楽天ブックス×毎日jp
著者インタビュー 最新号 バックナンバー

島本理生さんデビュー10年「相手の深いところまで見る。その最たるものが恋愛」話題作『波打ち際の蛍』を語る

恋愛や家族との関係などを通して、同世代の男女を繊細な文章でみずみずしく描く島本理生さん。7月に刊行された「波打ち際の蛍」(角川書店)は、ドメスティックバイオレンスにより心に傷を負った主人公が、年上の男性・蛍と不器用で切ない恋愛をはぐくむ様を描いている。島本さんに話を聞きました。


島本理生さんの本


こんな私でも、もう一度恋ができるのだろうか
『波打ち際の蛍』

『波打ち際の蛍』
1,365円(税込)


恋愛状況や自分自身を赤裸々に語った初エッセイ集
『Chicaライフ 2003〜2006年のできごと』
『Chicaライフ 2003〜2006年のできごと』
1,260円(税込)

「お願いだから私を壊して」23万部超のベストセラー
『ナラタージュ』
『ナラタージュ』
1,470円(税込)

華子と冬冶、双子の姉弟それぞれの恋愛模様
『クローバー』
『クローバー』
1,365円(税込)

暴力に襲われた朔、12歳。彼女が選んだ復讐は
『あなたの呼吸が止まるまで』
『あなたの呼吸が止まるまで』
1,575円(税込)

失恋を抱えて始まる、夏休みだけの一人暮らし
『生まれる森』
『生まれる森』
1,365円(税込)

第135回芥川賞候補。恋愛の危うさと幸福感を描く
『大きな熊が来る前に、おやすみ。』
『大きな熊が来る前に、おやすみ。』
1,365円(税込)

第25回野間文芸新人賞受賞作。家族と青春がテーマ
『リトル・バイ・リトル』
『リトル・バイ・リトル』
1,365円(税込)

多感な大学生7人が折なす7色のリレー小説
『一千一秒の日々』
『一千一秒の日々』
1,365円(税込)

群像新人賞優秀作。15歳でのデビュー作も
『シルエット』
『シルエット』
1,365円(税込)



プロフィール


島本理生さん (しまもと・りお)
1983年、東京生まれ。98年「ヨル」で雑誌「鳩よ!」の掌編コンクール当選、年間MVPを受賞。01年「シルエット」で群像新人文学賞優秀作を受賞。03年、都立高校在学中に「リトル・バイ・リトル」(講談社)が芥川賞候補となり、同年、野間新人文芸賞を史上最年少で受賞。04年「生まれる森」(講談社)が、06年「大きな熊が来る前に、おやすみ」(新潮社)がそれぞれ芥川賞候補となる。05年、書き下ろし恋愛長編「ナラタージュ」(角川書店)が各界の賞賛を受け、ベストセラーとなった。近作に「あなたの呼吸が止まるまで」(新潮社)「クローバー」(角川書店)など。 

インタビュー

島本理生さん−−タイトルが魅力的です。

島本さん 最初は確か「波打ち際の〜」のあとに主人公の名前が入っていました。主人公がギリギリの危ういところにいるという意味です。その後、相手の男性(蛍)を考えて「ギリギリのところにいる主人公を支える」方にタイトルを変えようと思いました。とはいえ、支える蛍自身も作中の波打ち際に立つシーンのとおり、ギリギリの危ういところに立っているのですが。


 −−ドメスティックバイオレンスを素材に盛り込んだのは。

島本さん ここ数年、男女間の暴力や家庭の問題を丁寧に描きたいと思い何作か描きました。いつもそうなのですが、何か事件なり出来事があって、その後その人がどうやって生きていくかということが、私の描きたいところなんです。今回も暴力だったり何だったり、起こった後、もう何年もたっていますが、それがどういうふうに主人公に影響するのかということを描きたいと思いました。


−−登場人物の中でも、特に主人公に暴力を振るっていた「関口」が印象的です。

島本さん 今回は二つ主題があって、一つは恋愛でもなんでも、いろいろな人の力を借りつつ、でも最終的には自分で自分を決定するしかないということです。もう一つは、人の言うことで、自分がどれだけ影響を受けるのかということでした。それが蛍と関口です。良く作用し合うのと、悪く作用し合うのと。もちろん現実に関口がいたら嫌です。でも、完全に「悪役」だとは思いませんでしたし、普通に生活していても、ある瞬間に何かちょっとしたことで逸脱するかもしれないという危険性を描きたかったので、逆にこういう男の人がいたら、女性によってはひかれてしまうかもしれないくらいの設定にしました。


島本理生さん−−本作ではこれまで以上に、恋愛が全面に押し出されています。

島本さん これまで恋愛小説であっても家族の問題やそれ以外の人間関係など、複合的なものを描こうという気持ちが強かったのですが、今回はそうではなくて恋愛だけでどこまで突き詰めていけるのかと考えて挑戦しました。私、すごく人間に興味があるんですね。人って本当におもしろいなって。「何を考えているのだろう」とか「本当はどんなことで悩んだり苦しんだりしているのだろう」と、相手の深いところまで見たいという欲求が強くて、じゃあ現実の中でそれができる関係性というと限られてきますよね。たぶん、その最たるものが恋愛なのだと思います。


−−女性たちの「ガールズトーク」が生き生きと描かれています。

島本さん 女の子ならではの楽しみですよね。今回は恋愛をしている最中の、いろんな気持ちや要素を文章に詰め込められればと考えていて。ああいう男の子本人を抜きにして女同士でああだこうだ言い合うのもいいかなぁ、と(笑)。


−−作中、主人公と蛍のやりとりの一つとして、手紙が効果的に使われています。

島本さん 小説の中で主人公と蛍の二人は、慎重に慎重に進んでいきますが、そのおたがいの距離のとり方を考えると、手紙が一番いいのかなと思いました。メールだとすぐ書いて打って送れちゃいますよね。そのスピード感は、今のこの二人が大事な話をするのには、あまり合っていないのではと思いました。思ったことをばんばん言い合うような二人ではないので。そう考えたとき手紙がしっくりきました。


島本理生さん−−デビューから今年で10年がたちますが、本作の位置づけは。

島本さん また初心に戻ったような気がしますね。ここ数年いろいろなものを書いてみようと試行錯誤を繰り返していました。そんな中で、自分が書けるものを書こうと、本来自分の中で興味があったものを、好きなものを、もう一回丁寧に書こうと思ったのがこの作品です。


−−読者に一言

島本さん デビューから10年たってようやく、何がやりたいかが見えてきました。これまでやりたいことをやっていたつもりでしたが、まだ自分にはやりたいことがたくさんあるんだなと最近、気がつきました。またあと10年、いろいろ挑戦していきますので、これからも楽しみにしていてください。






最新号 バックナンバー

このページの先頭へ