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西加奈子さん「家がすげえ汚い女」にあこがれ「こうふく」2作を連続刊行

西加奈子さん
 大阪弁を生かした心地よい文体で家族の愛を描いた『さくら』(小学館)がベストセラーとなり、『通天閣』(筑摩書房)で07年度織田作之助賞を受賞した西加奈子さん。2月から、『こうふく みどりの』『こうふく あかの』(小学館)の2作を続けて刊行しています。西さんに新作への思いと、創作の裏側を語ってもらいました。


西加奈子さんの本


『こうふく みどりの』
『こうふく みどりの』
1,365円(税込)

『こうふく あかの』
『こうふく あかの』
1,260円(税込)

『きいろいゾウ』
『きいろいゾウ』
690円(税込)

『さくら』
『さくら』
630円(税込)

『ミッキーかしまし』
『ミッキーかしまし』
1,365円(税込)

『あおい』
『あおい』
480円(税込)

『しずく』
『しずく』
1,365円(税込)

『通天閣』
『通天閣』
1,365円(税込)


アントニオ猪木関連


『【本】』
「アントニオ猪木の本」

『【DVD】』
「アントニオ猪木のDVD」


プロフィール


西加奈子さん (にし かなこ)
1977年、テヘラン生まれ。関西大学法学部卒業。2004年『あおい』(小学館)でデビュー、2005年『さくら』(小学館)がベストセラーになる。2007年『通天閣』(筑摩書房)で織田作之助賞を受賞。ほかに『きいろいゾウ』(小学館)など。

インタビュー


西加奈子さん−−2作ともプロレスラーのアントニオ猪木さんが軸になっていますね。


西さん 猪木さんがあこがれの人なんです。初めて猪木さんを見たときは、もう全盛期を過ぎていましたが、上京後にDVDを買いそろえ、全盛期の姿を見て、衝撃を受けました。本当に「がーん」と脳みそに衝撃を受けて勇気をもらったんです。周囲の男の子たちもDVDを見て泣くんですよ。だからモチーフとして、その場にはいない「英雄」として、すごくいいと思いました。今回の作品の「道」というテーマも、猪木さんからいただいたものです。


−−2作連続刊行ですね。

西さん 最初「みどり」を書いていたのですが、その中で、主人公が「タイガーマスク」の正体を「佐山!」と言うところがあり、そこを書いたときに「これは!」と、どんどん猪木さんのことを入れていったんです。書いているうちに、もう一つの話が生まれてきて、それが「あか」になりました。自意識過剰で、うまくいっていない東京の男性が、猪木さんを見て元気付けられる話。そこで「あれ? 猪木さんでつながってるな」と。いつも本屋さんで思っていたのですが、例えば「富士山を見るカップルの話」とか「富士山の上を飛んでいる外国人の話」とか、いろいろあって時代も違うけど、でも富士山でつながってますよね。すべての物語は、つながっている。上下巻でも何でもないんだけど、でも、つながっている。これを自分の本でもやりたいと思いました。


−−2作とも、さまざまな登場人物の視点で描かれています。

西さん ウォン・カーウァイ監督の映画「欲望の翼」で、最後に何の関係もないのにトニー・レオンが急に出てきたりとか、ああいうのが好きなんです。「私たちがこうしているころ、一方、世界の果てでは」と、急に場面が変わる。この書き方にはまってて。それをもっと小さくして、それぞれの思いや情景を全部入れたかったんです。


西加奈子さん−−「強い女性」がよく登場しますね。

西さん あこがれの女性像の一つが「家がすげえ汚い女」なんです。私は、几帳面で家事もするし、家もきれい(笑)。自分がどう見られているか気にしてしまう。でも、それが男の人にとって重いと思うんです。「あたし、これだけやってます!」と。私が書く小説の女の人って、みんな部屋が汚くて、風呂も入らない。でも「ええやんか」って。その代わり、男の人に捨てられても文句も言わない。そういう女の人にあこがれますね。


−−「こうふく」では、男女の違いを強く描かれています。

西さん 男らしい男の人が好きなんですが、見た目と男らしさは必ずしも一致しない。男らしさとか女らしさって、何だろうって。男の人の方が、体のつくりは分かりやすくて「やりたい」って思ったら、すぐ分かるじゃないですか。でも女の人って、すましていられる。そういう意味で女の人の方がずるい。よく「女は子宮で考える」って言うけど、これ全然差別だとは思わなくて、確かにそうなんですよね。考えているときに子宮の辺りに聞いている感じがして、「すごく動物的やなあ」って思うんですよ。


−−どんな登場人物へも温かい視線を注がれていますね。

西さん 「普通」に描きたいんです。別に「差別をしたくない」とかじゃなくて、逆に差別を「普通」にしたいんです。よく「あの人は気持ち悪くない!」とか言うじゃないですか。でも、キモいものはキモい。誰でも同じ調子で書きたいんです。「そんな人もおるがな。でもキモいよね」と。ただ素直に書きたいんです。


西加奈子さん−−大阪を描く理由は。

西さん 私自身、しゃべる言葉が大阪弁なので、一番自然に書けるのが大阪なのかなって。「あか」は全部「東京弁」ですが、結構ぎくしゃくした感じに書いてます。「今、君はそう言ったが」とか、普通、言わないじゃないですか。自然に書こうとしても無理なんで、徹底的に、翻訳小説のようにちょっと不自然な「東京弁」にしてみました。逆に「みどり」は、地の文もだらだらと大阪弁で、その差をつけたかった。


−−読者に一言お願いします。

西さん 1冊だけでもいいので読んでください。2冊読むともっと分かるけど、読む順番も問いません。なんなら1章読んで、もう1冊の1章を読んでもらってもいいし。ぐちゃぐちゃになっても、最後はまとまりますから。



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