楽天ブックス|著者インタビュー - 黒木亮さん『排出権商人』

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「人の思惑を超えた経済システムを描く。それが今の経済小説」黒木亮さんインタビュー緊迫のリアルフィクション『排出権商人』

地球温暖化を防ぐために結ばれた「京都議定書」には、温室効果ガス削減策の一つとして「排出権取引」が盛り込まれました。二酸化炭素(CO2)の削減目標が達成できなかった参加国は、削減余地のある他国から温室効果ガスの排出枠を買うことが認められています。小説「排出権商人」(講談社)は、大手エンジニアリング会社に勤める主人公・松川冴子を中心に、各国の思惑や「カラ売り」専業ファンドとの攻防などを通して、このシステムの実態を描きます。著者の黒木亮さんに話を聞きました。

プロフィール

黒木亮さん (くろき・りょう)
1957年、北海道生まれ。早稲田大学卒業。カイロ・アメリカン大学大学院修士(中東研究科)。銀行、証券会社、総合商社を経て、00年「トップ・レフト」(祥伝社)でデビュー。ほかに「シルクロードの滑走路」(文芸春秋社)「巨大投資銀行」(ダイヤモンド社)「貸し込み」(角川書店)などがある。

インタビュー

黒木亮さん

−−排出権取引をテーマにしたきっかけは。
黒木さん小説のテーマを考えていたとき、JETRO(日本貿易振興機構)に勤めている友人から「うちに排出権をやっている人間がいる」と紹介を受け、話を聞いたのが最初でした。そのときは話を聞いても何を言っているのかさっぱり分かりませんでしたが、養豚場のメタンガス回収の話などが出てきて、排出権というのはけっこう人間くさくて、面白いと思いました。
−−空気が売買されるというのは、これまでにない新しいテーマですね。
黒木さん例えばデリバティブ(金融派生商品)取引は、最終的に株など現物に結びつきます。しかし排出権は現物がないんですよね。権利を売買しているので実物がない。そこが最初、違和感がありましたね。まさに空気を売っているわけです。
−−物語は排出権取引の実態に迫るとともに、「カラ売り」専業ファンドとエンジニアリング会社との攻防、主人公の成長などが重層的に描かれています。
黒木さんまず私は「カラ売り屋」(講談社)シリーズをずっと書いていきたいと考えています。「カラ売り屋」というのは面白い存在で、市場の番人みたいなところがあり、性格的にも粘着質だけど反骨精神があって、とても日本人受けします。また、この本は排出権の教科書として使ってもらえるような本にしようと思っていましたが、しかしその中でも人間ドラマがないと面白くありません。ですので、主人公の成長も描きました。「カラ売り屋」であれ主人公の成長であれ、私にとって、この作品を書くにあたって全部、必要な要素でした。不自然に入れたということもないし、一つでも欠けると面白くないと思います。
−−排出権にかかわるさまざまな人物や組織が広く描かれています。取材期間や対象は。
黒木さん取材は小説の連載が始まる9カ月前から始め、連載期間中(1年間)もずっと続けました。物語に出てくる世界11カ国にも足を運び、ウルムチの風力発電、マレーシアの養豚場、山西省の炭鉱なども見てきました。取材相手は、商社、エンジニアリング会社、弁護士、会計士、デベロッパーなど、いろいろな角度から排出権にかかわっている人たち約七、八十人に取材しました。このため、排出権というものを、いろいろな側面から立体的に分かりやすく書けたと思います。
−−物語では、排出権に関して日本は、欧米諸国に「手玉にとられた」という視座に立っています。
黒木さん京都議定書の「90年比」というのが問題です。例えばEU(欧州連合)でいえば、排出権の1位と2位を占めるドイツとイギリス(2国でEU全体の47%)は、実は97年の京都会議時点で、すでに90年比で19%、13%と削減が進んでいました。ドイツは90年時点では、東西統一を果たしたばかりで東ドイツの省エネレベルが低く、イギリスは90年代に入ってから発電用燃料を二酸化炭素排出量の多い石炭からクリーンエネルギーの天然ガスに切り替えたため、両国は目標の達成が容易でした。一方の日本は2度の石油ショックと円高不況で90年時点で、すでにかなりの省エネを達成できてしまっていました。しかし会議の開催国だったため、さらに6%削減という目標を約束してしまった。
−−鳩山由紀夫首相は就任早々「2020年に温室効果ガスを90年比25%削減」という中期目標を掲げましたが。
黒木さん国際的な公平性という意味で、たいへん問題です。日本人は単純に地球温暖化=人類の危機=率先してやるのがいい、と理解していますが、温室効果ガス削減の枠組みについては、最初から非常に政治的なにおいがするという意見が多くあります。そもそも、二酸化炭素で地球が暖かくなるというのは、シミュレーションの結果であり、シミュレーションというのは、どういう数式を作って、どういう変数を置くかで変わってきます。それをそのまま信じるのは問題です。もちろん限られた化石燃料を温存し、再生可能エネルギーに移行するのはいいことですが、まずは正しく理解するのが大前提です。
−−これまで多くの経済小説を発表しています。経済を小説に落とし込む醍醐味(だいごみ)とは。
黒木さん執筆は「何でこうなるのか?」と自分自身も知りたいと思うところから始まっています。例えば「排出権ってどうなっているのだろう?」と一生懸命調べて、排出権を描いて、自分も読者も分かるというのが、醍醐味ですよね。ちなみに「これ(本作)は経済小説ではない」という人がいます。「経済小説というのは、派閥争いや密室の談合を書くものだ」と。でも、それは昔の経済小説です。今の経済は排出権もそうですが、人の思惑よりシステムそのものが力を持ってきています。今回の金融危機だってそうですよね。アメリカの小さなサブプライム市場から津波のように広がり、誰も止められなかった。ですから90年代以降の経済小説は、システムを書かないと経済を書いたことにはならないと思います。もちろん底の部分には人間の欲望があって、そこまで行き着かないと、物事の本質は書けませんが。
−−読者に一言。
黒木さん楽しみながら排出権のことを知ってほしいと思って書きました。多くの方に読んでいただければ幸いです。

















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