楽天ブックス 著者インタビュー

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 おしゃれでも高級でもない、生活周りの古道具を扱っている中野商店。店主の中野さんは「だからさあ」が口癖のさえない中年(でもなぜか、モテる)。二十代のアルバイト、ヒトミは、そんな中野商店で恋をする。彼女の恋の行方は? 川上弘美さんの最新刊『古道具 中野商店』は、『センセイの鞄』系のほんわかした物語。中野商店に集まるちょっと変わった人たちが織りなす、ユーモラスで切ない人間模様はこうして書かれた!

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川上弘美さん『古道具 中野商店』『古道具 中野商店』
小さな古道具屋に集う人々のちっともかっこよくない恋愛。世代をこえた友情
1,470円(税込)
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センセイの鞄
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プロフィール

川上弘美さんさん (かわかみ・ひろみ)
1958年東京都生まれ。お茶ノ水大学理学部生物学科卒。第115回芥川賞を受賞。99年には、『神様』でBunkamuraドゥマゴ文学賞、紫式部文学賞を受賞、また『溺レる』で伊藤整文学賞、女流文学賞受賞。01年には、『センセイの鞄』で第37回谷崎潤一郎賞受賞。『ニシノユキヒコの恋と冒険』 『おめでとう』 『龍宮』 『ゆっくりさよならをとなえる』ほか著書多数。

インタビュー

−−ありふれているようで、どこにもなさそうな……中野商店に行ってみたいと思いました。お書きになったきっかけから教えてください。
川上さん第一章を書いたのはずいぶん前で、2000年なんです。5年も前になりますね。そのときには、「新潮」に短篇を一つ書いただけのつもりだったんですが、そのあと、また中野商店の人たちのことを書きたくなったんです。私はそういうのがわりと多いんですよ。『ニシノユキヒコの冒険』も、最初は短篇1作だけの予定だったんです。でも、書いてみたら「これは! 」と思って。この『古道具 中野商店』もちょうど同じ頃で、書いてみたら「これは!」と(笑)。そうやってゆるゆると書いていって、その間に新聞連載(『光ってみえるもの、あれは』)がはさまったりして、最初のうちは半年か1年に1回くらいの間隔で発表していたんですが、新聞連載が終わってから、ポンポンポンと書きました。
−−川上さんの小説というと人間ではないものがよく登場しますが、『古道具 中野商店』の登場人物は一応、普通の人間ですね。
川上さんそうですね。カワウソとか出てこないですからね(笑)。でも、人間じゃないものが出てくるときも人間を書くように書いてきたつもりで、私の中ではいっしょなんです。
−−川上さんの小説というと人間ではないものがよく登場しますが、『古道具 中野商店』の登場人物は一応、普通の人間ですね。
川上さんそうですね。カワウソとか出てこないですからね(笑)。でも、人間じゃないものが出てくるときも人間を書くように書いてきたつもりで、私の中ではいっしょなんです。
−−ヒロインのヒトミさんは二十代後半。それも「今」の二十代っぽい感じがあって、川上さんの小説の主人公としては珍しいと思いました。
川上さん珍しいでしょう? 『いとしい』の姉妹も二十代ですけど、ヒトミさんのほうが今の人っぽいですね。
−−ヒトミさんの同僚のタケオくんも、二十代前半。川上さんの周りにいる二十代の人たちが反映されているんですか?
川上さん周りの、というより、自分が反映されているんだと思います。今と昔の二十代は違うってよく言いますけど、そうでもないんじゃないかと。やっぱり個人差のほうが大きいと思います。  今の若い者は人とコミュニケートできないとか、内側に引きこもりがちだとか、女が強すぎるとか……あらゆる意味で自分にもあてはまっているような気がするんですよね(笑)。
−−たしかに、ケータイやメールみたいに便利なものがあっても、好きな人と気まずくなると連絡取りづらいってのは、大昔から変わらないような気がしますね。
川上さん変わらないですよね。メールも、気軽に出せるといっても、出しすぎても怖いし。通じるところはあるような気がします。
−−古道具屋さんのお仕事がかなり細かく書かれていますが、取材をされたんですか?
川上さんはい。取材しました。
−−古道具屋さんに興味があったとか?
川上さん知り合いにいたりとか……。私自身は骨董や古道具にはそんなに詳しくはないですけど、古道具屋さんをやっている人やお客さんに、わりと好きなタイプの人が多いような気がするんですよ。けっこう馴染む世界だなあ、と。
−−『センセイの鞄』は川上さんの小説の読者層を広げるきかっけになった作品だと思うんですが、『古道具 中野商店』は『センセイの鞄』以上に広く受け入れられそうな雰囲気がありますね。
川上さん そうだと嬉しいです。『センセイの鞄』は若い女性からちょっと年のいった男性までいろいろな方が読んでくださったみたいで、この本にも、いろいろな年齢の登場人物が出てきます。いろんなタイプの人が出てくるから、幅広い読者の方に楽しんでいただけたらなあ、と思います。
−−いろいろな年齢ということでいうと、五十代のマサヨさんがユニークで素敵ですね。
川上さんマサヨさん、いいですよね! 私も好きなんです。登場人物みんな好きなんですけど(笑)。私の理想です。ああはなかなかなれないけど、いつかはなりたい、と思います。
−−マサヨさんがつくるタンメンおいしそうだなあ、と思いながら読んでいたんですが。
川上さんおいしそうですよね。作ってほしい(笑)。なんか、悲しいときに作ってほしい、と思ってしまいますね。
−−川上さんの小説を読んでいると、おいしそうだなあ、と感じるものが多いです。
川上さん今回はしょうが焼き定食とか、町の定食屋さんっぽいものが出てきます。
−−おそばやさんのカツどんのほうがおいしそうだとか、そういうところに共感しました。そういう細かいところに共感しながら読めるところがいいなあ、と。
川上さんちょっとショボいところでの共感ですけど(笑)。私がショボいんで(笑)
−−そこがいいんです(笑)。『古道具 中野商店』の次に取り組まれているお仕事について教えてください。
川上さん今「文學界」に毎月連載しています。毎月の連載というのは初めてですね。『古道具 中野商店』とはまったく違うものです。今度は肌にくるものが書きたいなあと思っています。何をもって肌にくるというかはよくわからないんですが。物語ではなくて、五感にくるような。今までやったことのない感じでやってます。これも長篇小説になりそうです。
−−人間以外のものも出てきますか。
川上さんもうすでに出てきてます。
−−先ほど、人間も人間以外のものも、書く上では同じとおっしゃっていましたね。
川上さんたしかに人間もぐらがそのへんをうろちょろしているというのは現実ではないんですが、現実をどう捉えるかということなのかな……。  現実の枠組みって、いつもブレているような気がするんですよね。自分の目で見たものと、何かを通して見たもの、全部ひっくるめて、世界ってよくわからない。それを描こうとすると、何かわからないものが出てくるんでしょうね。理屈をつければ、ですけど。変なものがすきだっていうのもあるんですけどね。
−−どんな作品になるか、楽しみです。今日はありがとうございました!
川上弘美 人間以外のものが出てきても、あたりまえのように受け入れてしまう。そんな力が川上さんの小説にはある。実際にお会いした川上さんからも、そんな不思議なオーラを感じた。ところで、今年は「東京人」に連載している一風変わった日記『東京日記』、日経新聞に連載していたエッセイが単行本化されるという。そちらも楽しみだ。【インタビュー タカザワケンジ】

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