楽天ブックス 著者インタビュー

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 『パーミションマーケティング』の翻訳をはじめ、ブランド戦略やマーケティング、ビジネス理論、リーダー育成で刺激的な主張を続ける阪本啓一さん。日本の企業が直面する問題点とは? またその解決策は? 来年のビジネス展望も含めて、新作『リーダーこれだけ心得帖』、来年1月発売の、名著『スローなビジネスに帰れ』の文庫化『スロー・ビジネス宣言!』をベースに、辛口で鋭い等身大の指摘をうかがった

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阪本啓一さん『リーダーこれだけ心得帖』『リーダーこれだけ心得帖』
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祝福を受けた不安 サステナビリティ革命の可能性
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つまりこういうことだ!ブランドの授業
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プロフィール

阪本啓一さん (さかもと・けいいち)
1958年生まれ。経営コンサルタント。Palmtree Inc.CEO。大阪大学人間科学部卒業。旭化成で建材営業に従事したのち、2000年4月に独立、渡米し、ニューヨークで経営コンサルティング会社Palmtree Inc.を設立。ブランド戦略を得意とする。人の育成を通じての経営改善が特徴。企業経営者・幹部向けリーダーシップ研修で講師を務め、私塾「阪本塾」リーダーシップコースも人気。

インタビュー

−−阪本さんは去年「学問所」を開設されましたね。
阪本さんちょうど去年、猿之助のスーパー歌舞伎「新・三国志3」を見ましてね、そのなかに「学問所」がでてくるんですよ。そこでは、諸国の若者が諸葛孔明が残した書物を学んでいる。戦争で学問所は焼けみんな四散していくんですが、その知恵は若者の中に残り、あちこちで学んだことを伝えていくんです。

…時あたかもイラク戦争、ということで、同時代的にメッセージを感じました。自分のやりたいことを考えた時、「次の世代に知恵を継承したい」と。それで、塾生やさまざまな人が集える学問所を開設したんです。 いままでの代官山から引っ越しするため、物件をいろいろ探しましたが、ちょうど車椅子を使っている塾生もいてバリアフリーの良くできている物件を選びました。代官山の事務所は大手建設会社の設計施工で、悪くなかったんですが、ベランダの排水口の角度が悪くて水がたまる。こういうのもCADを使ってモニターの中だけで設計しているからなんですが、結局、現場の力がないんですね。現場力と言いますか、人の力と書いて「人力」、これが今の日本、本当に弱くなってしまっているんですね。
−−現場力や人力を意識されたのはどんなきっかけですか?
阪本さんこれは『スロー・ビジネス宣言!』でも、『リーダーこれだけ心得帖』でも共通した問題意識ですが、原因は経営者と現場の乖離が大きいことです。アメリカに渡った時には、マーケティングを学んできた中でさまざまな憧れがありましたし、経営理論の発祥の地なので期待していたのですが、実際はお粗末な対応しかありませんでした。それは、経営者と現場の間にパイプがなくて、現場を支えている人たちに仕事への愛・商品への愛・顧客の読み取りなどがないからなんです。

特にアメリカの場合は、現場は時給が非常に低い移民などの人たちばかり、一方で一握りの経営者が500倍くらいの収入を得ている。それって違うんじゃないかと思ったんですよ。2000年頃に懸念していたことですが、日本もアメリカを追随していますから、2004年の今、それは的中してしまいました。経営と理論がアンバランスで、プロフェッショナルな仕事がなくなってしまったんです。
−−プロフェッショナルな仕事がなくなってしまったというと…?
阪本さん例えば、医療ミスや、本来ありえない専門職のミス、電車の運行などでもミスが起きていますね。全体的なことで考えると、仕事力そのものが落ちている。ITが導入されていろいろなことが簡略化しましたが、マニュアル化され、インプットとアウトプットが一直線じゃないと答えが出ないような対応ばかりが横行しているんです。

ミスじゃなくてもこういう例があります。新幹線のチケットを買おうとして、一番後ろの座席を頼んだんです。すると「A席になりますがよろしいですか?」と言う。「A席とは?」と聞き返すと、「窓際ですが、富士山側ではないんです」。気を使ってくれているのかと思ったんですが、乗車すると富士山側のD席は誰も座らない。帰途のみどりの窓口でも「A席になります。南側ですがよろしいですか。富士山側ではないんですが」と同じ説明。ところがやはりD席は空席のまま。なんのことはない、空席情報で最初にでてくるのがA席で、そこは富士山側ではないからクレームがでないようマニュアル化した事前説明をしているだけなんですね。A以外の席を確認するってことをしないんです。

こういう具合に、世の中全部が「選易」、たやすい道を選ぶ。目の前に問題があった時に、簡単な解決を選ぶ風潮になっているんです。学校教育からサービス業まで含めて、マニュアルを作って、ものごとを考えないようにしてきた、その結果がこれなんですよ。
−−さまざまなところで問題になっているんですね。
阪本さんある県で講演した時のことです。近隣の市町村の役場の人が、「費用をかけずにPRする方法をご存知ないですか」と質問してきました。これもイージーな方向に流れていますね。役所の仕事は、民間が出来ないことをするためにあると思うのですが、お金をかけずに商売繁盛とか、大手広告をうつとか、今の世の中の流れをそのままたどっているだけなんです。

書店で売れている本も、一方はセオリー寄りに学者が書いた理論ガチガチの現場から遠いもの、もう片方は「**すれば簡単、ラクラク大儲け」といったお金にまつわる拝金主義的な本ばかりです。お金儲けだけをビジネスの目的とし、お金さえあればハッピーが簡単に手に入る、という誤解を生みかねないイージーなスタンス。こんな両極端では、ビジネスも栄養失調になってしまいます。

ぼくが企業で大事だと思っているのは、 1、躾け
2、挨拶
3、言葉
の3つです。

1つ目の躾けは、核家族化の問題です。この間、東証一部上場企業のソフトウェア開発者が来たのですが、玄関の靴が入り舟のままだったんですね。入り船というのは、脱いだ靴先が室内を向いている、ぬぎっぱなしということです。さりげなく教えたのですが、そもそも「入り船」の意味がわからない。ああ、そういうことなんだ、わからないんだっていうことがわかりました。祖父母がいれば教えられて知っていることも、核家族だと伝わらないんです。人の上に立つ年齢になった人も躾けられていないので、問題が深刻になっている。福井県は、日本一持ち家率が高いのですが、もうひとつ日本一があって、それは県立高校から有名大学への進学率なんです。持ち家で祖父母と同居しているため、躾けが行き届いていて、それが学力につながっていると分析しています。躾けと学力の関係は、絶対、比例するんですよ。

躾けられていない人を、企業は給料を払って躾けないといけない。しかも躾ける側の人も躾けられていないので、躾けそのものがわからない、そんな悪循環に陥っています。 2番目の挨拶ですが、躾けと挨拶はつながっています。こういった仕事をしていますから、いろんな会社に伺いますが、入った途端にその会社の業績がいいか悪いかわかります。良いところは挨拶の声が大きいし、しっかりしている。悪いところは誰が来ても、見て見ぬ振りをする。空気が止まっているんです。

3番目の「言葉=読み書く力」も大切です。思考は言葉でしますから、言葉そのものが頭の中にないと、考えをまとめられないし、人にも伝えられない。電車の中で本を読んでいる人が本当に少ない。寝ているか、ケータイメールをやっているか、なんですよ。あるいは、スーツを着た大人がマンガを読んでいる。マンガがダメだとは言わないけれども「字のあるものを読めよ」と思いますね。ゴリゴリと堅いものを読んだことがないから、堅いものを食べないと歯が弱るように、本当に基本的な学力が落ちている。今の日本で漱石や鴎外を何人が読んでいるだろうか、教科書からも削られていますからね。

もうひとつ事例をあげましょう。今年、張り切ってソフトウェア会社に入社した若者がいるんです。ところが8月頃会うと、五月病ならぬ8月病だと言ってぐったりしている。原因を聞くと、上司の問題なんです。上司は体育界系でコミュニケーションがヘタ。仕事の指示を求めても的確な答えができない。そのうえ「そんなものは見て覚えろ、オレはそうしてきた」とキレる。上司の間でのコミュニケーションもないため、目的も指示もバラバラ。コミュニケーションレスによるストレスだったんです。

コミュニケーションは大事ですね、と言うと10人が10人「はい」と答えますが、それでは円滑にするために何をしていますか、と問うと飲みに行くとかそんなことばかり。リーダーがリーダーとして、できていないんです。そういう困った状況が時代認識としてあるんです。
−−どうしたらいいんでしょうか。
阪本さんそこでぼくは企業を支える「三つの志」について書いています。

1、人の志  リーダーシップ
2、商品の志 ブランド
3、会社の志 スローなビジネス

リーダーシップとブランドは一つのコインの表と裏です。その事例は『リーダーこれだけ心得帖』の中にも書きましたが、湘南に本社がある有名な店舗の支店に行った時のことです。Tシャツと短パンで、いかにも湘南スタイルの男性が入ってきて、店員と談笑している。従業員全員の意識が彼に集中している様子から、これはオーナーだなと判断したんですが、店員は彼に集中するあまり、客の方に意識が向かないんです。次に彼は厨房に入って皿洗いを始めた。が、帽子も制服もきちんと着用しない。オープンキッチンですから、客から全部見えているんです。これはちょっと病気入ったかなぁ、儲かっているから突然死はないだろうけれども、じわじわ弱るな、というのが私の見立てです。ブランドというのは、現場でのお客さんの顧客体験が積み重ねられて、評判とサービスが一体となって出来上がっていくものです。オーナーならば、リーダーとして、率先して厨房の規律を守り、従業員の意識を客に向けさせないと。それがリーダーでしょう。そういった経営者や従業員の姿を含めて、客はブランドとして評価していく。そういう意味でリーダーシップとブランド力というのは表裏一体のものなんですね。そういったものを意識的に作っていかないといけない局面にきているんです。

 もうひとつ、「会社の志=スローなビジネス」というのは、2001年に書いた『スローなビジネスに帰れ』という本で掲げた言葉ですが、文庫化するにあたって『スロー・ビジネス宣言!』と改題し、第一章を書き換え、第二章以降の処方箋も時代にあわせてアップデートしました。拝金主義で儲かればなんでもOKといった企業行動は、市場から問題視されています。もっと企業としての基本に戻ろうよということです。
−−より阪本さんの原点に近い発想を追加されたんですね。
阪本さん私の、というよりも「商いの原点」です。「商いは笑いなり」と言いますが、一つの商品を前にして商人(あきんど)とお客さんの二つの笑顔がある、それが商売の原点でしょう。

最近は、個人がブログや携帯で世界に発信する方法を持っていますから、彼らをオーディエンスとするならば、企業行動の善し悪しは逃げも隠れもできません。すぐ伝わりますし、市場からレッドカードを出される。企業も、社会で生かされている、ビジネスをさせていただいている、という立場で、本業を全うすることで、世界から信頼を得ていかないといけません。

私が育ってきた時代背景は、高度成長時代・昭和40年代の兵庫県尼崎です。阪神工業地帯ですよ。当時は企業がたくさん同じもの作ることで安く売る「規模の経済」です。大きいことは良いことだという盛り上がりがあり、ウルトラマンがヒーローの時代でした。でも今のヒーローは等身大、ウルトラサイズから人間サイズに変わってきた。使って終わり、費えて消える、消費というライフスタイルではなくなってきています。消費者から一生活者としてライフスタイルを大切にする、価値が大切にされる。そんな時代になってきている。それで、大量消費・大量生産の時代を「物量経済」と呼び、これからの時代を「価値経済=価値が重視される経済構造」と読み解いているんです。人間サイズの商品で、わくわくドキドキするような感動や、期待感が話題になる。そんな価値を軸とした商品を「五感商品」と呼んでいます。消費者から生活者へ、というのは『CSR企業価値をどう高めるか』の中「真の生活者満足を実現するスローなビジネス」で書いたテーマです。人の心に訴えかけるような衣食住ですね。そういう時代ですから、企業行動も大きく変わるべきだろうし、かわらないといけないんです。
−−しかし、企業行動を変えるには、トップダウンだけではむずかしそうですね。
阪本さんそうですね。「天・地・人」というのがありますが、そのバランスが良くないとダメです。いま、潮の流れはとんでもなく早いので、それをちゃんと読み取らないといけません。トップダウンではなくて、現場の人の声が経営に反映されなければできないことです。でも、そのための仕組みづくりができていない。システム的にも脳梗塞状態なんですよ。仕組み作りに大切な、人の育成にはリーダーが重要です。リーダーには読み取る力も必要だし、人を育てる力、言葉にする力が求められます。

日本では、「彼はリーダー向きだ」などと、属人的な、持って生まれた遺伝子的な文脈で語られることが多いのですが、私はそうじゃないと思っています。リーダーは学んでなるもの、リーダーとして生まれるのではなく、リーダーになるんです。『リーダーこれだけ心得帖』を読めば、向き不向きは関係ないということがわかると思いますよ。では、リーダーシップって何かというと「行動」なんです。能書きじゃなくて行動することなんですよ。
−−これは、ビジネスだけでなく、人生においても大事なことですね。
阪本さんまさにそうです。
−−来年の日本経済についてはどうでしょうか。
阪本さん悪いことばかり言ってきましたけれども、一方で、実体経済とサイバーワールドの二つが入り組んでいる状態はおもしろいですね。サイバーワールドが熟してきたことのメリットは、どんな人でも「Power to the People」という具合に、発信や表現ができることです。ブログなんかで人とつながり、それぞれの友達の輪が広がってリンクしあっている。

ソーシャルネットワークのGREEもそうですが、いろいろな動きやコミュニティーができ始めているでしょう。そのなかで集まって企画をしたり勉強会をしたり、本を出したりしている。30代前半の世代がそういうことを積極的にやっているんですね。これは、サイバーワールドができる前の、私たちの頃にはなかったことです。大企業や投資家しか経済を動かせなかったのが、新勢力・サイバーキッズたちが力を持ち始めている。今年はそういう動きがますます成熟していくでしょう。ぼくの塾生の中でも今年本を出したのが二人いますが、来年はもっとたくさん出て来ると思います。そういう流れの中から、新しい主張やビジネスがでてくると思います。いままでのビジネスの範囲を超えたような動きに期待したいと思いますね。
−−今日はありがとうございました。

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