楽天ブックス 著者インタビュー

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「よろしくお願いします!」と、スタッフのだれよりも大きく明るい声であいさつしてくださった久保さん。元NHKの人気アナで、現在はフリーアナウンサーとして活躍中の彼女は、3歳のお嬢ちゃんのママでもある。昨秋スタートした子ども向け英語番組(TBS系、BS-i)では、えいごっこの森のジュンクとして、一般公募した子どもたちと共演中。この番組から生まれたCD付き絵本『クボジュンのえいごっこ』には、8年間もの海外滞在経験をもつ久保さんならではのアイデアがつまっている。赤坂のTBS会議室にいらした久保さんに、お話をうかがってみると…

プロフィール

久保純子さん (くぼ・じゅんこ)
1972年、東京生まれ。小学校時代をイギリス、中学校時代をフランス、高校時代をアメリカで過ごす。NYパイオニアセントラル高校卒、慶應義塾大学文学部卒。1994年、NHK入局。アナウンサーとして「紅白歌合戦」「プロジェクトX」などの看板番組を担当し、クボジュンの愛称で親しまれる。2004年4月からフリーに。現在、 「クボジュンのえいごっこ 」 「ブロードキャスター」(TBS系)などに出演中。その傍ら、自らの母親が主宰する子ども向け英語教室で先生を務めたり、絵本の翻訳を手がけるなど、活動の幅を広げている。

インタビュー

−−「英語の体をつくる」っていうことが番組でも今回の絵本でもコンセプトになっていると思います。ご自身の英語体験(8年の海外生活)も含めて、この「英語の体をつくる」ということについて、詳しくお話いただきたいのですが。
久保さんはい。今、大人である私たちも、お父さん、お母さん、おじいちゃん、おばあちゃん、それから周りのたくさんの人たちから、生まれて1年間ずっといろんなお話を聞いて、ある日突然、言葉が口からあふれ出てきたという体験をしてきたと思うんです。いっぱいいっぱい言葉のシャワーを浴びて、いっぱいいっぱい目から耳から言葉を自分の中に吸収して、ある日自然に言葉が(自分の中から)出てくる、そういう過程がとってもすてきだなあ、と。英語も日本語も言葉であるという点では同じですから、体全体で言葉を吸収していくという意味で、「英語の体をつくりたい」という思いがあったんですね。その英語というのは、もちろん話す言葉としての英語。書かれているだけでは、言葉は生きてはいないので、しゃべるということが大前提。だれかとコミュニケーションをとりたい――だれかの話を聞きたい、だれかと話をしたい――ということが大前提だと思うんです。それは私が小学校のときに異文化の中に突然8歳で入って、全く言葉ができない中で感じたことなんです。
−−えっ!? 全く英語がしゃべれない状態でイギリスに越されたんですか。
久保さんはい。母は英語の教師ですが、それまで、母から直接習うことはありませんでした。学校に行っても周りは英語ですから、何を言ってるかわからなくて。日本ではとても快活で、とにかくしゃべるのが好きだったのが、突然しゃべれなくなってしまったわけです。言葉の壁にぶつかってしまって。英語で話せるようになるには1年かかりました。私が生まれてから日本語がしゃべれるようになったのと同じ過程です。
−−じゃあ、学校で周りの人が話すのを聞くうちに?
久保さんそうです。なんとかこの言葉の壁を打破しなくてはと思って。今は話せないけれど、でもだれかに自分のいろんな思いを伝えたい、今、独りで寂しい、だれともしゃべれないという、この孤独も伝えたいという、その思いが原点でした。いろんな国の人たちがいて――私とは全然違うものをもっていて、違う考え方、価値観があって――そんな人たちと言葉を交わしたいな、言葉は交流の道具として存在するんだなということを、小学校時代に感じたんです。そういう原体験があって、生きた言葉、体で習得する言葉を、日本語だけではなく子どもたちに身につけさせてあげたら、世界が広がるのではないかと思ったんです。それが、『えいごっこ』という番組をつくるきっかけになりました。
−−回の絵本も、歌やチャンツ(リズムに合わせた楽しい読み方)がたくさん入って、体全体で英語のリズムを感じられるようになっていますね。構成も、能動的に遊べるものになっていて、お子さんといっしょに絵本を見る大人も楽しめると思います。工夫された点について教えてください。
久保さんいろんな所にこだわりすぎてしまいました!(笑)何を盛り込むかとか、どういう順番で並べたらいいかとか。イラストも子どもたちの五感を刺激するようなものにしたいと思いました。なぜそんなにこだわったかといいますと、娘が生まれたことによって、また、毎週毎週、番組で子どもたちとふれ合うことによって、そして英語教室の先生として子どもたちに教える中で、子どもの五感は大人よりよっぽど優れているし、すごくいろんなことを感じてくれるんだな、という実感があるからです。
−−絵はcolobockleさん、てづかあけみさん、鯰江光ニさんといった人気イラストレーターさんたちが描いていらっしゃいますね。
久保さんはい。大人っぽい色の組み合わせだったり、複雑で微妙な色づかいだったり、それが子どもたちの脳や感性への刺激になるのではないかと思っています。子どもたちは、本当に五感がすごく発達しているので、とにかくいいもの、美しいもので、どんどん五感を刺激したいんです。いろんな情報やものがあふれている中で、本当にいいものをつくって子どもたちに届けたいという思いがありました。
−−ほかに工夫された点は?
久保さん子どもたちが生活の中で自然に興味をもつことや好きなもの、日常生活で使う言葉を題材にしました。お話があったり歌があったりクイズがあったり、いろんなものを盛り込みすぎかもしれませんが、とにかく言葉のシャワーを浴びてほしいので、言葉をあふれさせてしまいました(笑)。でもきっと、子どもたちはついてきてくれる、と信じているんです。
−−絵本に載っていない会話例もCDの中に入っていたりして、絵本とCDのリンクのさせ方がおもしろいですね。普通のナレーションだったら左から順番に言葉を読んでいくところを、あちこちに飛ぶので、耳で聞いた言葉を絵を見ながら探したり。パズルゲームのように楽しめるという。
久保さん子どもは探すの好きですよね。いろんなものがあちこちに隠れているのを見つけるワクワク感を楽しんでほしいと思います。歌をたくさん入れたのは…。私たちが子どものころ、日本語を話し始めて、最初に出会ったのは童謡だったと思うんですが、今でも覚えているし、体に染みついているものですよね。ですから、「英語」を学ぶというとらえ方ではなく、楽しんで真似をして、遊び感覚でやっているうちに、体に残るものを、と。
−−歌と言えば、こんなにお上手だっていうのは、知らなかったです。
久保さんもう、最新の録音技術を駆使していただいて(笑)。10月に番組が始まったときは、私が歌ったらみんなシーンとなってしまうくらいひどかったんですよ。毎週ボイスレッスンの先生が付いてくださったり、録音スタッフの皆さんが一生懸命がんばってくださって、決してうまくはないけれども聞くに耐え得るくらいのものに仕上げてくださったというのが、正直なところです。
−−楽しい歌の陰に、久保さんやスタッフの皆さんの努力があったんですね(笑)。メロディーもきれいですよね。何曲か作詞にも参加されているようですが、歌詞をつけるときに気をつけられたことは?
久保さん英語は独特のイントネーションがありますよね。波があるんです。大波小波が。その波は、詞をつけたり歌うときにも盛り込むようにしました。あとは、発音が難しいものを入れました。rとか、vとか、thの、難しい発音が入っている言葉を、敢えて使いました。それらを難しいと感じない年齢のうちに、と思いまして。この絵本では、英語だけの歌もあればほとんど日本語という歌もあります。実は段階的に並べてあるんです。本の最後のほうになると英語が増えてくるように。英語なんだということを強く意識してほしくなかったので。英語に対して苦手意識をもっている方も多いと思います。コミュニケーションの道具として、どんなブロークンな英語でもいいし、どんなに発音が悪くても、カタコトでもいいけれども、だれかと話すきっかけになるものがあればいいと願っています。日本語を混ぜながら英語を言っても実は伝わるんですよね。ですから、英語は難しいというのではなく、言葉のひとつなんだということを感じてもらえたらうれしいです。
−−そうですね。英語絵本と聞いたときに、ABCから始まって、単語を教える絵本を想像していたんですね。カタカナで読み方と日本語訳が書いてあって・・・という。それが、この絵本を開いたときに全然違っていて。こんな英語へのアプローチの仕方があるのか!と、うれしくなりました。
久保さんABCから始めなかったのは、言葉は生きているので、生きた英語の中に、英語は難しいんだという壁なく入ってきてほしかったからなんです。私たちが最初に日本語にふれたように、素直に英語にふれてほしいんです。ABCから始めても、ABC自体に何か意味があるわけではないので、覚えても日常会話では使えませんよね。ふりがなをふらなかったのも、わからないからふりがなをふるんだ、難しいものなんだというふうに見えてしまうのが、とても嫌だったんです。
−−お料理のことが載っていたりとか、町の中のこととか、すごく身近でワクワ クしながら見ることができますね。
久保さんうちの娘は今3歳ですが、料理にはとても興味をもっていて、手伝ってくれるんです。うちの子だけではなく、子どもは、いっしょに混ぜてみたいとか焼いてみたいという願望があるのではと思います。そういう子どもたちが興味をもっていることを、どんどん取り入れました。道とか乗り物とか建物とか好きですよね! そんなページをつくったり。風船とかアメとか、明らかに子どもが好きなもので構成しています(笑)。
−−お嬢さんには、もう絵本をお見せになりました?
久保さんはい。車の中でよく見ています。CDを流しながら。この中の歌は全部歌えますよ。
−−すごい! おうちの方のために、「子どもを褒める英語表現」が付録についているのもいいですね。日本語だとついついきつい言い方をしてしまいがちでも、英語だと素直にほめることができるかもしれませんよね。
久保さん子どもにかける言葉については、私も日々反省しています(笑)。子どもを叱ることはもちろん悪いことではなくて、愛情があって信頼関係という土壌があれば、子どもは自然とそれも受け入れてくれるとは思うんです。ただ、「〜しなさい」とか「〜しちゃダメッ!」という言い方は、響きがよくないですよね。ほめ言葉は、「きれいねえ」とか「上手ねえ」とか、命令したり叱る言葉とはイントネーションまで違うし、心のあったかみが伝わってきます。『えいごっこ』の絵本を開くときも、大きな声が出たことでもいいし、口が大きく開いたことでもいいので、とにかくほめてあげてほしいと思います。
−−お話の朗読に「ももたろう」を選ばれたのは? 
久保さん人は、たとえ言葉がしゃべれても中身がないと話ができないですよね。例えば外国に行っても、その人自身の文化がないと。いくら英語がしゃべれても会話の中身がないと話が弾むということはないでしょう。中身をつくるというと大げさですが、日本に伝わる文化のひとつとして、こういう昔話というのは、日本人がこれからも大切にできたらすてきだなと思うような要素がたくさん入っていると思うんです。弱い者をいじめてはいけないよとか、おサルさんとかキジさんとかみんなで仲良くしようね、とか。そういう日本に伝わる心を盛り込むことも大事だと思いました。
−−この絵本、学校で教科として英語をやり始める中学生や高校生にもいいんじゃないかと思いました。このCDを聞いて、英語って耳に心地いいなあって、私も初めて思えたので。関係代名詞とか構文がどうのって言われるとイヤですけれど。
久保さん(笑)ありがとうございます。勉強と思わないで、英語は楽しいなというところを見つけてもらえればうれしいです。英語教室の子どもたちを見ていて思うんですが、子どもの吸収する力は、それはそれはすごいですよねえ! 心のスイッチをちょっと入れてあげると、子どもってどんどん走っていきます。英語に限らず、何かの中に楽しみを見つけられると、子どもはすごく伸びるんだなと思います。
−−お母さんになられて、仕事に対する考え方で変わった点はありますか。
久保さん去年フリーになったのも、英語番組をつくりたいという思いがあったからなんですね。母親の感覚である今を大切にしたい、と。(子どもから手が離れる)10年後でも英語番組をつくることは可能だとは思いますが。自分の子どもを見ながら、育てながら、子どもはこういうことに興味をもったりこういうものに心が躍るんだということを、母親として体感できている今、日本中の子どもたちのためのものをつくりたい、自分の感覚が“今”なうちに子どものためのものづくりをしたい、と思ったので。子どもが生まれたということが、新たな一歩を踏み出すきっかけになったと思います。
−−最後にこの本を手に取るお子さんやおうちの方へ、一言お願いします。
久保さんほんとに、ただもう、ご家族で楽しんでいただければ幸いです。何も難しいことはないので、気が向いたときに。ちょっと早いなあと思ったら1年後でも2年後でも大丈夫です。無理やりではなくて、自然に、お子さんが興味をもったときに開いてみてください。その時がタイミングだと思うので、そこから始めてもらえれば!
−−今日は長時間、どうもありがとうございました。今後の活動も楽しみにして おります。
「子どもに関することはライフワーク! 小さいころに子どもに携わる仕事をしたいと思っていたのが、今、実現したので、これからも一生やっていくと思います」と大きな瞳を輝かせながら語る久保さん。とても充実した“今”を感じさせる女性である。単語や文字を覚えることよりも、英語のリズムを感じる体づくりを大切につくられたこの絵本で、パパやママも、ぜひぜひお子さんといっしょに“えいごっこ”を楽しんでほしい。【インタビュー 渋谷典子】

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