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楽天ブックス 著者インタビュー

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 「先生になるなんて考えたことがなかった」という作家が、ひょんなことから引き受けたのは、小学3年生の作文の授業。しかも、教室で待ち受けていたのは南米、中南米、アジアまで、その出身国は21、母国語はなんと11種類!という28人の移民の子どもたちだった…。ニューヨークのクイーンズにある公立小学校で、〈クリエイティブ・ライティング〉を教えたサム・スウォープさんが、子どもたちと過ごした3年間を綴った『エンピツは魔法の杖』。セントラルパークでの校外学習など、「書くこと」の楽しさを伝えるユニークな授業のあり方が、ロサンゼルス・タイムズ他、全米で大きな反響を呼んだスウォープさんにこの本、そしてご自身について伺った。

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サム・スウォープさん『エンピツは魔法の杖』『エンピツは魔法の杖』
移民の街、ニューヨーク・クイーンズ。さまざまな人種、さまざまな事情を抱えた子どもたちに“クリエイティブ・ライティング”を教えたスウォープ先生の「心をゆさぶる授業記録」。
1,680円(税込)
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プロフィール

サム・スウォープさんさん (Sam Swope)
ペンシルベニア州ゲティスバーグ生まれ。バーモント州ミドルベリー大学を経てオックスフォード大学で英文学を学ぶ。著書に『The Araboolies of Liberty Street』 『The Krazees』『Gotta Go! Gotta Go!』『Jack and the Seven Deadly Giants』など。ニューヨーク・パブリック・ライブラリーが主催する高校の英語教師のためのセミナーの責任者を務める。ニューヨーク在住。

インタビュー

−−作家であるスウォープさんが小学生に作文を教えることになったきっかけは何でしょう?
スウォープさん「教師と作家の共同作業」という機関から、小学3年生のクラスで、10日間だけ作文の授業を担当しないか、と誘いを受けたのが始まりです。子どもに教えた経験などなかったので、最初は緊張ましたが、初日の授業を終えて、子どもたちが書いた作文を読む時にはとても興奮していました。自宅の椅子にゆったりと腰掛け、お気に入りの音楽を書けて、ワインを用意して…とちょっとしたセレモニーの気分で、作文に目を通し始めたのです。ところが、すぐに頭痛がしてきました。というのも、彼らの文法はめちゃくちゃ、綴りは間違っているし、ストーリーも奇想天外過ぎるあまり、意味不明だったからです(笑)。小学3年生の作る物語は独創的で感動的ですが、それ以来、「一度に多くの作品を読まない」というのが僕の教訓です(笑)。とはいえ、これは後になって気付いたことですが、初日の授業で書いてもらった文章には、子どもたち1人ひとりの本質が1番良く表れているんですよ。
−−10日間の約束であったにも関わらず、3年間教え続けることを決めたのはなぜですか?
スウォープさん子どもたちが書いてきた物語の面白さに惹かれたから、というのはもちろんですが、教室で過ごす時間が本当に楽しかったので、「彼らともっと向き合ってみたい」と思ったからです。さらに、親の祖国や言語、文化や宗教、肌の色も違う28人子どもたちが1つのクラスを作り上げているという事実に好奇心をかきたてられたこともありました。「1人ひとり、こんなにバックグラウンドが違うなんて!」と驚きましたが、ニューヨークのクイーンズという、とりわけ移民の多い地域では、どの学校も同じような状況だったのです。この背景には80年代の移民法の改革で、急激に移民が増えたことがありますが、そうした社会現象の真っただ中にいる子どもたちが、どんな風に世界を見ているのかということに、非常に興味がわきました。
−−子どもたちの親との父母面談のエピソードに、アメリカの移民社会を垣間見ることができて面白いですね。
スウォープさんほとんどの親は貧しくて、母国を離れてアメリカに来てからも、生活していくのに精一杯で勉強する余裕がなく、英語を上手く話すことができません。ところが、彼らの息子や娘たちはあっという間に「アメリカ人」としての自我を確立していきます。父母面談の時は子どもが親の通訳をしてくれたのですが、移民の子どもたちはそうやって、アメリカ社会と両親を結ぶ役割を果たしているわけです。これは彼らにとっては大変なことですが、いい面もあるんですよ。先生が何を言っても、自分が訳さなければ親に知られることはないですからね(笑)。
−−教壇に立つ前のスウォープさんは、作家として壁にぶち当たっていた時期だったとか?
スウォープさん当時の僕は、子どもの本の作家として1冊目を出版し、ある程度の成功を手にしたものの、次の出版にはなかなかつながらずにウンザリしていました。毎日、文章を書き続けているのに1年以上も何も形にならなくて、精神的につらい時期だったのです。だから「学校で教えないか」と誘われた時には、「何か新しいことをやるのはいいかもしれない」と、すぐに引き受けることにしました。
−−子どもたちを教える上で、苦労されたことはありますか?
スウォープさんとにかく授業の準備が大変でした。作文の指導法やクラスの進め方など、たくさんの本を読みあさり、手探りでやりながら気づいたのは、授業の準備がパーティーの準備に似ているということです。準備万端にすればするほど、パーティー当日はより盛り上がるものでしょう。子どもたちの想像力をいかにしてかきたて、授業を盛り上げようかといつも考えていたのですが、その点では、作家として物語を創り上げる作業にも似ています。なかなかアイデアが浮かばずに、学校に向かう地下鉄の中で、「どうしたらいいのか…」と頭を抱える日もありましたからね(笑)。
−−ご自身の子ども時代、「スウォープ先生」のように作文の楽しさを教えてくれた先生はいましたか?
スウォープさん実は僕自身は、学校で物語を書くための指導を受けた経験がないのです。ただ、親御さんの中には、良い先生にめぐり会えないことを危惧する人がいますが、良い先生に出会うことがなくても、そんなに心配することはないと思います。学校名や学位をとやかく言われることもありますが、きちんと教育を受けていなくても、成功している人はたくさんいるし、良い先生にめぐり遭えなければこの世の終わり、ということではありません。学校は子どもの成長を手助けしてくれますが、彼らの人生のすべてを握っているわけではないのです。
−−日本では〈子どもの本離れ〉が叫ばれていますが、本に親しみを持てるようにするために、良い方法はあるのでしょうか?
スウォープさん最近、アメリカでは、ゆとり教育の弊害で学力が落ちたといわれ、詰め込み教育の風潮が生まれるなど、教育に関してあまり楽しいニュースがないのです。こうした状況も、この本が多くの読者に受け入れられた理由かもしれません。文学を教えるのは難しいことですが、たとえば詩を取り上げるにしても、分析するのではなく、子どもたちに自由に感じたことを言ってもらい、そこで出てきた疑問をきっかけに、先生が会話に入って教えればいいのです。詩というのは、一見理解するのが難しそうですが、話のテーマにしてみると、とても面白いものなんですよ。
−−クリスマスにスウォープさんがそれぞれの子どもたちに合った言葉を選び、カードに書きリボンをつけてプレゼントする場面は印象的でした。
スウォープさん〈言葉のプレゼント〉は、シルヴィア・アシュトン=ワーナーさんという教育者の本を読んで考えたことです。ワーナー女史は20世紀初頭に活躍した教育界のパイオニア的な存在で、ニュージーランドの文盲の子どもたちに、毎日一語ずつ、新しい言葉を選び贈ったそうです。僕も子どもたち1人ひとりに、彼らが耳にしたことのない、夢のある言葉を選んで贈りましたが、その言葉がどのように作文に登場するのかを読むのが楽しみでした。といっても、遊び盛りの子どもたちですから、僕がプレゼントした言葉のカードが、教室の床に置き去りにされているのを目撃したこともありますが(笑)。
−−『エンピツは魔法の杖』をどのような人に読んでもらいたいですか?
スウォープさん島や木をテーマにしたり、いろいろなプロジェクトに取り組んだ3年間には、成績表紛失事件があるなど、さまざまな出来事が起こりました。そうした経験をしながら、子どもたちが書き続けた文章は生きる力に溢れています。また、移民という立場で、アメリカで成長していく彼らの姿には、誰もが驚かされると思います。先生方だけでなく、ぜひたくさんの人に読んでもらえるとうれしいですね。
−−今後の活動について、お聞かせ下さい。
スウォープさん教師として過ごした3年間の経験は、自分に自信を持つ上で、大きな影響を与えてくれました。僕自身、作家として壁にぶち当たっていたのに、子どもたちには「思っていることを全部書けばいいのだから」と言い続けていたのですから、考えてみればおかしなものです(笑)。でも、そうして指導しているうちに、実際、書けないときでも書き続ければ、アイデアが出てくるのだとよくわかりました。このことは、作家を目指している人は覚えておくといいですよ。今も幼稚園児から大学生、さらに先生向けの作文のワークショップに携わっていますが、これからは自分自身の創作活動にもじっくり取り組んでいきたいと思っています。
朝1番のインタビューにも関わらず、「今、築地市場に行って来たんですよ」と明るい笑顔で登場したスウォープさん。気さくで温かなお人柄に触れるうちに、子どもたちの世界に自然に飛び込んでいく「スウォープ先生」の姿が浮かんできた。子どもたちが生み出す奇想天外な詩や物語には、表現することの楽しさ、生きる喜びがきらきらと輝いている。教育に携わる人にとって貴重なヒントになるのはもちろん、あらゆる世代に元気を与えてくれる、お勧めの1冊だ。【インタビュー 宇田夏苗】 サム・スウォープ

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