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愛犬家なら一度は感じた、犬と人間の特別な絆を、世界ではじめて解きあかした『犬はどこから…そしてここへ』!ムツゴロウさんの「超」刺激的な新説、登場!

ムツゴロウさん

あなたは犬を飼ったことがありますか?
一度でも飼ったことがある人なら、犬は特別な動物だということに気がついているのではないでしょうか。
そう、犬と人間は「特別な関係」だったのです!
その謎を解きあかしたムツゴロウさんの『犬はどこから…そしてここへ』には、犬がどうして特別なのか、犬はオオカミの子孫ではなかった、咬み犬のトラウマを消す方法など、刺激に満ちた新説がいっぱい。ムツゴロウさんに、たっぷり、お話を伺いました!



ムツゴロウさんの本


『犬はどこから…そしてここへ』
『犬はどこから…そしてここへ』
畑正憲
学習研究社
1,429円(税込:1,500円)


『ムツゴロウ動物王国・犬がよろこぶしつけの学校』
『ムツゴロウ動物王国・犬がよろこぶしつけの学校』
畑正憲
学習研究社
1,100円(税込:1,155円)


『ぼくの友だちかみ犬ボス』
畑正憲
朝日出版社
1,165円(税込:1,223円)


『犬 イヌはぼくらの友だちだ』
『犬 イヌはぼくらの友だちだ』
畑正憲
講談社
580円(税込:609円)


『ぼくのそり犬ブエノ』
『ぼくのそり犬ブエノ』
畑正憲/西山史真子
学習研究社
1,300円(税込:1,365円)


『愛犬物語(上)』
ジェームズ・ヘリオット/畑正憲
集英社
743円(税込:780円)


『愛犬物語(下)』
ジェームズ・ヘリオット/畑正憲
集英社
743円(税込:780円)


『人という動物と分かりあう』
『人という動物と分かりあう』
畑正憲
ソフトバンククリエイティブ
700円(税込:735円)

『輝ける日々』
『輝ける日々』
ダニエル・スティール/畑正憲
朝日出版社
1,700円(税込:1,785円)


『ムツゴロウの動物交際術』
『ムツゴロウの動物交際術』
畑正憲
文藝春秋
562円(税込:590円)


ムツゴロウさんのオススメDVD


『ライムライト』
出演: チャールズ・チャップリン
監督: チャールズ・チャップリン


『風と共に去りぬ』
『風と共に去りぬ』
出演: ヴィヴィアン・リー
監督: ヴィクター・フレミング



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プロフィール


ムツゴロウさん 畑 正憲(はた・まさのり)
1935年福岡県生まれ。東大理学部動物学科大学院を経て、学研映像部門に入社。教育映画やCMで活躍した後、文筆家に。1971年、北海道厚岸郡の無人島に移住。翌年、『動物王国』を建国する。数々の動物ノンフィクションやルポルタージュを執筆。1981年からテレビ番組『ムツゴロウとゆかいな仲間たち』がスタート。『子猫物語』『クルタ 夢大陸の子犬』などの映画監督も勤める。

インタビュー


−−犬好きな人、犬を飼ったことのある人なら、だれでも納得してしまう、犬と人間のトクベツな関係について、ムツゴロウさんの考えを解説してくれる本なんですね。お話を伺うようにすーっと読めるのに、知らなかった犬種がたくさん登場したり、興味深いお話がたくさん書かれています。


ムツゴロウさん 私はこの50年間、犬は特別な動物だとずっと思ってきました。この50年の思いを、どう展開したらいいのか、ずっと考えてきました。犬とほかの犬科の動物は、どこがどうちがうのだろうか。なぜちがうのだろうか。そのちがいを並べていくにつれて、どんな仮説をたてたら過不足なく説明できるか考えました。考えに考えて、これなら説明できるという説が、これなんです。それを探すために50年かかったようなものですね。


ムツゴロウさんずっと、疑問をお持ちになってこられたんですね。


ムツゴロウさん 犬の本は、世界中で1年間に10万冊ぐらいはでますけれど、どれを読んでも、第一章は「犬はオオカミの子孫である」と決めつけて、そこから出発しているんですね。
 ぼくはそれが、どうにも納得できなかった。
 この10年ぐらい、犬はオオカミの子孫ではないんじゃないかという部分的な事実もたくさんでてきましてね。あちこちの人が、少しずつ発言しはじめてくれているんですね。まぁ、とてもうれしいことですね。


−−先生の新説を裏付けるような事実が、たくさんの研究から、少しずつあきらかになってきているんですね。


ムツゴロウさん 少しずつね。でも全体を捕まえている人は誰一人いないので、そういう意味では、大胆極まりない仮説だと思いますよ。


−−どんなところからでてきた仮説なのでしょうか?

ムツゴロウさん ぼくはね、これまでいろんな野性動物とつきあってきました。ヒグマとか、ゾウとか、ライオンとか。ありとあらゆる生き物とつきあっているんですけれども、そのたびに、あぁ、犬とはちがうなということを感じるんですね。それで、犬のところに戻ると、今度はおまえたち、ライオンとはちがうな、クマとはちがうな、ということを感じるわけです。この実感がね、理屈の上でどうだったのかというのを、私なりの考えを展開してみたんですね。


−−オオカミの子孫ではない……という説にもビックリしましたが、もっと驚いたのが、人間と犬が共生関係になるという部分です。犬と人間のような特別な関係を持っている動物はほかにはいないということですか。


ムツゴロウさん うん。ぼくは犬以外に、会ったことはないですね。


−−人間はさまざまなペットを飼育しますが、犬との共生関係はそれともぜんぜんちがうものなのですね?


ムツゴロウさん うん、ちがいますね。サメにはパイロットフィッシュ(自然界では、大型のサメや魚にくっついて泳ぐ魚がいる。まるで先導しているように見える様子から「パイロットフィッシュ」と呼ばれている)というのがついているんですが、ぼくがサメになってあの連中とつきあったら、犬に近いものを感じるかなと思うんですけどね。いまのところ、四足獣で、哺乳動物で、人間に対して犬と同じような関係になる動物には出会ってないですね。


−−本の中にも、ホンソメワケベラとウツボの共生関係が書かれていますね。お互いに補完しあう、異なる種類の動物なのに、お互いの役に立ちあう、そういう関係性ということなんですね。お互いがお互いの役にたち、相手のテリトリーに一緒にいることが普通になされている動物というと、やはり人間の場合は犬ぐらいしか思い浮びませんね。


ムツゴロウさん これはまったく空想ですけどね、犬が出始めた頃、たとえば、ゾウの群れと一緒だったらどうかということを考えてみたんですよ。ゾウは一番強い動物だから、ゾウの近くにいれば犬はライオンにもハイエナにもやられないだろう。ゾウにとっては、子供育ての時に、時々子ゾウがライオンにやられるんですが、イヌがいれば騒ぎ立てて守ってくれて、親が気がついてきちんと守ることができます。そいう契約を犬とゾウが結んだら、互いに非常に有利ですよね。そんなことを考えたりね。いろいろな可能性を考えてみたんですよ。


−−それもおもしろい考え方ですね。組み合わせによって、いろいろな関係性ができそうですね。

ムツゴロウさん 自然界には、そういった例が山のようにあるんですよ。たとえば、サイがいるとサイ鳥というのがいて、サイの体のダニをとってくれるでしょ。ぼくはね、サイと遊んだことがあるんですけど、サイのシワのひとつひとつを見てびっくりしたんですよ。ぼくの小指の爪つらいのサイズのダニがね、サイのしわの溝にダーッと詰まってるんですよ。


−−えっ、小指の爪サイズのダニですか? けっこう大きいんですね。


ムツゴロウさん 平べったい、紙みたいなヤツですけど。それをサイ鳥が食べてあげているわけ。この場合はね、サイ鳥は自然界の中で、サイが占めているテリトリーを自分が守る必要がないし、サイにとまっていれば、安全が確保されているでしょ。だから、サイ鳥とサイはギブ&テイクの関係なんです。そういう関係が、自然界にはたくさんあるわけですね。
 犬が犬科の動物の本流から離れた時に、そういった、別のなにかをアテにする生き方を、選択したんだろうと思うんですよね。それが人類であったか、ほかの動物との関係が最初にあって、その次に人類になったのかは、それはもう、歴史の中で消えてますから、いまとなってはわかりませんけどね。でも、最終的には人類を選択した。


−−それが本には、14万5000年前ぐらい前にあったことだと書かれていますね。


ムツゴロウさん その数字は、ミトコンドリアDNAという、年代を識別するのに非常に有利な方法で算出されたものですね。5万年〜15万年くらいの誤差があるんですけど、でも、万年の単位で、そのくらいに犬の本流から別れたのだろうということは、はっきり言えると思う。


ムツゴロウさん−−そのころに、生物学的にいろいろなな変化が起きて犬が犬科の本流から別れた……。


ムツゴロウさん 進化というのはね、生き物が自然を占領していると、自然の変化・環境の変化によって、とんでもないところに染み込もうとする性質があるんですね。お乳で子供を育てる哺乳動物というのができますでしょ。でも、ひとつの種類だけではないんですよ。環境の変化に応じて、地表のあらゆる部分に適応して住んでやろうとさまざまなものが生まれてくるんです。コウモリみたいに空を飛んでみたり、ムササビみたいに滑空してみたり、草原にいたり、森林にいたり、ジャングルの奥の樹のてっぺんにしか住まないサルになったり。
 それは地球の変化に、非常に関連があるんですね。変化がおきると、全方向に適応しようという性質がパッパッパッとでてるんですよ。たとえば、日本だって、大陸とつながっていたんですから。それがある時、飛び出していまの島国になっていった。ヒマラヤだって、あんな高いところが海だったんですよ。それが海になったり、潮がひいて隆起したり。氷河期には一面の氷に覆われたかと思ったら、それが解けて、大草原になったり。そういうことがくり返されてきたんです。
 そういう激変がおきる時に、必ず、遺伝子というのは、有利に生きていこうとする変化をとげてきている。それが進化ですね。


−−そういった、どこかのタイミングで、犬と人間の共生関係がうまく、はじまったというのですね。

ムツゴロウさん そうです。イヌも人間も奇しくも変化したんですね。だいたい14〜15万年前というのは、ホモサピエンスがアフリカから誕生して、北上しようとしていた時期なんですよ。ネアンデルタールや北京原人、ジャワ原人とかはね、すでにいろいろなところに住んでいて隆盛を極めていたんですけど、最近の研究では、急にでてきたホモサピエンスがすべてを滅ぼして、そして地球の主人になっていったのだろうということがいわれていますよ。これもミトコンドリアDNAの解析によって、わかってきたんです。
 それは地球の大変化ですね。それにうまく、犬と人間の共生関係が、マッチしたんでしょうね。
 私は人類の進化と、イヌができてきたことというのは、切っても切り離せないと考えていますね。


−−犬との共生関係なのですが、犬を飼っているひとは、たいていの人が家族みたいなものだよ、といいますね。これまでの、犬の先祖がオオカミだとする説では、人間というボスがいて、家族との上下関係ができるんだということが言われてきたのですが……。


ムツゴロウさん まちがえている人がすごくたくさんいるんですけど、あるゆる動物には上下関係があるんです。2匹集まれば、強い・弱いという上下関係があるんですけど、それがね、システムとして遺伝されるかどうかということがポイントなんです。
 オオカミの場合は、群れを作るという、社会システムがあるんですね。オオカミが生存するということは、そこに強弱をベースにしたシステムができあがってくる。でね、会社登録(笑)しないといけないんです。登録して、社長がいて、その下に、重役がいて、ボスにつかえる女性軍がいて。そういう社会システムができあがるんですね。それができるかできないかということが、大切です。
 人間と犬の関係は、そういうシステムの中の強弱ではないんです。
 たとえば、私が犬を飼うと、犬は私に従いますね。これは主人との強弱ですが、これまでずーっと言われてきたようなヒエラルキー(ピラミッド型の階層構造)の関係ではないんです。
 早い話ね、私のところに4人の孫が遊びにくるんですよ。で、犬がいるわけです。そうすると集団でしょう。もし、ヒエラルキーというものが、オオカミのようにあるんだったら、孫と犬の間に社会的順位ができなきゃいけない。でも、そんなことしないです。犬ではありえない。家庭内では、犬と飼い主の間に、強弱はできるけれども、社会的順位ができない。そこがオオカミとの大きなちがいなんです。


−−では、犬と人間の絆というのは、もっと家族的なものという解釈でよろしいんでしょうか。


ムツゴロウさん 第二次社会適応期までは、どの動物もファミリーなんです。たとえ、狸にしろ、キツネにしろ、
オオカミだって、ファミリーとしてほかのメンバーとつきあっているんです。すごく曖昧な強弱関係ですね。協力関係であり、テリトリー周辺がぼけている。ただすべての野性動物は成体となって、第二次社会適応期を迎えると、その関係からはずれていくんです。
 たとえば人間の場合はね、親がいます、息子がいます。その中でどういうふうに順位をつけていますか?力で支配しているのか、もっとちがうもので支配しているのか? 上下関係はあっても、曖昧でしょう。第一次の社会適応というのは、この曖昧さがウリものなんですよ。それは、親子の関係によく似ています。先に食卓につこうが、先に寝ようが、そういうところはあいまいでしょう。でも、上下関係がないかというと、絶対にある。それが家族ってことですね。ハイ。


−−そうすると、イヌと人間は死ぬまで家族関係なんですね。


ムツゴロウさん ぼくが注目しているのは、犬には、ほかの動物にない「ロイヤリティ」(「忠誠心」「愛着」「忠実さ」などの意味)があるってことなんですよ。飼い主に対する忠実さが普遍であるというところ。その普遍さがどこからきたのかということについての注目度が少ない……とぼくは思います。
 たとえば、ヒエラルキーの中の強弱関係でも、強いものには忠実です。でもそれが、上のものが病気で倒れたら、下にいたものが、今度は上にいくんですよ。忠実さの逆転がおこるんです。
 犬と人間の歴史において、忠実さの逆転が起こった例はいままで、ないですね。そこにはだれも着目していないし、言わないのですが、私はそれこそが、犬の特質だと思う。
 これは、先程言っていた、二次適応がないから、終生、曖昧な一時適応のままの関係が結べるからなんです。
、この、犬の忠実さについては、犬の飼い主ならだれでも気がついていることですよね。真実の中で、一番見えにくいものは、いつも身近にあって、当然だと思っていることなんですね。ところが、そこに一回疑問をもってしまうと、すごく実り多いものを、与えてくれるんですねぇ。
 
 私はこれには、コロンブスの卵みたいな、掌をひっくりかえして見せたようなところがあると思いますね。


−−普通の野性動物では、第二次社会適応がないと生きていけないわけなんですよね。そうすると、二次適応のない犬のあり方は、動物的にはすごく特殊なものですよね。ほかの共生関係でも、あったりするんですか?


ムツゴロウさん ぼくにはそんな時間がないから検証していませんが、たぶんね、サイ鳥なんかはほとんど自分の縄張り争いをしなくていいんだと思う。サイまかせで。
 海の中でずっとみていたんだけど、ホンソメワケベラ同士がケンカをしているところなんていうのも、みたことがない。そういう、二次適応で発現するような縄張り意識なんかを、人にまかしてしまうんですね。そうすると、すごく自分が有利になって、エネルギーを無駄に使わずにすむ。


−−それでは、どうして、そういう特質をもった犬の遺伝子がほかの犬科と混ざらなかったのでしょうか。


ムツゴロウさん 犬もほかの犬科の遺伝子と、全部、雑交して混ざるんですよ。ただ、どうして混ざらなかったのか。たとえば、犬とオオカミが結婚したとする。そんな例はいっぱいありますね。ただそうすると、生まれた二世には、二次適応期ができてしまうんです。その遺伝子をもってしまうんです。そうすると人間と住んでいられなくなって、二次適応の時期に、人間のところから逃げていってしまう。そうすると、犬だけが人間のもとに残る。だから常に、犬はピュアなんです。

  アリストテレスの動物学の中には、強い犬を作るために、メス犬を広野に繋いで、オオカミの血をいれるというくだりがあるんですよ。仔は生まれるんですよ。
 それでは、オオカミの遺伝子が犬の中にどのくらいはいっているんだろうと思って、調べる手だてを考えたり、やったことがあるんですけど、なにを考えているのと(笑)。その遺伝子がはいっちゃったら、大きくなったら、外に行ってしまうじゃないの、逃げちゃうじゃない。そうすると犬だけが残るじゃない。なぁんだっていうことでしたよ。

 これまでの人類の歴史の中で、自然が豊かなところはいっぱいあったわけです。私は満州の奥地にも住みましたし、シベリアにしろ、アマゾンにしろ、そういうところで犬が人に飼われます。人間と助け合って暮らしているわけですね。そこでは、繋がれて飼われることはまったくなかった。みんな放し飼いですよ。エサはいくらでもとれるでしょう。でもね、オオカミのように人類の住処から離れていって、ジャングルの奥地で、自分たちだけで社会を作って、繁栄したという例はないんです。
 常に、人間のそばに犬はいる。


−−たしかに、野良犬というのも、人間の町から離れては暮らしていませんね。


ムツゴロウさん それはもう、町の周辺をうろつきまわる野良犬だとしても。野山を歩き回って、ウサギとかいっぱい喰って、それで生きていればいいじゃないかと思うんですけど、絶対そうしない。そういった野良も、共生を結んでいるんです。飼い犬とは別の結び方ですけどね。人間の金持ちに飼われて大切にされる契約を結ぶか、周辺でつかず離れずの関係を結ぶか、いろんな結び方はありますけど、遠くからみてみれば、結局、なんだ、一緒に住んでいるんじゃないかって、ことになるんです。


−−本には、咬み犬のお話も書かれていましたね。咬み犬は不良であると書かれていましたが、悩まれている方がたくさんいると思うんです。犬との関係にも、人間社会と同じようなひずみがでちゃっているんだなと思いましたが……。


ムツゴロウさん ぼくは問題犬を何百匹と調べたんです。世界各地の、咬み犬の処置をしているところに訪ねていったり、困っている人を訪ねて調べたり。でもね、咬み犬が、ヒエラルキーの権力争いによって、人間を咬んだ例は一例もないんです。みんな育てる過程の、育て方のまずさによって、咬み犬になっているんですよ。だから、これはね、不良少年だと。息子を育てて、なにかが悪くてグレてね、家出したとか、家の中で荒れている。それと同じこと。第二次社会適応期によって、起こった事故じゃないんだと、そういうことは思いましたね。


−−新聞で、オオカミとの混血ハイブリッド犬が流行っていて、その事故が増えている記事を読んだことがりますが、オオカミ犬の咬み犬と普通の咬み犬とは、わけて考えなくてはいけないのでしょうか。


ムツゴロウさん 憧れだけでね、大きい犬を作るというのがよくないですね。大きい犬をどう育てたらいいのかわからない人が多いんです。それで結果的に不良にしてしまうんですよ。
 大型犬への対し方は、もうぜんぜんちがいます。小型の犬を扱う場合と本質は同じですが、大型犬は力が強いから、自分の行動を制御するということを、小型犬より、よりたくさん教えないといけない。制御をおぼえる時期に、きちんと、仕込んでいかないといけない。

 
−−うーん、ほんとに人間と近いものがありますね。


ムツゴロウさん 同じですよ。近いじゃなくて、人間も同じことをやっているんです。ただし、人間の場合は、言葉をもっているから、概念闘争になってしまうんですね。
 うちの子が不良になった、社会不適応になったということの原因は、実は単純なことなのに、概念をもっているから、「ウチでは自由が認められない」「好きなことができない」「進む道を強制された」「人格の否定だ」って、そういうことを言うんですよ。そういう人に、それじゃぁ好きなことはなんなの? 自由に生きるってどういうこと?って問い詰めると、結局、わからないわけですよ。で、ようく調べると、デートした時に、門限11時なのに30分遅れただけですごく怒られたとかね(笑)。そういうことが重なって、根に持っているんです。「自由を束縛された」なんていうと、なんだか人類の歴史の中で光り輝く自由への憧れとかね、そういったものと結びついてしまって、ちがうものになってしまう。それがね、人類の特質ですよ(笑)。

 女の子が口紅をさすかささないか。男親にとりましては、すごくショッキングな出来事なんですよね。女の子にとりましても、それは、すごく心が揺れ動いてて、華やかになるかならないかっていう瀬戸際でしょ? で、パッと紅をさした時に、「なんだその唇は」って言われたら、あのね、「自由を束縛された」とかっていうでしょ(笑)。うちの親は無理解だって。ね、そういう概念にすり替えてしまうんですよ。

 そういうところが人間の特質ですけど、犬が飼い主を咬むようになったきっかけなんていうのはね、ホンのちょっとしたことなんです。ホンのちょっとした食い違い、ですね。


−−そうすると、普段から心を通わせていい関係性を築いておくことが大事なんでしょうね。


ムツゴロウさん それとね、その人にもよるんですよ。あらゆる生き物は、弱者は追い詰めてはいけないんですよ。絶対に、いけない。
 たとえば、暴力団だったら、ヤキをいれる、なんていうことをやったりする。組員はヤキを、むしろ快感と思ったり、耐えることでもう一段ステイタスをあがろうとするから、耐える力を持っているんですね。
 ですが、犬とかネコとか、それから少年。
 これはね、耐える力も持っていないし、耐える意味も理解できない。だから折檻されたりすると、いきなり攻撃の鍵がはずれちゃう。それでいきなり咬みついてくるんです。

 だから、ヤキをいれるタイプの飼育者に育てられた犬はかみ犬になりますね。

 私が叱る時は、ほんとにこうやって(優しく抱え込むようにして)人には聞こえないように、小さい声でダメだよ……って。


ムツゴロウさん−−それで、犬には伝わるんですか!


ムツゴロウさん もちろんです! 愛しているから。力のかぎり愛しているから。それはもう、見事なものです。
規則とか、信条とか、マニュアルとか、そんなもので作った関係っていうのは、ほんとの愛じゃないですから。それを伝えるために、大声を出したり、大きな身振りだったり、そういうものが必要になるんですね。芸をやらせるとか従わせるために、合図とかボディランゲージが必要でしょう。ほんとにきちんとした、豊かな愛をもっていれば、そんなものはまったく必要ない。

 顔ひとつしかめるだけで、ちゃんと伝わるんです。


−−ほんとに、その溢れるほどの豊かなムツゴロウさんの愛は、いったいどこからでてくるのですか?


ムツゴロウさん だって、生き物をみたり、人間をみたら、そうなりませんか?  花をみたら、きれいだなぁって思いませんか? 子供をみたら、かわいいとは思いませんか?


−−ほんとうにそうですね。そういう気持ちを素直に表現できればいいのですが……。
最近、子供が育てられない母親とかがいて、悲しい事件が起きたりしていますが……。


ムツゴロウさん ぼくはね、そういうことに、少しでもお役にたつことがあればと思っています。やっぱり、生命体験が欠如していますね。それとね、言葉で育てようとするから、マニュアルに頼すぎるんですよ。またねぇ、不思議な本がいっぱい出ていますよ。育児の本なんかに、ああしなければならない、こうしないと将来こんなことになる……。そんなことがたくさん書いてありますよ。
 犬の育児がそうですよ。こうしなさい、ああしなさい……。ウソです、みんな。
 愛しさえすれば、みんな素直な子になるんです。抱きしめてあげればいいんです。
 それをね、犬は人間より高いところからならべなくちゃいけないとか、ソファにすわらせちゃいけないとか、抱き上げてはいけないとか、ふざけたことがいっぱい書いてあるんですよ。そうすると将来こうなる……ウソですみんな。犬がいたら抱いてください。抱きしめてください……絞め殺しちゃダメですけど。苦しかったら声だしますから。
 抱くことは大切ですし、こうしたらこうなるんじゃないかという恐れを持って接することが、百万倍危ない。
 命を持っているものに対しては、素直に自分の命を開いてみせてあげてください。お互い、反応しあって、それが生きていることなんですから。

 生きている幸せというのは、そんなにたくさんないものなんです。

 お金を持っていても、すごい地位にあっても、たいしたことじゃないんです。疲れた時に、犬がスッと寄ってきていたわってくれることのほうが、ずーっと幸せなんですね。
 命とかかわって、命と触れ合うことは、命を持つ人間という存在にとって、最高のことなんですね。その一日を一緒に楽しんでくれればいいし、それが天からの一番の贈り物じゃないかと思います。


本もめちゃめちゃ面白いのですが、ものすごく感動的なインタビューでした。72歳のムツゴロウさんは、40代の時と同じ密度で仕事をされているそうです。1時間半、お話をしてくださったムツゴロウさんの話題は、このあと、映像、絵画、そしてムツゴロウさんの研究方法にまで広がり、もう、ほんとに書き切れません。
 この本は、ムツゴロウさんがあきる野市の東京ムツゴロウ動物王国でなさっているティーチインをもとにしたものです。ティーチインでは、メモも台本もなしで、5時間ぶっ通しでお話されるそうです。興味のある方は、ぜひホームページでチェックしてくださいね。
【インタビュー 波多野絵理】


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