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「本当の恋愛をして傷つかないと何も変わらない」桜井亜美『幸せな恋のはじめかた』を語る

若い女性の感情をみずみずしい筆致で描く桜井亜美さん。新刊『幸せな恋のはじめかた』(角川書店)は、妻子ある年上の男性と、恋愛に傷ついた年下の男性との間で揺れ動く、28歳の女性の物語です。帯には女優の上野樹里さんから「不安な心の揺れが、リアルで美しく、優しい気持ちになれる作品」と賛辞も送られています。桜井さんにお話をうかがいました。


桜井亜美さんの本



「ぼくを、蘇生してください―」上司と泥沼不倫中の主人公の前に現れた年下の男。
幸せな恋のはじめかた 梅井亜美
『幸せな恋のはじめかた』
1,365円(税込)

結婚3年目の泉水。夫の剣心、年下のパティシエ、終わらない恋愛の相手に選んだのは?
『Good luck mariage』
『Good luck mariage』
520円(税込)

異なる背景を持つ4人の女性は、謎に満ちた美しい男・アギトと出会ったことで・・・。
『Frozen ecstasy shake』
『Frozen ecstasy shake』
500円(税込)

1人対38人、徹底的なイジメの中で、女子高生・凛音はひとりで戦いはじめる
『空になりたい』
『空になりたい』
1,365円(税込)

同棲し結婚を約束した中学生同士のキョウとメイ。高校進学したキョウが突然姿を消し・・・
『Planetarium』
『Planetarium』
520円(税込)

市川隼人、上野樹里主演で映画化。飛行機事故にあった親友あおいが残した自主映画。そこに描かれていたものは?
『虹の女神』
『虹の女神』
480円(税込)

ジュリを唯一、癒してくれた恋人・カゼミチが失踪。突きつけられた残酷な事実とは
『Made in heaven(Juri)』
『Made in heaven(Juri)』
480円(税込)

15歳の時大事故に遭ったカゼミチは、恋人・ジュリにもいえない秘密を持っていた・・・
『Made in heaven(Kazemichi)』
『Made in heaven(Kazemichi)』
480円(税込)

ネット掲示板「メビウス・ゼロ」に告示された集団自殺旅行『フェアウェル・ツアー』。4人の男女が行き着いた場所は?
『チェルシー』
『チェルシー』
420円(税込)


プロフィール


桜井亜美さん (さくらい・あみ)
東京都生まれ。1996年『イノセント ワールド』(幻冬舎)でデビュー。現代女性を鋭く描いた恋愛小説などで支持を得る。著書に、2006年に映画化され話題になった『虹の女神』(幻冬舎)をはじめ『R.I.P.』(幻冬舎)『PLANETARIUM』(幻冬舎)『ツギハギ姫と波乗り王子』(幻冬舎)『GOOD LUCK Mariage』(幻冬舎)『空になりたい WANT TO BE THE SKY』(講談社)など多数。

インタビュー


桜井亜美さん−−物語は主人公・鴇羽麻揶(ときわ・まや)の日記という形で進みます。

桜井さん 私も公式サイトでときどき日記をつけるのですが、今ブログとか、自分だけでなく他人に見せる日記ってありますよね。べつに日記なんて他人に見せなくて自分だけで書いていればいいのですが、やはり人が見るかもしれないと思うと多少、主観だけでなく客観性を持てると思うんですよね。そのくらいのスタンスで麻揶を描きたいと思いました。


−−性描写が特徴的です。

桜井さん 男性目線の類型的な描写は好きではありません。けれど女性が妻子ある男性を好きになるということは、その過程にはやはり丸ごと愛しあう関係があるわけで。それは当然ですよね。自分だけの感覚、相手だけの感覚、これを共有しあうから別れられなくなってしまう。私はそういう描写から逃げたくないんです。それらを書かずに、いきなり別れられなくなったと書いてしまうのは嘘臭い気がしてしまいます。愛はエロスとアガペーでひとつだから、セックスのない純愛はありえない。本当に好きになると、相手のためも自分のためもなくすべてを投げ出してしまう。気が付いたら投げ出していたというのが純愛だと思います。


−−麻揶は妻子ある年上の男性・雨月龍来(うづき・りゅうき)との「不倫」に悩みます。

桜井さん 「不倫」という言い方、私は嫌いです。「不倫」というのは「モラルに反する」という意味ですが、でも恋愛に関して言えば、モラルは心の中にしかないと思っています。つまり、彼の心の中のモラルは妻に対してだけであり、社会に対しては誰もそれを非難はできない。よく日本では不倫を非難しますが、べつにそれはその人自身とその人の家庭の問題であって、第三者が云々すべきことではないと思います。そこをうまく解決できるほど、その人の度量が広く、愛が深く、誰1人不幸にしないなら、生き方の問題ですよね。まぁ、でも、たいてい誰かを不幸にしてしまうほど、人間って狭いものだから問題が起こるのですが。


桜井亜美さん−−雨月は人間としても男性としても魅力的ですね。

桜井さん 実はこの作品で一番描きたかったのは雨月なんです。ものすごく魅力があってセクシーで、そして人間的にも深く、社会的にも認められている。ある種、理想です。そういう人間は往々にして愛が大きいんですよ。それを一人の人に振り向ければすごく深いものになるし、だけどクリエイトのための刺激とか新しい何かを得るためにとか、恋愛をしてしまうというのはよくあります。打算ではなく、本当に二人の人を愛するタイプ。で、こういう人は女性からすると一番、始末に終えないんです。魅力がある、愛してしまう、自分は必要とされている、だけど独占できない。その魅力はどこからくるのだろうということに興味がありました。責められないんですよね、こういう人って。私も目の前に雨月がいたら、きっと愛さずにはいられないと思います(笑)。


−−麻揶と愛し合うもう一人の男性、年下の君塚斗眞(きみづか・とうま)は純粋で可愛らしいですね。

桜井さん 私の10代がああいうタイプ(笑)。純粋であることを求めて、自分の気持ちも相手の気持ちも常に100パーセントまっさらな恋愛でなければならないとか。子どもだったんでしょうね。相手と性的な関係になったとしても、愛から派生した性欲ならいいけれど、性欲から派生した愛はダメだとか。で、私もそうでしたが、斗眞もそんな自分に突き当たって、失恋して、そのままでは生きられないと思ったから、自分を一回壊して、再編成しなければならないと思ったわけで。だから、その再編成を「蘇生士」である麻揶に頼みに来たわけです。それはゆだねるということです。ゆだねるというのは、ある種の愛なんですよね。そして、ゆだねられることも愛なんです。信じるということですから。期せずして、蘇生士という職業が、自分(麻揶)と相手(斗眞)の愛の再編成につながったのです。


−−蘇生士という職業が物語の一つの鍵になっています。

桜井さん 例えば、美術品の修復師という仕事が現実にありますよね。常々思っていることですが、日本では古い建物を壊して新しくします。もちろん新しいものには新しい魅力があります。でも古いものは一度壊してしまうと、無になってしまいます。私自身はというと、愛着のあるものを大切にしたい性分です。美術品に限らず、人間関係でも何でも、本当に大切なら修復しようよ、と。それを職業にしたのが「蘇生士」です。人間も、人間関係も、愛があれば蘇生できます。愛そのものもそうですよ。一回、完全にダメになって傷ついても、人間はまた蘇って新しい恋愛をするし、できると思うんです。人間も愛も蘇生する。そのために何ができるのか、と。それが、この作品で言いたかったことです。



桜井亜美さん−−現代の女性、特に恋愛で描き出したいものは。

桜井さん その人の本質です。恋愛では、どんなにとりつくろっても、子どもの部分が出ますよね、甘えん坊だったりわがままだったり。それらすべてをさらけ出して、受け止めあうのが恋愛。だから人としての包容力とか、それをさらけだす勇気とかが必要で、人間としても成長するのだと思います。本当の恋愛をして傷つかないと何も変わらない。麻揶は雨月に本心をさらけだし、斗眞も麻揶もお互い本心をさらけだし、だから進んでいけたのだと思います。きれいごとだけでは成長も何もないと思います。どこかでわんわん泣いてどうしようもない自分を出さないと、自分自身にも気づかない。皮肉なポーズだけの大人になってしまう。本当に好きになるとポーズもとれなくなります。ポーズをとれるようなのは、きっとまだ本物の恋愛ではないですね。


−−読者に一言お願いします。

桜井さん もし今、恋愛で傷ついている人がいたら、一度プライドを捨てて、小さくて子どもでどうしようもない自分を全部さらけ出してみてください。きっと次の素敵な恋をする自分に、蘇生できると思います。







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