楽天ブックス 著者インタビュー

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  「タ、タイトルが読めないっ」といきなりひっくり返ったファンや、フォントが出せず書名検索に困った読者、さぞや多かったことでしょう(え、私だけ?)。Φはギリシャ文字で、ファイと読みます。それが壊れるって、いったい……?
 S&Mシリーズ完結から6年、Vシリーズ完結から丸2年、そして『四季』完結から半年。
森ホリックなファンは、すでにしびれが切れまくり、首伸びまくり、喉から手が出まくり。首が伸びた状態で喉から手を出すとは、想像するとかなりホラーな展開で読者は待っていたわけで。でも、待った甲斐がありました。お待ちかねの新シリーズが、なんともミステリアスなタイトルをひっさげてスタートです!お馴染み那古野市を舞台に、新たなキャラクタたちが登場。さてさて、今度はいったい、どんな森ワールドが展開されるのでしょう。

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森博嗣さん『Φ(ファイ)は壊れたね』『Φ(ファイ)は壊れたね』
C大大学院M1の山吹早月は、久しぶりに連絡を貰って旧友のマンションを訪ねた。ところが、そのマンションで思わぬ事件に遭遇することに。現場は密室、そして中には宙に浮く死体が──。
861 円(税込)
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プロフィール

森博嗣さん (もり・ひろし)
1957年 愛知県生まれ。国立某大学の工学部助教授にして、ミステリィ作家。 1996年、『すべてがFになる』で第1回メフィスト賞を受賞してデビュー。S&Mシリーズ(犀川&萌絵シリーズ)が、そのクールな文章・新鮮なキャラクタ・独特のメンタリティで爆発的な支持を得る。以降、Vシリーズ(瀬在丸紅子シリーズ)、『四季』シリーズ、『女王』シリーズなど、人気ミステリィを次々と発表。 作品はミステリィにとどまらず、SF、コメディ、絵本、詩集、語録、ショートショート、問答集、日記、そして趣味の模型や工作についてのエッセイなどなど幅広く、そりゃもう向こう岸が見えない揚子江並みに幅広く活躍中。 2004年には、初のファンブック『森博嗣本』や、お茶の水女子大学教授・土屋賢二氏とのコラボ本『人間は考えるFになる』も発売された。浅田寅ヲやスズキユカ、皇なつきによるコミカライズ作品も人気。
オフィシャルサイト『森博嗣の浮遊工作室』: http://www001.upp.so-net.ne.jp/mori/

インタビュー

まず、タイトルから伺います。『Φは壊れたね』というのは、とても印象的なタイトルですが、どこからインスピレーションを得られるのでしょう?
森先生どこからなのかわかりません。インスピレーションというのは、そういうものではないでしょうか。タイトルに関しては、中身を書いている時間よりも沢山の時間、あれこれ考えています。
−−Φの意味についてお伺いしたいところですが、ネタバレになってはいけないのでぐっと我慢します。さて、ファン待望の新シリーズですね。他のシリーズとの違い、このシリーズで特に意識されていること、新たに試してみたいことは?
森先生S&Mシリーズに比べるとVシリーズは「本格」だったわけですが、次のシリーズは、さらにシンプルにして、今までにないエリアを狙いたいと考えています。でも、こればかりは書いてみないとわかりません。いつも意識していることは、「新しさ」だけです。
−−ただ、これまでの馴染み深いメンバーも登場していて、完全な新シリーズというよりも、大きな森ワールドの中での新たなピースを読ませて戴いた感じがします。その大きな世界の中での、このシリーズの位置づけはどういったところになるのでしょう。
森先生わかりません。位置づけというのは、書いているうちに自然に決まってくるものだと認識しています。「新シリーズだ」というふうに期待しているのは、これまでのシリーズ を読んできた「現在の読者」だけであって、これから森博嗣を知る「将来の読者」には、どれが「新」なのかは関係がありません。いずれも同列です。
−−ああっ、すみません、上の紹介文でもやたらと「新シリーズだ!」と煽ってしまいました(どきどき)。つまり、他のシリーズを知らずに本書から入ってもまったく問題ないわけですね。
森先生どのシリーズのどの本から読んでも、どんな順番で読んでも、まったく問題ありません。よく読者の方が、「前作を是非さきに読むべきだ」なんておっしゃっていますが、作者としては、未読者に対するそういったアドバイスはナンセンスだし、読書の自由を奪う不適切な習慣だと考えています。本当にそういった順番が必要ならば、作者が上下巻や、第1部、第2部、としています。
−−肝に銘じます(姿勢を正す)。なんだか本書から初めて森ミステリィに触れる読者には別の楽しみがありそうで、羨ましく思えてきました。となると、これまでのシリーズのキャラクタがこの先もっと登場する可能性についてお伺いするのも……。
森先生わかりません。もしわかっていても、それをお話しすることはネタバレになると思います。
−−なるほど。既存の読者には気になるところかとは思いますが、それは楽しみにとっておくことにして、と。では、話題を変えましょう。事件現場の様子が、いつにも増してインパクトが強いですね。とても映像的というか……。先生のミステリィは密室を扱ったものが多いようですが、密室への思い入れといったようなものがおありなんでしょうか?
森先生いろいろな密室を作ってみたいという単純な興味はありますが、特に思い入れはありません。自分の周囲に密室があったら嫌ですし、実際にこんな謎に遭遇したいとは思いません。
−−そりゃそうですね(笑)。ただ、先生の他の作品もそうなのですが、事件の状況はけっこう猟奇的でドロドロなのに、文章から受ける印象はクールで硬質なんです。これは、意識されてそうなさってるんでしょうか。
森先生意識しています。これも、新しさを求めている結果です。少ないですが僕が読んだ小説は(海外ものがほとんどですけれど)、どろどろとしたものが多いので、そのアンチを狙っています。
−−どうもありがとうございました。では最後に、この作品で初めて森ミステリィを読まれるという読者と、ずっと追いかけてきた読者の両方へ、一言ずつお願いします。
森先生区別する必要はなく、まったく同一ですし、読者へのメッセージは以前から不変です。 「本を買ったその金額以上の価値を、あなたが作品から得ることを願っています」
かつて森先生は、エッセイの中でエラリィ・クイーンの作品についてこんなことを書かれています。

「そのライトでシャープな感覚。そこに、トリックを語るためのミステリィではなく、ストーリィを語るミステリィの現代的な先駆を見ることができる。これらの作品群では、特に会話が素晴らしい。映画を意識されたものだからなのか、非常に密度の高い、練りに練られた、宝石のような言葉に出会うことができる」(「クイーンにしびれて以来」『100人の森博嗣』より)

これはもう、このまんま森ミステリィの魅力を表現する言葉だと言っても良いでしょう。『Φは壊れたね』は、犯人探し・トリック解明の面白さと同時に、登場人物の心理、会話、造形、関係の行方など、ヒキの強い魅力がテンコモリ。
ミステリィは作品の内容に触れるとネタバレになっちゃうジャンルなので、インタビューも食玩の中身を箱を振って確かめるようなむず痒さがありますが(すみません)、是非、本書に触れて、その宝石のような言葉とストーリィを語るミステリィをご堪能ください。読み終わったら、世界の中心でΦを叫びたくなるかも。
【インタビュー 大矢博子】

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