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京都の恋愛は「ホルモー」の不可思議を越えて!楽しくも胸キュンの青春ファンタジー『ホルモー六景』『鹿男あをによし』ドラマ化でも注目の万城目学さん登場!

万城目学さん
 若手作家の中でも、一際、大注目されている万城目学さん。デビュー作『鴨川ホルモー』は、至極奇っ怪な謎の競技「ホルモー」を行う、正体不明のサークルに勧誘された大学生の、恋と青春と式神に翻弄される日常を描いたベストセラー。二作目は出版されてすぐ直木賞候補作となり、1月から玉木宏主演でドラマ化(フジテレビ木曜22時〜)される『鹿男あをによし』。どちらもめちゃめちゃおもしろいのだが、ファン待望の三作目は、なんと『鴨川ホルモー』続編・恋の連作短編『ホルモー六景』だ!


万城目学さんの本


『ホルモー六景』
『ホルモー六景』
1,365円(税込)

『鴨川ホルモー』
『鴨川ホルモー』
1,260円(税込)

『鹿男あをによし』
『鹿男あをによし』
1,575円(税込)
※2008年1月フジテレビ系列でドラマ化!


万城目学さんのオススメDVD


『CHAGE&ASKA/ASIAN#TOUR#IN#TAIPEI』
『CHAGE&ASKA/ASIAN TOUR IN TAIPEI』
3,990円 (税込)

『ラブ・アクチュアリー』
『ラブ・アクチュアリー』
1,800円 (税込)


万城目学さんのオススメCD


『「うしろゆびさされ組+うしろ髪ひかれ隊」SINGLESコンプリート』
『「うしろゆびさされ組+うしろ髪ひかれ隊」SINGLESコンプリート』
2,940円(税込)

『人間 万葉歌 阿久 悠 作詞集』
『人間 万葉歌 阿久 悠 作詞集』
8,400円(税込)

『さだまさし ベスト3』
『さだまさし ベスト3』
3,000円 (税込)



プロフィール


万城目学さん (まきめ まなぶ)
1976年生まれ。大阪府出身、京都大学法学部卒業。卒業後、化学繊維会社に就職。退職後、上京し、たまにフットサルで身体をほぐしながら小説家を目指す。第四回ボイルドエッグズ新人賞を受賞したデビュー作『鴨川ホルモー』は、2007年本屋大賞にもノミネートされた。長編第2作『鹿男あをによし』は、2007年4月に出版され、第137回直木賞候補になる。2008年1月より、フジテレビにてテレビドラマ化。

インタビュー


万城目学さん−−一作ごとにおもしろさがパワーアップしている万城目学さんですが、新刊『ホルモー六景』は、なんと恋の話なんですね。前作のちょっと不思議な京都青春ファンタジー『鴨川ホルモー』から一転。のけぞりました。なぜ、恋をテーマに?


万城目さん 『鴨川ホルモー』で書いたのは、「ホルモー」という妙な競技と、大学生の安倍を中心した人間関係を両輪とした話でした。前作では、「ホルモー」についての話が10のうち、3か4くらいを占めるあんばいで書かれているのですが、ぼくの中で「ホルモーは、もう、ええんじゃないか」という感じがあって。「ホルモー」よりも、若者たちがバタバタする話を書きたいなぁと思いまして。だから、続きを書くなら「ホルモー」の比率は10%くらいにして、学生たちのズッコケた日常をもっと書きたい、それなら恋の話がいちばん楽しいと思って、「恋」をテーマに書くことにしたんです。

 恋といっても成就する前のやきもきした感じや、不器用でどうにもままならない状態を描いた話が多いです。成熟した関係や、男女のドロドロしたやりとりを書いたわけではないので、恋に空まわりする若者を書くのはとても楽しかったですね。ほら、恋愛マンガって、二人が初キッスするまでが一番おもしろくないですか? 恋愛が成就する前の、エネルギーを盛大に無駄打ちしている時期を見守るのが好きなんです。


−−そうすると伺ってみたいのは、万城目さんの学生時代なのですが、どんな恋愛をされてたんですか?

万城目さん やっぱり最初の一歩を踏み出す前の思索の量は、莫大やったような気がしますね。事前シミュレートの量が半端じゃない。どんだけ場合分けすんねん、みたいな(笑)。
 

−−全部で6編ある話のうちの、第一景「鴨川(小)ホルモー」では、新歓コンパの風景が印象的です。

万城目さん 実際にサークルの新歓コンパで経験したことを、書いている部分もありますね。一年生のときは気がつかなかったけれど、二年、三年となって、毎年同じ風景を見ていくにつれ、徐々にわかってくることってありますよね。

 大学が男子が圧倒的に多い構成だったので、どうしても、コンパの男女比が五対一とか六対一とか十対一とかになるわけです。そうすると作品に書いたように、ほんとに座敷にひとりの女の子を中心に男が車座になってそういう風景が現れるんですよ。


−−この第一景、「ちょっと変っていてモテない女の子」側だった私からすると、よくぞここまで女の子の気持ちを書いてくれたとハートをつかまれました。

万城目さん いわゆる入学時の新歓コンパって、それっきり会うことのない人が多いですけど、女の子の顔は覚えていたりしますよね。男女同数の私学だとそういうことにならないでしょうけど、男子ばっかりの環境なので、数の少ない女の子はとにかくモテます。そういう人を半年後とかに見かけると、ものすごい自信に満ちた感じになっていたりして。うわー、変わるなぁみたいな(笑)。そのとき抱く、ちょっと意地悪な感情を、作品で女の子に言わせています。別に、女の子の気持ちを代弁したつもりではないんですよ。それが、女性から「よくぞ言ってくれた!」みたいな声をいただくと、どう返していいかわからない(笑)。


−−『鴨川ホルモー』で大活躍したヒロインをはじめ、前作、噂話にだけ登場した人物、相手チームに所属している女の子、さまざまな女性を中心に据えて今回は書いていますね。彼女たちの別の一面を読むことができてうれしかったのですが、女の子の書き分けに苦労されたりしましたか?

万城目さん 女性が主人公の話を書いたことがなかったので、大丈夫かな、と思っていましたが、やってみたら案外、違和感なく書けましたね。二人目、三人目と新しい登場人物を増やしていっても、最後まで楽しく書くことができました。男女問わず、基本的に、みなさん「ええカッコしない」ように書いています。女の子にドジなことをさせるのは、意外やおもしろいです。クセになりそうです。


万城目学さん−−中でも、第二景の凡ちゃんが好きなのですが。

万城目さん 凡ちゃんは、髪型とメガネの形が大木凡人に似ているから、あだ名が「凡ちゃん」という、無茶苦茶な設定の女の子なんですが、実際にいたら、たぶんお付き合いすることはできないタイプでしょうねえ。でも、しあわせになってほしいと願わずにはいられない感じの女の子です。不器用で、でも聡明で、素敵ですよね。

 モデルですか? 大学のときに、とても優秀だけど、風変わりだという女の人の話を聞いたことがあるんです。極度の上がり症で、人とは上手に話せないけど、誰よりも優秀な成績で大学院の試験をパスしたという人の話でした。実際に会ったことはないのですが、その話の印象が強烈で。『鴨川ホルモー』では、その人の風変わりなイメージをただ膨らませて、凡ちゃんというキャラクターにかぶせてみたのですが、書いてるうち、自分でも親しみがわいてくるんですね。一見、風変わりで、何を考えているかわからないようでも、きっと心の中ではいろいろ考えて、悩み事だってあるし、普通の女の子なんだろうツンツンしてても、本当はみんなと仲良くしたいと思うこともあるだろうとか。そんな想いが募って書いたのが、第二景「ローマ風の休日」でした。


−−この第二景では、数学のロマンのようなことも書かれていますね。どこかで聞いたことがあるようで、ちゃんとは知らない数学に関するエピソードが、さりげなく小道具として非常に上手く使われていて。

万城目さん 「ケーニヒスベルクの橋の問題」ですね。ぼくもはじめは聞きかじり程度の知識しかありませんでした。作品で取り上げるからには、ある程度理解しなくちゃいけないので、数学の入門書を4〜5冊読んだんですが、手強かったですねえ。

 数学者とか、理系の研究者の話って、大好きなんですよ。問題に集中しすぎて、まわりに何が起こっていても気がつかない、なんてほとんどコントの世界でしょう。でも、そういう人たちが研究につぎこむ情熱って、とてつもなく純粋だったりするんですよね。僕の知り合いでも、鉛筆と紙さえあれば、数式を一時間でも二時間でも考え続けられる、って人がいます。ぼくのまったく知らない世界を知ってるわけです。いやあ、ちょっと憧れますね。


−−第三景「もっちゃん」という男同士の友情を描いた作品は、やられた!と感服する作品です。オチが大爆笑だし、時代をパッと飛び越える感覚もすごいですね。

万城目さん 随筆か小説か忘れましたけど、大学時代に森鴎外の本を読んでいると、自分がしょっちゅう自転車で通っている鴨川の橋を、若き日の森鴎外が小難しいことを考えながら渡っている、というシーンがあったんです。なんだか、すごくヘンな気分がしたんですね。あっこの橋を森鴎外が渡っていたのかという。他にも、新撰組があの三条大橋を毎日見回りついでに歩いていたのかとか。自分とはまるで接点がないと思っていた歴史上の存在が、急に生々しく息遣いを始めて妙な気持ちになるというか。つまりそれは、作品のなかに書かれている京都が、今とさして変わらない感じがするから起こる違和感なんですよね。
 『鴨川ホルモー』を読んでくれた50〜60代の方の感想ハガキの中にも、携帯電話がなかったら、自分たちが京都で過ごした学生時代とあまりかわらない、といった内容があって。幾重にも時代がかぶさっている京都ならではの特長を生かした一編が「もっちゃん」です。


万城目学さん−−それが結実しているのが、第六景「長持の恋」ですね。これは、泣かされました。こんな切ないお話も書ける方だったのね、と、三作目でこんなにいろいろな技を拝見してしまったわけですが。毎回、完結する短編連作というスタイルはいかがでしたか?

万城目さん 少しずつ自分の中でむずかしいことをやっていこうと思ったんです。たとえば、一作目は新人賞を受賞した作品なので、素人時代に一人で好き勝手に書いた作品でした。それに対し、二作目は出版社から依頼がきたわけです。今までは気ままに書いていましたが、はじめて「一冊書いてください」と依頼がきたわけです。「おぉ、これぞプロの仕事だ」と思いましたね(笑)。
当時は、といってもまだ一年半前のことですが、自分でも『鴨川ホルモー』と同じレベルの作品が書けるかどうか、何の自信もないわけで。そこで、まだ二作目だし、いきなり路線のちがうものを書いてズッコケるよりは、なるべく一作目と同じような雰囲気で、地固めをするような感じで書こうと作戦を練って。それで半年で書き上げたのが『鹿男あをによし』でした。

『鹿男』は3分の1くらい書き上げたあと、大幅にブラッシュアップし直して、その後3分の2を仕上げたんです。ところが、連載で長編となると、途中でさかのぼってブラッシュアップなんてできなくなります。もう発表してしまっているわけだから。これはいきなりの長編連載はキケンだぞ、というわけで、読み切り連載という形でやっていくことに決めました。ひと月ごと完結する話なので、しくじっても来月は取り戻せる!みたいな感じで(笑)。


−−それで半年、六話の連載だったんですね。でも読者にとっても、一冊にまとまるとちょうどいい本数ですね。もうちょっと読みたいゾみたいな余韻を感じさせながら、最後に泣かされて!

万城目さん 毎月はしんどかったですね。でも、作家のみなさんは、それを当たり前のこととしてやってるんです。週刊連載のマンガ家の先生は何て立派なんだ!と心の底から尊敬しましたね。
現在、大阪を舞台にした長編『プリンセス・トヨトミ』を『別冊文藝春秋』で連載しています。長編連載なので、読み切りより、また一つ難易度がアップしました(笑)。隔月刊なので、本になるには、あと一年ぐらいかかると思います。


−−年明けそうそうには、『鹿男あをによし』のドラマもはじまりますね。そちらはいかがですか?

万城目さん もう、すごく楽しみで。シナリオがまた、おもしろいんですよ。綾瀬はるかさんが、藤原君という原作では男だった歴史教師の役を演じるんですが、「藤原君て、最初から女だったっけ?」というくらい自然な雰囲気で描かれてます。主人公役の玉木宏さんとのかけあいも見るからに楽しそうで、ぼくも奈良のロケをのぞきに行きたいです。


−−『鹿男あをによし』は出版されてすぐ直木賞候補になり、とんとん拍子に作品が注目されましたね。どこかに祈願されたとか?

万城目さん 作品の取材で神社を訪れるときは、いつも10円玉を賽銭箱に投げて「今、書いてるものが、うまいこと最後まで行きますように」とお願いします。いったん本になったあとは、もう僕の手の届かない世界ですね。ドラマ化もほんとに、ポンッて決まったんです。「え、ドラマやるんですか? え、玉木宏? え、綾瀬はるか? それ、何の話です?」みたいな(笑)


−−今後の作品もまた京都や関西を舞台に書かれるのですか?

万城目さん 現在、手がけている大阪を舞台にしたものを書き終えたあとは、関西を離れ、ちがうものを書いていこうかな、と思っています。とはいえ、『ホルモー六景』でも、書き残している部分はあるとは思います。もしいつか、もう一本書くとしたら、怒濤の勢いで大団円!みたいにできたら気持ちいいかなぁ。


−−「ホルモー三部作」になるわけですね!

万城目さん 編集の人からも、このまま、終わることは許しませんっ!みたいに言われているので(笑)


−−ぜひ、楽しみにお待ちしております!




【インタビュー 波多野絵理】









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