著者インタビュー 最新号 バックナンバー

自分を磨いて新時代のジャングルを生き抜け!大前研一さんに聞く大前研一さんに聞く『サラリーマン「再起動」マニュアル』

Web2.0時代の到来を迎え、私たちは未曾有のパラダイムシフトに直面しつつあります。ビジネス旧大陸と決別し、膨大な金鉱が眠るビジネス新大陸の住人になるためには、一度立ち止まって再起動する必要がある、と説くのは大前研一さん。新しい時代を生き抜くためのヒントと指針を詰め込んだ著書『サラリーマン「再起動」マニュアル』について、大前さんにお話をうかがいました。


大前研一さんの本



日本が“フリーズ”している今こそ自分を磨くチャンス!
大前研一 サラリーマン「再起動」マニュアル
『サラリーマン「再起動」マニュアル』
1,575円(税込)

「日本がいま、大切にすべき国はロシアである」驚きの大前提言、その真意は?!
大前研一 ロシア・ショック
『ロシア・ショック』
1,575円(税込)

元祖マッキンゼー式問題解決法を、大前研一×齋藤顯一が紐解く!
『実戦!問題解決法』
『実戦!問題解決法』
580円(税込)

誰もが知りたい“大前流発想のメソッド”を、6段階のフローチャートで伝授
大前研一 私はこうして発想する
『私はこうして発想する』
470円(税込)

今なら間に合う!50歳からの人生で花を咲かせる方法!
『50代からの選択〜ビジネスマンは人生の後半にどう備えるべきか〜』
『50代からの選択〜ビジネスマンは人生の後半にどう備えるべきか〜』
500円(税込)

年金崩壊のレクイエムが聞こえた今、自分の金は自分で守れ!
『マネーハザード金言集〜お金と人生の本質〜』
『マネーハザード金言集〜お金と人生の本質〜』
840円(税込)

成功へのプロセスは自らで考えよ!戦略的思考入門のバイブル
大前研一 企業参謀新装版〜戦略的思考とはなにか〜
『企業参謀新装版〜戦略的思考とはなにか〜』
2,100円(税込)

超多忙ながらもバイク、クラリネット演奏など、オフ満喫な大前氏の遊び術
大前研一 遊ぶ奴ほどよくデキる!
『遊ぶ奴ほどよくデキる!』
560円(税込)


プロフィール


大前研一さん (おおまえ けんいち)
1943年生まれ。マサチューセッツ工科大学大学院原子力工学科で博士号を取得。日立製作所原子力開発部技師を経て、72年に経営コンサルティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニー・インク入社。本社ディレクター、日本支社長、アジア太平洋地区会長を歴任し94年に退社。2005年に日本初の遠隔教育による経営大学院「ビジネスブレークスルー(BBT)大学院大学」を設立し、学長に就任。著書に『チャイナ・インパクト』『大前研一 新・資本論』など多数。大前&アソシエーツ http://www.kohmae.com

インタビュー

大前研一さん
−−本書の中で、大前さんは、「古い経済に取って代わった新しい経済とは、いわば“見えない大陸”である」と書かれています。「見える人は新大陸の住人、見えない人は旧大陸の住人」である、とも。この新たに出現した「ビジネス新大陸」でサラリーマンが生き抜くためにはどうしたらいいか、ということが本書の大きなテーマですね。


大前さん マイクロソフトのビル・ゲイツがウィンドウズのバージョン1を世に送り出したのが1985年。これが新世紀の幕開けだったと、僕は見ています。この年を元年とすると、2008年は「AG24年」、すなわち「アフター・ゲイツ(ゲイツ後)」の24年目にあたる。この24年間はまさに激動の時代であり、ビジネスにおける主役も3回変わりました。第1世代はハードウェアの時代で、IBMやアップル、デルなどのハードウェア屋が主役の座についた。ところが90年代になると、ハードウェアでは儲からなくなり、第2世代のOS時代が到来した。マイクロソフトがウィンドウズ系のOSによって猛威をふるい、世界共通のプラットホームを築いたわけです。そして1998年になると、グーグルが登場します。彼らはコンテンツを無料で提供して広告モデルで稼いでいる。第3世代というのは、要するにコンテンツ系なんです。俗にIT時代と言いますが、主役はその中で三回変わっているわけです。
ともあれ、パソコンやインターネットが普及して、経済活動の中心はサイバースペースに移り、カネや情報が国境を越えるボーダーレス経済の時代が到来した。このデジタル時代の新しい経済は、いわば「インビジブル・コンチネント=見えない大陸」です。この大陸が見える人は「新大陸」の住人であり、そうでない人は「旧大陸」の住人なのです。この「ビジネス新大陸」には膨大なポテンシャルがあります。それは、アメリカの西部開拓史と同じように、少しでも早く入って自分の陣地を取った人間が勝つ世界なのです。これからは、「見えている人」が新大陸の大きなパイを切り取って成功していくでしょう。もちろん失敗する可能性もあるが、成功する確率も大変高い。旧大陸にはもう、金鉱があまり残っていませんから。


−−従来の「旧大陸」と比べて、「新大陸」では仕事の環境はどのように変わるのでしょうか。

大前さん たとえば組織の形態も、今後は、マンネリ化しやすいピラミッド型ではなく、変化に素早く対応できるプロジェクト・ベースが主流になるでしょう。従来のような年功序列はなくなり、その人の能力がシビアに問われるようになる。当然、給料にもプロジェクトでの仕事ぶりに対する評価が反映され、同じ会社の同期でも、給料に雲泥の差が生まれる。また、一度成功をおさめても、油断していればすぐに周りに追い抜かれるし、リストラされる可能性もある。企業の間でもM&A(合併・買収)が活発になる。ビジネス新大陸とは、そんな熾烈な競争が繰り広げられる、弱肉強食のジャングルの世界といえます。


−−そんな新大陸でのサバイバル競争を勝ち抜いていくためには、サラリーマンは「再起動」する必要がある、ということですね。

大前さん 常に危険と隣り合わせのジャングルに対応するための、ひとつのカギが「再起動」ということです。今の30代、40代の人は、普通の学校を卒業して会社に勤め、上司の教育によって古い考え方を身に付けてしまった人が多いんですね。自分より10歳も20歳も年上の人の、旧大陸的なパターンに染まってしまっているわけです。しかしそれでは、新しい時代に対応できない。そこを脱するためにも、一度リブート(再起動)しないといけない、ということを、僕は常に言ってきました。その再起動にあたっての心構えや、考えるうえでのヒントを詰め込んだのが、この本です。


大前研一さん−−再起動ということは、一度動きを止めて、またスタートし直す、ということですね。

大前さん 現在の世界の変化に対応できず、ボーリングでいえばガターにはまってるサラリーマンは本当に多い。しかし、ほとんどのサラリーマンは、立ち止まって考えることをせず、そのまま頑張っていれば何とかなるだろう、と考えてしまうわけです。間違った軌道に乗ったままがんばろうとすると、沼地に足がとられてしまい、むしろ深みにはまってしまう。そこで、リブート(再起動)が必要になるわけです。この「リブート」というのは、もともとカウボーイの言葉です。ブーツの中に麦わらが入ったら、いくら頑張っても取り出すことはできない。麦わらを出すには、面倒でも一回紐をとき、靴を脱がなければなりません。今のサラリーマンの多くは、こんなことはやりたがらない。しかし、ビジネス新大陸で、それなりのトラクション(駆動力)をもって進んでいくためには、一度立ち止まって方向を見定め、再起動のためにエンジンをかけなおす必要があるのです。
そして、目に見えない新大陸を見えるようにするためには、「構想力」も必要です。新大陸には建物もなければ、新大陸のことが法律に書いてあるわけでもない。でも、僕が学長を務める「ブレークスルー大学院大学」のイノベーションコースを受講すると、ものの見方が全く変わります。皆でその世界を探求すると、不思議と新しい世界が見えるようになるのです。僕は教育者、と言うよりも21世紀への水先案内人になりたいと思っています。しかし、それは僕だけがやるのではなく、クラスメートやさまざまな媒介者(講師の人々)とのネットワークを拡げることによって契機をつかんでもらいたいと思っています。再起動にあたって、少なくとも新大陸が見えるようになるきっかけを人々に提供できれば、と思っているんです。


−−日本の社会で中核を担う30代〜40代の人口3500万人のうち、“戦闘意欲”を持つサラリーマンの母数はせいぜい15万人程度、と指摘されていますね。今の日本には、覇気のある人材がそんなに乏しいのでしょうか。

大前さん 今の日本のサラリーマンには、やる気がある人は実に少ない。今まで通り、与えられた仕事をしていれば生活はしていける――そんなメンタリティがあるんですね。それに、「学生時代に勉強はもう十分した」と思っている人も多いですよね。だから、社会に出てからまとまって勉強する習慣がない。友だちや家族との付き合い、飲み会、ゴルフに使う時間を100とすると、自分の給料を上げたり、自分の仕事の効率を上げたりするために、一体どれほど努力しているのか。せいぜい、3か4ぐらいのもの(一桁)でしょう。プロ野球を年間100時間観る人はいても、給料を倍にするために年間100時間勉強しているサラリーマンは少ない。「仕事が忙しい」という人も多いけれど、手帳を見せてもらうと、やらなくていいことをたくさんやっている。「忙しい」というのは勉強をしないための口実なんです。具体的な努力をしていない人にかぎって、そういう言い訳をする。与えられた仕事を毎日こなしているだけではジャングルを切り分けて進んでいく新しい知恵とスキルは身に付きません。
よく、「いろいろ努力したけれど、今の環境では難しいです」という人がいるけれど、私はそういう人は一切相手にしません。ファイティングポーズを取ってない人がこの新しいスキルを自然と身につけるなんてことは不可能です。でも、勉強しない人が多いということは、素晴らしいことだともいえる。なにしろ、再起動しようと明確に意識して努力する人間にとって、ダメな奴が多い国ほどチャンスが多い国はない。自分が努力しさえすれば周りにものすごい差をつけられるわけだから、その点では日本はすごく恵まれている。中国やインドじゃ、こうはいきませんよ。何千万もの人々が死に物狂いで勉強していますからね。


大前研一さん−−勉強の仕方ということで言うと、タイムマネージメントの重要性を指摘していらっしゃいますね。一番やらなければならないことを真っ先にやる、つまり時間を「天引き」することが大事だ、と。

大前さん 大切なのは時間を天引きすることと、あとは集中することです。時間をとるということは絶対に重要で、やると決めたら決めたとおりにやらないといけない。会社にしても、「計画を立てるだけで実行しない会社」というのは、ダメ会社ですよね。計画のための議論にばかり時間を費やして、実行のために十分時間を使わない会社や、うまくいかなかったときに敗因の分析をしない会社もダメ。人間もそれと同じなんです。計画を決めて、やると決めたら徹底的にやる。始めることによって、新たに見えてくる景色もある。自己研鑽や自己投資というのは、やってみなければわからない部分があるんです。だから、やりもしないで、批判したりわかったつもりになってはいけない。少なくとも、人間が変わるためには、場所と、付き合う人と、時間配分とを変えないといけない。これからは突出した人間、傑出した人間が世の中を変えていく時代。自分が突出した人間でなかったとしたら、そういう人間を見つけて一緒に仕事をするべきです。それまでの付き合いを維持しながら、自分だけ変わりたいと願っても無理なんです。自分を変えようと思ったら、たとえば会社の中でも、自分が嫌いな人とあえて付き合ってみて、苦手な人間関係を克服するように努力してみるといい。人間、決意だけじゃ絶対に変わらない。時間と場所とネットワークの構成、すなわち「自分の置き場」「立ち位置」そのものを変えていかないと。


−−ビジネス新大陸ではサイバースペースの比重が増しつつあるとはいえ、単にメールやネットを使っていれば新大陸に適応しているというわけではない、と大前さんは指摘していらっしゃいますね。では、新大陸に適応できる人とは、具体的にどのような人なのでしょうか。

大前さん 一言でいえば、「サイバー社会が体の一部に溶け込んでいる人」です。世界中を旅行していると、こういう人は驚くほど多いんですね。外国に行って、「カーネギーメロン大学のランディ・パウシュ教授の『The Last Lecture(最後の授業)』を見たか」と聞くと、たいていの人がYou Tubeで見ている。だから、国籍や宗教が違っても、互いの関心の6、7割は共有できるし、その後の会話もスムーズに運びますよね。日本ではまだまだ旧大陸の住人が多いから、バックグラウンドが少しでも違うと共通言語がほとんどなくなり、会話も成り立たない。大相撲の話とか、テレビや新聞に出ていたニュース程度の話しかできないわけです。しかし、いったん世界に目を転じると、新大陸の「共通人種」が大量に出現しつつある。同じ国の人々よりも、世界中の新大陸の住人との間の方が共通項、共有経験、共通価値観のかぶりが大きい。新大陸で成功を収めるためには、こういう人たちと付き合っていくことが重要です。日本では周りが旧大陸に安住しているから居心地がいいかもしれないが、世界のスピードを考えるとそうはいかないのです。


−−最後の質問です。この本を、読者にどのように活用してもらいたいですか。

大前さん 「もしかしたら、(ビジネス新大陸が)自分にも見えるかもしれない」「もっと違うやり方があるんじゃないか」「今のままの延長では何となく将来が不安だ」と思っている人に読んでもらいたいですね。会社の先輩みたいになるのはいやだ、きっかけさえあれば自分を変えたい、そう思っている人にこの本を読んでほしい。そして、読むのに使った時間の5倍を費やして、この本から何を学んだか、自分の栄養になることは何かを考え、人と議論してみてほしい。この本に自分の人生を変えるだけの価値があるとしたらそれは何か、自分は時間の遣い方をどう変えればいいのか、つきあう人々を変えて新たなネットワークをどのように構築したらいいか、と自問してみる。そういう読み方をしてもらいたいですね。読むだけでなく、読んで考える。読んで行動を変える。読んで時間配分を変える。昨日までとは明らかに異なる生き方を模索する。人生を見つめ直すキッカケ、踏み台、としてもらいたいですね。


−−新時代を読み解く大前さんの視点は非常に明快で、サラリーマン以外の人々にとっても示唆に富む一冊になっていると思います。本日はありがとうございました。









最新号 バックナンバー

このページの先頭へ