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森井ユカさん

郵便局をのぞけば、その国の暮らしがわかる!『スーパーマーケットマニア』の森井ユカさんが贈る眺めて、読んで、使って楽しい『ポストオフィスマニア』

最近、手紙を書いたことはありますか?インターネットやメールで世界が身近になる中、「郵便局」というアナログな世界の魅力を再発見する本が生まれました。その名も『ポストオフィスマニア』。世界各国の人々の暮らしを支える、楽しくて使い心地のいい生活雑貨を紹介した『スーパーマーケットマニア』で人気の森井ユカさんのよる、「マニア」シリーズ第3弾です。フィンランドやスウェーデン、イギリス、フランスのキュートでポップな切手や郵便雑貨、ポストマンの制服から集配車まで、その国の生活と国民性がにじみ出るグッドデザインを通して歴史や文化が見えてくる、まさにマニアな感覚溢れる1冊。自らを「雑貨マニア」と称する森井さんに、この本への思いを伺いました。


森井ユカさんの本


『ポストオフィスマニア』
『ポストオフィスマニア』
森井ユカ
講談社
1,800円 (税込 1,890 円)


『スーパーマーケットマニア〜ヨーロッパ編〜』
『スーパーマーケットマニア〜ヨーロッパ編〜』
森井ユカ
講談社
1,800円 (税込 1,890 円)


『スーパーマーケットマニア〜アジア編〜』
『スーパーマーケットマニア〜アジア編〜』
森井ユカ
講談社
1,800円 (税込 1,890 円)


『IKEAファンブック』
『IKEAファンブック』
森井ユカ
河出書房新社
1,600円 (税込 1,680 円)


『ひみつのブルボンキーホルダー』
『ひみつのブルボンキーホルダー』
森井ユカ
河出書房新社
1,580円 (税込 1,659 円)



森井ユカさんオススメのDVD



『サイレント・ランニング 』
『サイレント・ランニング 』


『ソイレント・グリーン』



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『立川談志さんの落語』

プロフィール


森井ユカさん(もりい ゆか)
桑沢デザイン研究所・リビングデザイン科卒。立体造形家で雑貨コレクター。立体造形に加えてブックデザイン、グラフィックデザイン、プロダクトデザインを手がける「有限会社ユカデザイン」代表。キャラクターデザイナーを経て、'90年東急ハンズ・第7回ハンズ大賞入選を機に、書籍や広告を中心に立体造形家として活躍を開始。粘土あそびセット『ねんDo!』(ねんどぅ!)の企画・監修も担当。著書に『スーパーマーケットマニア〜ヨーロッパ編〜』『スーパーマーケットマニア〜アジア編〜』(共に講談社)、『IKEAファンブック』(河出書房新書)など。
HP:

インタビュー



−―『スーパーマーケットマニア』のシリーズでおなじみの森井さんですが、今回、「ポストオフィス」をテーマにしようと思った理由は何ですか?


ポストオフィスマニア森井さん ポストオフィスには以前から注目していて、雑貨も集めていました。ヨーロッパとアジアのスーパーマーケットの本を出したので、「次はどの国のスーパー?」と思っていた方もいるかもしれませんが、私の中では、生活雑貨のデザインを通してその国を見るという意味で、ポストオフィスとスーパーマーケットは変わらないんです。タイミングを合わせたつもりはないのですが、郵政民営化の問題もあるので、ちょうどいいかなとも思いました。


−−そもそも海外の生活雑貨に興味を持ったきっかけとは?


森井さん 「日本では出会えないモノを見つけたい!」という欲求からです(笑)。日本にいると、海外のものも何でも手に入りますよね。わざわざ旅行先から持って帰ってきたのに、日本でそれが売られていてがっかりしたり。でも、ロンドンの雑貨の本(『とっておきロンドン雑貨58』)の取材の時、小さな個人商店やスーパーマーケットを覘いてみたら、「生活雑貨というのは日本に入ってこないのか」と気づいたんです。それから海外の生活雑貨に惹かれるようになりました。


−−それにしても、『スーパーマーケットマニア』同様、今回も膨大な量のモノたちを取材されているのに驚きました。以前から、雑貨を集めるのは好きだったのですか?


森井さん 立体造形の仕事をしていることもあって、小さいモノが好きですね。雑貨を集めるようになったのも、最初は立体造形の仕事に生かしたいという理由からでした。言ってみれば、雑貨を集めることと立体造形を作ることは、私の中では繋がっているんです。とにかく見たことがない何かを探すのが好きなので、そうしたモノを集めてたまってくると、見せびらかさずにはいられない(笑)。自分の中に、1冊の本を作るために必要な量の感覚があって、コレクションがそこから溢れそうになると、誰に頼まれたわけでもなく、勝手に本を作る準備を始めてしまいます。それで編集者の方に「そろそろ溢れます!」と連絡するんです(笑)。


森井ユカさん−−「誰かに見せたくなる」というのはひょっとして、コレクターの本能…なのでは?

森井さん コレクターにも見せたい人と見せたくない人がいますが、私の場合はコレクションが集まってくると、「これを見せないでどうする」と思ってしまいますね(笑)。


−−北欧を中心にしたヨーロッパの国々を取り上げられていますが、どのポストオフィスも、本当にグッドデザイン揃いですね。

森井さん モノを選ぶ際は、その国らしさが出ているかどうかをポイントにするのですが、ヨーロッパが中心になったのは、やはり得るものが多かったというのがあります。私自身はアジアの雑貨も大好きですが、郵便に関するものは、ヨーロッパのほうが何を考えてデザインされているか伝わってきますね。思いつきで作っているような乗りの良さがあるアジアの雑貨も面白いですが、デザインを何回も眺めて役に立つという意味で、今回のメインはヨーロッパの7カ国にしました。


−−雑貨だけでなく、オランダの郵便配達のおじさんたちを紹介したページでは目が釘付けになりました。なんだか職人さんといった風情でみなさんとてもステキです(笑)。

ポストオフィスマニア森井さん このおじさんたちにはオランダ郊外の集配所で出会ったのですが、本当にみんな乗りが良くて(笑)。定年間近の人もたくさんいて驚きました。ポストオフィスはワーカークラスの仕事という受け取り方をされていますが、安定した職業のせいか、多くの人がプライドを持って仕事をしている気がしました。


−−特に面白かった国はありますか?

ポストオフィスマニア森井さん フィンランドですね。偶然、雑誌で見た白地にブルーとオレンジの水玉が踊っている集配車のセンスの良さに惹かれて、「これは絶対にすばらしいに違いない!」と直感して取材に出かけたら、本当にすばらしい。小さな国だからいろいろな試みができるのかもしれませんが、もともと筆まめな国民だというのもあります。
取材中に印象的だったのは、どの国でも「手紙を書く人が減っている」と言われたことです。インターネットが主流になって、手紙を出す機会が年々減っているのはどこも同じでした。それで諦めてしまう国と、そうでない国に分かれている気がしますが、スウェーデンのようにビジネスメールに力を入れて経営の向上を図っている国も多いようです。



−−たとえばオランダでは、昔から親しまれていた真っ赤なコーポレートカラーが大改革でオレンジに変えられるなど、郵便にまつわるモノや、郵便や通信に関する博物館のルポを通して、各国の郵便事情や歴史、文化が見えてくるのは面白いですね。

森井さん 郵便事情や歴史については、私が書かずにはいられなかったところです。社会的な背景があってこそ、デザインが生まれるわけですから。読み飛ばして頂いても構わないのですが、何となく読んで知ってもらえればと思って書きました。
新しいものに出会うと、自分自身が知りたいというのもありますが、どのようにそれが使われているのかを調べたり、現地の人に聞いたりします。そうした背景を知ると、見た目の良さだけではない、モノの魅力が見えてくるからです。本を作るときは、大きさとか使い心地といった、見た人が知りたいと思う情報を出来るだけ載せたいので、取材に加えて自分で使って味見するようにしています。でもそうしていると、きまって本に掲載できる倍ぐらいの情報になってしまって、入りきれずに削ることになるのですが…(苦笑)。



−−雑貨コレクターとしてだけでなく、立体造形での絵本や本の表紙、アニメーションも手がけられていますね。

森井さん 最初は普通のイラストレーターだったのですが、絵を描くのが遅かったんです。でもある日、粘土を使って立体を作ってみたら、なぜか絵を描くより圧倒的に早かった(笑)。立体造形のイラストレーターのほうが競争率も低くて、仕事になりやすかったというのもあって、立体造形の仕事を始めました。


−−子どもの頃から絵を描いたり、物を作るのが好きだったのですか?

森井さん そうですね。実家が印刷屋で紙はたくさんあったので、絵はよく描いていました。でも、桑沢デザイン研究所に進んだのは、イラストレーターになりたいというよりも、本を作るのが目的でした。学生の頃、宝島といったビジュアル中心のサブカルチャー系の雑誌が好きで、ああいった小さくて手ごろで情報がたくさん詰まっている本を作ってみたかったんです。「桑沢なら、絵も写真も全部勉強できる」と聞いて、「それなら本を作るのに役立つかもしれない」と。でも卒業後はすぐに独立したかったので、当時はバブルの頃でイラストの仕事がたくさんあったこともあり、イラストレーターになりました。最近、ふと「どうしてこんな風に本の仕事をすることになったんだろう…」と感じて、考えてみたら、実は最初から本を作りたかったんだと思い出しました(笑)。


−−次回作も含めて、今後の活動についてお聞かせ下さい。

森井さん やりたいことはたくさんあるのですが、次はミュージアムショップの本を出す予定です。海外には数多くのミュージアムがあるので、そのショップに置いてあるグッズを通して、ミュージアムを紹介したいと思っています。「小さいものを作ることと愛でること」が大好きなので、立体造形でも本でも、それを大事にしながら楽しいものを作っていきたいです。


−−最後に、森井さんおススメの「マニア」シリーズの活用法を教えて下さい。

森井さん 生活雑貨のデザインは、使ってみて初めて良さがわかるものなので、旅行に行ったらポストオフィスやスーパーマーケットで実際にモノを買って、そして使ってもらえるとすごくうれしいですね。ポストオフィスで手紙を出してみると、本を眺めているより、さらに楽しくなると思いますよ。






森井さんの本に共通しているのは、可愛いものをただ可愛く見せるだけでなく、その背景にあるストーリーや歴史が紹介されていることだと思います。そこにたくさんの人々が時間をかけて生み出した「モノ」への深い愛情を感じずにはいられません。雑貨の取材から本が出来るまでを紹介した森井さんのブログ「雑貨まみれの毎日」(http://yukazakka.blog.so-net.ne.jp/)もマニア心をくすぐること必至。一風変わったガイドブックとしての要素も十分な『ポストオフィスマニア』は持ち歩きやすいサイズもうれしいところ。まずはカラフルなページを眺めながら、旅の気分を味わって見て下さい!
【インタビュー 宇田夏苗】


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