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TVCMでも話題の高校生ミュージシャン、木下航志さんが豊かな感性で歌い、綴った2つの『Voice』

木下航志さん

未熟児網膜症のために生後1ヶ月で光を失いながら、2歳でピアノを弾き、7歳でジャズ、小学2年生の頃からストリートライヴを始めた木下航志さん。2004年に放送されたNHKのドキュメンタリー「響け僕の歌 木下航志 14歳の旅立ち」が大きな反響を呼び、昨年、1stアルバム「絆」でメジャーデビューを果たした木下さんが、自分自身のことを綴った初のフォト・エッセイ『Voice〜とどけ、僕の声〜』、そして2ndアルバム『Voice 』を同時にリリースし、話題を集めています。『Voice』の収録曲、「遠い街」がバックに流れる京成スカイライナーのTVCMに出演するなど、今、最も注目されているアーティストの木下さんに、本とアルバム、2つの『Voice』について伺いました。



木下航志さんの本


『Voice とどけ、ぼくの声』
『Voice とどけ、ぼくの声』
木下航志
小学館
1,524円 (税込 1,600円)



木下航志さんのCD



『voice』
『voice』試聴する
木下航志
レーベル:R&C
1,905円 (税込 2,000円)

TVCM京成スカイライナーのテーマソングに起用された「遠い街」を視聴いただけます。



『絆』
『絆』
木下航志
レーベル:R&C
1,714円 (税込 1,800円)

プロフィール


木下航志さん (きした・こうし)
1989年、鹿児島県薩摩川内市生まれ。生後まもなく未熟児網膜症で失明。2歳でピアノを始め、8歳で初のストリートライヴを行う。「アテネパラリンピック2004」のNHKテーマソング「チャレンジャー」を歌い、05年の愛・地球博ではEXPOドームのジャパン・ウィークでのライヴに参加。2006年、1stアルバム『絆』でメジャーデビュー。昨年は全国各地で30回にも及ぶライヴ活動をするなど、高校生活を続けながら、音楽を通して多くの人々に感動を与えている。
公式HP: http://www.kishitakohshi.com/

インタビュー


−−フォト・エッセイ『Voice〜とどけ、僕の声〜』を読んでまず驚いたのが、木下さんが2歳でピアノを始めたという事実でした。でもご自身は、そう言われてもあまりピンとこないそうですね。


木下さん そうですね。インタビューの時、そのことをきまって聞かれるのですが、自分では当時のことを覚えていないので、本当に困るんです(笑)。
本格的にピアノを始めたのは5歳の時で、最初はクラッシックピアノを習っていたので、バイエルなどをやりました。でも、弾いているうちに、自分でアレンジしてしまうんです。自分ではそれがすごく楽しかったのですが、クラシックには向いていないということになって。7歳でジャズピアノに転向しました。


木下航志さんその年齢で、なぜジャズを始めようと思ったのですか?


木下さん それもあまり覚えてないんですが(笑)、とにかく音楽が好きで、やめたくなかったんです。アレンジして弾くのが好きだったから、ジャズなのかなあ……と。でも、ジャズピアノも習ったのは1年間で、基本的にはピアノは自己流だと思います。


−−歌を始めたのはいつですか?


木下さん 8歳でストリートライヴを始めた時ですね。ストリートで歌い始めたのは、僕が文化祭で歌っているシーンが地元のテレビで放送されて、それを見た宮崎利夫さんという、佐賀の小学校の先生に、「ストリートライヴをやってみないか」と勧められたのがきっかけです。それでやってみようかということになって……。


−−小学校2年生でライヴ活動というのはすごいですね。初めてのライヴでは緊張しましたか?

木下さん ライヴを始めるまでは、いつも通りに、キーボードを弾けばいいぐらいに思っていて、緊張しなかったんです。それが実際に始めたら、ストリートの雰囲気を感じで、すごく緊張して。でも、ライヴを繰り返すうちに、立ち止まって聴いてくれる人が増えたり、歌っている僕に声をかけてくれる人もいて、「人前で歌うのがこんなに気持ちいいのか」と思うようになりました。宮崎先生がMC役を務めてくれて、しばらくの間、週末になると定期的にライヴをやっていました。


−−どんな曲を歌っていたのですか?


木下さん Dreams Come Trueや岡村孝子さんといった、J-POPのカヴァーが中心でした。もともと家族みんながJ-POP好きだったので、生まれたときから聴いていたんです。


−−その後、14歳でオーストラリア人ギタリスト、カイロン・ハウエルさんとのバンド、HARMONIXを結成して活動を始めますが、ハウエルさんとの出会いのきっかけとは?


木下さん 僕のストリートライヴや日常を追ったNHKのドキュメンタリー番組を見ていたのが、今、僕のプロデュースをしてくれている永島修さんで、永島さんから友人のハウエルさんを紹介されたのがはじまりです。


木下航志さん−−HARMONIXは、ネットだけで3000枚以上のCDを売り上げたそうですが、バンドでの音楽活動を始めて、新たに発見したことはありますか?


木下さん 1人でやる時に比べて、不安が一気になくなりましたね。バンドのメンバーと音楽を作っていく楽しさも感じました。初めてバンドを組んだのは、地元の鹿児島のミュージシャンの方たちと「航志グループ」を結成した10歳の時ですが、バンド活動を通して、レパートリーにジャズやスタンダードが加わったり、音楽の楽しさが増えたのは確かですね。
よく、ジャズミュージシャンと言われることがありますが、自分では音楽のジャンルを気にしたことはないんですよ。自分の音楽はどのジャンルにも属していないと思うし、興味があればなんでもやりますから。


−−2ndアルバム『Voice』には、京成スカイライナーのTVCMに使われている「遠い街」をはじめ、木下さんオリジナルの7曲が収録されていますが、曲が生まれる時は、どんな感じですか?

木下さん 「降って来る」、という感じです。ピアノを弾いていると、手が勝手に動くような状態で、頭では何も考えていない。手が動くのと、頭の中で曲が閃くのが同時という感じで。でも高校受験の真っ最中に、突然、3曲降りてきた時は、勉強に集中しなくてはいけないのに、曲も忘れないようにしなければならなくて、もう大変でした(笑)。


−−降って来る、というのは快感に近い?


木下さん そうですね。曲をアレンジして弾く時も、同じような感覚になります。


−−作詞に興味はありますか?


木下さん やってみたいですが、もっと人生経験を積んでからですね。


−−「人生経験を積んで」ということですが、私生活ではまだ高校生なんですね。学校ではどんな生徒ですか?


木下さん 授業中に平気で寝ているし、おしゃべりなのでうるさがられるほうです(笑)。学校は好きですが、平日は鹿児島にいて、週末は東京に来て仕事したり、各地でライヴをする日々なので、学校生活はなかなか大変です。


木下航志さん−−『Voice〜とどけ、僕の声〜』には3曲入りのスペシャルCD付いていますが、その中で「竹田の子守唄」が選曲されていたのが意外で…。でも、聴いてみると、メロディが美しくて、何よりパワフルな歌声に圧倒されました。


木下さん 「竹田の子守唄」は以前からよく歌っているんです。最初は自分でもどうかなあ、と思いましたが、歌っていくうちに、どんどん好きになりました。昔から伝わってきた歌ですが、すごくいいので多くの人に聞いてもらいたいと思って、この本の秘密のCD(笑)に入れました。


−−和製スティーヴィー・ワンダーと言われることも多い木下さんですが、秘密のCDや『Voice』を聴くと、デビュー当時に比べて一段と声がパワフルになり、スティーヴィーに近づいている気がします。


木下さん スティーヴィーは大好きなアーティストですが、僕はまだまだです(笑)。声の変化は、変声期が過ぎて声が安定したことと、先日、CMの撮影で行ったニューヨークでボイストレーニングを受けたことが影響しているのかもしれません。といっても、CDを録音したのはその前なので、自分の内面的な変化が表れているのかもしれないですね。
それに最近、歌に対する興味が深まっていて、次のアルバムでは、ピアノを弾かずに、歌だけ歌ってみてもいいかな、と思っているんですよ。


−−最後に、本とCD、2つの『Voice』の楽しみ方、これからやってみたいことを教えて下さい。


木下さん 本の『Voice』では、「読む木下航志」を楽しんで頂いて、アルバム『Voice』は気兼ねなく聴いて、少しでもハッピーになってもらえたらうれしいです。
プロになるのは小さい頃からの夢だったので、これからもライヴとレコーディングの両方をやりながら、音楽を続けていきたいですね。僕自身、音楽によって励まされて、助けられてきたので、今度は音楽への恩返しをしたいと思っています。





忘れられない印象を残す声……木下さんの歌声を初めて耳にした時、そう感じました。強烈な印象を残すのに、どこまでも自然で、優しく心に響いてくる。その歌声同様、少年っぽさを残しつつ、照れくさそうに話す木下さんから、他の誰とも違う存在感、強くて真っ直ぐな個性を感じました。TVCMの中で、名門ジャズクラブで演奏するためにニューヨークに向かう木下さんの音楽の旅はまだ始まったばかり。フォト・エッセイ、さらに高野寛、斎藤誠、東京スカパラダイスオーケストラなど錚々たるメンバーが顔を揃えた『Voice』のソウルフルでパワフルなサウンドから、あふれるような才能を感じてみてください。
【インタビュー 宇田夏苗】


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