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村上龍が、日本経済をリードする個性的なパイオニアたちの魅力に迫る!『カンブリア宮殿村上龍×経済人』!

村上龍さん
「一緒に働きたい経営者(上司)とは……?」――社会人1年目の人も、ベテラン企業人だとしても、組織で仕事をしているかぎり、一度は「良い経営者」について考えたことがあるのでは? 小説『愛と幻想のファシズム』『希望の国のエクソダス』、絵本『あの金で何が買えたか』など、日本の経済、金融といった社会的背景に斬り込んだ作品を発表し続ける村上龍さんが、平成を生きぬく敏腕経営者たちの経営哲学や、人間力を独自の視点で引き出すトークライブ番組「カンブリア宮殿」。昨年の4月からテレビ東京系で放映され、人気を集めている同番組が単行本になりました。トヨタ、ミクシィ、ワタミ、話題の男前豆腐など、ユニークな戦略で日本経済を変えた「良い経営者」22人の魅力を解き明かすこの本について、じっくり伺いました。


野口嘉則さんの本


『カンブリア宮殿 村上龍×経済人』
『カンブリア宮殿 村上龍×経済人』
村上龍 /テレビ東京
日本経済新聞出版社
1,600円 (税込 1,680円)

『日本経済に関する7年間の疑問』
『日本経済に関する7年間の疑問』
村上龍
日本放送出版協会
740円 (税込 777 円)

『13歳のハローワーク』
『13歳のハローワーク』
村上龍
幻冬舎
2,600円(税込:2,730円)

『すぐそこにある希望』
『すぐそこにある希望』
村上龍
ベストセラーズ
1,500円(税込:1,575円)

『2 days 4 girls』
『2 days 4 girls』
村上龍
集英社
533円 (税込 560 円)

『半島を出よ(上)』
『半島を出よ(上)』
村上龍
幻冬舎
1,800円 (税込 1,890円)

『半島を出よ(下)』
『半島を出よ(下)』
村上龍
幻冬舎
1,900円(税込:1,995円)

『シールド(盾)』
『シールド(盾)』
村上龍 /はまのゆか
幻冬舎
1,500円 (税込 1,575円)

『希望の国のエクソダス』
『希望の国のエクソダス』
村上龍
文藝春秋
667円 (税込 700円)

『あの金で何が買えたか』
『あの金で何が買えたか』
村上龍
角川書店
571円 (税込 600 円)

『コインロッカー・ベイビーズ(上)』
『コインロッカー・ベイビーズ(上)』
村上龍
講談社
467円(税込:490円)

『コインロッカー・ベイビーズ(下)』
『コインロッカー・ベイビーズ(下)』
村上龍
講談社
467円(税込:490円)

『限りなく透明に近いブルー』
『限りなく透明に近いブルー』
村上龍
講談社
352円 (税込 370円)




プロフィール


村上 龍さん (むらかみ りゅう)
1952年長崎県生まれ。76年にデビュー作『限りなく透明に近いブルー』で第75回芥川賞受賞。『コインロッカー・ベイビーズ』『共生虫』『半島を出よ』『シールド(盾)』など、多数の小説・エッセイのほか、経済学絵本『あの金で何が買えたか』、仕事の百科全書『13歳のハローワーク』などの話題作を次々に発表。99年より金融経済をテーマとするメールマガジン「JMM」(http://ryumurakami.jmm.co.jp/)を発行、編集長を務める。経済人を迎えたトークライブ番組「カンブリア宮殿」(テレビ東京系/月曜午後10時〜放映中)に、メインインタビュアーとして出演中。
カンブリア宮殿公式HP:http://www.tv-tokyo.co.jp/cambria/

インタビュー


−−番組名の「カンブリア宮殿」は、村上さんのアイデアだそうですね。多種多様な個性を持った人々が現れ、経済の大変革が起きている今の日本の状況が、5億5千年前の多様な生物が一斉に地球上に姿を現した、「カンブリア紀」に似ているというアイデアから名付けたそうですが……。


村上さん それもありますが、「カンブリア」という響きが覚えやすいんじゃないかと思ったんです。結果的には覚えにくかったみたいですけれど(笑)。


村上龍さん−−この番組を通して、成功した経営者たちの戦略と方法論を、「その人にしかできないこと」「普遍的なもの」に区別して伝えたいと、本の中で述べられていますが、1人の経営者と向き合う際、特に気をつけていることはありますか?

村上さん 気をつけているというより、相手の話を聞くというのは難しくて、経済とか、経営とか、大本のところを理解していないと質問できない。だから資料を読んだりすることで、相手の方について、ある程度理解しておくようにはします。下準備の最中に、「この人は絶対に気が合うな」と思う人がいたりするのですが、そう感じた時は、インタビューではなるべくクールでいるようにしますね。気が合って、お互いに理解し合った気で話を進めると、視聴者にはわかりにくくなってしまうので。


−−単行本では、番組に登場した経済人、政治家の方たちの中から、経営者22人を取り上げられていますが、「良い経営者」の共通点として、「明るさ」を挙げられていますね?

村上さん  その人が「明るい」というのは、きちんとした文脈の中で使わないかぎり、曖昧な表現になってしまうのですが、わかりやすく言えば、一緒にいると、心が暖かくなるんですね。「明るい」といっても、居酒屋で大はしゃぎするような明るさとは違う。世の中に対してポジティブで、人徳というのかもしれないけれど、偉そうにする人はまずいない。明るい人だから成功したのか、経営者として成功していくうちに、明るい性格になるのかはわかりませんが。
僕自身、高度経済成長の頃の経営者に会ったことがないのでわからないのですが、その当時の経営者というのは、家父長的なイメージが強かったと思うんです。それが高度成長、特にバブルの時代が終わってから大きく変わって、そうした変化が定着したという印象はあります。今は、家父長的な、ドーンと社長室に座っているような経営者はいないし、そういう人ではダメですね。ホンダなんて、社長室自体がないぐらいですから。


−−従業員がわずか6人にもかかわらず、「刺しても痛くない注射針」の開発で、世界的に注目を浴びる岡野工業の岡野雅行社長など、現在、活躍中の経営者たちの言葉まとめて読むと、「明るさ」もそうですが、どこか共通点が浮かび上がってきて興味深いですね。

村上さん  考えてみたらそうだったというだけで、僕は共通点とかには正直、あまり興味がないんですけどね(笑)。ただ、この本を読んでもらえればわかると思いますが、誰も「社長になりたい」なんて思ってやっていたわけではないんです。世の中のどこかにいるのかもしれませんが、社長になりたいなんていう人はどこか変だと思いますね。


村上龍さん−−『13歳のハローワーク』では、514もの職業を子供たちに紹介されましたが、それぞれに個性的な経営者の言葉を集めたこの本は、ある意味、大人たちに、仕事との向き合い方を提案している1冊にも思えます。

村上さん  仕事というのは、人間にとって大テーマですから。大人はそれで生きているようなもので、何よりも大事なものですからね。


−−ご自身は、子供の頃から「何かをしてお金を稼がなければ」という意識が強かったとか?

村上さん  そうですね。作家になったのは、一番効率的で自分にとってイージーだったということで。思うに、日本では「何かをして稼ぐ」というより、どこかの組織に入らなくては、という意識がいまだに強い。「自分でどうにかして稼ぐ」という意識が馴染まないし、そういう教育もされていないですね。


−−対談集『人生における成功者の定義と条件』などでも、カルロス・ゴーン氏、中田英寿氏といった、いわゆる、成功者と呼ばれる方を取り上げられていますが、「成功」という言葉に、どんな思いがありますか?

村上さん 僕自身は成功しようとか、成功したいと考えたことはないし、誰が成功したかというのにも興味がありません。この本に出てくる男前豆腐の伊藤信吾社長にしても、ただ「うまい豆腐を作りたい」と思っているだけです。その結果、他人から成功しているな、と思われるのはいいけれど、今、自分が成功しているか、なんて考えること自体、まったく意味がないことです。
ただ、「成功」のイメージとか、定義というのが、明治時代や高度成長期と違ってきているとは思います。一方で、どんな時代でも、誰だって失敗するより成功したいわけです。子供であれば、なおさらそうで、とにかく失敗が怖い。子供たちがホームレスの人たちを襲ったりするのは、ホームレスの存在が、失敗の象徴だと感じるからなんですね。直接的な言葉ではなくても、「成功しなければいけない」と、常にプレッシャーをかけられて育っているのに、どういう状態が成功と呼べるのか、今の子供たちにはよくわからないのです。自家用ジェットを持っているような人が成功者だと言われることもあれば、すごく貧乏だけど、好きなだけ轆轤を回して暮らすのが成功だという風潮もある。
何を目指して努力すればいいのか、大人たちは何も指し示していない。そんな中で、子供たちはすごく混乱していると思いますよ。


−−いまだに「安定した会社に入れ」などと教えられる一方で、「個性を伸ばして自分らしく生きろ」みたいなことも言われるわけですからね。

村上さん  「今の場所で頑張れ」「現状を何とかしろ」と言えるのは、安定した集団に入ってからのことなんです。でも、安定した集団に入っても、リストラがあったり、いじめがあると、子供たちは知っているから混乱する。どうすれば成功した人生を歩むことができるのか、子供たちや若い人たちに伝えるのは、大人たちの義務だと思うし、僕はそれをわかりやすく伝えたいんです。


村上龍さん−−「成功」ということに興味がないとすれば、村上さんご自身が仕事に上で、充実感を感じるのはどんな時ですか?

村上さん  充実感は、感じていますよ。やっぱり、小説を書き終えた時が一番大きい。脳みそを110%使わないとできないのが小説ですね。


−−長編の『半島を出よ』を書き終えた時は、「わーっと気持ちが高鳴るような充実感がなかった」と述べられていましたが。

村上さん  30年間、小説を書いていてわかったんですけど、ガッツポーズしたくなるような充実感って、大したことないんです。サッカーでゴールを決めたりすれば、そういうことになるのかもしれませんが、何年もかけて一つのプロジェクトを終えた時はむしろ放心状態で、わーっとなんて喜べない。でも、それが充実感なんですよ。充実感って、そういうことではないですか。自分の能力をちょっとでも超えないと、得られないものだと思うんですよ。


−−そうして書かれた作品からは、現実とのつながりやリアリティをすごく感じます。

村上さん  僕の場合はファンタジーではないので。だから、読者の想像に任せるというよりも、きちんと感情移入してもらえる支えとして、ある程度、経済や政治状況を勉強しておかないと書けないんですよ。でも、ファンタジーでも推理小説でも、基本的には情報なわけです。その情報によって、受け手である読者が、本質的な何かに対する疑問を持つとか、何かを感じてもらいたいと思うんです。せっかくこれだけ頭を使って書いているので(笑)、時間潰しの読書になるような作品は、書きたくないんですよ。


−−今日は本当にありがとうございました。








80年代に村上さんのユニークなホストぶりが好きで観ていた「Ryu's Bar 気ままにいい夜」。以来、久々のトーク番組「カンブリア宮殿」でも、紋きり型とはひと味違う話術の魅力はそのまま、引き出される経済人たちの生の言葉に毎回、考えさせられることばかりです。
個性豊かな経営者との対談に、村上さんが独自の視点でその魅力を分析した「RYU’S
EYE」を収めた単行本には、「才能はいくらやり続けても飽きないこと」など、思わず頷
く言葉がズラリ。経営者たちの人間力とともに、村上龍ならではの視点の面白さも堪能できる1冊は、働き方、生き方のアイデアになるはずです。
【宇田夏苗】


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