楽天ブックス 著者インタビュー

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エッセイや翻訳でも活躍するマルチな女優・本上まなみさん。こうのとりの「ぱた」が活躍する『ぱたのはなし。』に続く、2冊目の創作童話が『こわがりかぴのはじめての旅。』。今度の主人公は、こわがりやで心やさしいカピバラのぼうやの「かぴ」。カピバラっていったいなんでしょう? カピバラの魅力と、絵も文章もご自身で手がけた楽しいお話を伺いました。

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本上まなみ『こわがりかぴのはじめての旅。』『こわがりかぴのはじめての旅。』
こわーい“まっくろ森”を抜けて、大好きなおばあちゃんのお見舞いに…
1,260 円(税込)
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プロフィール

本上まなみさん (ほんじょう・まなみ)
1975年生まれ、東京都出身。牡牛座、B型。4歳から20年間を大阪で過ごす。趣味は読書、映画鑑賞、旅行、料理、写真、散歩、へもいもの(ちょっとダサイ、イケてない、たよりない雰囲気をかもしだしている、でも愛らしくにくめない様子、の意。)収集。雑誌連載やCMでも活躍。レギュラー番組 「トラベリックス〜世界体感旅行〜」ナレーター(BS日本)、「トップランナー」(NHK教育)では山本太郎氏とホスト役を務める。金曜夜6時20分NHK教育テレビ「天才ビットくん」の中のアニメ「おでんくん」では初の声優にチャレンジ。シュールな主人公の声を担当している。
公式HP 「 ほんじょのうさぎ島。」 :http://www.honjomanami.com/

インタビュー

−−『こわがりかぴのはじめての旅。』は、本上さんに朗読していただいたら最高にシアワセかも、という感じの、やさしい印象のお話ですが、前作の絵本『ぱたのはなし。』からすると、本文も読みでがある、創作童話なんですね。
本上さん 去年『ぱたのはなし。』を作っている間、スゴク楽しかったんですが、「次にもし機会があったら、こうしてみたいな」という思いがありました。それで、今回は担当編集者と「前とちょっとちがうものを作りたいですね」という話をしたんです。担当の方からも「長い文章も書けるんじゃないですか、トライしてみたら」と言われて、自分でも、もうちょっと長い文章を書いてみたい気持ちがあったので、がんばってみました。ですが、われながらここまで長くなるとは思っていなくて。書いていくうちにちょっとずつ増えて、今の文字数になってしまいました。原稿用紙で70枚、ですね。

 絵に関しては、『ぱたのはなし。』は、私が描いた線画に、デザイナーさんがパソコンで色をつけてくれたんですが、今回は、自分で色も塗ってみようということで……。でも、もともと絵を勉強していたわけではないので、どんな画材がいいのかとか、そういうひとつひとつがわからなくて。装丁を手がけていただいたデザイナーの方に、画材の選び方や使い方を教わりつつ、パステルと、水彩色鉛筆、油彩色鉛筆で、色をつけました。
−−油彩の色鉛筆とか、楽しそうな画材ですね。
本上さん水彩の色鉛筆だと、水に滲んで絵の具のようにも使えるそうです。楽しかったですね。背景は主にパステルで色をつけました。チョークみたいな形に粉を固めてあって、それをけずってティシュでこすって、モワモワ〜ってのばしたり。動物たちは基本は色鉛筆ですが、色の具合で使い分けたりもしました。

 今回の主人公はカピバラっていう動物なんですが、このカピバラ、なかなか形のバランスが難しい動物なんですよ。キリンみたいに首が長いとか、そういう特徴があまりにも少ない動物で、なんとなくモサッとしている。形を決めていくのが、かなりたいへんでした。しかも、文章を書きつつ、絵の練習もして、さらに文章に手を加えながら、そのシーンの絵を描くっていう具合の、同時進行でした。

 描きたいシーンがあったので、デザイナーさんに相談しながらすすめました。ここには2ページ使って、大きな絵があるといいねとか、ここだと一色になるよとか、そういうことも教えてもらって、全部相談しながら、配置を決めていったんです。
−−その間も、普通にレギュラーの仕事を続けられてたんですね。どうやって時間を作ったんですか?
本上さんいやぁ、うちにいる時はその作業ばっかりで、家事はすいませんが、まかせますって(笑)。
−−ご結婚なさった相手の方も出版社の編集者さんですね。「がんばって」みたいな応援とかアドバイスをいただきましたか?
本上さんそうですね〜、それはありましたが、アドバイスはあんまり(笑)。あ、でも、文章に関しては、全体の流れをみてくれたり、「いい人ばっかりだけど、悪い人も出さないとおもしろくないんじゃないか」なんて、なるほど、の意見ももらいました。
−−これだけまとまったものを作られて、いかがでしたか?
本上さん本が完成してすぐのことですが、握手会用にサインをしたんです。大きな固まりみたいに何百冊も、テーブルの上に新しい本が並んでいて、その一冊一冊にサインをしていくんですが、この本の主人公の「かぴ」が、これからみんなのもとに出発して行くんだな、その準備をしているんだって思ったら、あぁ、やっとできたんだっていう実感がわいてきて、とてもうれしかったですね。
−−このカピバラの「かぴ」なんですが、不思議な動物ですね。本を読むと、本上さんがとっても好きだというのが伝わってきますが、もともと知っていた動物なんですか?
本上さん一番最初はテレビで見たんですね。動物とか紀行ものなんかの自然番組が好きで、そんな番組の中に出てきたんです。こんなに大きい動物なのに、気が弱くって臆病なんですよ。それから、何かの文章で、びっくりすると気絶するって書いてあって(ほんとかどうかわからないですけど)、ゆったり大きな佇まいと、見た目とはちがう性格というギャップにひかれて、「この動物おもしろいなぁ」って思ったんですね。さらに去年の夏、北海道の旭山動物園に行った時、カピバラの親子を見たんです。大きなお父さんが横たわっているそのうえに、3頭、子どものカピバラが乗っかっているとか、大きいのが移動すると、小さいのがカモの親子みたいに、のそのそ後ろに連なって歩くんですね、それがおもしろくってかわいくって。ところが、カピバラってどんな動物かくわしく知らなかったんですよね。それで、動物図鑑を見たり、カピバラが好きな方が作ったホームページを見たりして。そうするうちにどんどん愛着がわいてきて、このコを主人公にしようと決めました。

 ほんとに「知る人ぞ知る」どちらかというとマイナー動物なのです。で、会う人、会う人に、「カピバラって知ってますか?」って聞いたんですけど、「なに? かび? ばら?」とか、ぜんぜん違う答えが帰ってきて。そんなに知られてないなら、ますますがんばらなきゃって思いました。なにしろ、世界最大のネズミなんだよって説明すると、「気持ちワルーイ」とか、「こわい」とか、いわれるんです。「ネズミなんだけど、尻尾はなくって、のんびり屋で草食で、ちょっとモサッとしてて、小さいコはモルモットみたいで、とってもかわいいんだよ」って、一生懸命説明してるんですけど。
−−帯にカピバラといっしょの本上さんの写真がありますね。
本上さん「長崎バイオパーク」の写真です。カピバラの聖地って言われていて、カピバラと触れ合える珍しい動物園なんですよ。本当は創作する前に行きたかったんですけど、タイミングかあわず、5月の連休あけに行きました。カピバラの性格や行動は、けっこうたくさん調べたつもりなんですけど、でも、自分のイメージで書いてる部分もあったので、ドキドキしながら、カピバラ歴20数年という飼育係の方に話を伺いました。本文を読んでいただいて、「あ、あってます、こんなカンジです」って、言っていただけて、ひと安心だったんですが、実は一カ所だけ修正するところがあって(笑)。

 カピバラは泳ぐのが大好きなので、途中、川で水浴びをするシーンを作ったんです。水からあがった時には、毛もつややかになって、ひげもすっかりピンとして、立派なカピバラに見えましたって書いたんですけど、実は、カピバラには目立つようなヒゲがなかったんです! 「ヒゲがピンとして」というりりしいイメージにしたかったので、そういう言葉を入れてみたんですが、そこはあわてて直しました。
−−ほかにもたくさんの登場人物というか、登場動物たちがでてきますね。
本上さん最初から決まっていたものもいるし、ちょっとへんなヤツを登場させようとして増やしたのもいます。逆に最初は出ていたのに、書いていくうちにいなくなったのもいます。動物の種類をチェンジしたものもいますよ。大雑把ではあるんですけど、カピバラが南米に住む生き物なので、なんとなく南米にいる動物を中心に登場させています。途中、オオアルマジロの兄弟がでてくるんですが、もともとはサイの兄弟だったんですね。でも、サイはアフリカの動物で(ジャワのほうにも住んでたりするんですが)、南米にはいない。動物図鑑を見ながら、「あ、アルマジロっていうのがいる、これにしよ」って登場させたんです。

このアルマジロの形にも悩みました。最初ぜんぜんちがう形だったんですけど、アルマジロに見えないっていう意見があって直しました。あと苦労したのは、アナグマの色です。背景から色を塗るんですが、動物に色がつかないように、マスキングシートを貼って作業するんです。ところがアナグマの色が決まらない。デザイナーさんと5パターンぐらいの同じ形のアナグマの色見本を作りました。目元がブルーっぽいのとか、黒っぽいのとか、それを背景の上に置いてみて、遠くから見て、う〜ん、これは背景になじみすぎ、こっちは不思議キャラがよく出てる、とか、あーでもないこーでもない。アナグマって、悪気はないけど、まわりの人をひっかきまわすキャラクターで好きなんですけど、たいへんでした。
−−そんな動物たちのやりとりを通して、「かぴ」の成長の過程を描いてるんですね。どんな人に読んでほしいですか?
本上さんそうですね、小学生から、どなたにでも……と思います。誰でも、人生に一回は、初めて何かの「おつかい」に行かなくてはならない時があると思うんです。これは、誰にでもあって、不安だったり、ちょっと晴れがましいけどすごくドキドキしていたり。道を間違えた時の怖さとか、何でもないものがすごく恐ろしく見えたり、とか。そういうドキドキ・ワクワクする気分をもう一度思い返してもらえたらなって思います。それはきっと、どんなお年寄りの方でも、体験してきていることなんですよね。だから、この話は「動物版はじめてのおつかい」ですね。
−−そんな「かぴ」は、本上さんご自身だったりするんですか?
本上さんそういう部分が多分にあると思います。書いているうちに、自分がこういうことに出くわしたら、コワイものに出会ったら……動けなくなっちゃう。対峙する冒険心はないなって思って。そういうところはものすごく似てると思います。あとは、ちょっとしたことに夢中になってしまって、うっかりお弁当落してしまうとかね。すごく「かぴ」に似てる……かなぁ。
−−それじゃ、本上さんを思い浮かべながら読んでも大丈夫、ですね。
本上さんそうですねー。でも、まわりをふりまわすアナグマとか、ほかの動物たちにも少しずつ似てるような気がしますね。いろんな動物に、私がはいっているんじゃないかな。
−−前作の「ぱた」がちらりと登場しているのも、読者にとっては楽しみですね。次の本にも「かぴ」が登場したりすることがあるんでしょうか。
本上さん(笑)あるかも! 「かぴ」が出会う動物たちの中の誰かが、次の主人公になるかもしれないですね。アナグマなんか有力候補、ですね。
−−ここで、一冊まとめられて一段落されたところだと思いますが、今後も続けて本を出されるのですか?
本上さん連載しているコラムや、エッセイの仕事もちょこちょことあるので、今年中にはまとめたいと思っています。でも、新しく0(ゼロ)から物語を作る楽しみは、またそれとは別のものなんだなって、今回改めて感じました。もしまた機会があれば、ぜひ、やってみたいと思っています。

 文章を書くということは、俳優の仕事をして演じることとは別の表現の手段なんですね。性格が、のんびりしているので、マイペースですすめられる、文章を書くという時間の流れ方も、自分にはわりと合っているような気がしています。演じること以外にも、表現できる場があるということは本当に幸せだなって思います。これからも続けていけたらうれしいです。
−−ありがとうございました!
やさしい言葉遣いとあたたかい雰囲気の絵に、ホウッと肩の力を抜いて読める本です。読み終わるころには、あなたもきっと、カピバラと、カピバラが大好きな本上さんの友達になったような気がする本です。【インタビュー 波多野絵理】

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