楽天ブックス 著者インタビュー

  • バックナンバー
  • 最新号

今週の著者インタビューはMr.マリックさん。デパートの実演販売時代の苦労から、エンタテインメントな舞台まで、これまで培ってきた経験や奥義の数々をまとめた『Mr.間リックの成功発想術』は、ビジネスに悩む人々にとってヒント満載の一冊。ビジネスに夢の魔法をかけるコツを伺いました。

プロフィール

Mr.マリックさん (ミスター・マリック)
1949年1月1日生まれ、岐阜県出身。1988年日本テレビ系列「11PM」で超魔術とともに、衝撃的デビューを飾る。以後、「きてます」「ハンドパワー」などの流行語を次々生み出し、日本のみならず、世界のマジック界を代表する存在に。現在もTVを中心に、舞台やイベントなどの演出や特殊効果、技術指導にいたるまで、幅広く活躍している。カードマジックのスクールJCS(Japan Cardicians School)も開設。
公式ホームページ : http://www.maric.co.jp/

インタビュー

−−マリックさんにはいつも驚かされますが、今回は、ビジネス書を出されたということで驚きました。どのような経緯で書かれた本なのですか?
Mr.マリックさん本が好きで、本屋はよくのぞいているんです。それで気がついたんですが、何年も前からビジネス書のコーナーが、年々大きくなっていくんですね。最初はちょっとしたブロックだったのが、一ケ月もすると倍になって、通路全部、しまいには両側になっている。どの本屋もビジネス書が山のように積まれていますね。ところが、書かれているのは難しいことばかり。勉強されてる方はそれでいいのかもしれませんが、理解できないくらい難しくては……。そんな中、テリー伊藤さんの本があったんですが、これは、活字も大きく、ふつうの口語体で書いてあって、一気に読めるわかりやすい本だったんです。こういう本なら、もっとビジネスに役立つことが伝えられるな、と。

そう思っていたところにタイミングってあるんですね。たまたまTOKYO FM出版さんのほうから(マジックなどを)発想するアイデアはどこからでてくるんですかという質問があって、それはビジネスにも役だちますね、とお話をいただいて。私たちも、自分が商品の個人商店みたいなものですから、人と違った角度で、伝わることがあるならば、書いてみましょうか、ということになったのです。不思議なタイミングでしたね。
−−マジックはビジネスに活かすことができるのですか?
Mr.マリックさんビジネスで大事なことのひとつに「人の心をつかむ」ということがありますが、人の心は、数字や、理論で武装しただけでは、つかめません。魔術というのは、もともと人の心を操るために生まれてきたものです。魔術という術(すべ)を活かしたほうが、もっと効率よく、楽にビジネスができるかな、と思いましてね。同じ100万円儲けるにしても、キチンと理論的にやっても儲かるかもしれませんが、人間には術を使う叡智がある。商売も、そういう夢のある売り方をしていけば、人を自分のほうに向かせることができる。こっちを向かせたら、そこから難しい本に書かれていることが役に立つと思います。買おうとしている人も、興味ない人も、みんな、こちらに向かせる『術』。それを、あらゆる仕事の中で最初にやったのが、魔術師という職業かもしれませんね。

みんなマジシャンのつもりで、マジックを見せるつもりでご商売をやっていただくといいんじゃなんでしょうか。
−−マジシャンとして培われてきたご経験から、ビジネスに活かせるいろいろな極意や法則をこの本の中に書かれたわけなんですね。
Mr.マリックさんそうなんです。魔術というわけのわからないものは、10人が10人、楽しんでくれるものではない、というのがわかってきましてね。世の中には、パズル派とマジック派がいて、絶対にタネを知りたい人が半分いるものなんです。楽しい夢が見られれば十分という人も半分います。人間というのは、いちがいにひとつにくくれないものなんですね。相手を見抜く力をもって、お釈迦さまみたいに「人を見て法を説く」というんでしょうか。相手にあわせて商売しないと、結局、苦労ばっかりで、ムダなエネルギーを使うことになるんですね。

私たちも舞台に出た時は、まずジョークを一つ言いますが、それで誰が笑うかを見ているんですよ。笑わない人を相手にしていては、エネルギーを取られてしまいますから。笑う人は、スキがあるし、好意的に思ってくれているでしょう?

本の中でも説明していますが、大勢の観客を観察していくと「3・4・3(さしみ)の法則」になったんですよ。どこに行っても、舞台に出ると、だいたい3人は何にもしていないのに最初から笑っている。4人はジョークを言うと笑う人。そして残りの3人は、別に来たくて来たわけじゃないなどと思っている。この比率が「3・4・3の法則」です。10人全員に物を売ろうとすると失敗するし、ありえないですから、この法則を知っていればラクになります。今の私のスペシャル番組を見ていただければわかると思いますけれど、タレントさんを大勢集めるのはやめたんですね。ちゃんとターゲットを絞らないと。エンターテインメントの世界ですらそうですから。まして、お金を払っていただこうと思ったら、興味がない人は絶対買ってくれません。無理してそういう人にエネルギーを使うぐらいだったら、もっと買ってくれる人を攻めたほうがいいわけです。笑ってくれた人をもっと笑わせて、その笑いを横や後ろに伝えてもらう。ちょうど、ショーで笑いが広がっていくような感じで、ビジネスも広めていかないと、と思いますね。そういった観点で、読んでいただけたらいいですね。
−−物が売れなくて悩んでいるビジネスマンも多いと思いますが……。
Mr.マリックさん私もデパートの実演販売時代には、売れない時期がありました。まず、足を止めさせるだけでもたいへんですよ。マジックなんて、普通の人は興味ないですし、目的が別にある人はスーッと行っちゃいますから、ヒマな人じゃないとダメです。そういう人に声をかけて、不思議なことをパッとやる。「え?」っと驚くでしょう? これではじめて興味を持ってもらうことができました。まず一人つかまえるわけです。この人には売る気を絶対出しません。この人が見ていると、他のお客が横からのぞきやすいんですよ。包丁の実演販売とかもそうですけど、お客が誰もいないところに、ほかの人は集まりづらいですからね。こうして、人が集められるようになってからですよ、ものが売れるのは。まず人を集める力を作らなきゃいけません。印象が悪いとか、売る気マンマンだとか、ちがう光線がでていると、人は拒絶します。楽しんでくださいね、という雰囲気に人が集まってくる。そこから物を売るというのは、さらに別の難しさがあるんです。

なにしろ、手品の道具ほど、売りにくい、難しいものはないわけですよ。まず、商品に触らせられないでしょう?仕掛けがあるから。「やり方は?」「教えられません」。タネも商品の中に書いてあるわけですから。そんなヒドイ商品は、世の中、ほかにないですよ(笑)。しゃべったことを信用してもらうしかないんですが、もともと胡散臭く見えるものだし、品物は触らせてくれない、やり方は教えてくれない、値段は高い。それを乗り越えて売るには、説得力がいるんです。この人がこれを買って、パーティでやると、拍手喝采。ウケている姿を妄想のように膨らませてあげないといけないんです。そうやってどんどん説明していると、人は一瞬、欲しくなる時があるんですね、その瞬間にパッと売る。家に帰ってよく考えてから、ふたたび買いにきた人は、一人もいませんからね。

こういった難しい商品を売ってきましたから、逆に今は、見せるだけなので、ほんとラクになりましたよ。人を集めるのと、物を売る、このふたつの壁を乗り越えて、14年間仕事してきたものですから、その当時のことを思い出しながら、書きました。
−−インターネットで物を売るのにも、当てはまりますね。
Mr.マリックさんそうですね、ネットも難しいでしょうね。品物に触れないのだから、やはり説得力が必要ですね。あとは、ターゲットが合っていないとだめでしょうね。
−−マジックの極意のひとつとされる「フォーシング」についても書かれていますね。たしかにビジネスにも役立つ内容だと思いますが、ここまで明かして良かったのでしょうか……?
Mr.マリックさん「フォーシング」はマジシャンの秘密兵器ですから、この本を読んで怒るマジシャンがでてくるかもしれませんね。もともとマジックは心理学をかなり使っていましてね。仕掛けだけでは、今の人はアヤシイと感じるんですよ。手つきや様子から見抜く力があるんです。ですから、もっともっと心理学を取り入れないと、頭の良い方々に夢を見せるのは難しくなってきました。そのため、この「フォーシング」は、近代マジックでものすごく研究され、最近のものにはほとんど取り入れられているんです。

私も、テレビで、少しずつタネを明かしてきましたが、やっと、「ティーチング(マジックを教える)という意味でのタネ明かし」と「暴露」とのちがいが理解していただけるようになってきました。私は、できる範囲でしか教えないんですよ。トリックは教えても、いわゆる考え方とか心理学を利用した奥義の部分は、ちゃんと真面目に読んでもらえるところで書こうかなと思っていたんですね。ビジネスマンのような、人生に対して、正面切って向かっていく人にこそ、奥義の部分をうまく利用していただけると思って。あえて選んで書いているわけです。

人っていうのは操り操られて、教育する側とされる側にうまくわかれているんですよ。教育する側へ回らないと物は売れません。催眠術のかけあいというか、世の中では、日々、魔術合戦が行われているわけです。

「奥さん、今日の魚は安いよ」っていうのも、これも一種の催眠・暗示言葉ですね。それにつられて買っちゃうわけでしょ。こんな風な魔術合戦が、町中で行われているわけですから、ぜひ、魔術をかける側にまわってもらいたいですね。その、最大の奥義が「フォーシング」です。相手が「自分で選んだ」と思うわけですから。

たとえば、子供の名前を命名するとしましょう。占い師さんは、絶対にその子の名前をつけませんよ。候補を5つぐらい出して、その中から選ばせる。相手が選ぶと「私もそれがいいと思っていました」。決定権は相手に持たせ、相手は自分で選んだ気分になります。「無理やり買わされた」という心理は働かないんですよ。主導権を相手に持たせて、納得ずくで買っていただく。この心のつかみ方が、まさにフォーシング。家電の量販店とか、陳列そのものにも、フォーシングを活用している店がたくさんありますよ。選んでいるようで選ばされているんですが、つい、ひっかかりますよ。選ぶ先までよんで、陳列してあるわけだから、まさに魔術のようですよ。お寿司屋さんの松竹梅もそうです。梅があるから竹が売れるんですが、竹が売れればいいんです。まさに叡智ですよ。
−−本の終わりの部分には、ビジネスマンが実践できるような超魔術が紹介されていますね。
Mr.マリックさんほとんどの人は私のことを、エンタテインメントの人として知っているわけですから、「私=ビジネスの世界」は、入りづらいかなと思いましてね。マジックを覚えてもらうことが目的ではないのですが、紹介したようなマジックの考え方を学んでもらえば、どうやって作ったんだろうか、なぜこういうことができるんだろうって、興味を持っていただけると思います。それから、ビジネスについての部分を読んでもらえれば、よりわかりやすいのではないでしょうか。なんでもそうですが、新しいものは、どこかにそれまでとの共通点を残しておかないと、いきなり違うものを作りましたって言っても、パン屋が魚を売るようなもので、「どうしたの?」って言われちゃいますからね。
−−ふたつの入り口があるわけですね。どちらからはいってもいいから、実践してみる、ということですね。
Mr.マリックさんそうですね、本にも書きましたが、ほんとうに実行することがすごく大事なことです。そのためには、夢中になれるものを早く見つけることですね。それをやっている時は、周りの音も聞こえない、おかあさんに「ごはんですよ」と呼ばれてもわからないくらい、熱中したことってあるんじゃないですか。そういうものに早く出会うことで、自分のほんとうのすばらしさっていうのが見つかると思います。夢中になれるものを早く見つけましょう。見つけたら、とことんやりましょう。

早くみつけたもん勝ちでしょうね。映画を見ても、評論だけしているようでは、人生、何にもないですよ。どんなに楽しい映画だって、監督の楽しみにはかないませんから。やっぱり作る側、楽しませる側にまわるべきですね。サッカー選手だってそうですよ、やったもん勝ちです。それも、ひとつのことをずーっと続ける。ほんとうに成功している人は、みんな小さいころからやってますよね。ずっと続けているから、天職になるんでしょうね。ひとつのことを深く続けていけば、真理にたどり着くという気がします。
−−マリックさんご自身が真理にたどり着いたというか、これだな、と思われたことはありますか?
Mr.マリックさん今だに、たどり着けていないですけど……、そうですね……。たまたまカミサンが散歩に出た時に聞いて、話してくれたんですけどね。「私、マジックはキライなんだけど、マリックさんの番組、おもしろくって最後まで見ちゃったわ」と言った近所のおばさんがいたんですよ。

それを聞いて、これは「3・4・3の法則」を越えられたなって思いましたね。マジックがきらいな人までこっちを見てくれたんだ!と。親しげな3・4の人を越えて、そっぽを向いていた残りの3の人まで、こっちを向けることができたわけですから、そういう意味では、一番うれしかった言葉でしたね。

それからまた、私の超魔術の裏を見て、興味を持って始めた人たちが、若手マジシャンとなって、でてきましたからね。これから、どんどんおもしろくなると思いますね。
−−マジックに興味をもっている方に、おすすめの入門書とかはありますか?
Mr.マリックさんMr.マリックさん 女性向けに『はじめての超魔術』という本も出しました。女性の指先の器用さはマジックに向いているんですよ。また、お子さんも身近にいるでしょうから、ご一緒に楽しんでいただけるんじゃないでしょうか。だいたいいままでのマジックの本は難しすぎたんですね。これは、女性の方にも楽しんでいただけるよう、わかりやすい絵本のようになっています。あとは、若い男の子なら『モテる超魔術』と『ウケる超魔術』。モテたい、ウケたいって、目的意識があると、上達も早いですからね。パッと開いた見開きでわかるようになってまして、なにしろ、演出をキチっと書いてあります。なにをしゃべっていいかわからないという人のために、シチュエーションが頭に浮かぶように、セリフもキチッと書いてありますから、はじめやすいと思いますよ。
−−ステージだけでなく、お仕事の幅を広げてらっしゃるようですが、今後、どのような展開をされていかれるのですか?
Mr.マリックさん今年の4月から、インターネットでカードマジックの専門学校をたちあげたんですよ。一組のトランプがあれば、すぐに人を楽しませることができるわけです。手品のグッズは仕掛けがあるので、他力本願の世界になってしまいますが、トランプの技を覚えるということは、自力本願。基本から少しずつ上達していく充実感もあります。マジックの基本として、音楽でいえばクラシックというぐあいに位置づけて、小学校から大学までの学校を開校したんです。

マジシャンではなくて、カードマジックだけやる人を「カーディシャン」と名付けましてね。カードではじまり、カードで終わる世界です。誰の協力もないし、音楽もない。自分でしゃべって、10本の指でやらないといけませんから、ほんとうに腕がつくんですよね。そういうことに興味のあるかたは、ちょっとのぞいていただくといいかもしれません。 

カードマジックは指先を使いますから、早いほうがいいんですよ。小学生や中学生ぐらいからはじめてもらったら、一生の宝になるでしょうね。アメリカでは、面接の最初の質問で、なにか人を楽しませることができますか?って聞かれます。「なにも……」では、すぐ落とされますよ。カードマジックできますって言って披露できたら、即合格ですよ(笑)。

自信がついて、ひとつの個性になりますね。自分を印象づけるには、これ以上のものはないですから。
−−新しい舞台やステージはどんなものを考えてらっしゃるのですか?
Mr.マリックさん名付けて「ウイザード1」という、魔法通いの世界一を決める世界大会をやろうと思っているんですよ。マジック、超能力、なんでもジャンルを問わず、不思議なことをやる人を集めて、誰が一番不思議かを競うんです。魔法というのは、これを浮かせてって言われた時に「はい」って浮かせられなければならないわけです。自分で用意したものを浮かせても、それは魔法じゃないんですね。それからまた、魔法は、周囲を観客に囲まれてはじめて魔法になるんです。こっちから見たらマズイというのは、トリックがありますって言っているようなものでしょ?人間は魔法使いには絶対になれないんだけど、魔法使いに一番近い状態、自分以外誰もタネがわからないところまではやれると思うんですよ。そういう人を世界中から集めて、誰が一番か競うわけです。そんな戦いができたら楽しいと思いませんか?

プロレスが、今までショーだったのが、誰が強いかってことに絞ることで格闘技になった。それで急におもしろくなりましたね?マジックも、だれが不思議かって一点に絞ったら、パズル派の人もマジック派の人も、すべての人が楽しめるんじゃないでしょうか。もちろん、総合力がいりますよ。世の中に不思議な人がいますからねぇ、マジックだけでは、たぶん勝てません。すごい大会になるでしょうね、胡散臭い人間がたくさん集まるわけですから。来年には実現したいんですが、ところがね……。 「ハリー・ポッター」の予告編を見ていたら、ちょうど、それなんだよなぁ(笑)。同じことを映画の中で先にやられちゃった。マネしたように思われると口惜しいですが、そんなことってあるんですね。人間の創造力っていうのはね、ぶつかりますねぇ。

不思議なことを純粋に楽しめる、ハリーポッターの現実版みたいなものを来年やりたい、と思っているんですよ!
−−すごく楽しみです! 今日はほんとうにありがとうございました。
Mr.マリックさんのマジックは、技と不思議が渾然一体となった魅惑のショー。ほんとうに、録画した番組を何度再生しても、見事にタネがわからないんですよねぇ。そのMr.マリックさんにも、苦労したご経験と、たゆまぬ努力があったんですね。ビジネスマンだけでなく、誰が読んでもMr.マリックさんの生き方・考え方から学ぶところがたくさんあるかもしれません。口ではなんともいえるけど、やっぱり、実践しなくちゃね……、とさりげなく示されるあたりに、なみなみならぬ達人の努力と鍛練を知ることができる一冊です。 【インタビュー 波多野絵理】

このページの先頭へ