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「霊がついた!」としか思えなかった母の変調は、「統合失調症(トーシツ)」だったのです。
100人に1人、といわれる統合失調症はちっとも珍しくない病気です漫画家・中村ユキさんの赤裸々コミックエッセイ『わが家の母はビョーキです』

「統合失調症」とは2001年までは「精神分裂病」と呼ばれていた精神疾患です。大切な母が統合失調症を発症してから31年間。怒って、泣いて、でも笑って支えてきた漫画家・中村ユキさんの闘病&サポート記録です。自分は関係ない、と安易に片付けず「もし自分が・・・」「大切な誰かが・・・」と考えるきっかけになるはず。自殺者が3万人を越え、うつ病も急増するストレスフルな現代社会において、この「トーシツ」は、けっしてヒトゴトではありません。


中村ユキさんの本

母と、私と、統合失調症。大切な31年間を綴ったコミックエッセイ
『わが家の母はビョーキです』
『わが家の母はビョーキです』
1,260円(税込)



「トーシツ」をもっと知りたいなら!

『お医者さんも知らない治療法』第2弾!新しい診断と治療・予防法
『心の病は脳の傷〜うつ病・統合失調症・認知症が治る〜(田辺功 /松沢大樹)』
『心の病は脳の傷〜うつ病・統合失調症・認知症が治る〜(田辺功 /松沢大樹)』
1,470円(税込)

統合失調症とのつきあい方を家族とみんなで理解し、正しい対処を
『統合失調症〜正しい理解と治療法〜(伊藤順一郎)』
『統合失調症〜正しい理解と治療法〜(伊藤順一郎)』
1,260円(税込)

ココロの病を支える本!

スーパーサラリーマンの夫がある日、突然「死にたい」と言い出した
『ツレがうつになりまして。 (細川貂々)』
『ツレがうつになりまして。 (細川貂々)』
1,155円(税込)

ありのままを受け入れたツレは、1年半経った今、どう変わったのか
『その後のツレがうつになりまして。(細川貂々)』
『その後のツレがうつになりまして。(細川貂々)』
1,155円(税込)

妊娠中にパニック障害&うつになってしまった著者の出産、育児!
『パニックママでもいいじゃない(青柳ちか)』
『パニックママでもいいじゃない(青柳ちか)』
1,050円(税込)




プロフィール


中村ユキさん (なかむら・ゆき)
大阪府出身。3年間の百貨店勤務の後、週刊少年マガジンでデビュー。その後、知人の紹介で入ったアシスタント先の先輩であるタキ氏と結婚。現在はフリーのマンガ家として、Webや雑誌をはじめ、体験記マンガなど、幅広いジャンルで活躍中。
ゆきたきHP http://www.geocities.jp/yukieonly1973/

インタビュー


【統合失調症とは】*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*
脳に機能的な障害が発生したため、思考や行動、感情を一つの目的に沿ってまとめていく能力、つまり「統合」する能力が長期間にわたって低下。幻覚や被害妄想、意欲や関心が乏しくなる、人との接触を極端に嫌うなどの症状を発症し、生活能力が失われてしまう病です。早期発見し、正しい投薬や治療を行えば日常生活を普通に送ることが可能。発症原因ははっきりしていませんが、多くの要因が絡み合い、その人の「ストレス耐性」を越えたときに発症するのではないかといわれています。初期症状はうつ病の症状にも似ており、誤診を招くことも。現在、100人に1人の割合でかかり、患者数は75万人を超えているにもかかわらず、症状や治療法などが知られていない病気の一つです。
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中村ユキさん−−中村さんが4歳のときに統合失調症を発症されたお母さん。二人三脚の闘病&サポートの様子が赤裸々に描かれているコミックエッセイですが、幻聴、独り言、妄想の末、包丁を振りかざすなど、あまりにも壮絶なお話が、からっと描かれています。内容もちろんですがそこにも衝撃を受けました。

中村さん 確かに大変だったけれど、母がおかしくなるのは病気のときだけで、愛情深い、私の大切な母であることは変わりないんです。だから、必要以上に「怖い」「辛い」という印象を植え付けたくないと思って、通常の私の絵柄ではなく、ライトな絵で描いています。劇画でリアルに描くと怖いシーンも含まれていますから(笑)。コミックエッセイ、という形だと、漫画に興味を持たない人でも、男女・年齢問わず、読みやすいジャンルで、より多くの人に読んでもらえるのではないかと思いました。


−−多感な少女期を「統合失調症」と「愛するお母さん」の間に挟まれて過ごした様子を読んでいて、「お母さんも辛そうだけど、中村さんご本人が壊れちゃうのでは」と思ってしまいました。でも、それを「ユキさんは強いから」と片付けられるのはちょっと違いますよね。

中村さん このコミックエッセイを書いてから、「あなたって強い人ね」といわれることもあるんですが、ぜんぜんそんなことないんですよ。泣いたり怒ったり憎んだり絶望したり、すべての感情が渦巻いていました。だけど、私の場合は「漫画」という、すべてを忘れて集中できる表現方法・夢・希望があった。実はちょっとだけウツになりかけた時期もあったんですが、それは「漫画がうまくいかない」というストレスが原因で。母の病気は関係なかったんですよ(笑)。
病気の本人や、介護中の周囲の方々も、ぜひ病気に引きずられすぎず、家族全員が自分のやりたいことや夢を見失わずに歩いていってほしいと願います。
私も、長い学びでしたが、自分がいきいきすることで、母も調子がよくなるということが分かりました。家族が自分の生活を壊さない、ということは患者本人にとってもいいことなんです。


−−病気の本人にとって病気と夢が、介護する人にとっては介護と自分の人生が、うまく両輪で回るようにするためには何が必要でしょう?

中村さん 自分たちだけで悩みを抱え込むのではなく、社会資源や周囲のサポートを活用して、大変さを分散させることだと思います。漫画の中でも書いたのですが、私たちは地域生活センターに行き始めてからとても楽になれたし、病状も改善しました。
以前から保健所とかデイケアを利用していたんですが、たまたま利用していたところが、短期間で担当者が変わってしまうなど、相性ぴったり、というわけではなかったのでしばらく行くのをやめていたんです。その後、地元の保健婦さんが「行ってみれば?」と勧めてくれたNPO法人(地域生活支援センター)が相性ぴったりで。母も楽しみに通うようになりましたし、私も同じ悩みを持つ家族会の人と話ができて、よりくわしい知識や情報を交換できたり、現実問題をどう解決しているかという具体的な話ができたり、大変なのはウチだけじゃないんだと思えたり。

最初は勇気がいるかもしれませんが、本当に利用したほうがいいですよ。施設の方もおっしゃってましたが、オープンに「こんな病気なんだ」と話す人のほうが、隠している人より普通の生活に戻りやすいんだそうです。画期的な解決策が見つからなくても「困ってるんだ」「辛いんだ」と言えるだけでもぜんぜん違いますから。

ただ、最初の施設と相性がばっちりとは限りませんから、一回であきらめないほうがいいですね。人間関係って、相手のあることだから、好き嫌いとか、空気が合う合わないって大事じゃないですか。特に精神障害の人は感知度が高いし、思い込みも出てしまうことがあるので、最初に試した施設がぴんとこなくても、「もうダメだ」と諦めないで、合うところを探してみてほしいです。


−−本人も、家族の人も、なかなか精神病であることをカミングアウトしにくいとは思いますが、そこは勇気を出して・・・。

中村さん でも、私が周囲に告知したとき、偏見の嵐で傷つけられた!ということはなかったんですよ。逆に「実は私も・・・」とカミングアウトしてくれる人が増えて、「現代社会において、統合失調症は100人に1人の割合で発症している」というデータは本当だったんだと思いました。100人に1人ってガン患者と同じくらいの割合なんですよ。

最近「家族会」の講演で学んだのですが、精神科はその日たまたま患者や家族が伝えた症状だけでは決定的な診断ができない場合も多いそうで、経過観察も重要らしいんです。だけど、例えば「自立支援法」の申請などをする時に、なにか病名をつけないと「診断書」が通らないのでとりあえず病名をつける事もあるのだそうです。
だから「うつ病」だと診断されたけれど、途中から幻聴が聞こえ始めた。うつ病には幻聴が起こることはないから、統合失調症の薬が後で出るようになった、など、症状にあわせた「対症療法」が大切なのだとか。
精神障害は、ここからここまで、とはっきり線引きすることは難しいようですね。暴力から始まるとDV、倦怠感で部屋から出なくなると「引きこもり」、仕事にいけなくなると「サボリ」「ナマケ癖」など、本人も周りも、誤認と誤解を生みやすく、その為早期治療につながらないコトもあるんです。

精神障害の中でも、統合失調症はとても再発しやすい病気ですし、薬を飲まずに放置すると、日常生活での障害が残ったりもする可能性があるため、早期発見して治療を開始したほうがいい。けれど、なかなか自然には情報が入ってこないのが現状だと思います。正しい判断をしてもらうため、早めに病院に行くため、「自分は関係ないや」と思う人でも、主な症状や治療方法、改善方法、予防方法などを、知識としてだけでもいいので知っておいてほしいと思います。風邪の原因や予防、治療方法をみんなが知っているように。


−−中村さんの場合、ダンナ様と結婚されたことがお母さんにとっても中村さんにとっても、大きな転機になった様子が漫画でも描かれていますね。ダンナ様、すごく素敵ですね。

中村さん ありがとうございます(笑)。結婚してから、母の笑顔がぐんと増えたし、もちろん私もとても楽になりました。家族がよく笑うことは、病気の本人にとっても本当にいいことなんだなと実感している毎日です。


中村ユキさん−−病気のお母さんを自然に受け入れたこともすごいのですが、介護というとても大きな責任やストレスに、ご本人が引きずられすぎずに、自分の道を歩いて行っている様子が描かれていて、スゴイ人だなあ、と。

中村さん あ、でも、「強くて大きい」のではなく「疲れやすくて傷つきやすい」人なんですよ。悲しい問題や難しい問題に直面すると、体調を悪くして丸一日寝込んじゃう。でも一日たつとけろっと立ち直るんです。苦しさや大変さを溜め込まないでこまめに毒ヌキしているから、ばっきり折れないのではないかと。
漫画の最後にも書きましたが、母の病気は治らないと思います。でも、完治を目指すと苦しいだけ。病気と共存して、ゆったりいっしょに歩いていくという姿勢が保てるようになったのは、やはり夫の影響も大きいかもしれません。


−−お話を伺っていると、この本は、病気の本人ではなく、周りで支える人にこそ読んでもらいたいと感じます。

中村さん もちろん家族には共感もしてもらえると思いますし、制度や施設との付き合い方も見直せる、可能性や選択肢を広げていただけると思います。

そして、原因や症状は違っていたとしても、その孤独感・孤立感、先が見えない感じ、なんで私だけが、という辛さや葛藤、ついイライラしちゃって感じる罪悪感など、共感してもらえるのではと思うのが、高齢者介護の真っ最中の人や、子育て中のお母さんたちですね。子供って、自分の思い通りにならないじゃないですか。相談しにくいことや、吐き出せないでいることなんかも多分とても似ていると思うんです。同じ方法ではないにしろ、改善のヒントやガス抜き方法なんかを見つけてもらえるのではと思います。

また「統合失調症」は、10代から20代で発症する症例がとても多いので、中・高・大学などぜひ学校の図書室などにおいてもらって、学校の先生にも読んでもらえると、早期発見・早期治療に役立つとおもいます。

でも、当事者と準当事者だけでなく、私はやっぱり「今は統合失調症や精神疾患は関係ない」という普通の人にもぜひ読んでもらいたい。「こんな病気があるんだ」と心の引き出しに入れておいてもらえるととてもうれしいです。精神疾患の多くは、発症原因もハッキリしないし、治療方法もまだまだ未発達です。突然、自分が当事者になる可能性だってありますし、大切な人が困っていたら適切に対応してあげられるかもしれません。

統合失調症という病気を抱えながら私たち3人家族は、普通に明るく毎日を過ごしています。少しでも興味を持っていただいて、統合失調症についての正しい知識を得るきっかけにしてもらえたら、この本を書いた甲斐があります
















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