楽天ブックス 著者インタビュー

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夏真っ盛り。蒸し暑さだけでもイライラしがちなのに、街角で他人にぶつかったりしたら、思わず鬱憤がたまりそう。でも、ちょっとしたひと言をかけ合うことで、相手も自分も優しくなれる……。ラジオ「土曜サロン」などで一世を風靡したカリスマパーソナリティであり、『女の器量は言葉しだい〜本音で生きたい〜』といった人気エッセイでもおなじみの広瀬久美子さんの最新刊は、そんな「言葉」の魔力と威力を解き明かす『幸せを呼ぶ美人話法』。誰もが悩むあいさつの仕方、敬語の使い方などを軽妙な語り口で紹介した1冊です。言葉にまつわるご自身のユニークな体験談を交えながら、人と人との心をつなぐコミュニケーションの楽しさを伺いました。

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広瀬久美子さんの本

ことば美人は一生の得 広瀬久美子のことばの作法
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プロフィール

広瀬久美子さん (ひろせ・くみこ)
千葉県市川市生まれ。早稲田大学文学部国文科卒業後、NHKに入局、アナウンス室に配属される。テレビ「週刊ボランティア」「平成世の中研究所」「NHKスペシャル」「きょうの料理」「婦人百科」「趣味の園芸」、ラジオ「みんなの茶の間」「午後のロータリー」「土曜サロン〜広瀬久美子のラジオワイド」など数多くの番組を担当。同時に文部省、経済企画庁、総務庁の審議委員を歴任。2000年8月、NHKを“卒業”後はフリーに。東京成徳短期大学講師を務め(平成14年3月まで)、現在は講演、執筆、テレビ、ラジオへの出演、環境省「チームマイナス6%」メンバー、ヒューマンアニマルボンド学会理事、長野県上伊那郡飯島町の「ふるさと大使」などで活躍中。著書は『女の器量は言葉しだい〜本音で生きたい〜』(リヨン社)、『ことば美人は一生の得』(海竜社)、『やがて翔く日のために』(スリーエーネットワーク社)など多数。
広瀬久美子さん公式ホームページ:http://www.hirokumi.com/

インタビュー

−−38年間、NHKのアナウンサーとして数々の番組を担当され、ユーモア溢れる「本音トーク」の先駆け的存在としても知られていますが、もともとアナウンサー志望だったのですか?
広瀬さん私が大学を卒業した当時は、大卒の女性を雇うのはNHKぐらいしかない時代で、どさくさにまぎれて入った感じです(笑)。それに、幼い頃の私はすごく人見知りで、人前で話すなんて想像もできませんでした。4人姉妹の末っ子で、いつも母にべったりくっついて歩いているような子供だったのですから。
−−その広瀬さんがアナウンサーになるというのは、意外な選択だったわけですね?
広瀬さんそうなんです。しかも、入局するまで、NHKをあまり見たことがなかったんですよ(笑)。なにしろ良妻賢母が当たり前の時代でしたから、就職して2、3年で玉の輿にでも乗れればいいかな、という気持ちもありました。ただ、明治生まれの母からは、「手に職を持て」といつも言われていたのです。時代もありますが、とにかく父がワンマンで、男がする悪いことは全部していたわけです。父に女性問題があっても母が全部始末をして、娘たちの面倒も完璧にみていました。そうかといって、女が仕事をして食べていくなんてできない時代でしたから、娘たちを不幸にさせないように、父と別れることは考えなかったそうです。そうしたこともあって、娘たちには1人で生きていけるように、仕事を持ってもらいたかったのだと思います。姉3人も結婚で仕事をいったん辞めましたが、結局、また活動を始めて、1番上は声楽家、2番目は刺繍家、3番目は習字の先生をしていますよ。
−−玉の輿に乗ろうと思っていたのが、なんと38年間(!)も勤めることになったのですね。
広瀬さん 今思えば、短い気もしますが、勤めている間は、毎日のように「辞めよう」と思っていたんですよ。NHKを卒業する時、ロッカーを整理していたら昔のノートが出てきて、「この仕事が合わない、心の底から辞めたい」と書いてあったぐらいです(笑)。まず、合わなかったんですね。何が合わなかったといえば、当時、NHKでは「放送中は絶対に笑ってはいけない」と教えられて、ましてや女が冗談を言うなんて許されなかったのです。ある先輩が放送中に笑ってしまったら、放送後、スタジオの外にお偉いさんがズラリと並んでいて、「なんで笑ったんだ」と怒られたそうです。ところが、私は伸び伸び育ってきたせいか、ユーモアも口に出来ない、決められた枠に収まるのが耐えられない。本当に身を削るような思いでした。
−−そんな広瀬さんが、アナウンサーの仕事の面白さに目覚めたきっかけとは?
広瀬さん「きょうの料理」での日本での四川料理の父と呼ばれる、陳建民さんとの出会いが大きかったですね。とにかく陳さんの言葉がわからなかったんです。ある時、「チュウリ、アタマ」って言うから、おそらくキュウリだろうと思って「キュウリのヘタを取るんですか?」って聞いたら、「違う」と言われて。あとで「つけあわせ」の意味だとわかったのですが(笑)。もう想像で訳すしかなくて大変でした。でも、どんな時でも私が絶対にわかったふりをしないで、その言葉を理解するまで聞いてくるので、陳さんがとても安心してくれたんですね。この2人のおかしなやりとりはすごく人気を集めて、それから自分の仕事ができるようになりました。NHKという枠にいながら、自分の個性を生かしていこうと思ったのです。枠の中でつまらない、決められた言葉でしか物事を伝えられないとしたら、仕事に協力してくれている夫も娘もかわいそう。だからこそ、私にしかできない仕事をするまでは絶対辞められない。そう思っていたら、定年まで続いてしまいました(笑)。
−− この本では、ご自身の「言葉」を通しての、見知らぬ人たちとの心温まる楽しいエピソードを披露されていますが、たとえば、電車の中でお化粧する人を注意したり、叱ったりすることもあるのでしょうか?
広瀬さん 私は口に出しますね。以前、混んでいる電車に、山盛りのカキ氷を持って入って来た子たちがいたので、「人の服についたらどうするの?食べてから乗りなさい」と注意したことがありました。案の定、「うるさい、クソばばあ」と言われて。でも「悪いのはあなたでしょ?」と返したら、次の駅で降りて行きました。電車の中のお化粧にしても、「あっちでおやんなさい」と言いますね。1度、隣の女の子が5駅区間、マスカラを塗り続けていたことがありました。あまり長い間やっているので観察していたら、注意しそびれて、逆に「なるほど、私は塗りが少なかったのか!」と知って、早速真似したこともありましたけれど(笑)。
−−広瀬さんが書かれているように、「知らない人は疑え……」と教えられる時代だけに、見ず知らずの人を注意したり、困っている人に声をかけるのは気が引ける、という人も多い気がします。
広瀬さん今は多くの人が厳しい言葉に慣れていないんですね。だから、ちょっと注意しただけで驚いてしまうんです。それで逆に刺されたり、暴力ふるわれたりするんじゃないか、と恐怖を感じて引いてしまうわけですが、私の場合はある事件をきっかけに、言葉とともに手を貸すことにしたんですよ。新幹線の中で、親子4人が近くに座っていたのですが、男の子がものすごく泣いていたので、後ろの男性が「静かにさせなさい!」と注意したのです。その子の母親が「静かにさせてます!」と反論すると、その男性は「させてないじゃないか!」とますます怒ったんですね。その父親は居たたまれなくなったのか、その子を抱いて、車両から出て行きました。私はトイレに行くついでに、父親がいる売店のところに行って、「代わりに抱いていてあげましょうか?」と声をかけたんです。そこで初めて「すみません」と謝られ、以後、「人見知りが激しくて大変だ」、「ベビーバギーに乗せて寝かせたら?」などと、お互いに話が出来るようになりました。そして、その男の子にも「静かにしようね」と語りかけたんです。すると、お父さんも「静かにしようね」と優しく呼びかけて。新幹線を降りる時、その子がぐっすり眠っていたので、「大物になるわね」と言ったところ、「ご迷惑おかけして申し訳ありませんでした。今度乗る時には考えます」と言ってくれました。ただ文句を言ったり、注意するのではなく、ちょっとしたひと言と、手を貸すことで、相手の気持ちがすごく変わるのだな、とこの時つくづく感じました。手を貸すことで、100%近く、他人とのいい関係が生まれますね。
−−ちょっとしたことで相手の態度が柔らかくなったり、固くなっていくというのがとても興味深いですね。
広瀬さん言葉は使い方ひとつで、人の心を温める太陽にもなるし、逆に北風にもなる生き物のようなものなんです。たとえば困っている人に声をかける時も、「大丈夫?」と言う前に、ひと言加えるといいと思いますよ。もし、自分が街中で転んで倒れている時に、「大丈夫?」と見ず知らずの人に言われたら、大抵は「大丈夫です」と答えてしまうものです。そんな時、私は「あら、大変!」と、その当人の気持ちになって言うのですが、このひと言を加えるだけで、相手の人が好意を受け取りやすくなるんですね。
−−これまでに数多くのインタビューをされていらっしゃいますが、ちょっとしたひと言葉に加え、心地良く会話を進めるための秘訣はありますか?
広瀬さん「私に任せていいのよ」と、まず相手を安心させることです。インタビューとなれば、いわば対峙したときにタイマン張ることになるわけです(笑)。お互いに緊張して当然ですから、スタジオの中で安心してもらわなければ始まらないんですね。私の場合は、「普段の通りにお話して下さい。ブスな妹がいると思って下さい」と言っていました。この「ブスな妹」というのが重要なんですけれど(笑)。それが効かなければ、「もう1人美しい妻がいると思って下さい」と使い分けていました(笑)。
−−欧米などでは、人の前を横切る時には、「エクスキューズ・ミー」と当たり前のように言いますが、他人への言葉のかけ方というのは、習慣性のものでもあるのでは?
広瀬さん あいさつにしても、親がしなければ子供は学びません。以前、まったくあいさつをしない人がいたのですが、私は無理やりつかまえて、「こんにちは」と言い続けたら、あいさつしてくれるようになりました(笑)。あいさつは美貌の元ですし、ニッコリとあいさつしていれば、世界は変わると思います。行動ひとつにしても、同じことが言えますね。スーパーの自動ドアを通るにしても、我先にと出て行くのではなく、自動ドアを押さえて「どうぞ」とやっていくうちに、いつのまにか、そういう人が増えてくるんですよ。  私がアナウンサーになりたての頃、半年間の研修を受けたのですが、そこで読み方、声の出し方を徹底的に教えられました。「口が開いていないから、やる気がないように聞こえる」などと言われて。野球の中継をしたこともあるのですが、よくわからなくて「わー」とか「キャー」とか言っていたら、隣の先輩に「何が起こっているのかをちゃんと伝えなくてはだめだ」と叱られて、泣き出したこともありました。すると「泣いたら中継ができない」とまた怒られて。あの時の経験がなければ、今の私はいないでしょうね。1人前になれずに途中で辞めていたと思います。そう考えると、先輩や親たちが感情ではなく、礼を尽くして後輩や子供たちにきちんと必要なことを伝えていくことは、とても大事です。今は子供を叱るにしても、自分が憎まれたくないから何も言わない。少年少女の犯罪が増えていますが、まず、親が悪いと思いますね。しっかりして欲しい。
−−これまでにも「言葉」をモチーフに著書を出されてきましたが、4年ぶりの新刊に込めた思いとは?
広瀬さん 今、一番乱れているのが人の心ではないかと思うのです。心は言葉によって表されます。ちょっとしたひと言をかけるゆとりや勇気もないのです。「返事されないと嫌だ」「反応がないとつまらない」とかという私利私欲ではなく、「私の助けがいるのであれば受けてもらっていいし、いらないのであれば、それでいいのよ」という大きな気持ちで、ちょっとしたあいさつ代わりに言葉を発していけば、自分自身はもちろん、人の心や社会、そして世界も変わっていく。そのことを、私自身の体験を通して、知って頂ければと思いました。
−−最後に、この本をどんな風に読んでもらいたいですか?
広瀬さん言葉によって、必ず自分の世界が変わるので、この本に書かれていることをぜひ、実践をしてみて欲しいですね。本の後半には、敬語の使い方について述べていますが、最近、特に気になるのが「あげる」という言葉の使い方です。「やる」という言葉が汚いと思っているのか、犬や猫にまで「水をあげる」などと間違って使っている人が多いですね。それからお店などで使う、「よろしかったですか」という変な言葉。そして「ら抜き」言葉にしても、日本語の間違いに気づくと、もっと美しい言葉を話せるようになるはずです。たった1度の人生ですから、言葉を大切にすることで、よりすばらしい人生を送って頂ければうれしいですね。

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