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舞台は昭和初期女運転手・ベッキーさん&英子お嬢さんの痛快ミステリー三部作が完結!北村薫さん第141回・直木賞受賞作品『鷺と雪』『鷺と雪』

候補にあがること6度目。2009年、ようやく『鷺と雪』で待望の直木賞を受賞した北村薫さん。ブッポウソウや鷺、雪などが符牒のように絡み合い、激動の歴史の渦を予感させる作品は、静かな怖さを感じさせます。一方で、人々が日常を営む姿には温かみとユーモアがあふれていて、思わずくすりとさせられたり。そんな北村ワールドが凝縮した今回の作品で、もっとも伝えたかったこととは? ずばり核心に迫ります。


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直木賞受賞作!3部作の最終巻は戦時中最大の政変に集約されるドラマティックな展開!
北村薫 鷺と雪
『鷺と雪』
1,470円(税込)

シリーズ第二作目。英子お嬢さんとベッキーさんが、日常に潜む謎ときに挑む!
北村薫 玻璃の天
『玻璃の天』
500円(税込)

シリーズ第一作目。ベッキーさん登場がカッコイイ!
北村薫 街の灯
『街の灯』
500円(税込)

十代から時間を共有してきた女友達3人。人の絆に深く心揺さぶられる長編小説
北村薫 ひとがた流し
『ひとがた流し』
580円(税込)

第6回本格ミステリ大賞評論・研究部門ほか、数々の賞を受賞した鮮やかなミステリー
北村薫 ニッポン硬貨の謎  エラリー・クイーン最後の事件
『ニッポン硬貨の謎 エラリー・クイーン最後の事件』
777円(税込)

女子大生と円紫師匠の名コンビここに始まる。人気シリーズの第一作目!
画像はありません
『空飛ぶ馬』
714円(税込)

9歳のさきちゃんと作家のお母さんは二人暮し。漫画家おーなり由子とのコラボ
月の砂漠をさばさばと 北村薫/おーなり由子
『月の砂漠をさばさばと(北村薫/おーなり由子)』
540円(税込)

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プロフィール


北村薫さん
1949年、埼玉県生まれ。大学卒業後、高校の国語教師として教鞭をとりながら執筆活動を続ける。1989年に覆面作家として『空飛ぶ馬』でデビュー。1991年に『夜の蝉』で第44回日本推理作家協会賞を受賞。代表作は『スキップ』『玻璃の天』などで、直木賞最終候補作に6度選ばれている。2009年、『鷺と雪』で第141回直木賞を受賞。日常に潜む非日常とでもいうべき「日常の謎」を読み解く新形態の推理小説や、心の揺れを丁寧に描く心理描写にファンが多い。

インタビュー


北村薫さん−−直木賞受賞おめでとうございます。受賞の連絡はどこで受けられましたか?

北村さん 外でご飯を食べているときです。一緒に食事をしていた編集者と受賞の連絡を聞きました。というより、編集者の携帯を連絡先に指定していたので、私より先に編集者が知らせを聞いたんですが(笑)。受賞の連絡を聞いたときは、ほっとしたというか、肩の荷が下りたというか。周りのみなさんが涙ぐんで喜んでくださったりしたので、私も感情が高ぶって、とてもありがたいと思いました。何度も候補になるということは、それだけ周囲の皆さんをがっかりさせていただろうなと思うんです。何とか期待に応えなきゃと思っていたので、ひと安心しました。


−−今回は受賞できそうだ、という手応えはあったのでしょうか?

北村さん う〜ん。実際、(直木賞)候補になった先の選考については、私の努力でどうにかなる問題じゃないですからね。もう作品も書き上げちゃってますし(笑)。ですから、候補になったという連絡をいただいたときの方が、達成感があったというか。やはり、候補にしていただくというのは、ひとつの大きな評価をいただいたということだと思いますから。
また、今回で候補に上がるのは6度目だったんですが、これだけ長い時間にわたって候補にしていただけるのは、選考委員の方々や読者からの支持がずっと続いていなければできないことだと思うので、それだけ長い期間、いい仕事が続けられたのかなと思うと、とても光栄なことだと思いましたね。宮部(みゆき)さんが6度目、東野(圭吾)さんも6度目の候補で受賞されていたので、そろそろいいかなと思う気持ちもありましたが(笑)。


−−今回の作品のなかで、北村さんが特に思い入れのあるキャラクターは?

北村さん いろいろいますよ。主人公の兄である、ちょっとだらしがない雅吉兄さんとか、生粋の華族である桐原家の次女の道子さんとか。どのキャラクターも思い入れはありますね。


−−確かに、雅吉兄さんの人間味にはほっとします。でも、なんといってもベッキーさんの存在が大きいと思うのですが、モデルは実在するのでしょうか?

北村さん イギリスの小説家であるウィリアム・サッカレーの作品に『虚栄の市』という小説があります。19世紀初頭のロンドンを舞台に描かれているんですが、男性優位の社会のなかで、決然と自分を貫いていく女主人公の名前が、ベッキー・シャープと言うんです。サッカレーの描くベッキーさんは悪女でもあるんですが、いずれにしても時代に流されることなく自立しているというイメージがあったので、今回描きたい女性像と一致していました。
さらに、担当してくれている文藝春秋の編集者の方が、「別宮(べっく)」というのですが、先輩から「ベッキー」と呼ばれているのを聞いて、そのまま姓をいただいてしまいました(笑)。


−−執筆中、大変だったところは?

北村さん 今回の作品は昭和時代の話なので、書くモードに入るのに時間がかかかりました。しかも、最後に書いたときから時間を置くと、その感じや細かい内容を忘れてしまう。だから、「英子(主人公)は、女学校の何年生になったんだっけ?」などと思い出しつつ、昭和初期の資料を読みつつしながら、徐々に執筆に入っていくという感じでした。辛くはなかったですが、書くまでにプラスアルファの労力を要したと言いますか。


北村薫さん−−作品レビューでは、「ミステリーなのに癒される」というコメントが多く見られます。あまり人を殺す展開にはしないなど、自分の中で決めていらっしゃる禁忌事項はありますか?

北村さん 特に、ルールを決めたりはしていません。作品中で誰かが亡くなるにしても、生きるにしても、話の流れのなかでの必然です。癒そうという意識もないですし、自然に書いているだけなんですが、言ってしまえば、それが「北村薫」だということなんでしょうね。エッセイにしても何にしても「これが北村薫である」というものが書けなければ、僕自身がこの仕事をやる意味がないと思いますから。また、殺人というレベルで言いますと、読む分には殺人事件も平気ですが、実際に書くとなると、日常生活のなかに殺人事件があまりないので、普通の人間を書いていくとなると、殺人の話はなかなか書けないですね。無理やり普通の人を描こうとしているわけではないんですが、日常生活のなかで感じる「あれ?」とか「おや?」とかいう思いを書いていきたいといいますか。


−−今回、昭和初期を舞台に選んだのは何か理由があったのでしょうか?

北村さん やはり、昭和は歴史が激動した時代ですから、私としてもとても興味を持っています。大正デモクラシーから軍部の台頭があり、大規模な戦争という泥沼へと浸かっていく。そんな背景のなかで、一般庶民は日常生活を送りながらも取り返しのつかないことが起こっていくというか、歴史が動いていくというか、そんな空気を感じます。漠然とした不安や心配を感じた人もいたでしょうが、とはいえ、普通の人たちは日常のことの方が案外大事だったりしますしね。小説の中にも書きましたが、首相の暗殺だなんだというニュースよりも、自分の就職が決まるかどうかの方が大事なわけです。


−−確かに(笑)。ただ、個人の意志に関係なく、戦争へと巻き込まれていくような昭和初期の独特の気配は、作品からも強く感じました。

北村さん 「読後に昭和初期という時代をあらためて振り返りたくなった」という感想をいただいたことがあるんですが、それは嬉しかったです。この時期は、日本の将来、つまり今現在の姿を決定づけるような重要な事件がいくつも起こった時期。にもかかわらず、その重要性のわりに、大事な転機となった事件を知らなかったり、関心が少ない若者も少なくない。歴史に詳しくない人がこの作品を読むと、「日本ではこんなことが起こってたんだ」と感じることができるだろうし、歴史を知っている方が読むと、軍国日本を決定づけた出来事について、あらためて考察する意欲も出てくるだろうと思います。


−−今日の晩ご飯も明日の仕事も大切だけど、うかうかしてると、国そのものが取り返しのつかない方向へ進んでしまい、そこに巻き込まれてしまう、と。

北村さん その象徴が、まさに本作の結末だと思います。私たちは普通に、日々、日常生活を続けていると思っています。でも、いつものように道の曲がり角を曲がってみたら、とんでもないことが起きていた、なんてことがあるように。案外知らず知らずのうちに、歴史の大事件に巻き込まれていたということは、いつでも起こりうるものだと思うんです。現在だって、国を揺るがすような大事件の曲がり角を曲がっている最中で、何ヶ月も経った後に始めてそのことに気がつく、という事態だってありえますから。


−−今回の作品にはいろんな謎解きが登場しますが、ラストの結末がもっともミステリーらしい気がします。現実にほぼありえない、でも起こってもおかしくないことが起こっているというか。

北村さん あれは実話なんですよ。


−−えぇっ?

北村さん 松本清張先生が、『昭和史発掘』の中でこの実話に1行だけ触れているくだりがあるんですが、私はそこにとても惹きつけられて、詳細を調べました。実話の登場人物である一般庶民は、いつもの日常がなんでもなく繰り返されると思っていたのに、偶然にもふと非日常をのぞくハプニングが起きてしまった。これが創作だったらつまらないのですが、事実なので非常に興味深く、今回の結末にしようと決めました。


北村薫さん−−あの衝撃的なラストが事実だったということが、またまた衝撃です!

北村さん 結末以外の話についても、実際に起こった事件や実話をベースにしているものはあります。作品中の、死んでいない人の死亡広告が出てしまった、というくだりなど、調べてみるとまだ生きている人の死亡広告を載せて嫌がらせをしていた、という事件が実際に起こっていたり。こうした日常のなかにある非日常的な事柄や事件に、とてもおもしろさを感じるため、少しずつ資料を溜めておくんです。 今回も、結末の元となった1行を読んだときに、これは「日常の中で非日常をかいま見た瞬間だ」と思いました。そして、それはこの物語を構成する、ひとつの大きな柱になっています。


−−なるほど。ちなみに、もう次作の構想はあるのでしょうか?

北村さん すでに取り掛かっていて、『小説新潮』にて隔月で連載中です。この作品は、酔っ払いの女性編集者が主人公です。今回は現代の話ですし、題材も『鷺と雪』とはまるっきり違うので、また新たな世界を書いていきたいですね。


−−女性編集者を主人公にしたのは、やはりモデルがいたとか(笑)。

北村さん はい(笑)。ただし、特定の一人ではありません。おもしろい人が何人もいると聞いたので、本気になって話を聞いてみたら、「本当に!?」と言うエピソードが次から次に出てきまして。もちろん、女性編集者全員が酒飲みではないと思いますが、会社によっては、いろいろあるみたいですね(笑)。


−−もっとベッキーさんの話が読みたい、という声も多いと思いますが。

北村さん いえ、これで完結です(きっぱりと断言)。


−−なんと残念な!

北村さん 彼女は、主人公が困ったときはいつでも助けてくれるスーパーレディです。身を守る術も知っていれば、外国のことにも精通しているし、知識も幅広い。女性としての生き方が限定されていた昭和初期に、運転手という職業を選ぶあたりも、自分を貫こうという意思が見えます。そんな一見何でもできるヒロインが、「私は何にもできないんです」という一言を残すんです。


−−まるで未来から来た人のようですね。結末は知っているから手助けしたり、アドバイスすることはできるけど、手は下せないという。

北村さん 結局、どんなに頼りになったとしても、人生を他人に託すことはできないということなんですよね。だから、ベッキーさんを通じて、日常から非日常を垣間見るという疑似体験をしてもらって、そこから後は、読者のみなさんが自身の日常で、この物語の続きを紡いでいってほしいと思いますね。


−−最後に、長年応援してきたファンの方に、一言お願いいたします。

北村さん 「与えれば与えられる」ということですね。作品を読んでくださる方がいることで、私も書き続けていく勇気を得ています。これからも応援していただけるよう、いい作品を残していきたいですね。


−−ベッキーさんに次ぐ、魅力的なキャラクターを期待しています。今日はありがとうございました。





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