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北海道各地の町を舞台に、人生の光と影がドラマチックに浮かびあがる!第142回直木賞受賞作 佐々木譲さん『廃墟に乞う』

心の傷が原因で休職中の北海道警の刑事、仙道孝司は友人、知人から刑事としての腕を見込まれて、北海道各地で起こった事件に関わっていく。オージーが増えたニセコ、廃れてしまった旧炭鉱町、漁業が盛んな港町、競走馬の生産牧場がある博労沢など、変わりゆく北海道の町で起こる事件に対し、仙道は、警察とは別の視点から真相に近づいていく。北海道の町を通して、“いま”が見えてくる傑作ミステリ。

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佐々木譲さんの本

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プロフィール

佐々木譲さん (ささき・じょう)
1950年北海道生まれ。『エトロフ発緊急電』で日本推理作家協会賞、山本周五郎賞、日本冒険小説協会大賞、『武揚伝』で新田次郎文学賞を受賞。最近では映画化された『笑う警官』、日本冒険小説協会大賞を受賞し「このミス」1位となった『警官の血』などの警察小説が人気を博している。また、歴史・時代小説(『くろふね』)、第二次大戦に材を取った歴史小説(『ベルリン飛行指令』)、経済小説(『疾駆する夢』)など、幅広いジャンルの作品を手がけていることでも知られている。

インタビュー

佐々木譲さん

★心に傷を負った捜査員を主人公に

−−このたびは直木賞受賞おめでとうございます。『笑う警官』などの「道警シリーズ」をはじめとする佐々木さんの警察小説を愛読してきたので、今回、受賞されたことをとても嬉しく思いました。主人公、仙道は北海道警の刑事ですが、捜査の過程でPTSDをわずらい、休職中という設定です。どのような経緯でこの設定にされたのですか?
佐々木さん「オール讀物」にこのシリーズを連載するにあたって、北海道のそれぞれの町で起こる、いかにもその土地柄をあらわすような事件を書こうと思いました。では、すべての事件に関わっていけるのはどんな人物だろうか。道警の機構からいって、そうそう北海道全域で捜査をすることはないだろう。そこで休職中の刑事というアイディアが出てきました。それともう一つ、警察小説なんだけど、プライベート・アイ小説、私立探偵小説の雰囲気も出してみたいと思いました。
 なぜPTSDか、ですが、警察を取材していて感じたことですが、大事件、難事件に遭遇した警察官は、ときには全人格でその事件と関わってしまう。そうしたとき、捜査に関わった警察官もまた傷つくんだ、ということを知ってました。警察官の繊細さ、普通人らしさ表現できる主人公にしたかった。そんなにタフな刑事じゃなくて、たいへんな事件にあえば立ちすくんでしまうような、そういう等身大の刑事を描きたいと思いました。
−−社会人なら誰でも、心が病んだり、休職したりということはありえること。そういう意味でも、PTSDによる休職という設定は身近に感じることができますね。いま、北海道のいろいろな町を舞台にした小説を、というコンセプトだったとおっしゃっていましたが、町と犯罪という関係が描かれていることもこの連作集の魅力です。なぜ、町に着目されたのでしょうか。
佐々木さん大都市では、意外と町も人も均質なんです。しかし、北海道の地方都市を見ていくと、一つひとつの町に特徴があるし、そこに暮らしている人たちもそれぞれに違いがある。そういう町を描くことでいろいろな人物を書き分けることができるだろうと思いました。

★荒廃する旧炭鉱町が抱える現実を描く

−−佐々木さんご自身も北海道出身ですね。
佐々木さんいまは北海道に仕事場があるんです。東京に家族がいまして、単身赴任のようなかたちで北海道の仕事場で書いています。北海道に仕事場があるので、北海道についての情報が入って来ますし、よその土地ではありえないような物語〜事件のかたちで現れる物語〜を見聞きできているんですね。僕は北海道警察の関係者にも取材しているので、北海道で起きた事件の話をよく聞くんです。事件のなかには物語があります。北海道に住んでいる物書きとして、事件の話から発想した物語を書いてやろう、という気持ちがわきました。
−−北海道ご出身とはいえ、この小説を書いたことで、あらためて北海道の町について気づかれたこともあると思います。印象的だった町はありますか?
佐々木さん表題作の『廃墟に乞う』で書いた夕張ですね。僕は夕張生まれなんですが、3歳までしかいなかったから記憶にはないんです。でも、夕張の財政破綻が発覚してからは、新聞にルポを掲載するために何度も取材に行って、人間関係もできました。ですが、夕張の荒廃ぶりには本当に痛ましいものがあって、ルポだけではとても書ききれない。そんなとき、別の産炭地で起こったある事件と結びつけることで小説にできると思ったんです。
−−『廃墟に乞う』は、犯罪を起こしてしまう男性の人生を通して、ひとつの町が荒廃していくことの底知れない恐ろしさを感じました。仙道はかつて、捜査員として男に出会っていたのですが、休職したことによって、あらためて彼の人生に見つめ直そうとするという構成も、この連作ならではのアプローチだと思いました。
佐々木さんこの短編を書いたときには「主人公を完全な捜査員にしなくてよかったな」と思いましたね。犯人との距離の取り方が、捜査員と、仙道のように休職中とではまったく違いますから。
−−休職というかたちで一度組織から離れて、別の視点を持つことで見えてくるものがあるということですね。
佐々木さん捜査員という立場では見えなかったものが見えるし、感じ取れなかったものが感じ取れる。とくに、犯罪を犯した側からの思いは、捜査に関わった捜査員は受け取れない。その思いを、いまの仙道なら受け取れる。『廃墟に乞う』は、仙道の設定が効いた短編になったと思います。
−−『廃墟に乞う』というタイトルはシンプルでありながら想像力を膨らませる見事なタイトルだと思いますが、タイトルはすんなり決まるほうですか?
佐々木さん悩むほうだと思いますね、たぶん(笑)。ただ、タイトルがすんなり決まることがあって、そのときは書きやすいですね。タイトルが決まるということはテーマが決まるということですから。なので、できるだけ先にタイトルを決めようとするんですが、書く素材は決まっているのに、タイトルがなかなか決まらないことがけっこうあるんですよ。自分の頭のなかでテーマが整理されていないからだと思うんですけど。
 「廃墟の乞う」のときはタイトルが先に決まっていました。先にタイトルとあらすじと出だしの文章だけ先に編集者に送って、連載時の挿絵を手配してもらった覚えがあります。

★アメリカの私立探偵小説の味わい

−−仙道は警察組織から半分は離脱しています。それゆえ、これまでの警察小説では書ききれなかったことを書けた部分があったのではないでしょうか。
佐々木さんありましたね。主人公をこういう設定にしたおかげで、アメリカの私立探偵小説が描いていたようなテーマを書けると思いました。
−−佐々木さんがお好きな私立探偵は誰ですか?
佐々木さんマット・スカダー(ローレンス・ブロック著『八百万の死にざま』『倒錯の舞踏』などの主人公)ものが好きですね。マット・スカダーはアル中の元警察官。私立探偵のライセンスも持っていないから、事件への関わり方も微妙なんです。捜査員のように、あるいはプロの私立探偵のように、完全に事件を解決するわけではない。一歩引いたところで、どのような解決がなされるかを示唆したところで物語が終わる。私立探偵小説のなかでは、まちがいなく大きな影響を受けていると思います。
−−『廃墟に乞う』に収録されているそれぞれの短編も余韻を残した終わり方になっていると思いました。そして、佐々木さんの作品の特徴の一つだと思いますが、文章もまた、簡潔な表現でムダがない。このような文章を書く文章修行はどのようにされたのですか?
佐々木さんコピーライターの時代に訓練されたと思います。文章の読みやすさ、リーダビリティ、バランス、情報と情念を、どういうバランスで入れれば読者に心地よく読んでもらえるのか。コピーライターの仕事にはクライアント(顧客)がいますから、クライアントが納得してくれないコピー、それもボディコピーの長いものなんかとくに、何度も書き直しさせられるんですよ。その職業体験が文章体験になりましたね。
−−実際にあった事件からインスパイアされたと思える、現代的な事件が取り扱われていることも、この作品集の特徴だと思います。たとえば「監禁王子」事件とか名前が出てくるものもありますね。ふだんからニュースを読んでメモを取ったりしているんですか?
佐々木さんとくにメモは取りませんが、記憶に留めておいて、続報があれば気にするという事件はありますね。あとで、新聞記者とか道警の関係者に「あれってどういう事件だったんですか?」と裏話を聞いたりもします。その一部がこの小説のなかにも生かされていると思います。
−−根本的な質問ですが、佐々木さんが犯罪を小説の題材として描くのはなぜですか?
佐々木さんいまの問題点、歪み、ひずみは犯罪のかたちで表出するんです。犯罪を描くことが「いま」を描くことになる。つまり、「いま」を描きたいのであれば、犯罪を取り上げる小説、とくに警察小説が適しているんです。いま、僕は歴史小説の執筆をしばらく休んでいますが、それは、「いま」を書きたいから。同時代の日本に住んでいる人々を書きたいからです。
−−警察小説といえば、道警シリーズが読者から人気ですが、最新刊の『巡査の休日』で第二シーズンに入ったことが話題になっています。佐々木さんの作品のなかで長く続くシリーズものは珍しいですね。
佐々木さんこれまでも第二次大戦三部作とか、三部作くらいはあるんです。でも、道警シリーズは1作目から「道警シリーズ」と出版社が言っていまして(笑)。最初からシリーズものを意識した作品は僕としては珍しいですね。というのは、警察小説を書くことになったきっかけが、角川春樹さんから「マルティン・ベック・シリーズのような警察小説を書きませんか?」と言われたことだったんです。それも、そんなに長く書き続けるつもりはなくて、三部作で書きたいことを書き終えられるだろうと思っていました。ところが、ありがたいことに思った以上に人気があった(笑)。「佐伯チームの小説をもう一回読みたい」と読者の方々が言ってくれるし、編集者もそう言ってくれたので、道警の組織の腐敗をテーマにしたシリーズは三部作でお終いにして、新たなテーマを立てることにしました。その第1作目が『巡査の休日』なんです。
−−警察小説が続いていましたが、今後はいかがでしょうか。
佐々木さんまだ書きたい題材がいくつかあるので、警察小説は続けて書いていきます。でも、先日、出たばかりの『北帰行』は、警察小説ではなく、その反対側から犯罪を描いたクライムノベルであり、ロードノベルです。『北帰行』を書いてみて、犯罪者の側から書くのも快感で、精神のバランスが取れたと思いました。あらためて歴史小説も書きたいと思っているので、警察小説を中心に、別のジャンルのものも書いていくと思います。
−−最後に、今回、直木賞を受賞されたことについての感想をお願いします。
佐々木さん29歳のときに生まれて初めて書いた小説が賞をいただいて、それから今年で31年になります。去年は周囲から「30年よく書き続けてきたね」とよく言われたので、今回の直木賞受賞は永年勤続表彰だと思っています。困ったのは執筆の秩序が壊れることですが、幸い、仕事場が北海道にあるので、もうしばらくしたら、普通の執筆秩序に戻していきたいと思っています。
−−これからのご活躍を楽しみにしています。今日はありがとうございました。
(後記)『廃墟に乞う』は心にしみるミステリだ。有能な刑事でありながら、捜査の過程で負った心の傷を癒すため休職している刑事。いわば、人生で「1回休み」となった主人公が、組織捜査とは別の視点で事件を見直していくとき、そこに事件の別の顔が見えてくる。インタビューに応じていただいた佐々木さんは、落ち着いた口調で丁寧にこちらの質問に答えてくれた。「理想の上司」を思わせる、落ち着いたものごしの紳士だ。ベタついた情緒を排しながらも、人間の営みを見守るような包容力がこの作品の魅力の一つだが、それは佐々木さん自身が醸し出す雰囲気と見事にマッチしていた。ぜひ、この機会に佐々木ワールドに触れていただきたい。(タカザワケンジ)

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『廃墟に乞う』

3回目の候補でついに受賞!
北海道の風景と人物の心象が重なる
【1】休職中の刑事が追う事件の謎。6篇の珠玉の短編集です。
【2】行間から溢れでる北海道の街や季節感がストーリーをよりリアルに!
【3】終盤での追うもの追われるものの心理。あっと声を上げる結末が印象的。

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  • ★刑事が主人公の警察小説なのだが、休職中ということで、探偵小説の趣がある。
  • ★直木賞受賞作は読みたいです。書店で入荷待ちより楽天ブックスさんの方がより早いと判断し注文しました!楽しみ♪

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