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中村うさぎさんインタビュー 「私たちはみんな“病気”」 現代女性を問う3作が文庫化

浪費、美容整形、性風俗などの実体験を通して、現代女性が抱くさまざまな問題を軽妙な筆致で世に問う中村うさぎさん。2月末から『女という病』(新潮社)と『愚者の道』(角川書店)、『さすらいの女王』(文藝春秋)の3作が文庫化された。中村さんに話を聞いた。
中村うさぎさん

中村うさぎさんの本

『女という病』
『女という病』
420円(税込)

『愚者の道』
『愚者の道』
460円(税込)

『さすらいの女王』
『さすらいの女王』
490円(税込)

『うさたまのいい女になるっ!』
『うさたまのいい女になるっ!』
600円(税込)

『悩んでなんぼ!生きたオンナの作り方』
『悩んでなんぼ!生きたオンナの作り方』
560円(税込)

『鏡の告白』
『鏡の告白』
1,575円(税込)

『うさぎが鬼に会いにいく』
『うさぎが鬼に会いにいく』
1,365円(税込)

『セックス放浪記』
『セックス放浪記』
1,260円(税込)

【中村うさぎさんの書籍一覧】



プロフィール

中村うさぎさん(なかむら うさぎ)
1958年、福岡県生れ。同志社大学卒。コピーライターなどを経て、ジュニア小説デビュー作『ゴクドーくん漫遊記』(角川書店)がベストセラーに。その後、買い物依存症の日々を描いた週刊誌の連載コラム『ショッピングの女王』が注目される。著書に『私という病』『セックス放浪記』(ともに新潮社)など多数。

インタビュー


−−中村さんにとって女性であるということは。

中村さん 快感と苦しみとがセットになっている感じです。快感を追求すると、必然的にそこで苦しむ。求められたい、愛されたいというこうこつ感と、裏腹に「求められるだけの存在でいいのか?」という問題意識も含めて、女性は他人に評価をゆだねているので、求められない、愛されないといったことが、男性以上に自己否定につながります。


中村うさぎさん−−他人に評価を委ねるとは。

中村さん 男性の場合、例えば成績とか仕事とか、評価が割と分かりやすい。女性の場合の「愛されているか?」って、すごくあいまいです。しかも男性は社会的地位とか、お金でまだカバーできるじゃないですか。でも女性は、社会的地位を持つほど敬して遠ざけられる。まして若い男をお金でどうこうするなんて「ばばあが気持ち悪い」と世間では言われます。


−−女性の社会進出が進んでいますが。

中村さん ある時期から女性も男女平等の名の下、「何者かにならなければ」と、社会的な自己実現をたたき込まれたと思うんです。もちろん夢や野望を持つのはいい。でも、これが強迫観念になるとね。主婦だって同じですが、一生懸命働いていたら、女を磨く暇なんてないですよ。「若くてきれいであれ」「仕事ができて、家庭でも妻として完璧であれ」と、女性はいろいろ求められすぎていると思うんです。「女性に八面六臂の活躍を求めるな」と、私は言いたいですね。


−−一貫して「何者かにならなければ」という自意識を書かれていますが。

中村さん これを明確に意識したのは、大学時代にソール・ベローの『雨の王ヘンダソン』を読んだときです。60年代の裕福なアメリカ人の主人公がアフリカに渡って、「be(ある)」ではなく、別の何者かに「become(なる)」ことで自己が実現するという思想に毒されていた、という自分に気づくんです。私が買い物依存症になったのも「be」の、裸の自分に自信がなかったから。だからブランド物という分かりやすい記号で、心が落ち着く。シャネルを着ていればシャネルを着た人として世間では扱われ、アイデンティティーも安定する。実際は、買いすぎで水道も止められているのに(笑)。この皮肉がすごく面白かった。同時にすべてのこっけいさは「何者かにならなければ」という意識なんだと思いました。消費は快感です。「知的なおれ」とか「おしゃれな私」とか、自分の衣を手に入れるから。だから抜け出せない。消費社会が「become病」を進めて、逃れることはできない。もう持病として自覚的に生きるしかないと思います。


−−ご自身のことを赤裸々に書くのは、苦しくないですか。

中村うさぎさん 中村さん 私は元々ファンタジー作家ですが、ファンタジーというのは大体、死と再生がテーマなんです。死の国に行って、帰還する。そこで成長するんですね。自分に対しても同じようなところがあって、体験を書くのは、最終的には再生を求めているけれど、その前に自分を解体して、殺さないといけない。私が一番苦しいのは、やったことや書いたことで批判を浴びることではなく、いろんなものを捨てる覚悟でやったのに、それでも自分の核心にたどりつけないことなんです。「死ぬまでこれは無理なんじゃないか」と。中途半端に解体した自分を受け継ぐなんて、誰にもできません。次の世代にバトンタッチできない仕事なんです。


中村うさぎさん −−『愚者の道』では、ご自身を「愚者」と断じていますが。

中村さん  「アホ」でしょ、確実に。「どこまでできるのか」っていう変な「男気」みたいなのが発動しちゃって。「ぬるく」生きている自覚もないまま、ああだこうだ言っている人ののど元にナイフを突きつけて、「どうよ?」と言いたいんです。その「どうよ?」は実際にやってみないと出てこない。やらなくても出てくる人が「賢者」だと思います。「あなたが言っていることはとっくの昔に誰々が言ってますよ」と言われても、私は自分の体を通さないと。まさに「腑に落ちる」ですね。大事なのは「私がそう思った」ということなんです。


−−読者に一言お願いします。

中村さん  私たちはみんな「病気」です。今までこれを克服しようして「ドツボ」にはまってきました。「病気は悪」という二元論はもう終わりにして、病んでいることすら人間の一部であると理解し、「じゃあ人間はどう生きていくべきか」を、一緒に考えていきましょう。
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