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松尾スズキさん

松尾スズキ『hon・nin』を語る 「麒麟の田村君を出したい」

 2006年9月に創刊された季刊『hon・nin』(太田出版)は、「本人が書く本人の話」をコンセプトに、宮藤官九郎さんや安野モヨコさんといった執筆陣をそろえて、各号とも7万部を超えるヒットとなっている。12月8日の第5号発売を前に、スーパーバイザーを務める演出家の松尾スズキさんに話を聞いた。


松尾スズキさんの本


『hon・nin(vol.05)』
『hon・nin(vol.05)』
998円(税込)

『hon・nin(vol.04)』
『hon・nin(vol.04)』
998円(税込)

『クワイエットルームにようこそシナリオ&アーツbook』
『クワイエットルームにようこそシナリオ&アーツbook』
1,575円(税込)

『Walker 2.0 invoice 松尾スズキ「クワイエットルームにようこそ」ウォーカームック』
『Walker 2.0 invoice 松尾スズキ「クワイエットルームにようこそ」ウォーカームック』
880円(税込)

『クワイエットルームにようこそ』
『クワイエットルームにようこそ』
470円(税込)

コミック『クワイエットルームにようこそ』
コミック『クワイエットルームにようこそ』
530円(税込)

『ぬるーい地獄の歩き方』
『ぬるーい地獄の歩き方』
540円(税込)

『これぞ日本の日本人』
『これぞ日本の日本人』
580円(税込)


プロフィール


松尾スズキさん (まつお すずき)
1962年、福岡県生まれ。88年、「大人計画」を旗揚げし、作・演出・役者をつとめる。97年、舞台「ファンキー!〜宇宙は見える所までしかない〜」で第41回岸田國士戯曲賞受賞。00年、「キレイ〜神様と待ち合わせした女〜」でブルーリボン賞を受賞。01年、第38回ゴールデンアロー賞・演劇賞を受賞。04年公開の初監督映画「恋の門」がヴェネチア国際映画祭に出品。2作目の『クワイエットルームにようこそ』は、自身の原作で芥川賞候補にもなった。
「hon・nin」公式ホームページ http://www.ohtabooks.com/hon-nin/
映画「クワイエットルームにようこそ」公式ホームページ http://www.quietroom-movie.com/

インタビュー


−−小説、漫画、コラム、日記をさまざまなジャンルの連載が掲載されていますが、「本人縛り」のコンセプトはどこから生まれてきたのでしょうか。


松尾さん 雑誌を一緒に作りませんかと編集部から持ちかけられたとき、やるからには今までにないものを作りたかったんです。ぼくのまわりには面白い人が多いので、この人たちが作り話ではなく本人の言葉で、しかもインタビューではなく本人直筆でやると面白いだろうし、そういうのはないなと思ったんですよね。自分の人生や人生観でもいいし、とにかく自分というものが出てくる話にしたかったんです。フィクション、ノンフィクションにもこだわらず。


松尾スズキさん−−松尾さんは「スーパーバイザー」という立ち場ですね。「責任編集」ではなく。

松尾さん 肩書きは何でもよかったんです。ただ、ぼくにとって「責任」という言葉が重かったんですよね。背負いきれない部分があった。執筆陣とのやりとりは、原則的に編集部。ぼくは人見知りだし、人とかかわりあうのが苦手なんで「影で糸を引く」ではないけれど(笑)、そういう立場が、ありがたいんです。


−−『働きマン』(講談社)の安野モヨコさんやドラマ「トリック」の監督・堤幸彦さんなど、執筆陣が豪華ですね。

松尾さん  安野さんは、以前からメディアに対するフラストレーションみたいなものを少し聞いていたし、テレビ番組の「情熱大陸」に彼女が出演している姿を見たときに、「この人は掘れば何か出てくる」と感じたんです。堤さんは、全共闘でバリバリやっていたと聞いていたので、ぜひその話を書いてほしかった。中川翔子さんは「漫画を描けるんじゃないか」と思って。人間生きてれば必ずエピソードがあるだろうし、それを一つは書けるのではないかと思ってるんですよね。


−−今、一番『hon・nin』に呼びたい人は誰ですか。

松尾さん  漫才コンビ「麒麟」の田村君を出したいって前々から言ってたんだけどね。とにかくエピソードを持っている人ですね。筆力はある程度、必要ですが。詳しくは言えないけど今、ある大物にも声をかけてます。


『hon・nin』−−宮藤官九郎さんの「きみは白鳥の死体を踏んだことがあるか(下駄で)」や本谷有希子さんの「改めて! ほんたにちゃん」など地方出身者のコンプレックスやフラストレーションが描かれています。松尾さんも福岡県北九州市の出身ですね。

松尾さん  東京に出てきたのは22歳のときかな。帰りたいと思ったことはまったくないですね。田舎が嫌で嫌で仕方なかったから。ただ自分を生み出してくれた街なんで、感謝はしてるんですよね。この雑誌の一つの側面として「いまメディアで活躍している人が、どうやってそこにたどり着いたか」というのがあるんです。読者はその辺を知りたいのだろう、と。だから執筆陣には、そういうものも書いてほしいと思う。言わなくても「本人」を書く以上、そうなるとは思うけど。そこにやっぱり一番のドラマがあると思うから。


−−自分の過去や性格などに対する「痛み」や「しょっぱさ」を赤裸々につづっているのが連載作品の共通点ですね。

松尾さん  『hon・nin』の特徴の一つは、どの作品も「笑える」ということなんですけど、笑いをとるからには、自分を笑いものにしなきゃだめだと思うんです。ここはこだわりますね、ぼくは。ユーモアって最終的に、自分を笑えないとだめだと思うんです。自虐ではないけれど、そのへんの線引きがある人と、ぼくはつき合っていきたいと思う。表現しているということに、含蓄のある人が好きなんです。楽しい思いをしている分、どこかに後ろめたさがなきゃ、バランス感覚として。それがなくなったらだめだと思う。


松尾スズキさん−−本人が描く本人の話として「hon・nin大賞」を募集していましたが、佳作が一作で、大賞なしという結果でしたね。

松尾さん インパクトがないし、思うようなエピソードもなかったんですよね。有名じゃない分、エピソードでの強烈さが欲しかった。もっと激しい不幸の話なんかがあるかと思いきや、ドラマチックな人って、あんまりいないんですよ。ぼくの中の一つの基準として、泉美木蘭さんの「会社ごっこ」があります。彼女は元々素人で、ウェブで評判になって本を出したんだけど、話が面白くて書き方も上手なんですよね。賞金100万円を出すんだから。


−−最後に読者へのメッセージをお願いします。

松尾さん  単純に、他にない雑誌だと思うし「面白いから読んでみてください」ですかね。中川翔子さんの漫画なんてめったに読めないだろうし。あと「クワイエットルームにようこそ」の映画の方ですが、まだ地方の方で見てない方が多いみたいだから、いっぱい見に来てください。





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