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ショッピングの女王の異名をとる中村うさぎによる「数々の地獄体験」をギュ〜ッっと詰めこんだエッセイ集が発売になった。地獄めぐりのバスは、浪費地獄→借金地獄→悪口地獄(別名ツッコミ地獄)→博打地獄というルートをひた走る。怖いけれども見てみたい。そう、地獄には、怖さを越えた魅力もあるのだ。安全な場所から我々がその地獄をかいま見ることができるのは、中村うさぎというガイドの実力あればこそ。飽くなき欲望に素直に従い、天国と地獄の両方を味わった著者の言葉は、軽快だけど軽くはない。ピリリとスパイシーな教訓、ドキリとするひとことをハートに突き刺してくれるのだ!

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中村うさぎさん『地獄めぐりのバスは往く』『地獄めぐりのバスは往く』
ショッピングの女王の異名をとる中村うさぎによる「数々の地獄体験」をギュ〜ッっと詰めこんだエッセイ集!
520円(税込)
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中村うさぎさんの本!

愛という病『愛という病』
うさぎとマツコの往復書簡
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私という病
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閉経の逆襲 ババア・ウォーズ2
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ショッピングの女王
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プロフィール

中村うさぎさん (なかむら・うさぎ)
1958年、福岡県生まれ。同志社大学卒業後、OL、コピーライターを経て、『「極道(ゴクドー)くん漫遊期』で小説家デビュー。ファンタジー小説の分野で活躍する一方、自身の壮絶な浪費生活を綴るエッセイ『ショッピングの女王』で注目を集める。

インタビュー

−−中村うさぎといえば、ショッピングの女王。新刊では「浪費地獄」「借金地獄」のエピソードが登場します。この「買い物地獄」が始まった時期は?そして何がきっかけになったのでしょうか。
中村さん年齢的には33才。角川スニーカー文庫で小説家デビューした時ですね。(『極道(ゴクドー)くん漫遊期』)お金が欲しくて書いた初めての小説が、ブームに乗って大きなお金になった。で、「頑張った自分にごほうび(笑)」って、シャネルのコートを買ったんです。黒い皮のコートを伊勢丹のシャネルで。60万円。そこから止まらなくなっちゃって、怒涛の買い物依存症時代に突入する、と。
−−その買い物っぷりと借金っぷりが作風として確立していったわけですよね。
中村さんターニングポイントになったのは「女殺借金地獄(おんなごろしカードのじごく)」という単行本ですね。(『だって、欲しいんだもん!』として文庫化) ゴクドーくんを書きながら、角川のジュニア雑誌にエッセイを連載してたんですけど、その内容が浪費や借金のコトばっかりで。文章量がまとまったから本にしよう、と思っても、スニーカー文庫にはできない。内容が不適切すぎる(笑)。で、大人むけの本として出したら、文藝春秋の編集者の目にとまったんです。それが週刊文春の連載につながるんですよ。
−−お金の単位が変わったのは、小説家として稼げるようになってから、ということでしょうか?
中村さんそうですね。それまで貧乏してきて、一気に年収が1千万を越えたもんだから、その時から変わっちゃったんだと思います。株や相場をやる人もそうでしょうけど、お金の単位が大きくなりすぎると、現実味が薄れるものなんですよね。 あの頃、水野良くんが『ロードス島戦記』で家を建てたと聞いて「私もいっちょ稼ぐか!」って燃えてたんですよ。ただ私の場合は、家ではなく、ブランド物を買ってしまったわけですが。
−−「地獄めぐりバスは往く」に収録されているエッセイは1999年から2003年の間に書かれています。ご自身が振り返った「地獄」の内容と期間はどれくらいですか?
中村さん「買い物期」が一番長いですね。小説家デビューの33才から、再婚する39才まで続いてますから。続く2年が「ホスト期」。その後、現在に至るまでが「美容整形期」。
−−ホストと競馬は似ている、という視点はユニークですよね。馬主は馬が勝てば賞金が手にはいるけど、ホストの成績が上がっても、お客に見返りはないのでは?
中村さんホストへの投資の見返りは、お金じゃないんですよ。愛、なんです。というか心で感じるもの。幸福感なんです。

「誰かに必要とされたい」という気持ちを満たしてくれるのが見返り。女性はどんなに社会で成功しても、一人の男から求められなければ悲しい、と思ってる。

恋人や夫、不倫の相手、ホスト、あるいは自分の産んだ子供。特別な他人から、強く求められたいという気持ちが女性にはあると思うんですよ。
−−うさぎさんにとって、ホストクラブの魅力は何でしたか?
中村さん最初はホストの売上順位アップというゲーム性に惹かれたんです。お金をかければかけただけ、正比例で成績が上がりますから。私にとってはわかりやすいゲームだったんですよね。振り返ると、ホスト期は第1期・第2期に分かれていて、前半がマネーゲーム、後半が女性観察になっていますね。
−−小説『愛と資本主義』や、エッセイ『さびしいまる。くるしいまる。』にこの時の体験が生かされているんですね。
中村さんこの時期から、「女の生き方」について考えたり書いたりする機会が増えたと思います。もっとも、美への欲求が高まって、勢い、美容整形への道を歩みだしてしまう、というオマケもついてるんですが。
−−整形についてはどうですか?「なりたい自分になる」ための挑戦という意味があるのでは?
中村さん女性って自分の外見に対してすごく縛りがあるじゃないですか。女性は子供の頃から鏡に映る自分を意識する。自意識の発達の仕方は、女性の方がすさまじいと思うんです。男性だったら社会的に成功していれば、容姿をけなされても大丈夫。だけど、女性の場合どんなに成功していても、「ブスじゃん」とか「デブじゃん」と言われたら、ひどくショックを受けるわけです。

私自身、ここまで努力至上主義で来てしまったというか。自分の力で勝ち取りたい、という気持ちが強くて…悪あがきをしてるんです。キレイになりたい、という悪あがきが整形。でも、悪あがきも極めればひとつの形だと思う。
−−整形もまた地獄のひとつでしょうか?
中村さん整形で美を求めるのは、悪いことじゃないですよ。私は整形してよかったと思ってるし。でも、世間の反応はまだ厳しいですね。「天然の美」が一番価値があって「作られた美」は価値が落ちるという風潮がある。そして「私、整形してます」というと、「悪いことを聞いてしまった」とオロオロする人が大半なんです。

普通の人が整形をカミングアウトするのはまだ難しい感じがありますね。それと、3ヶ月に一度病院にいくんですけど、その時に、予定外の整形まで薦められたりして、ついその気になるという悪循環が…。際限ないのが地獄かな。
−−整形した故の悩みはありますか?
中村さん定期的にメンテナンスしないと、手に入れた美が崩れる、という恐怖感はありますね。その恐怖が病院に向かわせる。もうサイボーグなワケです、私の身体は。

放っておいて元に戻ってしまうとか、元に戻るよりひどい崩れ方をしたらどうしよう、と怖いんです。私にとってマイケルジャクソンは他人事じゃないんですよ。
−−うさぎさんにとって、ブランド品がもつ意味はなんだったんでしょうか?
中村さん夫が、私の誕生日に60万もするカルティエのリングをくれたことがあったんです。チミチミ貯めたお金を全部使って。そりゃ嬉しかったですよ。でもね、これはO・ヘンりーの「賢者の贈り物」と同じ。美談ではあるけれど…。 つまり、私にとっては、ブランド品は自分で買うものでなければならないんです。ブランド品は、戦利品ですよ。

ブランド買いをする女には2種類いて、「男に買ってもらう女」と「自分で稼いだ勲章として買う女」がある。そしてお互いは絶対に仲良くなれない。
−−うさぎさんの「女性に対する観察眼」は鋭いですよね。地に足のついた客観性をもち、公平なものの考え方ができる、新しいタイプのフェミニストなのでは?
中村さんフェミニストと言われるとピンとこないですよ。いわゆる、フェミニズムの人たちからから見た私の存在は、異端だし、賛否両論だし。 ただ、テレビ番組のレギュラーなんかをやってきて、(NHK:今夜は恋人気分)いろいろ考えることはあります。

女性って、夫や恋人を応援する立場に回ることが多いですよね。自分で自分の才能に天井をつくってあきらめて、パートナーの裏方に徹してしまう。これって、実は自分の才能に賭けるのが怖いからじゃないかと。他人の才能を応援していれば、失敗してもそれは自分のせいじゃない。こういった「逃げ道」があることを、女性は自覚するべきだと思う。逃げ道を選んでもいい、でもそれを自覚しようよ、とは言いたいですね。
−−男に「専業主夫」という道があっていい、女にはあるのだから、と書いていますよね。
中村さん今、女の幸せは、働く女、家庭に入る女、というように二極化している。でも専業主婦にもそれなりの地獄があると思う。社会からの断絶感や、孤独感といったもの。男の場合は、社会的な成功というわかりやすい指針があるけれど、逆に、それ以外の道が許されない。男の苦しさは、女の経済力にたよると「ヒモ」といってさげすまれるところでしょう。

女が「専業主婦っていいな」って言うときは、半分本気でうらやましがってる。でも、男が「ヒモっていいよな」って言うときは、ほぼ100%オレはそうなりたくない、っていう意味ですよ。

ウチの場合は私が稼ぐ役なんです。夫がヒモと呼ばれたら気の毒だという気持ちが強い。だからこその視点なのかもしれないですね。
−−中村うさぎ作品の特徴は、いつでも自分を客観的に見ていることですよね。その客観性はどこからくるのでしょう?
中村さん私は、税金の滞納で差し押さえにあう、という物質的な罰則よりも、自分自身の客観性を失うことの方が怖いんです。私はおそらく「脳内麻薬過多症」なんですよ。いわば、天然シャブ中毒状態ね。くらたま(マンガ家・倉田真由美)も同じタイプの女だと踏んでるんだけど(笑)。

脳で感じる一瞬の快感が忘れられずに、常に刺激を求めていく。一般的にこのテの人は客観性を失いやすいわけです。それだけは避けたいと。
−−ある一線を踏み越える恐怖がブレーキになる?
中村さんさあ、ブレーキになっているかどうか(笑)。ただ今の私が言えるのは、「その一線を踏み越えても、なんとかなる」ってことですね。税金の取り立てで毎月必死に金策をしたときも、どうにかなった瞬間に「ああ、生きてる実感が!」と思っちゃう。乗り越えた時に、脳内麻薬が出て、快感を味わってしまう。そしてまたその快感を追い求める。

でも、どんな刺激だって、一番最初の時の快感は越えられないんです。今の私が60万のシャネルの皮のコートを買ったって、最初ほどの快感は絶対に得られない。反対に、痛みに対する耐性は強くなる。だからこそ、痛みを恐れず快感を求めてどんどん進んでしまう。 もちろん、危機を乗り越えられずに自殺しちゃう人だっていますよ。でも、それは「あきらめてしまった」からだと思う。あきらめずにぶつかれば、踏み越えてしまっても、なんとかなる。その域まで行けば、人は無敵なんです。私が読者に伝えたいメッセージって、これですよ。
自らを、「幸福主義ではなく、快楽主義」と語る中村うさぎさん。
その一瞬の快楽を求めてどの道を進んでいくのか。それは本人にとっても未知数であり、読者としては目が離せないところだ。しかし、なんとかなるという自信を身につけた無敵の女王様の道には、いつも太陽が輝いているに違いない。歩き続ける限り、明けない夜はないのだから。

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