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陰山英男先生

小学校からでは遅すぎる。 陰山メソッドの決定版! 「早寝・早起き・朝ごはんノート」


「百ます計算」でおなじみの陰山英男先生が、陰山メソッドの決定版『早寝・早起き・朝ごはんノート』を上梓した。小学生の学力向上で注目を浴びた陰山先生が提唱するこのメソッドは、1歳からの未就学児も使える、日々の生活記録を書き込む実践ノート。「幼児期の生活リズムを整えることが子どもの成長、ひいては学力を高める根幹」という陰山先生に、「早寝・早起き・朝ごはん」の真の効用と、日本の社会や教育の抱える問題点について伺った。



陰山英男さんの本


『陰山英男先生の早寝・早起き・朝ごはんノート』
『陰山英男先生の早寝・早起き・朝ごはんノート』
陰山英男
講談社
1,200円 (税込 1,260 円)


『陰山メソッド徹底反復「百ます計算」 徹底反復計算プリント基礎編』
『陰山メソッド徹底反復「百ます計算」 徹底反復計算プリント基礎編』
陰山英男
小学館
500円 (税込 525 円)


『陰山メソッド徹底反復「プレ百ます計算」百ます計算をはじめる前にとりくむ本!』
『陰山メソッド徹底反復「プレ百ます計算」百ます計算をはじめる前にとりくむ本!』
陰山英男
小学館
500円 (税込 525 円)


『陰山メソッド徹底反復「音読プリント」』
『陰山メソッド徹底反復「音読プリント」』
陰山英男
小学館
500円 (税込 525 円)


『学力低下を克服する本 小学生でできること中学生でできること』
『学力低下を克服する本 小学生でできること中学生でできること』
陰山英男/小河勝
文藝春秋
552円(税込:580円)


『学力は家庭で伸びる』
『学力は家庭で伸びる』
陰山英男/小河勝
小学館
476円 (税込 499 円)

プロフィール


陰山英男さん(かげやま ひでお)
1958年兵庫県生まれ。兵庫県山口小学校教諭、広島県土堂小学校校長を経て、2006年4月より立命館小学校副校長・立命館大学「大学教育開発・支援センター」教授。公立小学校在任時より、「生活習慣の改善」と「読み書き計算の反復学習」を柱とした独自のプログラム『陰山メソッド』を実践。
子どもたちの学力や意欲を驚異的に向上させ、その成果が全国の教育関係者から大いに注目を集める。『百ます計算』などに代表される学習法は、小学生の保護者を中心に絶大な信頼と支持を得ている。現在、文部科学省の「中央教育審議会」委員に加え、今秋発足した「教育再生会議」の委員も務める。子どもたちの健やかな「育ち」には、「家庭の力」が不可欠、そのためにはまず、「早寝・早起き・朝ごはん」を、と提唱。趣味は写真とジャズとオーディオ。

インタビュー


◎「生活習慣の確立こそが、子どもたちの元気作りの素。現代の子どもたちの最大の問題は、元気の不足なんです」

−−まず、新著において、陰山先生がもっとも訴えたかった「思い」とは何でしょうか?また、これまでの著書と比べて、もっとも大きな違いを教えてください。


陰山先生 今までは小学生対象のものばかりだったので、就学前の子ども向けは、はじめてなんです。学年が進むにつれて子どもたちに差がついていくと思っている人が多いのですが、実は、小学校に入ってきたときこそ、いちばん違いがあるんです。それぞれの長所短所はありますが、保育園、幼稚園、自宅にいた子など、生活習慣がまちまちなわけです。
だから、小学校の段階までに生活リズムを整える準備をしておくことが重要です。小学校の早い段階で色々な問題が出やすいんです。


−−なるほど、小学校に入ってからでは間に合わないというわけですね。私も実際ノートをつけてみましたが、子どもが保育園に行っている間のことも記入したほうがよいでしょうか?


陰山先生 最も重要なのは生活習慣の確立なんです。保育園はお昼ご飯も出るし規則正しい生活に自然となりますが、家庭にいるときに生活が崩れてくるんですね。だから、家庭の様子を記入していただければいいんです。
生活習慣の確立こそが、子どもたちの元気作りの素。現代の子どもたちの最大の問題は、元気の不足なんですよ。
ゆとり教育でなぜ教材を削減しなければならなかったのかわかりますか?
それは、現代の子どもたちは、集中力の低下が著しく、カリキュラムに対応できなくなったからなんです。昔から詰め込み教育は行われてたにもかかわらず、です。


−−陰山先生は、「お父さんを夜7時の食卓に取り戻すことが子どもの学力向上のカギ」と常々訴えられていますが、現実は、都心で働くお父さんは夜7時には家に帰ってこられない構造になっています。社会全体として、今後、ワークライフバランスの問題にどのように取り組んでいけばよいと思われますか?


陰山先生 まず、みなさん、夜のテレビニュースは何を見ていますか?
われわれの子どもの頃は、7時のNHKニュースと決まっていました。お父さんが、子どもにニュースの内容を解説しながら見るんですよ。ところが、今では、そういう光景はめっきり少なくなりました。
教育再生会議でも、「ワークライフバランス」が大きな問題になっています。きちんとした生活習慣なしではフルパワーで働けるはずがない。規則正しい生活は、大人にもよいことなんです。7時間台の睡眠がいちばん仕事の効率がいいという調査の結果もありますし、子どもも7〜9時間の睡眠がもっとも学習効率が高まるようです。効率的な生活習慣をいかに確保するかが日本の社会の課題なんですね。


−−実際に、お父さんの残業を減らすにはどうしたらよいと思われますか?

陰山先生 会社が変わっていく必要あるでしょう。それには、能率を高めなくては。朝7時〜夜9時まで毎日働いていては、能率はあがりませんよ。
そもそも、私たちはこの国に生まれて、いつになれば幸せになれるのでしょう?
子どもの頃は受験に追い立てられ、「いい大学」を出て「いい会社」に入っても残業に追われ、年をとったら自分の子どもにナイフを持って追いかけられるという痛ましい事件も後を絶たない。
なんのために働くのか社会全体がぼやけていて、ちっとも幸せじゃないんです。
何かに追いかけられて生きているんですね。子どもたちはそんな大人の姿を見て育ち、やっぱり幸せじゃない。日本全体を、根本から考えてみる必要がありますね。


◎「今の日本の社会のキーワードは「依存と競争」。これからは、「自立と共生」が必要です」

−−やはり会社を変えるにはひとりひとりが声をあげることが必要なんでしょうか?

陰山先生 声をあげなくても定時になったら帰ればいいんです。今の日本の社会のキーワードは「依存と競争」。みんなが大きい入り口向かって、目指している。だけど、本当に重要なのは、自立することなんです。
特に都市部では、「中学受験」に必死になっている人も多いですが、これは、自立を忘れているんです。教育というと、「どこかに入るため」のものだと思っている人が多い。本来「社会的に自立すること」が教育の目標なのに、いつからか大きな組織に入るためのものになってしまっているんですね。寄らば大樹の陰では、大企業も幹のほうが倒れてしまう。全員が依存体質でいたら、社会が立ち行かなくなります。
いわゆる受験を乗り越えてきた子どもたちは、答えのない未知の勉強をやったときに困るんです。子どもの頃から至れり尽くせりでは、1人になったときに何もできないでしょう。これからは、「自立と共生」が必要です。ビジネスもそうでしょ?相手を儲けさせなくてはいけません。ビジネス界から生のメッセージを送っても、やはり現状では、「依存と競争」の社会になってしまっているんです。
今は、医者も教師も大企業のサラリーマンも安泰ではないし、制度的に安定した職種は皆無です。
そんな状況で、自分たちの安全を確保するものは、「元気」しかない。「元気」さえあれば、いざとなったら、田舎に帰って田んぼを耕すこともできます。


陰山英男先生−−働く女性の増加で、どうしても子どもの夕飯や就寝時間が遅くなり夜型生活になっている現状ですが、これに対して有効な対策はあるのでしょうか?

陰山先生 できる範囲内で変えていけばいいんです。まずは、1ヶ月新聞テレビ雑誌を見ないで、子どもの友達など、家族の情報にとことんこだわってみてください。
そして家族の生き方を真剣に考えてみるんです。
世の中にはものすごくたくさんの情報があるけど、実はたった1つの情報がいろんなところから入ってきているだけ。マスコミの情報は疑ってみる必要があります。
ボクがいちばん重要視しているのは、自分の判断。それを補強するためにインターネットで統計データを入手して利用しています。インターネットはボクの有効な武器。この情報だけで、十分、教育再生会議でもやっていける。もっとも重要なのは自分の価値判断なのに、特に、お母さんがたは自分の判断に不安になる人が多いんだなぁ。


−−確かに、中学受験を志向する保護者の中には、マスコミで流される情報に影響されている人も多いように思いますが、このあたりはどう思われますか?

陰山先生 まずは、実際の大学入試がどうなっているか調べる必要があるでしょう。例えば、東京の有名私学でも、定員の半分以上が推薦入学という大学もあります。年々状況は変わっていきますが、今は受験勉強は流行らなくなってきていて、高校の成績が重要になってきています。受験勉強にあくせくするよりも高校の勉強を地道にやるほうが早道なんですね。
マスコミに出る情報は、基本的には、巷にたくさん流れている情報でしかありませんから、動いていることの本質を常に把握し、自分にとって幸せは何かを常に考えてほしいですね。


−−「100ます計算」に代表される、陰山メソッドの全国的なブームについてどう思われますか?

陰山先生 きちんと理解してやっていただくのはよいと思います。本質は、「田舎にいても100ます計算程度の勉強でよい学校に入れる」ということなのに、それを英才教育とはき違えている人がいるのは残念ですね。情報に対する接し方の間違いです。本の帯だけ読んで中は読んでいないという状態ですよ。「100ます計算」をやっていただく前に、私の著書を1つきちんと読んでほしいと思いますね。


◎「学校問題は家族問題なんです」

−−最近「食育」が注目されていますが、やはり子どもの教育でいちばん大切なことは「食」だと思われますか?

陰山先生 朝ごはんを食べていないと、脳がつぶれてしまうんです。「食」以外にも、「睡眠」と「家族団欒」が、子どもの教育で必要な3大要因なんです。音読や、家族で会話をしているとき、いちばん脳が活性化しますから、
小学生ぐらいの子どもたちが本当に元気だったら、みんなうるさすぎるぐらいしゃべるはずです。
極端な話、有名大学に入りたかったら、詰め込みのガリ勉がいちばんいいでしょう。
指導要領の内容をぜんぶ詰め込めばいいんですから。人間1年程度なら、睡眠を短時間に削っても無理ができます。子どもの頃の習慣で、「脳を集中させる」というプログラムさえ持っていれば、大学入試のときにフルで働きはじめるんです。
ただ、「読み書き・計算・読書」という基礎ができていればこそ、スパートがきくということを忘れないでほしいですね。受験では、合格点より1点を多くとることが大事。賢い子ではなく試験対策をやった子が受験には受かるんですから。もっとも、小学校での勉強が決定的に大事ということを、ボクは世間にばらしてしまったわけですけど。


−−世間を騒がせている最近のいじめ問題についてどう思われますか?

陰山先生 子どもを見るときに、「いじめをやってるか、やってないか」というフィルターで見てしまうのは問題です。重要なのは、「いじめはどこにでもあるがすべてにあるわけではない」ということ。あれだけニュースに出るということは、逆にいえば、いじめが珍しいということです。世間で騒がれているからではなく、自分のところがどうかをよく考えてほしいですね。
友達と仲良くする方法は、「大人が口出ししなければいい」ということに尽きます。いじめは、人間関係のプロセス。子ども同士で名刺交換はしないでしょ?お互い手を出し合って少しずつ仲良くなる。いじめられる子もいじめられる要素があり、それを認めなくては。いじめる子も、いじめられる子もあらためなければならないんです。そうしないと、コミュニケーション能力が低いまま大人になってしまう。仮に100歩譲って学校内でいじめがない状況を作り出したとしても、実際の社会に出ていじめがあれば、それは詐欺同然。今の子どもたちはコミュニケーション能力が崩れてきているんですね。


−−あまり大人が神経質にならなくてもいいわけですね?

陰山先生 家族がサポートしてあげれば大丈夫。自殺を思いとどまる子と思いとどまらない子がいるけど、最後は家族なんです。日本のさまざまな問題が学校で吹き出ています。学校問題は家族問題なんです。


−−ノートをつけることを意識すると、子どもも親も生活のリズムを正しく心がけるようになりますが、ノートがなくなっても生活のリズムを継続していくには、どんな点に注意したらよいでしょうか?

陰山先生 とにかく一定期間続けることが大事です。自分の中ではまってピタっとくるまでは続けてほしい。だめだったらもう1冊購入してください(笑)。生活習慣が定着するまでに、早い人で3ヶ月、遅い人で6ヶ月かかると思います。
そして何より効果があるのは、時間管理がきちっとしてくることです。裏のテーマは、「タイムマネージメント」。ですからこの本は「健康と時間管理」を身に付けることができる、本当に勝ち組になるためのバイブルなんです。
時間にどれだけの意味づけをできるかが大事です。プロジェクトを成功するのに、3ヶ月かかるとした場合、1ヶ月の計画だったらリスクだし、6ヶ月であればだれる。
「タイムマネージメント」は、人生を成功するための鉄則だと思います


−−それでも飽きっぽい人に、ノートをつける上で、長続きする秘訣をアドバイス願います!

陰山先生 (途中で辞めるなんて)かわいそうに(笑)。失うのは1200円(本の価格)だけではないですよ。1冊やりきってタイムマネージメントを身につければ、「元気とタイムマネージメント」を身につけることができる。お金で買えない価値があります。


−−最後に、子どもの教育について悩める私たち母親世代に対してメッセージをお願いします。

陰山先生 情報を遮断して周りを見回してみてほしい。高学歴だから成功できるとは限らない。成功できる人は「元気な人」です。今、東京のど真ん中で活躍しているのは元気な人のかたまりのはず。そして、元気が相乗効果をもたらし新しいものを生み出すのです。
決定的なのは「元気」。けっして、学力や学歴ではないはずですよ。


−−大変勉強になりました。今日は有意義なお話の数々、ありがとうございました!




保育園児の我が子にも、この『早寝・早起き・朝ごはんノート』を実践してみたが、その日の1日を採点できる方式になっていることもあり、以前より、1日が充実して生き生きしてきたようだ。就寝前の「読み聞かせ」の実践もとても気に入ったようで、毎日、読み聞かせをすると、すんなりと寝てくれるようになった。
ただ、この生活パターンを長続きさせるのは難しく、昨日も親の都合にあわせて寝るのが遅くなり、今朝は寝坊して保育園に遅刻する始末。こんな日は、やはり親子ともどもイライラして、情緒不安定になってしまう。
今年こそは、「早寝・早起き・朝ごはん」を実践していこうと心に誓いました。
【インタビュー 常山あかね】


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