の内も、たぶんこの通りだったんじゃないかと思うんですよ。人物を描くうえで、いろんなアプローチ方法があると思いますが、『RURIKO』は評伝ではなく、小説家としての私が浅丘ルリ子という女優さんの半生にアプローチをした作品です。


−−浅丘さんはこの小説の中で芸名の「ルリ子」ではなく、本名の「信子」で書かれています。それも、林さんが小説家として、浅丘さんの素顔の部分まで踏み込んで書かれたからなんだなと思いました。では最後に、いま取り組まれているお仕事について教えてください。

林さん いま、源氏物語を私の視点で書かないかという話があって、源氏にかかりっきりになっています。絵を描かれるのが千住博さんということもあって、楽しみですけど、プレッシャーも感じますね。ついさっきも、編集者と千住さんと打ち合わせをしていたところなんです。


−−林さんの源氏物語ですか。ワクワクしますね。期待しています! 今日はありがとうございました。



さわりだけでも読んでおこうとページを開いたら、そのままの姿勢で最後まで一気読みしてしまった。『RURIKO』は次々に興味深いエピソード、ドラマチックなできごとが連続し、息もつかせない(しかも、登場人物はスターばかり!)。林さんは小説家一流の手法で、浅丘ルリ子という女優の「真実」に迫ったのではないだろうか? インタビューにうかがったご自宅で、林さんが薦めてくださった「日本一おいしいおせんべい」をバリバリ音を立てて食べながらそんなことを思ったのだった。
【タカザワケンジ】






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