楽天ブックス 著者インタビュー

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プチ家出を扱った『完全家出マニュアル』、リストカットをレポートした『生きちゃってるし、死なないし』など、若者の自立と人間関係の問題を追い続ける今一生さんの新刊は、なんとゲストハウス本。敷金・礼金、仲介料ゼロで住めるゲストハウスっていったい?そして、そこから生まれる新しい人間関係とは?

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今一生さん『完全家出マニュアル』『完全家出マニュアル』
「安く住みたい、仲間とホッとしたい。そんな賃貸スタイルが、昨今はやりのゲストハウス!
1,680円(税込)
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プロフィール

今一生さん (こん・いっしょう)
1965年、群馬県生まれ。千葉県立木更津高校卒、早稲田大学第一文学部除籍。塾教師、家庭教師、工場労働者、郵便区分、夜間清掃、広告営業補佐など、さまざまなアルバイトを経験した後、東京・渋谷の広告制作会社でコピーライターを経て、雑誌記者に転向。Create Media ltd.代表。著書に、日本一醜い親への手紙』(メディアワークス)、『オルタカルチャー日本版』の編集&執筆。『家を捨てよ、街へ出よう』、『完全家出マニュアル』(同)、『家族新生』(ワニブックス)、『「出会い系」時代の恋愛社会学』(ベスト新書)、自殺ルポ『生きちゃってるし、死なないし』(晶文社)、同時代の男女事情について対談した『恋愛以前』(原書房)、『「酒鬼薔薇聖斗」への手紙/生きていく人として』(宝島社)、『大人の知らない子どもたち/ネット、ケータイ文化が子どもを変えた』(学事出版)など、テレビ・新聞へのコメント、講演でも活躍。精力的に執筆活動を続けている。

インタビュー

−−今回の本は、住宅の本なんですね。
今さん最近ね、建築関係っておもしろいです。ゲストハウスに限らず。ぼくは共同生活から興味を抱いていったんだけど、大学の先生でダンボールハウスなんかの研究をしている人なんかもいるんですよ。知ってます? 住宅の問題は、家そのもののコストより、つまるところ、永住の土地を所有するかどうかってことですよね。そうなると、ぼくよりあとの世代のことが、ぼくは気になっています。要するに消費動向ですね。消費が冷えたら経済はやはり沈滞化していくだろうと…。

それも、10年ぐらいの間の話だと思うんです。なんで今、「ニート(※就労も通学もしていない人)」ができるかというと、親の資産があるからなんですよ。食いつぶしたときにどうするか。そこまで責任負えないって宣言したいのかどうかわからないけれど、生活保護の受給申請も、年々うるさくなってきた。というわけで、国のお金を頼りにするのは、もう無理。

民間のお金にしてもビンボウ消費者が増えちゃうと景気はさらに後退してしまう。 そうなると、はたしてハコモノというのは、どの程度、生きている間に価値としてあれるのか。昔は三世代同居だから、孫の代まで家建てればいいわけだから、大きくてしっかりしたものを作ろうという感覚でしたが、高度経済成長があって、バブルを経て、その60〜80年代の20〜30年の間に、ぼくらの世代の一部には、永住の土地、ハコモノが成り立たないだろうという感覚が育ってます。

それに対するひとつの回答が、ありものの再利用なんですよ。それは建物だけじゃないです。
−−なるほど、時代の必要があって成立してきた物件だと。
今さん結局、人間もそうなんですよ。たとえば、ゲストハウスのスタッフワークっていうのもおもしろくって、正社員みたいに何時から何時までという契約ではないんです。フリーライターと同じように時間は関係ない。ゲストハウスのメンテナンスの管理人なのだけど、必ずしも常駐しているわけではない。でも、不動産賃貸だから、なにかの時には対応しないといけないですよね。住人トラブルからゴミ捨てから。ゲストハウスってそのへんの細かいレベルは緩いんですけど、業者によっては24時間かけつけてくれるんですよ。毎日移動しているような状態ですが、そのかわり、スタッフはたいてい只で物件を借りているんです。家賃0円で。スタッフをやとう側にしてみても都合がよくて、本人にとっても便利でしょ? なにしろ新築に一番先に移ろうとおもえば移れるし、自分の足場は明確に確保しつつ、居所を転々とできて、住むことの心配をしなくていい。新しい人、おもしろい人と毎日会うので、仕事も面白いんでしょうね。同じ世代の若いスタッフと、ゲストハウスに入ってくる若い人たちが出会うんです。

これが昔の普通の不動産賃貸だと、家賃を受け取る際にうるさい大家さんがいて、お金に関してはうるさいけど、細かい、水回りとかトイレの故障には「そんなの業者にいって、自腹でやんなさい」みたいなきびしいところがある。ゲストハウスだと、水まわりは共有だから、まず「大事に使いましょう」ってなるし、失敗したら急遽かけつけないと全員が迷惑する。いそいでメンテナンスなんですよ。そういう意味でも、スタッフワークと住人のコミュニケーションがあるんですね。ここにはそこまで書いてないんですけど。
−−ゲストハウスの生活というのは、実験的だし、非定住的なんですね。
今さんこの本を書く前に、共同生活のことを調べたりみてきたんですが、衣食住全般、ひとりで全部の生活コストを負担していくことは意外に無駄が多いんですね。いかにシェアするかっていうことを、長い歴史の中で、ぼくたちは家族という形でやってきたんですが、ここにきて、家族じゃない人とどうシェアするかというところにきた、と思うんですよ。ようやく、住まいもそうなってきたということです。ちょっと前に古着はあたりまえになったし、ルームシェアがはじまると、冷蔵庫は共有だから、食もシェアしてたんだけど、住まいも、ということですね。

偶然なんですが、住宅公団(※現「独立行政法人都市機構」)の広告の仕事に関わったら、物件の保証人を不要にしたっていうんですよ。ハイスペックな新築マンションですよ! 収入の条件なんかはありますが、保証人ナシで入居できる。なおかつ、ハウスシェアも去年の10月からスタートしています。つまり同棲カップルでもメル友どうしでも、家族以外の人と住むことができるんです。面白い動きですよね。行政がこうなんだから、そのうち民間の不動産賃貸もゲストハウス化していきますよ。
−−当面住むってことをテーマにしていかれるんですね。
今さんうん、居場所ってことなんですね。ある社会学者の方からこの本を読んで「ゲストハウスっていうのは、若者版グループホームだな」という感想をいただいたんですが,言い得て妙だなと。ぼくもなるほどと思いました。

そこに住む人たちには、いろんな理由があるんですよ。田舎の学校だから自分らしく振る舞うだけでいじめられた、周囲から浮いているとか、地域社会からはみ出すとか。そういう意味と、もうひとつ。

去年の暮にゲストハウスのクリスマスパーティにでたら、秋田から19〜20歳ぐらいの、三人の左官と大工職人の子たちが入ってきているわけ。話を聞くと、やっぱ東京いこうと思ったら、何十万もつまないと、敷金礼金かかるしって思ってたんだけど、ネットで調べたら、ゲストハウスって安いぜ、ルームシェアってやってるぜ、と3人で東京にきちゃったんです。前家賃1ケ月分だけではいれますからね。秋田の片田舎に住んでいて、手に職はあるけど、実は会社に仕事がなくなっていったんだね。そうすると、ごめんね、ごめんねっていわれて、毎月賃金が何万円かづつ減っていく。ナンパもできねぇよって、若い彼らは東京にでてきて仕事をはじめたんですね。つまり、田舎に仕事がないんだったら、仕事のある場所に移動すればいい。昔だったら、お金がないから、地元からちょっと離れた地方都市まででてくるのが限界だったけど、それが東京界隈、神奈川、千葉、埼玉あたりに気軽に住めることができちゃうわけですね。

保証人がいらないってことも、血縁と関係なく住めるってことなんです。
−−それが地理派っていう概念なんですね?
今さんそう。つまり、ここでないどこかへ…といつも思っていたけれど、ヤッパここしかないのかなって地方在住者は長いこと思ってきたわけですよ。遠くで汽笛を聞きながら。

いまはネットの向こうに人がいるのと同じで、距離は関係なくなりました。家出もそうなんですが、本当に思い立ったら、ポーンと移動しちゃう。沖縄、北海道、あるときは、突然タイからメールをもらったこともあります。そういう時代なんです。距離は関係ない。現実の移動もネットサーフの感覚なんですね。

プチ家出もそうです。昔は親と「断絶」じゃないですか。ケータイなんか教えるわけもない。それが、今は、ケータイをわざと教えるからね。親もGPS持ってたり、どこかでつながってる。
−−自分の居場所を探す人たちのそれまでの関係性が背後に見える場所なんですね。
今さん自分らしくふるまうっていうことは、相手の自分らしさも認めないといけないですね。好き嫌いとか、考え方や、やり方っていうのはまちまちです。それは生活に如実に表れるわけですよ。たとえば、トイレットペーパーが切れちゃったとする。それをほったらかす人と、買い出してくる人がいる。それだけで人がわかりますよね。ゲストハウスでは、キッチンやリビングを共有しているので、あの人はこういうのが好きなのか、キライなのかがハッキリみえる。ある種の人種の坩堝なんです。そういう感覚に慣れていくことができます。田舎にいた時は、みんな同じでなくてはダメダというのがあっても、ここくると、それぞれがちがって、それぞれ浮いているようなものです。みんながが強いから、逆に自分を主張しないと、浮いてしまうことにもなります。「へぇ〜、きみはみんなにあわせるんだ、ふーん」、なんていわれて(笑)。

同質性とは遠いところからスタートしますからね。

ゲストハウスはお互いが知りあうイベントも多い。新しい人がはいってきた、でていった、クリスマス、誕生日って具合に、毎週末になにかをやっている。そういうのに参加していろんな人と仲良くなったりするわけですよ。そんなところから、サークルみたいなものが生まれたり、映画を作ろうとしてみたり。新しい文化の発祥地になろうとしているところもあります。

もともと70年代〜80年代には、外人ハウスなんかにクリエイター系のエッヂな人たちが住んでたりしてましたよね。今でも、青山なんかのアッパーなゲストハウスでは、エッヂなクリエイターが集まっていたりしてね、僕の本で紹介してるゲストハウスでは、その裾野っていうような感覚ができてたりしますね。
−−地域住人との摩擦なんかはないんですか?
今さん摩擦ね、あるある。普通の人からすると理解しがたい暮らしをですからね。民家から、24時間若者が出入りしてるという。普通は、業者が物件を借りる前に挨拶してまわるんですが、そのときにちゃんと認識する人は少ないですよ。で、住みはじめるとたいへんなことになる。そうなると、丹念に挨拶まわり。菓子折り持って、毎日の暮らしを徹底して、慣れていただくしかないですから(笑)。

逆に、地域の人たち、とくに学校や社会で浮いてしまった人たちにとっても避難所になりうる場所なんですけどね。若衆宿のようになってる物件もありますよ。 それにまだ、一般認識から遠いから少ないけれど、元気なおじいさん、おばあさんたちがはいってくる可能性もあります。若者の方が時代に早いから、ササッてはいってくるけど、もう少ししたら、高齢者もいっしょに住むかもしれない。20代の若者と60代〜の高齢者が同じ家でつきあうっていうのも、おもしろいですよね。
−−たくましくみんなが生きていけるようになるといいですね。
今さんたくましさっていうのは摩擦があるってことですから、そこはさけられない。逆にいうとそれをさけたらおもしろくないですし。そういうのも含めて事実上の長屋ですよ。自分の子供じゃなくても、悪い事をしたら叱るっていうような感覚ですよ。 この本は、特殊相対性理論みたいなものなので、次は一般相対性理論みたいなものをやろうと思ってもいます。共同生活というのは、ほかにも、グループホームとか コーポラティブハウスとか、ルームシェアにしてもいろいろなパターンがありますからね。

それに、居所の問題というのは、ハコモノだけじゃなくて、人間関係をいかに再生させていくかということです。そういう意味でのゲストハウスや共同生活に注目してるので。
−−どういう読者に読んでほしいですか。
今さん一番コアになるのは、お金がなくて、できれば18歳以上で、今やりたいことが自分の住む田舎ではできない、あきらめようと思っている子たちに。「なんだ、こんな安い値段で東京片道キップではいれちゃった」そういう感覚で、住まい方を試して欲しいって思います。東京に来てしまえば、次の日から仕事はいくらでもありますからね。それはプチ家出取材の時に家出人たちが教えてくれたことです。それに、ゲストハウスには、仲間が最初からいますから、東京での暮らし方も教えてもらえる。だから、東京隣接県じゃなくて、むしろ遠くからでてきて大丈夫なんです。
−−そういう自立した関係性が苦手な人もいますよね。
今さんこの本でもゲストハウスに住もうとしたココロ系の子を紹介しているけど、家にこもって外の人間とコミュニケーションが手薄になって引きこもりみたいに人としゃべらなくなってくると、生きていくのに疲れちゃうんですよ、人間って。

ゲストハウスだと、食事をしようと、自分の部屋のドアを開けた瞬間に、廊下にはだれかいるわけですよね。昨日まで、普通にしゃべっていた子が暗い顔をしていたら、「どうしたの?なにかあったの?」って、普通の日常会話に盛り込まれるます。いろんな人がいるから、そっとしておいた方がいいんじゃないって人もいるし、「今度、話かけてみるわ」っていう人もいる。そういうバラバラな反応がある場所だから、いいかなと思うところもあります。

たしかに、ゲストハウスは自己責任徹底主義で、でも、その反対に、もといた田舎と同じように同質性をみんなが求める共同体主義で暮らす住人もいるから、あまりにもいろんな人がさまざまなことを主張するので、わかんなくなっちゃってパニックになるという人はいました。自分で決めていいんだよって応援しても、だれかが保証人みたいに後ろにいないとって人はいますからね。

あとは、思わぬ効果だと思いますが、男の子が鍛えられるなって思いました。女の子が強いンですよ。ひとりで生きていけるような子が入ってくる。しかも、ちょっとお金たまるとすぐ、海外にいっちゃうような子たち。世間から浮いても平気って女の子たちだから、バリバリに強い。そういう女の子と互角にやってくわけですから。
−−ひとりですんでると淋しいって思って、人がいたらいいなって思う時もありますよね。
今さんルームシェアとちがうのは、そういう状態を自分で選べるっていうところです。コミュニケーションが必要な時は、自分の部屋のドアを開ければいい。閉じこもりたいときは部屋に入っていればいいんです。
−−こういう新しい場所から、なにが生まれてきますか?
今さんひとつ、新しい人間関係が見込まれます。それはなにかっていうと、結婚を目指さない異性関係です。事実婚という意味ではなくて、男女の距離として、子供を生む生まないとかが、関係ない関係。セックスが恋人らしさに直結するようにならないんです。あの人と友達としてつきあってるとなんかいいよね、というレベルです。ゲストハウスに限らず、そういうつきあい方をし始めるている男女が増えているんです。ぼくは、セックスしても友だちでいられる関係を「フレンドセックス」ってよんでいるんですけど(『恋愛以前』て本がそうですね)、それが都市の一部ではできてきている。次第に郊外にも広がってきて、ゲストハウスってまさしくそういう側面もあるものなんですね。 性的なものと、そのあとにある、恋愛とか結婚とか同居といったものを必ずしも約束しない関係ですね。そういうことがあってもなくても友だちでいられるか?っていう関係。いま、まさに試行錯誤されていると思います。新しい異性関係がみえてくるんです。

もうひとつは金の使い方だと思います。安く住めるから、必要以上に働かずに済むって発想の人もいるんですよ。金を使う方向がかわってくるわけです。旅やイベントなんかの無形のものには使うけれど、所有物に使わない。CDや本をコレクションしたりしないので、荷物なんて、ワンパッケージ。それを持って、あちこち転々としていたりして。昔は手にするなら一生ものという発想があったけれど、中古ショップに売れればいいじゃん、という程度の思いいれになっています。ある意味、記憶が外部にあればいい、いろいろなものがデータ化され、暮らし方もかわってきたってことですね。全部のCDを入れられるoPodとかってすごくゲストハウスと相性よさそうですよね。
−−今日はありがとうございました。
ゲストハウスは都市の古い物件の再利用からはじまった、新しい住み方です。人生の途中で、やりたいことに邁進するときに使える、便利で有効なアイテムといったところでしょうか。過去、制約となっていた敷金・礼金・保障人なんていう足かせがない方法もあるのです。自分の居場所を探して、たくましく、生きていきたい人に、素晴らしいプレゼントだといえそうです。
本では、ゲストハウスのさまざまな暮らし方と具体的な業者の説明もありますから、この春、自立を目指す、どこかにいきたい人は、ぜひ読んで参考にしてください。

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