楽天ブックス 著者インタビュー

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 イラストレーターの黒田征太郎、ミュージシャンの近藤等則、建築家の安藤忠雄、写真家の荒木経惟など、さまざまなジャンルで活躍するアーティストたちが発起人となって立ち上げた「PIKADON PROJECT」。「広島、長崎」「生と死」などについて思いを巡らせ、行動するプロジェクトだ。この7月、その一環として出版されるCDブック「ふたつの黒い雨」に、都はるみが歌で参加した。近藤等則による曲「心の街」で、初めてトランペットとのコラボレーション作品を披露する彼女に聞く

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都はるみさん『ふたつの黒い雨』『ふたつの黒い雨』
いまだから、母から子へ、祖母から孫へ、伝えたい。「透明ではない雨が降ったことを」「いまも降りつづいていることを」
1,680円(税込)
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メッセージ『メッセージ』
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プロフィール

都はるみさん (みやこ・はるみ)
1948年、京都府生まれ。日本を代表する歌手。15歳のとき『困るのことョ』でデビュー。同年、日本レコード大賞・新人賞受賞。代表作『涙の連絡船』『北の宿から』ほか多数。今回の『心の街』は、トランペット(近藤等則)との初コラボレーションとなる。

インタビュー

−−まずプロジェクトに参加することになったきっかけをおしえてください。
はるみさん黒田征太郎さんとは、もうかれこれ30年以上のおつきあいになるんですね。最初はデビューして10周年のリサイタルのときに、着物やジャケット、ポスターのために一筆描きで私の似顔絵を描いていただいた。私が歌手に復帰してからは、作家の中上健次さんと黒田さんが、大阪の手作りステージでライブを企画してくれたこともありました。そうして声をかけていただいたのが、このCDブックだったんですね。
−−プロジェクトに参加なさったのは、どんなお気持ちからですか?
はるみさん戦争は、二度とあってはいけないことだと、ずっと思っていました。ただ私はデビューがものすごく早かったものですからね。この業界に入ったのが15歳のとき。で、ずっと、世の中がどんな動きをしてようと、ぜんぜん関係なく歌を歌ってきた人間だと思うんですよね。そんな私が5年半休んで、42歳で歌手に復帰したときに「今までの自分っていったい何なんだろうな」という思いを強くした。同時に歌を歌う50歳代半ばの人間として、微少ながら責任を持っていかないといけないなと。考えてみるとそんな思いが、今回の参加の、一番大きなきっかけになったんじゃないかと思いますね。
−−戦争については、どんな思いを?
はるみさんむずかしいですよね。何と言っても、私は戦争を知らないですから。ただ、よく地方にコンサートに行きますよね。昔は、原爆ドームなんかを見ても、「すごいなあ」という一言で流していたところもありました。ところが歌手をやめてから広島の町に行ったときに、「よくここまで立ち直った」という、不思議さと感動みたいなものを感じたんです。以前は、たとえば山を見れば「あ、山だ」、海を見れば「あ、海だ」くらいのことしか思ってませんでしたから、本当に自分でも変わったなと。
−−今回のCDブックを、どんなふうに紹介なさりたいですか?
はるみさんこれをやる、何をやるじゃなくて、やっぱりひとりじゃできないんですよね。で、みんなで心が決まったときに、なんかできればいいというところですよね。そうしてこの本ができあがった。ビジュアルと音が一体化するというのも、私は初めての体験だし、本という形で曲を出すのも初めてです。これがどういう形で伝わっていくのか、まったく未知数の部分が多くて、これがおもしろくもあり、楽しみでもありますね。
−−レコーディングは盛り上がったとお聞きしましたが。
はるみさんいえいえ、歌う本人は真剣なので、緊張して盛り上がるどころの話ではなかったですよ。ただ、今もできあがったCDを聞いていて、やっぱり参加してよかったなと。曲調だってぜんぜん違いますしね。近藤さんが歌っているデモテープを事前にいただいたんですが、私の歌い方とはまったく違うじゃないですか。その通りに歌ってもいけないし、へんにフシを回してもヘンだろうし(笑)、実はけっこう考えながらレコーディングに行ったんです。でもこうしてCDになったものを聞いてみると、エネルギッシュというか、みんなで何かを訴えようという気持ちがとても強く感じられましたね。現場では近藤さんともそんなにたくさんお話をしたわけではありませんが、できたものを聞くと、どこかで考えていることは一緒だったんだなって。そうそう、この曲は歌詞もむずかしいんですよ。最近この本に書かれた近藤さんのメッセージを見て、本当の意味が初めてわかったくらい。でもレコーディング前に読まなくてよかった。私が私なりに考えて、あの歌詞を消化しようとしたからこそ生まれた一体感もあったと思いますから。
−−この曲はどんな人に聞いてほしいですか?
はるみさん幅広く、と言いたいところですが、最初は細くてもいいからわれわれの年代から伝わって、いつか広がっていってくれればいいかなと。私もこれが30代だったら、きっとダメだったんですよね。よくわからないと思う。やっぱり50歳になって、いろいろなことを感じたり考えるようになった。だからこそ、こういうプロジェクトに参加できたんだと思います。中途半端な気持ちではやっぱりできないんですよ。
−−年を取るっていうのも、なかなかステキなことなんですね。
はるみさんそうなんですよ。私も今の私、好きなんです。年を取るのも捨てたもんじゃないなと思いますよ。休んだことも大きかった。でもつぎに何ができるかって思ったときに、また歌を歌う人間になっていた。これはもう決められていたのかなと思わざるをえなかった部分もありますよね。実はものすごく恵まれた仕事をしていたことも、前はわからなかった。やっぱり若い頃は、私もただただ生意気だったんですよ。社会との接点なんて要らないと思ってましたからね。歌って、それが売れればいいと。でもそうじゃないんですよね。それだけにデビュー40数年目になって、こういうプロジェクトに参加できるというのは、大人の感覚として、ものすごい責任感を感じますね。
−−最後に、このCDブックを手にとってくれる人たちにメッセージを。
はるみさんあまりむずかしく読んでいただかなくてもいいのかな。なにしろ私は自分の気持ちが通じて、何しろこれをやりたかった。それを聞いてもらいたいというだけですね。一生懸命絵を描いた黒田さん、私とトランペットでコラボレーションしてくれた近藤さん、そして参加しているみなさん全員と、一体感も感じました。この本が「ユニット」なんですよね。レコード屋にない、本屋で買う、そんな曲は初めての体験ですから、すごく楽しみですね。どうなるのかな。思いもよらない展開があるとうれしいのですが。
「今も車のなかで、自分で歌った『心の街』を聞いてきたんですよ」と言う都はるみさん。これまでの彼女の曲のイメージを気持ちよく覆しながら、聴きごたえのある作品に仕上がりました。 本とCDのセット、しかもたくさんの著名人アーティストの熱い「思い」入り。そんなCDブック1600円はおすすめです。【インタビュー 福光恵】

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