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夢もない 何者でもない 生き惑う主婦がたどりついた答えとは… 宮下奈都さん 『田舎の紳士服店のモデルの妻』

夫のうつ病が原因で突然、福井での田舎暮らしを余儀なくされた主婦・梨々子。慣れない田舎町で、つかめない夫の心、先の見えない子育てに悩みながら、梨々子本人も「何者でもない自分」に言いようのない焦りを感じていた。そんな主婦・梨々子の10年を2年ごとの定点観測という形でつづる――。「ずっと主婦を主人公にしたかった」そう語る宮下さん自身も福井に住む主婦。宮下さんが本書で投げかけたかった思い、そして3人の子育てをしながら執筆活動を続ける宮下さんの小説にかける情熱に迫ります。

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田舎の紳士服店のモデルの妻 宮下奈都『田舎の紳士服店のモデルの妻』
夢もない、何者でもない…主婦の心の動きを、繊細な筆で描いた最新作
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自分を平凡だと思っている少女、麻子は4つのスコーレ(学校)を通して少女から大人へ成長していく。Twitter上で結成された「本屋さん秘密結社」によって多くの書店から支持を受け話題になった作品。
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プロフィール

宮下奈都さん (みやした・なつ)
1967年福井県生まれ。上智大学文学部卒業。2004年、3人目の子供を妊娠中に執筆した『静かな雨』が第98回文學界新人賞佳作入選。2007年に出版した初単行本『スコーレ癸粥戮蓮∧幻鵬修魑,Twitter上で結成された「本屋さん秘密結社」によって多くの書店から支持を受け話題に。その他の著書に『遠くの声に耳を澄ませて』『よろこびの歌』など。今も福井で3人の小学生を持つ“主婦”をしながら執筆活動を続ける。Twitterアカウントは「@NatsMiya」。多くの読者からのコメントが寄せられ、宮下さんと読者の交流の場となっている。

インタビュー

宮下奈都さん

−−『田舎の紳士服店のモデルの妻』…長めのタイトルですが、このタイトルにした理由はなんですか?
宮下さん 長いですよね(笑)。「○○さんの妻」という立場でしかない主婦=梨々子を印象づけたかったんです。「田舎の紳士服店のモデル」っていう設定は、私自身の体験から。家族写真に写った夫をある日見て、「かっこいいんだけど、誰かに似てる。誰だっけ?」と思って。「あ、田舎の紳士服店のチラシに出てくるモデルっぽい!」ってひらめいたところから来ています。
−−今回、普通の主婦が主人公ですね。
宮下さん ええ。ずっと主婦を主人公として書いてみたいって思っていたんです。主婦って実社会でも、小説でも主人公になりにくいじゃないですか。私自身が田舎の主婦なので、主婦だってちゃんと生きてるよ、人間なんだよ(笑)っていうことを示したくて。主婦の生活には目に見える成果もないし、形に残るものが少ない。成長って言える成長もないのかもしれないけど、主婦である梨々子の、10年間の変化みたいなものを描ければなと思ったんです。10年日記を使ったのは、実は私も育児日記代わりに10年日記をつけていたことがあって、梨々子を定点観測するのにちょうといいツールだなと思ったんです。
−−作品には梨々子が平凡な日常の中で感じる細やかな心の揺れが、驚くほど丁寧につづられていますね。
宮下さん みんなホントは色々考えながら生きてるんですよね。だけど忘れてしまう。私が今このタイミングで主婦の話を書いたのも、私自身が生きづらさを感じていた30代を終えて、今書いておかないとあの頃の気持ちを忘れてしまうと思ったからなんです。だけど主婦の生活ってドラマもないし、実際書き始めたらやっぱり書きにくい。主婦の話のどこに魅力を感じてもらえるだろうって考えながら手探りで書いてました。
−−さして人生に目標があるわけでもなく、人に誇れる何かがあるわけでもない…、そんな自分に焦る梨々子の姿は主婦ならずとも共感を呼ぶ気がします。
宮下さん 今の時代って小学生でも「夢を持て」とか「好きなこと見つけろ」とか言われるんですけど、だからなのか「何者かにならなきゃいけない」っていう強迫観念にかられている人が多い気がします。でも人生って実は、絶対これをやらなきゃいけないとか、必ずしも何者かにならなきゃいけないわけじゃない。生きている、ただそのことに意味があるってことを訴えたかったんです。それは主婦だけじゃなく、働いている人にも言えることだと思うんですね。「主婦も迷ってるんだよ」ということを訴えつつ、実は誰しもに共通する普遍的なことを投げかけたかったのかもしれません。
−−梨々子は夫のうつ病が原因で、夫の郷里である田舎に引っ越すことになりますが、夫をうつ病という設定にした理由は?
宮下さん 今、うつ病とまではいかずともうつ状態の人が多いなと感じているので、他の病気に比べて一般的という意味でうつ病という設定にしたんです。これが生死に関わる病気だと話がドラマティックになりすぎてしまうので、日常生活が保てる程度の不安定要素ということで。

宮下奈都さん

−−ありふれた日常の中で、梨々子が昔憧れた元アイドル・アサヒとの出会いと、淡い恋もありますね。読んでいてドキッとさせられました(笑)
宮下さん 梨々子にも夢を見させてあげたかったんです(笑)。友達の旦那と不倫とか、そういう生々しい話じゃなくて、平凡な梨々子の毎日に一つくらいは彩りを与えたいという私の願望ですね。
−−東京から田舎へ引っ越してもがく主婦…これには宮下さんの姿がかなり投影されているのでしょうか?
宮下さん いえ、私自身は福井の出身なので、福井で生活していることには何の違和感もないんです。むしろ子育ては絶対福井がいいなと思っていました。だけど東京から田舎に引っ越して、なじめずに苦しんでいる主婦もいる。そういう方たちの心境を想像しながら書きました。でも、「主婦」という立場に焦りを感じる梨々子は、小説を書く前の私の姿かもしれません。もし私が小説を書いていなかったら今も私はもがいていたかもしれない。だから小説書いてて良かったなって思います。
−−宮下さんが小説を書き始めたのは3人目のお子さんの妊娠中だったそうですが、なぜそのタイミングだったんですか?
宮下さん まだまだ私の人生には時間があると思ってたんですけど、いざ育児を始めるとそれはそれは大変で…。上2人が男の子だったんですけど、3人目も男の子だったらそれこそもう自分の時間はどこにもない、と急に焦りを感じたんですね。それで元々本を読むのが好きだったこともあって、家にいながらできて元手がかからない…「そうだ、小説書こう」って思いついたんです。特に小説家を目指していたというわけではないんですが、妊娠中でホルモンバランスが崩れてたんでしょうね(笑)。
−−書き始めたきっかけが「ホルモンバランス」だなんて、初めて聞きました(笑)
宮下さん かもしれませんね(笑)。書き出したら楽しくて。むしろ書いてないと落ち着かないくらいだったんです。今も、書くのが楽しくて仕方ないです。きっと誰も読んでくれなくなっても、ずっと書いてるんだろうなって思うくらい。本当に書くのは好きですね。
−−3人のお子さんを抱えながらの執筆はご苦労もあると思うのですが。
宮下さん そうですね…でも子供がいなかったらもっと書けるかっていったらそうじゃないと思うんですよ。子供あっての私、というか。子供を産んでから書き始めたので子供のいない状態で書いてる自分は想像できないです。執筆自体は、子供を送り出してから日中のまとまった時間で進めていますね。
−−宮下さんにとって「福井で小説を書く」ということにも意味があるんでしょうか?
宮下さん 福井にいることは自然の流れだったので、最初はあまり意識せずに書いてたんです。でも最近、東京にいた時と、福井にいる今とではすごく自分の価値観が変わっていることに気づいたんです。今回の作品を書いた後に、福井在住の方から「福井で生きていることを肯定された気がする」という感想をいただきました。それを読んで、私がしたかったのはこれかもって、ピンと来たんです。今、田舎暮らしっていうとLOHASとかおしゃれなイメージもあるみたいですけど、そうじゃない、田舎の普通の街で暮らす人の人生を肯定したかったんだなと。もし私が東京に行ったら今とは全然違うものを書くでしょうから、今の福井の暮らしの中で書けることを書いておきたいという気持ちがありますね。
−−福井発信の宮下さんの小説、今後を楽しみにしています。

<ナカガミシノブ>

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田舎の紳士服店のモデルの妻 宮下奈都 もくじ

田舎町に移り住んで10年。
梨々子を取り巻く、いとしい人々
【1】達郎
梨々子がかつて恋焦がれて結婚した夫。うつ病をわずらって退職し、田舎へ帰る。
【2】潤と歩人
ピアノが得意な兄の潤、成長の遅れが目立つ弟の歩人。梨々子の大切な子供たち。
【3】アサヒ
アイドルグループ「春乱」のメンバーで、梨々子の憧れの人。思いがけない場所で出会うことになる。

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  • ★今、私がいちばん新刊を待ち望んでいる作家さんの1人、宮下奈都さん。時間の経過とともに人の心情が移り行く様を描くのが得意な作家さんなのでしょうか。日常にふつうにあるその人にとっては重かったり暗かったりするテーマを、さらりと書いてのけ、主人公に感情移入させることなく、最後は前向きな気持ちにさせてくれる不思議な作家さんです。今回も主人公梨々子の気持ちがわかるようでわからない感じに、ひきこまれました。
  • ★前から宮下さんの本のやわらかな描写に、どこにでもありそうで、なかなか口に出して表現しにくいところをとても、丁寧に綴られていて、ほっとします。生きることの意味みたいな難しいものではなく、だれでも生きていていいという、ゆるやかな流れがとてもすきです。悩みもいっぱいあって、特別じゃなくても、生きていていいと言うことに、安心したり、自分がいていいと思います。

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