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『サッカーという名の戦争 日本代表、外交交渉の裏舞台』刊行記念 スペシャル対談

日本サッカーの知られざる舞台裏、そして未来を語る著者/早稲田大学大学院教授 平田竹男×ヴィッセル神戸 宮本恒靖

4大会連続4度目、世界最速で2010年ワールドカップ本大会出場を決めた岡田ジャパン。日本のサッカーに注目が集まる中、ぜひ読んでおきたいのが『サッカーという名の戦争 日本代表、外交交渉の裏舞台』。通産省(当時)の官僚として、1993年のJリーグ発足、2002年の日韓W杯招致に携わったのち、日本サッカー協会に転身。日本代表チームの国際試合を取り仕切る“マッチメイク”を手がけた平田竹男さんが、サッカー界の舞台裏を初めて明かした1冊です。少年時代から大学まで自らもボールを蹴り、その後、日本サッカーの発展のために<ピッチ外の戦い>に挑んできた平田さん。そしてワールドカップ2大会で主将を務めるなど<ピッチ内>で戦い続ける宮本恒靖選手に、日本のサッカーの現在・過去・未来についてざっくばらんに語り合っていただきました。

平田竹男×宮本恒靖対談

日本のサッカーがより強くなるために――

――お2人は旧知の間柄だそうですね。

宮本さん
僕が日本代表チームでプレイをしていた時に、平田さんが合宿所や試合会場にいらしてくださって、お話したりするようになったんですよね。
宮本恒靖選手
平田さん
そうでしたね。当時、僕は日本サッカー協会の専務理事を務めていたのですが、宮本さんとは選手と役員という立場の違いを越えて「何しに来たん?」みたいな感じで気楽に話をさせていただけた(笑)。ザルツブルクでプレイされている間も、宮本さんに会いに伺うつもりだったのですが、結局叶わなくてとても残念です。3年ぶりにJリーグに戻られたわけですが、久々に日本でプレイして感じることはありますか?
宮本さん
チームによる選手のプレイレベルの差がなくなっている気がしますね。以前はチャンピオンになるようなチームにはまったく隙がなくて、「これでは敵わない」と痛感させられたのですが、今はどのチームと戦っても「隙があるな」と感じる時間帯があって。現在のJリーグの混戦を招いているのは、そうしたことも関係しているのかなと思います。
平田さん
全体的にレベルが上がった、というわけではないと?
宮本さん
むしろトップのレベルがすごく高いものではなくなったんでしょうね。
平田さん
とても興味深い意見ですね。というのも、僕は日本のサッカーが強くなるためには、トップ5と呼べる、国を代表するチームの存在が不可欠だと考えているんです。Jリーグが設立当初から掲げてきた「地域密着型」というのは、全国各地にクラブが出来ているのを見ればわかるとおり、非常に成果を上げています。でも一方で、日本のサッカーがさらに成長するには、プレイのクオリティ、資金規模などあらゆる面で、頂点に立つチームが必要だと思っていたので、ピッチ内にいる宮本さんの言葉にすごく共感します。
宮本さん
スペインであればレアル・マドリードといったトップのチームに行きたいがために下のチームで頑張るとか、そのチームに行けば給料が上がる、いいサッカーができるといったことが日本にはないので。もしくはアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)がよりステイタスのある大会になって、あそこで勝てばヨーロッパに行けるとか、選手が上を目指していけるためのいろいろなステップが必要なのかなと。ユースの選手たちをみていても「Jリーグの選手になる」という目標はあっても、それ以上がなかなか見えてこない環境にいる気がします。Jリーグ全体のプレイや運営レベルは向上していますが、かつて感じたような「みんなで成長している」感覚がない。平田さんがおっしゃるトップ5が生まれれば、日本サッカー全体の成長の曲線に動きが出てくるのかなと思いますね。
平田さん
考えてみれば、宮本さんは、まさしく日本サッカーの成長の申し子ですからね。
宮本さん
確かにそうですね(笑)。日本のサッカーが成長する過程を肌で感じてきましたし、1997年のワールドユース、2000年のシドニー五輪を経験できたことを考えると、今、U−20の日本代表選手たちが世界に出ていけないのは、ちょっと心配なんですね。
平田さん
僕は現在のJリーグというのは、成長の階段を駆け上った後の「踊り場」にいるような状況だと思うのです。宮本さんがおっしゃるように、ACLの改革が再び階段を昇るための力になるのではないか。そのために改革が必要だ、というのは、この本の中で述べたことでもありますね。
平田竹男さん

2004年アジアカップ PK戦の真実――

平田さん
せっかくの機会なので、以前から気になっていたことをお聞きしたいなと(笑)。中国が開催国となった2004年のアジアカップの際、ヨルダン戦が1−1でPKになった時、審判に向かっていったでしょう? あれは何と言っていたのですか?
宮本さん
あの時は日本が先行だったのですが、(中村)俊輔が外して、アレックス(アレサンドロ三都主)も外して……ところが遠くから見ても、向こうの右足の選手が蹴るピッチはOKで、こっちの左足で蹴るビッチは悪くて。明らかにピッチが動くのがわかったんですよ。あの時は優勝しか考えてなかったこともあり、日本で一番PKの上手い左利きの2人がアンフェアな状況のためにPKを外すのが許せなかった。それであの時点で審判に「今ならあなたの判断で逆サイドに変えられるはずだ」と言って。そうすればピッチの状況が良くなるという保証はなかったのですが。2人目の選手が蹴る前に時間を取ることで、ヨルダン側にプレッシャーをかけたいという気持ちもありました。審判が僕の意見を取り入れてくれた、と思ったら今度はジーコが「何をしている」と怒り出したので、説明したら「そんなことあり得ないから、今の場所でやり続けろ」と(苦笑)。審判に「ヨルダンの2人目の選手が蹴っていないから、彼が済んでから場所を移るのが当然だ」と主張したら、「そんなややこしいことを言うならこのままやるぞ」と審判が言って向こうに移したんですよ。
平田さん
そして両チームとも移ったら、アレックスがもう一度蹴ろうと思って出てきたんでしたよね(笑)。私は宮本さんが、芝が滑るじゃないか、とだけ言ったのかと思っていたら、右足左足で違うという論法まで使っていたとは驚きでした。すごいですね(笑)。あのアジアカップでは、あの試合だけでなく、中国でものすごくいじめられたでしょう。反日感情から日の丸を燃やされて、移動用のバスも壊されて。
宮本さん
石が飛んできましたから。でもああいう状況に置かれたことで、「絶対に負けたくない」という気持ちが生まれた。チームが燃えたし、まとまりましたね。
宮本恒靖選手
平田さん
でも僕は選手の方たちからそうした声を聞いて申し訳ないなと思った。それは<ピッチの外の戦い>なのだから、選手を巻き込まないように、僕たちがもっともっと、働かないといけないんですよ。サッカー界に身を置いているとアジアというのを否応なしに意識させられる。韓国、中国でいじめられて、中東に行くと時差もあるし下痢もするし。楽なところがひとつもない(苦笑)。
宮本さん
厳しいですね、アジアの予選は。ピッチ以外のところでのストレスが多いので。国際大会に行くと今度はサッカーとしてのレベルが上がって難しくなるわけですが(苦笑)。
平田さん
アジアで試合をするとなると、選手の方たちは日本の過去や歴史をすべて背負わされてしまうので本当に大変です。でも、そうした過酷な道に挑んでいくところが僕はすごく好きだし、それがサッカーの魅力でもあると思うんです。
宮本さん
アジアはあまりに広くて、アウェーの試合となると移動も、気候の違いに慣れるのも大変ですが、それをすべて乗り越えて予選を突破した時は、本当にほっとします(笑)。

サッカーの持つソフトパワーとは――

平田さん
2005年のW杯ドイツ大会の最終予選に話がさかのぼりますが、宮本さんは正直な気持ちとして、無観客、中立国のバンコクでなく、北朝鮮に行きたかった? 僕はすごく行きたかったんですよ。
宮本さん
(笑)行きたかったですね。本大会への出場権をかけた試合で、北朝鮮という国で完全アウェーの状況下で戦うというのは選手にとって大きな刺激になるはずだし、純粋に、そこで試合をしたらどうなんだろうと思っていました。
平田さん
僕としては本当に残念で。もし北朝鮮で試合をしていたら、今の日朝の構図というか、北朝鮮による核の脅威といった状況も変わっていたかもしれない。日韓ワールドカップ共催の後、日本と韓国、特に若い世代がとても仲良くなったと感じませんか?
宮本さん
本当に、日韓共同開催の影響は感じましたね。あの大会がなければ韓流スターなんて生まれなかったんじゃないかと思うぐらいです。
平田竹男さん
平田さん
戦うことで敵を知る。敵もまた戦うことで日本を知る。その戦いを通じて世界との熱い絆を築き上げる。それもサッカーが持っている、サッカーを超えた魅力なのだと思います。いってみれば、日本代表選手は外交官なんですよ。僕は今後のサッカーを大きくするために、選手が外交官の役割を果たしている一面や、そうして活躍してもらうための舞台を作る裏側といった、ピッチ外のことを広く知っていただきたくて、この本を書きました。2005年の北朝鮮戦の時は、サッカーの話題が毎日、新聞の社会面や政治面で取り上げられていましたからね。スポーツの枠に留まらずに社会、政治、経済面に記事が載るのはすごく大事なことであって。ビヨンドサッカーを求め続けるともっと大きな、社会全体からのサポーターがつくと思う。それを掘り起こしていきたい。そういう中で、ヨルダン戦で審判にも意見を述べた宮本さんの存在が誇りだし、本当にうれしいんですよ。僕らがいくら頑張ったところで、それはピッチ外の戦いですから。本来はピッチ外の戦いに選手が巻き込まれるべきではないけれど、巻き込まれざるを得ないのがアジアだということも言えます。
宮本さん
まさしくそうですね。04年アジアカップの時は正直、中国のイメージが悪くなりましたが、選手にとっては、そうした経験が歴史を知る機会になりますね。
平田さん
ワールドカップといえば、日本は2018年と22年の開催地に立候補する意向を表明しています。中国は立候補していなくて、ロシアはしている。だからもし単独開催が難しいとなったら、僕はロシアとの共同開催がいいのではと思っているんです。
宮本さん
地理的にはどうなんでしょうか。
平田さん
モスクワは遠いがウラジオストックなどは近い。欧州とアジアのサッカー協会の理事を足すとね、多数決であり得なくもない(笑)。どんな状況下でも可能性がゼロではないというのがサッカーの面白さでもありますし、日本とロシアが仲良くなればいいなと。

最後に、日本代表チームが2010年のW杯の出場権を獲得しましたが、今回の予選で皆が知らない大きな事があったんですよね。何かわかりますか?

宮本恒靖選手
宮本さん
何でしょうか……シードに関することとか?
平田さん
アジア最終予選の抽選会の直前にサウジアラビアと日本だけの抽選をしたんですよ、第4シードと第5シードを決める抽選。サウジと日本はドイツW杯で勝ち点も得失点も同じでしたから。その抽選で日本は第4シードになれた。グループ内で2位までが出場権を獲得できるんです。第5シードだったら、ドイツW杯出場国2ヵ国と必ず同組なんです。第4シードだからこそオーストラリア1国だけで済んだ。日本はドイツでは決勝トーナメントに出場出来なくて残念だったけれども、対クロアチア戦で引き分けていることは大きな意味があったんです。そういうことを僕はもっと伝えたいんですね。北京五輪でアジアから出場した韓国、中国、オーストラリアは勝ち点を挙げたのに、日本は勝ち点を挙げられなかった。それにより、アジア枠3のロンドン五輪のアジア予選の抽選から日本は極めて厳しくなることが予測されるんです。
宮本さん
考えてみれば、ヨーロッパの新聞は、チャンピオンズリーグ予備予選であっても、勝ち点を挙げないと翌年どうなるか……といったことを報道するので、試合の重要性が一般の人たちにも伝わる。日本のメディアはあまりそういう取り上げ方をしないですね。
平田さん
この本を書いた理由のひとつに、一つの試合の勝敗だけでなく、W杯や五輪の抽選会のやり方といったサッカーの裏側をもっと知ってもらいたいという思いがあります。ワールド・ベースボール・クラシックの予選にしても、なぜ日韓戦5回やることになるのか。サッカーにかぎらず、スポーツがより成長し、普及していくためには、大会や予選の形式に興味をもってもらうことがとても大事だと思うのです。
宮本さん
そもそもどういう風にシード権が生まれるのかといったことも、日本では説明されていない気がします。メディアの着眼点が変わると、サッカーに対する人々の見方も大きく変わるかもしれない。ぜひ、試合の背景にあることも意識してサッカーを取り上げてもらえたらいいですね。
平田さん
そうやって日本のサッカーがより強く、面白くなればいいなと思いますね。

【取材/宇田夏苗】

プロフィール

平田竹男さん×宮本恒靖選手
右:平田竹男
ひらた たけお
早稲田大学大学院スポーツ科学研究科教授。1960年、大阪府生まれ。横浜国立大学卒。ハーバード大学行政大学院で行政学修士取得。東京大学工学博士。大学卒業後、通商産業省(現経済産業省)入省。在ブラジル大使館一等書記官、資源エネルギー庁石油・天然ガス課長などを歴任しつつ、Jリーグ設立、02年ワールドカップ日本招致に参画。02年に退官後、06年まで日本サッカー協会専務理事。
左:宮本恒靖
みやもと つねやす
1977年、大阪府生まれ。同志社大学経済学部卒。95年ガンバ大阪入団。07年オーストリア1部レッドブル・ザルツブルクへ移籍。09年よりヴィッセル神戸所属、DF。02年日韓ワールドカップ、06年ドイツワールドカップに出場。日本代表として71試合に出場、主に主将として代表チームを引っ張る。年代別代表からフル代表すべてで主将を経験。
公式HP: http://sports.nifty.com/tsune/

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『サッカーという名の戦争 日本代表、外交交渉の裏舞台』
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