楽天ブックス 著者インタビュー

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4年に1度のサッカーの祭典、W杯のキックオフが6月9日に迫る中、切れ味の鋭いコメントに定評のあるスポーツジャーナリスト、二宮清純さんが『最強のワールドカップ観戦ノート』をプロデュース。数々のトップアスリートたちを追い続けてきた、二宮人脈ならではの奥寺康彦氏、元日本代表・相馬直樹氏との対談をはじめ、サッカー用語の解説やドイツ旅行での注意点、さらに観戦ブログの書き方までを指南した盛りだくさんの内容です。熱い闘いを目前に、ドイツ大会の見どころ、さらにスポーツジャーナリストの仕事の極意までを一気に語って頂きました。

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プロフィール

二宮清純さん (にのみや・せいじゅん)
1960年愛媛県生まれ。スポーツ紙や流通紙の記者を経て、フリーのスポーツジャーナリストとして独立。サッカーW杯、オリンピック、メジャーリーグ、ボクシング世界戦など国内外で取材活動を展開し、テレビ、雑誌、ラジオのスポーツニュースや報道番組のコメンテーター、講演会などで幅広く活動中。また「地域」と「住民」を主体としたスポーツクラブ作りにも取り組んでいる。日本サッカーミュージアムアドバイザーボード委員。著書は『スポーツ名勝負物語』(講談社現代新書)、『ワールドカップを読む』(KKベストセラーズ)、『勝者の思考法』、『「超」一流の自己再生術』、『勝者の組織改革』(以上、PHP新書)、『プロ野球戦略会議』(廣済堂出版)など多数。現在、株式会社スポーツコミュニケーションズ代表取締役。
オフィシャルページ:http://www.ninomiyasports.com

インタビュー

−−いよいよワールドカップ開幕間近となりました。早速ですが、1990年のイタリア大会から取材されている二宮さんから見て、台風の目になりそうなチームはどこですか?
二宮さんやはり開催国のドイツとヨーロッパの列強は侮れないですね。ワールドカップは地の利がものを言いますから、ヨーロッパが本命、ブラジルも候補。あとはヨーロッパの植民地だった国が多いアフリカ勢は新興勢力であり、台風の目になる要素が強いと思います。
−−アジア勢は苦戦を強いられるということですか?
二宮さんこれからのコンディション作りが大きく影響するので、まだ何とも言えません。ただ、日本にとってはホストカントリーを務め、決勝トーナメントへの出場を果たした前大会より、今回のほうがはるかに難しい戦いになるでしょう。逆に今回ベスト16入りを果たすことができたら、前回以上の価値があるはずです。
−−5月に日本代表の発表を控えていますが、日本チームに求められる人材とは?
二宮さん問題はFWだと思います。2002年は、鈴木隆行が唯一FWで得点を挙げた選手でしたから。フォーメーションや誰を使うかということもありますが、上位進出を狙うためには、やはりFWの決定力を向上させて点を取らないと難しい。アジア予選の北朝鮮戦でゴールを決めた大黒将志は、相手チームに手の内を知られていなかったから良かったのですが、あの時の彼のように、まっさらな選手、あまり知られていない選手がFWとして活躍することだってあるでしょう。
−−ジーコ監督の采配についてはいかがでしょうか?
二宮さんジーコは土壇場で勝負強いところがあるので、そうした意味では期待しています。トルシエとジーコの違いがあるとすれば、いわば「日本への理解力」のようなものだと僕は思うんですよ。ジーコはJリーグができる前に来日し、文字どおり日本のサッカーの発展に尽くした。日本に来てもう15年になりますが、その経験が生きていると思います。
−−日本代表に欠けているFWの決定力を向上させるために、必要なこととは?
二宮さんFWが育たないのは、日本の教育が深く関係していると思っているんですよ。日本の教育では、誰かひとりが抜きん出ることを嫌いますが、FWは突出できなければダメなんです。言われたことに「はい、わかりました」と答える優等生ではなく、「ふざけんじゃない」と言うぐらいの人間でないと、FWとして活躍できない。そうした異分子を、教育の段階で認める度量がどれだけ指導者側にあるか、それがFWを育てる上で非常に大切だと思いますね。
−−勝敗以外の部分で、今回のワールドカップに何を期待しますか?
二宮さん4年に1度のワールドカップは、たとえていうなら、各国がオートクチュールを競うファッションショーのようなもの。「なるほど、こんなオートクチュールがあるんだな」「これは新しい」といったものを、日本にも提案してもらいたいですね。勝つことも大事ですが、それ以上に、「日本のサッカーはこれだ」というものを、ぜひドイツに残してきて欲しい。逆に言うならば、目の肥えたヨーロッパのファンに認められるということは、上位進出の可能性も高くなるということです。面白いものを観たいという思いは万国共通のもの。観客にも「勝たせたい」と思わせるようなサッカーをすることです。
−−サッカーファンにとっては、Jリーグができたことで、サポーターという言葉が定着したせいか、応援のしかたも変わってきた気がします。
二宮さん確かにそうですね。ただ、ファンからサポーターにはなりましたが、その段階で止まってしまっている今は、ちょうどおどり場のような時期だと思います。これまでの日本のスポーツファンは、たとえば巨人ファンが心変わりして阪神を応援してもよかった。一回性の関係が中心でした。一方で、サポーターというのは地域密着型、つまり、自分の生まれた場所、住んでいる地域に根付いた、さまざまなスポーツのクラブを支持し続けることなので、基本的に支持するクラブが変わってはいけないんです。日本はJリーグをつくるにあたり、ドイツをモデルにしています。W杯ではそうした点も見てきてもらいたいですね。
−−二宮さんは常々「地域に根ざしたクラブを増やすことが、日本のスポーツの発展につながる」と述べられていますが、ヨーロッパのクラブ組織とは、どのようなものですか?
二宮さんヨーロッパのクラブメンバーシステムというのは、成り立ちは種々雑多ですが、受益者負担の考えを基につくられています。つまりクラブのメンバー全員が、クラブの活動を支える代わりにスポーツ施設を使ったり、選手と同じユニホームを着てスポーツを楽しんだりできるのです。しかもジャンルを問わず、そうしたクラブにはサッカー、ラグビー、水泳、格闘技といったあらゆるスポーツが含まれているので、メンバーは好みに合わせてさまざまなスポーツを楽しむことができます。自分たちがクラブを支えることで、いい試合を観ることもできるし、それぞれのグレードに応じたチームでプレーすることで健康にもなる。ひいてはそれが医療費の削減にもつながる。コミュニティ全体が活性化されるのはもちろん、経済的な波及効果にもつながっていく。日本からドイツに応援に出かけるサポーターの方たちは、そうした土壌を肌で感じることができるのではないでしょうか
−−スポーツをやる人、見る人に分けるのではなく、クラブを通して誰もが気軽にスポーツを楽しむことができれば、日々の生活も楽しくなりそうですね
二宮さんそもそもスポーツの語源は余暇だったり、楽しむということだったりするように、スポーツの本来の意味はまず「楽しむ」ことなんです。それが日本ではなぜか「体育」と訳されたために、「楽しむ」部分が欠けてしまったんですね。日本人は生活を楽しむ、というのがどうも苦手ですね。格差社会は良くないですが、僕はライフスタイルには差異があってもいいと思います。汗水たらして働いて、家を買うのが目的の人もいれば、別に多くの収入を望まない、お金ができたら海外をふらふらしたい、という人もいるでしょう。スポーツにしても、人それぞれの好みや個性を生かした関わり方、楽しみ方をすればいいと思いますよ。
−−サッカーにかぎらず、広い守備範囲であらゆるスポーツを取材されていますが、やはりスポーツはやるより、見るほうが好きですか?
二宮さん学生時代に野球やラグビーをやっていましたが、小児ゼンソクだったため、プレーヤーとしてはあまりいい思い出がありません(笑)。だからというわけではありませんが、やるのは好きですが、「ああしろ、こうしろ」と言われるのは苦手ですね。作戦や戦術を考えるのは好きですが、しんどいのはどうも……(笑)。
−−取材を通して、しんどい思いをしている選手の姿に触れる機会は多いのでは?
二宮さんしんどくてもやり続けなければならない、プロの選手たちの姿を見ていると本当に頭が下がります。でも、ひとつ言えるのは、トップクラスの選手は、何をするにもしんどいとは思っていないのです。厳しいトレーニングをしても、それによって技術が向上したり、タイムが伸びたりする。先行投資だと思ってルーティーンを前向きに考えているんですね。僕のように「しんどいのが嫌だ」というのは、そもそもプレーヤーには向いていませんね。  結局、「楽しい」と思えることが仕事を選ぶ第一歩だと思います。異性にしても、「なんだ、もう3時間も一緒にいるのか」と苦痛に感じたら、本当に好きな相手ではないから、早く別れたほうがいい(笑)。役に立たないアドバイスかもしれませんが(笑)。
−−いわゆる、「天才」といわれるトップアスリートの方たちを見て、感じることは?
二宮さん天才と呼ばれる人には、かならず欠けているところがあります。僕はそれを「欠落力」と呼んでいるのですが、欠落している代わりに、ものすごい集中力があるんです。たとえば、長嶋茂雄さんとふぐ刺しを食べた時、周りにかまわず、全部すくってしまったんです。それなのに、「みなさん、食べましたか?」と聞いてくる(笑)。アインシュタインも研究に没頭している時は、靴も履かずに外を歩いていたといいます。普通の人間には理解できない欠落力とは、実はとてつもない集中力の裏返しです。これこそ天才の条件だと思います。
−−スポーツジャーナリストの仕事の面白さは、どこにあると感じていますか?
二宮さんスポーツジャーナリストは、いってみれば「刑事」みたいな仕事だと思います。試合中、選手たちは常に、狙いがあって動いているものです。でも彼らは自分の作戦を決して明かそうとはしない。刑事がアリバイを崩すように、過去のデータや試合を通して、そうした作戦の鍵を解き明かす作業が好きですね。推理小説の中の私立探偵のような仕事です。シャーロックホームズやエルキュール・ポワロほど有能ではないけれど……。僕にとっては、それがスポーツライティングの醍醐味になっています。
−−取材の際、心がけていることは何でしょう?
二宮さん相手に話してもらうのが仕事なので、その人がどんな場面だと話しやすいかを常に考えていますね。たとえば、野球のバッターはバットを持っているときに、頭のセンサーが一番働いているはずなので、「どうしてあのボールを打ったのか」と質問するにしても、バットを持ってもらうことで、その時の擬似的状況をつくることができるんです。寿司屋の職人さんならカウンターでスシでも握ってもらいながら、話を聞くのが一番でしょう。絶対にいい話が聞けるはずです。どんな仕事に就いている人にも、「頭を働かせている時のフォーム」があるはずです。であれば、その状況をつくるのが僕の仕事になりますね。そして何よりもわかりやすく伝えること。難しいことを難しく説明するのは誰にでもできる。だけど、その逆はなかなか難しいものです。
−−『最強のワールドカップ観戦ノート』は、まさに二宮さんのそうしたモットーが生かされた、ビギナーにもわかりやすい構成ですね
二宮さん僕自身が「こんな本があれば便利だな」と思えるようなものを作りたかったんです。スケジュールや出場国、ジーコ・ジャパンの軌跡にサッカー用語や公式ボールの秘密といった、サッカー全般の知識に、ドイツの旅のガイド、さらに深夜の観戦の間にできるエクササイズまで、少ない労力で最大の効果が得られる本になったと思っています。この観戦ノートを有効に活用してもらい、W杯期間中を有意義に過ごしてもらえれば、作り手としてこれ以上うれしいことはないですね。

取材に伺った仕事場の一室には、壁一面にサッカー、野球、オリンピックと壁中が過去の試合を収めたビデオやDVDがズラリ。「ひとつのジャンルにとらわれるのではなく、いろいろなスポーツを観ることで、それを栄養にして物事の本質を見極めたい」と語る二宮さん。日本のスポーツジャーナリズムを確立した影には、人間への並々ならぬ好奇心、さらにスポーツを「かけがえのない文化」として捉える姿勢があるのだと実感。その深い洞察力に基づいた、W杯での臨場感あふれる解説が待ち遠しいです!
【インタビュー 宇田夏苗】

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