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動物写真家の岩合光昭さんが猫の撮り方を大公開!『ネコを撮る』を読んで町に出れば猫と猫の住む環境が見えてくる!

岩合光昭さん
アフリカの野生動物をはじめとする世界各地の動物たちを撮影してきた岩合光昭さん。猫好きの必携写真集として知られている『ニッポンの猫』『地中海の猫』でファンになった方も多いだろう。『ネコを撮る』は岩合さんが猫の撮り方を指南する待望の入門書。猫を上手に撮りたい、もっと猫と仲良くなりたい人におすすめ! また発売されたばかりのユニークな写真集『地球動物記』(福音館書店)についてもお話をうかがった。

岩合光昭さんの本


『ネコを撮る』
『ネコを撮る』

岩合光昭
朝日新聞社
720円 (税込 756 円)

『地球動物記』
『地球動物記』

岩合光昭
福音館書店
4,700円 (税込 4,935 円)

『10ぱんだ』
『10ぱんだ』

岩合光昭/岩合日出子
福音館書店
900円(税込:945円)

『ちょっとネコぼけ』
『ちょっとネコぼけ』

岩合光昭
小学館
1,400円 (税込 1,470 円)

『旅ゆけば猫』
『旅ゆけば猫』

岩合光昭
日本出版社
1,800円 (税込 1,890 円)

『きょうも、いいネコに出会えた』
『きょうも、いいネコに出会えた』

岩合光昭
新潮社
629円 (税込 660 円)

『ママになったネコの海ちゃん 』
『ママになったネコの海ちゃん 』

岩合日出子 /岩合光昭
ポプラ社
650円 (税込 683 円)

『こねこ』
『こねこ』

岩合光昭 /小野寺悦子
フレーベル館
450円 (税込 473 円)

『ニッポンの猫 』
『ニッポンの猫 』

岩合光昭
新潮社
2,200円 (税込 2,310 円)

『地中海の猫』
『地中海の猫』

岩合光昭
新潮社
2,200円 (税込 2,310 円)

『ニッポンの犬』
『ニッポンの犬』

岩合光昭 /岩合日出子
平凡社
2,800円 (税込 2,940 円)

『スノーモンキー』
『スノーモンキー』

岩合光昭 /岩合日出子
新潮社
1,500円 (税込 1,575円)

『ホッキョクグマ』
『ホッキョクグマ』

岩合光昭
新潮社
2,200円 (税込 2,310円)

『ワイルドライフ』
『ワイルドライフ』

岩合光昭
日経ナショナルジオグラフィック社/日経BP出版センター
1,400円 (税込 1,470円)

『岩合光昭の大自然100』
『岩合光昭の大自然100』

岩合光昭
小学館
2,500円 (税込 2,625円)

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プロフィール



岩合光昭(いわごう みつあき)さん
1950年東京都生まれ。動物写真家。地球上のあらゆる地域をフィールドに撮影を続けている。その作品は「ナショナルジオグラフィック」誌の表紙を2度にわたって飾り、全世界で高く評価されている。1979年、「海からの手紙」で第5回木村伊兵衛賞を受賞。全世界でベストセラーとなっている写真集『おきて』をはじめ、数多くの写真集を発表している。そのほかの写真集に『ホッキョクグマ』(新潮社)『ちょっとネコぼけ』(小学館)『スノーモンキー(とんぼの本)』(新潮社)『旅ゆけば猫』(日本出版社)ほかがある。

インタビュー


――よく「あなたは猫派? 犬派?」なんて分け方がありますが、岩合さんは動物写真家として『ニッポンの猫』『ニッポンの犬』と、それぞれの決定版的な写真集を出されています。猫、犬それぞれの被写体としての違いについて教えてください。


岩合さん 犬や猫に限りませんが、動物の撮影をするときには、まずその動物がどういう環境でどんなものを食べて生きているかに注目します。犬と猫に共通しているのは、人との関わりが深いことですね。
 犬に特徴的なのは、半分はご主人の顔を見ながら、半分はご飯を見ながら暮らしていることです。そういうことが写真として表れるような撮り方を心がけていますね。


岩合光昭さん


――なるほど、犬はご主人との関係がかなり濃密ですよね。一方の猫は勝手気ままというイメージがありますがどうでしょう?


岩合さん 確かにそうですね。挨拶代わりにまず1枚。カメラを嫌わないような猫であれば、いましばらくつきあってください、という感じで撮影します。最後は、じゃあ踊ってみようか? というところまでいけるといいんですが(笑)。


――この本を読むと、岩合さんが猫とコミュニケーションをとろうとしている様子がうかがえます。

岩合さん コミュニケーションを取るように心がけてはいますが、それは本当に猫様しだいですね。拒否されたら、「じゃあね」と去るしかない。猫はしつこくするとダメなんです。拒否されたら、ほかのモデルを探しに行くようにしていますね。


――高校時代から猫を撮り始めていたということですが、写真家になろうと思う前から猫を撮っていたんですか?

岩合さん
 猫を撮り始めたときには写真で食べていくことを意識していましたね。猫を撮り始めたきっかけは、外国の写真集を見て、撮ってみたら面白そうだなと思ったからなんですが、実際に撮ってみるとなかなかうまくいかない。きっとみなさんもご経験されていると思うんですが、猫を撮るのはたいへん難しいものなんですね。
 思ったように猫の写真が撮れない。どうしたらいいんだ? というお便りがぼくのところによく届くんですよ。この本を書こうと思った理由の一つはそういう質問をよく受けるからです。どんなにその猫を愛していても、写真に上手く写ってくれるとは限らない。愛情の問題ではないような気もします(笑)。
 カメラは機械だから、目の前のものがそのまま写ってしまう。写真として面白くするには、一工夫必要です。ではその工夫は何かというと、この本の中で書いたような、光の生かし方だったり、猫のしぐさだったりするんですよ。そのへんが徐々にわかってくると、もう面白くて面白くて。おいしいポテトチップスを食べているような感じになりますよ。やめられない止まらない(笑)。


――『ネコを撮る』を読んで思ったのは、猫を上手に撮るには猫の生態をよく知ることが大事なんだなということです。

岩合さん 猫の動きを見ていても、猫を理解したとはいえないと思うんですよ。きっと死ぬまで猫のことがわかったとはいえないと思うんですが、そこが魅力なんですよね。わからないからこそ、もっともっと見ていたい。
 人は物事に対して常に因果関係を求めてしまいますよね。こうするとこうなる、って。猫にはそれが通じないんです。野生動物もそうですが、自然を人間が考えるような因果関係で理解することはできないんですね。そこが猫を撮る最大の魅力であって、猫の身体から醸し出るような不思議さが写真に写るといいなと思いますね。
 その不思議さを表現するために大事なのは"空間"だと思います。ぼくが猫と対峙したときにいちばん感じるのは猫のいる"空間"が大事なんだということですね。その空間を撮れれば最高ですね。


――猫がいる空間は、猫がそこにいると気持ちいいと感じる空間ですね。たしかに猫がいる場所には共通点があるような気がします。

岩合さん おっしゃるとおりですね。猫が安心していられる場所です。具体的には坂の上とか、クルマの通りが少ないところとか、猫がのんびりできるところですね。


――猫が住みやすい場所があるかないかは人間の生活とも密接に関係していますね。

岩合さん 通りも建物もそうですけど、猫がはいでる隙間がある場所があって、暖かくて、水があるところ。日本にも60年代くらいまでには猫が住みやすい美しい町並み、川、山がありました。ところが今では、その風景はいったいどこへ行ったんだろう? と思うくらい変わってしまいましたね。猫がどう思っているかはわかりませんが。
 一歩引いて町並みを見ると、猫が暮らしやすい場所は人も暮らしやすいんだと思います。美しい川が流れていて、そのそばには家があって暮らしがある。そういう場所が昔から猫が住んでいる場所なんですよ。


――岩合さんが町で猫を撮影していて「いい猫だな」と思うのはどんな猫ですか?

岩合さん メスはやっぱり美猫がいいです。オスは少し大きくて、雄雄しい猫、たくましい猫に出会うと「いいね、男らしいね」と思いますね。とくにいかにも日本の猫、と感じられるような雰囲気の猫が好きです。
 いま、地方へ行っても、その地方らしい町のたたずまいがどんどん少なくなって、どこもかしこも同じような町になってきていますが、猫もそうなんですよ。ちょっと外国の血が混じっていたり、これが本当に日本の昔からいる猫かなあ、と思うような毛の長い猫がいたり。それはそれでかわいいのかもしれませんけど、日本の猫とはちょっと違う。


――岩合さんが猫に惹かれて、猫を撮り続けている理由は何でしょうか?

岩合さん 一言で言えば、人が作ったものではないから。極論を言えば、人が作ったもの──たとえば新しい建物ができたよ、と言われても──には、それほど関心はありませんね。新しい建物ができたと聞いても、これでまたスカイラインのかたちが変わるな、環境が変わるな、と残念に思う気持ちのほうが大きいですね。


――人間のこれまでの歩みを考えると、これから都市化は進むことはあっても、自然に戻っていくことはちょっと考えられないですね。

岩合さん 新しい道路は必ず道幅を広げて作られますからね。猫は適当な幅の道があるとご機嫌なんです。幅の広い道路は横断するだけでも危険ですから。交通事故で毎年、どのくらいの猫が犠牲になるのかを考えると……。発想を変えて、猫が安心して通れる道を作れば、それは人間にとっても快適な道なんじゃないかと思いますね。


――猫が安心して暮らせる町があれば、そこは人間にとっても住みやすい町になるような気がしますね。
 ところで、岩合さんは猫に話しかけながら撮影するそうですね。

岩合さん 大いに話しかけますね。野生動物を撮る場合は、話しかけても通じないから直接的には話しかけませんが、猫は人の言葉をかなり理解できると考えていいと思います。経験上ですが、メスよりもオスのほうがおしゃべりですね。オスは人に向かって話しかけてきますよ。


――今度猫を見かけたら積極的に話しかけてみます(笑)。日本の地方で、猫がいる町で印象的だったところはどこですか?

岩合さん 坂の多い街ですね。たとえば長崎、尾道。坂の上に猫がいると存在感があって猫が大きく見えるんですよ。この町の猫はずいぶん大きいな、と思いますから(笑)。
 猫の多い町でも、このブロックにいて、あちらのブロックにいて、という感じでいることが多いんですが、沖縄のある町では猫が線でつながっていました(笑)。5メートル置きくらいで猫がいて「ここにもいる」「ここにもいる」って。沖縄の町は新旧混在していて、新しい建物もあれば、石畳の道もある。そういう路地を猫が歩いているのを撮影するのは楽しかったですね。


岩合光昭さん


――猫と人間は紀元前からのつきあいだといいますが、それだけつきあいが長いのにも関わらず、品種改良もされなければ、とくに役に立つことをさせるでもない。ネズミを捕ってくるは猫の大切な仕事ですけれど。

岩合さん そのことについては考えてみたことがあります。人が猫を家畜にしたんじゃなくて、猫が人のほうに近づいてきたんじゃないか。猫が「家畜になってやろうか? 仲良くなってやってもいいよ。その代わり、従わないよ」(笑)。そうとしか思えませんね。


――話は変わりますが、『地球動物記』(福音館書店)が発売されました。こちらは大判で分厚い本で、250種類もの野生動物の写真が一冊にまとめられていますね。

岩合さん この本はどんな本ですか? と聞かれて簡潔に答えるとすると「一年は365日ありますが、1月1日には1月1日に撮った写真、1月2日には1月2日に撮った写真を並べた本」なんです。過去34年間に撮影した写真です。


――ユニークな編集形式ですね。しかし、×月×日に撮影した写真、という条件で写真をピックアップすることだけでも相当に大変だったのではないでしょうか?

岩合さん 大変でした。去年一年はこの編集にかかりきりでしたね。フィールドノートをひっくり返して、この年のこの日はどこで何をしていたかを調べて写真を見つけ出しました。その写真を並べてカレンダーにしてみたんです。そうしてあらためて動物たちの写真を見ると、地球は元気だな! と思ったんです。地平線の丸みが感じられるような気がしましたね。
 ところが、現実には地球温暖化が進んで、北極の氷が溶け出しているというような深刻な問題がある。では、地球の丸みや、空気の厚さを取り戻すためにはどうすればいいか──動物たちはどう思っているのかをみなさんに見ていただいたらいいんじゃないか。そう考えてこの本を作ることにしたんです。
 最初の数枚目には真夏のオーストラリアでアシカがサーフィンしている写真を掲載しています。


――地球は丸いと実感できますね。

岩合さん もう一冊、もうすぐ福音館さんから『10パンダ』という絵本も出ます。ページをめくるごとにパンダが増えていって……という面白い写真絵本です。


――それはかわいい写真絵本ですね。そちらも楽しみです。今日はありがとうございました!



『ネコを撮る』のユニークなところは、猫の撮り方から始まって、野生動物の撮影にまで話がおよぶところです。猫を入り口に野生動物へまで話を広げるのは、動物写真家としてキャリアを積んできた岩合さんならでは。本を読んだ後、猫に対する見方が変わります。『地球動物記』もそうですが、動物たちと人間は共存共栄。同じ地球の仲間として幸せに暮らしていきたいものです。
【タカザワケンジ】


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