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ここ7年ぐらいの、あなたや私がここにいる?!OLや主婦の日常から、地球防衛家のヒトビトまでしりあがり寿さんのリアルと幻想のいったりきたりを楽しもう!

しりあがり寿さん

  たいへんだっ、しりあがり寿さんの新刊がたくさんでてます!
OLも主婦も、女子必読! なのは、VOCEからSTYLEに連載を移しながら、01年から07年まで時代の先端を走り続けた自称イケてる女(なのになぜか男に恵まれない)代官山チヂミの『ここ7年くらいの女のヒトを描いたマンガ メスにおまかせ!』と、「婦人公論」でダンナとの問題山積の日常に改革の狼煙を上げたキュートな革命家・ちえ子の『ゲバラちえ子の革命的日常』。さらに、家族でシュールに時事を憂う『地球防衛家のヒトビト』第3巻も忘れてはいけません。さぁ、いますぐインタビューを読んで、しりあがり寿ワールドに突入だっ!



しりあがり寿さんの本


『ここ7年くらいの女のヒトを描いたマンガ メスにおまかせ!』
『ここ7年くらいの女のヒトを描いたマンガ メスにおまかせ!』
しりあがり寿/渡辺佳子
講談社
1,300円(税込:1,365円)

『ゲバラちえ子の革命的日常』
『ゲバラちえ子の革命的日常』
しりあがり寿
中央公論新社
1,500円(税込:1,575円)

『地球防衛家のヒトビト(3(’06.1.4〜’06.1)』
『地球防衛家のヒトビト(3(’06.1.4〜’06.1)』
しりあがり寿
朝日新聞社
1,200円(税込:1,260円)

『地球防衛家のヒトビト(2(’04.4.1〜’05.1)』
『地球防衛家のヒトビト(2(’04.4.1〜’05.1)』
しりあがり寿
朝日新聞社
1,200円(税込:1,260円)

『地球防衛家のヒトビト(’02.4.1〜’04.3.3)』
『地球防衛家のヒトビト(’02.4.1〜’04.3.3)』
しりあがり寿
朝日新聞社
1,200円(税込:1,260円)

『本当は知らなかった日本のこと 日本は「美しい国」?それともスバラシイ国?』
『本当は知らなかった日本のこと 日本は「美しい国」?それともスバラシイ国?』
鳥越俊太郎/しりあがり寿
ミシマ社/WAVE出版
1,500円(税込:1,575円)

『オヤジ国憲法でいこう!』
『オヤジ国憲法でいこう!』
しりあがり寿/祖父江慎
理論社
1,200円(税込:1,260円)

『オーイ・メメントモリ』
『オーイ・メメントモリ』
しりあがり寿
メディアファクトリー
1,200円(税込:1,260円)

『一度死んでみますか? 漫談・メメントモリ』
『一度死んでみますか? 漫談・メメントモリ』
島田雅彦/しりあがり寿
PHP研究所
720円(税込:756円)

『弥次喜多in deep(1)廉価版』
『弥次喜多in deep(1)廉価版』
しりあがり寿
エンターブレイン
490円(税込:515円)

『弥次喜多in deep(2)廉価版』
『弥次喜多in deep(2)廉価版』
しりあがり寿
エンターブレイン
570円(税込:599円)

『弥次喜多in deep(3)廉価版』
『弥次喜多in deep(3)廉価版』
しりあがり寿
エンターブレイン
680円(税込:714円)

『弥次喜多in deep(4)廉価版』
『弥次喜多in deep(4)廉価版』
しりあがり寿
エンターブレイン
1,400円(税込:1,470円)

『真夜中の弥次さん喜多さん(1)』
『真夜中の弥次さん喜多さん(1)』
しりあがり寿
マガジンハウス
903円(税込:948円)

『真夜中のヒゲの弥次さん喜多さん』
しりあがり寿
エンターブレイン
680円(税込:714円)

『真夜中の弥次さん喜多さん 小説』
『真夜中の弥次さん喜多さん 小説』
しりあがり寿
河出書房新社
450円(税込:473円)

『真夜中の弥次さん喜多さん 合本』
『真夜中の弥次さん喜多さん 合本』
しりあがり寿
マガジンハウス
1,800円(税込:1,890円)

『真夜中の水戸黄門』
しりあがり寿
エンターブレイン
980円(税込:1,029円)

『方舟』
しりあがり寿
太田出版
1,200円(税込:1,260円)

『真ヒゲのOL薮内笹子(1)』
『真ヒゲのOL薮内笹子(1)』
しりあがり寿
エンターブレイン
880円(税込:924円)

『真ヒゲのOL薮内笹子(2)』
しりあがり寿
エンターブレイン
920円(税込:966円)

『真ヒゲのOL薮内笹子(3)』
しりあがり寿
エンターブレイン
980円(税込:1,029円)

『エレキな春』
しりあがり寿
白泉社
505円(税込:530円)

『ジャカランダ』
しりあがり寿
青林工芸舎
1,800円(税込:1,890円)


プロフィール


しりあがり寿さん (しりあがり・ことぶき)
文1958年、静岡県生まれ。多摩美術大学卒業後、キリンビールに入社、宣伝・パッケージデザインや商品開発を担当。会社勤めのかたわら漫画家として活動。1994年、会社を退職し、専業漫画家となる。2000年『時事おやじ2000』(アスペクト)、『ゆるゆるオヤジ』(文芸春秋)で、第46回文芸春秋漫画賞を受賞。2001年『弥次喜多 in DEEP』(エンターブレイン)で第5回手塚治虫文化賞「マンガ優秀賞」を受賞。『真夜中の弥次さん喜多さん』は宮藤官九郎初映画監督作品として映画化される。『ジャカランダ』は、フランス・アングーレム漫画フェスティバルの「この一年にフランスで出版された漫画44選」に選ばれた。その他、エッセイやお芝居、小説やゲーム作りなど、活動は多岐にわたる。
公式ページ「おーい!さるやまハゲの助」http://www.saruhage.com/

インタビュー


−−3冊、立て続けに新刊が発売されましたね。どちらもけっこう長い期間連載されていたものですよね。雑誌の1回分は、見開きやそんなに多いページ数ではありませんでしたが、こうまとまると、ボリュームがありますね。


しりあがりさん まぁねぇ、よく書いたって感じがしますね。その時々を思い出して、懐かしいですよね。


−−どちらも女性が主役ですね。『ここ7年くらいの女のヒトを描いたマンガ メスにおまかせ!』がOLで、『ゲバラちえ子の革命的日常』が主婦。しりあがりさんのテーマとして、女性というのは、どういうものですか?

しりあがりさん いやぁ、はっきりいって、(女性って)わからないんだよね。
 「HANAKO」で『おしごと O.SHI.GO.TO.』を連載していた時には、自分も会社員だったので、目の前にネタがたくさんあって苦労しなかったんですけど。『ここ7年くらいの〜』を描いている時には、マンガ家専業になっていて、身の回りにOLさんとかもいないから、さすがに、そろそろよくわかんなくなっていて……。


しりあがり寿さん−−えー、そうなんですか? 「もしや、見られてたか?」って心配になるくらい、女の人をわかってるなぁという感じです。楽天ブックスの担当者も「私の回りの人々、そのまんま!」って……。

しりあがりさん  そうだとすれば、渡辺さん(共著の美容ジャーナリスト渡辺佳子さん)のリードが良かったんだね。毎回、今は、こういうのが流行ってますよって教えてくれて。
 渡辺さんから、ケータイの留守電に「今回、このテーマでいきまーす」って電話がはいるんですよ。それで「わかりましたー」って、ただそれで描いてきたんですけどね。


−−「仕切れない男たち」(No.006)とか、「甘え上手になりたい」(No.023)とか「ケータイ依存症」(No.049)とか、わかりすぎて身悶えしちゃうくらいでしたけど……。楽天ブックスって六本木ヒルズにあるので、「ヒルズ族とのバブル婚」(NO.040)に登場する男たちの“外見”のリアリティなんかも……。外見だけですけどね。

しりあがりさん  そうなんだ。それはすごいことだね。ぜんぜん、わからないから手探りで描いているのに(笑)。


−−「そうそう、こんな感じ!」ってうなずきまくりですよ。手探りどころか核心を突いてて、「さぁ、合コンに突入よ!」っていうか、しりあがり寿ワールドに突入っていうか。私たちってこんな7年だったのね……って我にかえる……みたいな。

しりあがりさん  もしかしたら、そういう事に対して、さめてるからいいのかもしれないね。人ゴトだからね。そうかー、そんなことやっているんだっ……て思いながら描いてるから。


−−しりあがりさんの心に残ってるネタとか、ありますか?

しりあがりさん  そうだね……。わりと先端ぽい女の人なのに、縁結びの神社に行ったり、スピリチュアルなものが好きっていうのは、けっこう驚きだったりしましたね(No.007とかNo.010とか……)。
 スピリチュアル、受けたこと、あるんですよ、取材で。守護霊のこととか聞きましたけど、なんかね、良いことを言ってましたよ。でも絶対、ウソに決まってると思うんだよね。でも、効果はあると思うんですよ。そのためには、実はもうひとつ別の世界があるとか、前世や来世があるという設定がないと、リアリティないじゃない。それで、つじつまあわせるように、いろいろな世界を作るんじゃないでしょうか。まぁ、そんなことに驚いてみたりね。
 韓流が流行った時にも、驚きましたね。……今だにわからないけど、いろいろ勉強になりました、この仕事やってて(笑)。


しりあがり寿さん−−冷静に見ようとする視線と、女の人っておもしろいなと楽しんでくれている感じ。その両方がちょうどいい感じに混ざっているんですね。それが、各テーマごとにしりあがりさんが書いている「オスの言い分」にも現れていて、そこのコメントがまた「くぅぅ〜、言われちゃった……」って感じで……。

しりあがりさん コメントはね、わざと辛口っていうか、オヤジくさく、理屈っぽく書いているんですよ。こんなこと、しつこく言いたがるじゃない? オヤジって(笑)。
 となりで渡辺さんがチヂミちゃん風に「メスの言い分」を書いてくれているので、コントラストつけたほうがいいかなって思って、そういう風にしてみたんですよね。もちろん、本音もはいってますけどね。


−−どのへんが本音なんですか?

しりあがりさん  なんだろうなぁ、この歳になって言うのもなんだけど、やっぱ、ちがうよね、女の人って……ってことかな。なんとなく、男と女はちがう。最初っからちがう生き物だね、みたいな。


−−たしかに、DNAレベルからちがうわけですから……。

しりあがりさん  もちろん、個人個人みると、男っぽい女の人もいるし、いろんな人がいるんだけど、全体でみると……やっぱりちがうよね。


−−なるほど。そういうちがいを意識されて、客観的に描いているから、絶妙にオモシロイのかもしれませんね。そうすると、これまでの女の人の移り変わりっていうのは、どんな印象でしたか?

しりあがりさん  うん。女の人の方が元気な感じがしますよね、男と比べると。女性って、70年代のウーマンリブみたいな運動もあったし、80年代のユニセックス時代もあって、振れてるけれども、そのつど、新しい生き方を広げてきた感じだよね。こんな生き方じゃなければダメっていうのではなくて、その時々の新しい流れを生み出してきた人がそれぞれ生き残っている。結果としてすごく多様な生き方ができる感じになっているじゃない?

 キャリアウーマンばかりがいいわけでもないし、専業主婦がいい、というのでもないし。いろんな意味で、すごく多様になってきていると思うんです。でも男は、なんだろうねぇ。結局働いているだけじゃない? すごく狭いような気がするね。


−−でも、しりあがりさんの場合、学生時代は美大生だし、そのあと、サラリーマン時代もあって、その後、独立されて……。ある意味、働き方もいろいろだし、さまざまなことにチャレンジされているように思いますけど……。

しりあがりさん  いや、ぜんぜん。働く手段は変わっているけど、ずぅっと、働いていることに変わりはないし、世界一周とか、放浪もしたことないし(笑)。なんとなくいつも決まったところにいて、そういう意味では、ぜんぜん生き方に幅があると思わなくて。
 女性って、自分で働くこともあれば、だれかに食わせてもらうこともあるし、子供産むという特別なことがあるし。……わかんないけどね、、いろんな選択肢があるんじゃない?
 ……選択したものになれるかどうかは、また別だけどね。自由なのに、なりたいものになれないと、自分を責めたりして、たいへんかもしれないけど……。でも、男よりすごいなって感じがしますね。生き残っていく、強さみたいな感じかな。


−−生命力みたいなことでしょうか。そういう意味では、『ゲバラちえ子の革命的日常』のちえ子、彼女もそうとう強いですよね。描いていて、いかがでしたか?

しりあがりさん  こちらも、描いてておもしろかったですよ。
 これは夫婦ものなので、会社とちがって、自分の身近なところに出来事があるんだけど……、逆に、身近なことを参考にして描くと、自分の家のことになっちゃうじゃない? そうすると、奥さんに読まれるとヤバいな(笑)と思って。ウチのことをこんな風に描いて……と、とられるとイヤじゃない? 
 だから、描けないワケですよ。かえって苦しいと言うか、オブラートにくるんだような感じになっちゃうよね、いろいろと……。


−−オブラートというよりは、願望や妄想って気もします。でも、リアルと幻想のいったりきたりは、しりあがりさんのお得意な手法というか、テーマのひとつ……ですよね。リアリティがありながら、不思議だったり、感情的にどこかに行っちゃうみたいな、そういう揺れっていうのには、すごく共感します。

しりあがりさん  そうですね。でも、自分や周囲を巻き込んでいく、そういう勇気はないわけよ。ありそうでなさそうなあたりを、フワフワ描いているんだけど、だから、気軽に読めるのかもしれないね。


しりあがり寿さん−−とくに終わりの方、恋愛で一種の別世界に突き進むみたいな感じになってますよね。

しりあがりさん  それがね、連載が3カ月ぐらい延びちゃったんですよね。それで急に恋愛モードに入って、社長との間で駆け落ちするか、みたいな話にしたんだけど、それは延びたからであって……。
 もっと延びたらどうなっていたか……、コワイよね(笑)。


−−それってすごく、女性が幻想として持っているものなので、それはアリだなー、と思いました。
 唐突な質問ですけど、そもそも、女性ってお好きですか?

しりあがりさん  好きですよ。80%ぐらい好き。


−−80%?

しりあがりさん  それはね、どんどん、自分の年齢が上がるじゃないですか。そうすると、許せる女の人って増えてくるのね。20代の頃はやっぱり40代の女性って対象じゃなかったんだけど、自分が40〜50代になってくると、なんだかみんなきれいに見えてきて。なんかヘンですよね。

 同時に、人によって、ずいぶんちがうというのも、どんどん見えてきますね。ほんと、20代、30代の頃なんて、なんにも見えてなかったよね。
 結婚したのは27歳の時かな。ですけど、なにもわかってなかったような気がしますね。……いまでもわかってないけどね。
 うちの奥様もマンガ家なんだけど、今は、子育てで忙しいみたいだし。


−−お子さんは?

しりあがりさん  まだちっちゃいんですよ。あんまり遊んでなくて、申し訳ないんですけどね。子供は好きなんだけど、なかなか時間がなくてね……。夜帰るのも遅いし、朝遅いから、ほんとに会えなくて……。


−−ちょっと寂しかったりします?

しりあがりさん  まぁねぇ、気がつかないうちにどんどん大きくなっちゃうからね、子供は。ビデオだったら、ポーズ(一時停止)とか、巻き戻しとかできて、いまやそういうのが普通じゃないですか。巻き戻しができないものがあるなぁ……って感じで……。


−−ご家族のお話がでたところで、『地球防衛家のヒトビト』なのですが、なぜ、「地球防衛家」なんでしょうか。

しりあがりさん  うーん、なんででしょうね……。
 新聞を読んでる読者ってどんな人かなって考えた時に、普通の人に比べて、社会的な関心が高い人が読むのかなと思ったんですよ。そういう人が読んでくれているのだったら、ただのホンワカしたマンガよりは、少し社会的なものが入っているのがいいかなと。そういう人って、もうちょっと世の中を良くしたいとか、地球を防衛したいと思っているワケじゃないですか、心のどこかで、ずっとね。でも毎日、結局、なんにもできずに暮らしているんだろうけど。
 きっとこれから、世の中がもっといろいろ変わっていくじゃない? 社会的に無関心でいられるのは、ある意味、豊さの証拠みたいなところがあるけど、豊かじゃなくなってきたり、いろいろな事件や問題が起こると、無関心ではいられなくなってくるような気がするんですよね。


−−たしかに、1年分をまとめて読むと、いろいろ考えさせられますね。月ごとの「主な出来事」も参考になるし、事件の補足説明も追加されているので、事件がこんな流れで起きたのかとか、日々、スルーしてたり、見逃したニュースの中に、ちゃんと考えないといけないことがたくさんあるわけで……。そのたくさんの事件やネタを、しりあがりさんが選んで、アレンジして描いてくれているわけですね。

しりあがりさん  ネタは基本的に、時事ものを優先的に選んで、それから、季節もの……ですね。時事ものも、みんなが知らないようなものを描いてはつまらないので、新聞やテレビ、ネットでトップにでてくるようなものを描いてます。ニュースなんてそんなに毎日あるわけじゃないので、ネタが多すぎて困ることはないですね。


−−とはいえ、夕刊の連載というのは、毎日のことなので、たいへんですよね……。何本か、まとめて入稿されるわけですか?

しりあがりさん  そうね、2本か3本まとめて。就職しているようなもので、毎回仕事があるというのは、安定感があっていいですけど。
 たまにはボツもありますね。地震や台風なんかで、最初の報道では、あまり被害がないからいいかと思って描き出すと、翌日たいへんなことになっててボツとかね。でも、思っていたより、すごく載っけてくれますね。そういう覚悟でやっているし、新聞というのは、そういう媒体だからこそみんな信用もするしね。そこで描けないネタは別のところで描いているし。


−−新聞連載もそうですが、『ここ7年くらいの〜』なども、1回に1テーマの作品ですね。そういった連載を描くのって、たいへんですか?

しりあがりさん  それは、あんまりたいへんじゃないんだよね。
 『ここ7年くらいの〜』みたいなパターンの仕事は、「HANAKO」の『おしごと O.SHI.GO.TO.』の連載からはじまったんですけど、担当の編集の方が、「おまえのマンガを20倍に薄めろ」って言ってくれたのね。それまでは『エレキな春』とか、パロディを中心に、「隙さえあれば笑わせてやれ」とものすごく密度の濃いことをしていたんだけど、濃すぎてたまったモンじゃない、っていわれて。それでどうしたらいいかなと考えて、それまでは、たとえば2〜3コマに1回笑わせていたのを、1ページで1つにしようと。それがこのタイプの、女性誌向けにはじめた連載のはしりなんです。


しりあがり寿さん−−それが絶妙な力配分だったわけですね。おかげで、妙に「読むぞー」みたいに、肩に力を入れずに読めますね。『エレキの春』とか、ものすごく密度高いですからねぇ……。

しりあがりさん  あのころは若かったしねぇ。いっぱい描きたいものがあったから、自然に密度が高かったんでしょうね。

 描きたいものがしっかりある時って、けっこう苦しいんですよ。だいたい描けないじゃない、描きたいものって。100%描けることなんてないしね。そうするとすごく悔しい思いをしたりするし。そういった作品て、なにかテーマを掲げていたり、人間の内面に迫ってみようとか、新しい手法をマンガに取り入れたいとか、なんていうか“欲”がある。そういうのって関心のない人にとっては、うっとうしいだけだと思うしね。

 でも、こういった連載は、毎回楽しんで描けましたね。毎回毎回、女の人ってどんなのかなって考えながら。そういう意味では、読みやすいと思うよ。作者の余計な欲がない。欲も野望も、ぜんぜんないんですよ。


−−とはいえこれまで、たくさんの作品で実験的な手法や、さまざまな表現手段にチャレンジされていますよね。先生にとってのマンガというのは?

しりあがりさん  マンガがなくなっちゃったら、困っちゃうよね。
 好きな時に好きなマンガを描けるのが自分の理想ですよね。ギャグも描けて、深刻なテーマも描けて。
 だれでもそうだと思うけど、人間一人って多様ですよね。それをいろいろな形で、表現していけたらいいんだと思うけど、そういう作家的な自由と、「マンガが産業である」ということは、やっぱりぶつかることがありますよね。
 こうしていろんな作品を描いているせいで、人からみると、ワケわかんないのかもね。この1冊だけ見たら、こういうマンガを描く人かと思われて。全体を見ないとわからないよね、うまく言えないけど……。


−−そうですね。過去のいろいろな作品も、それぞれスゴいですからね。『弥次喜多 in DEEP』とか、『オーイ・メメントモリ』とか、『ジャカランダ』とか……。
 それでは、今後のお仕事は、いかがですか?

しりあがりさん  美術館で展覧会をやるとか、マンガの枠より外の仕事が増えてきましたね。今年の夏も広島市現代美術館で個展をやるんですが、それはアニメーションにしようかと思って。まだ、準備中ですけど、ちょっとドキドキしているんです。来年の予定では、ドイツやインドネシアで、絵を描いたり……。
 そういう、マンガを外から見るような、そういったことに興味が向いている感じですね。
 もちろん、やりたい実験的なことはあるんですけど。


−−マンガという表現だけにとらわれないとなると、次はまた何に挑戦されるか、目が離せないですね! 今日は、ありがとうございました!







1冊読んだだけでは、しりあがりさんのおもしろさは部分的にしかわかりません。目の見えない人が象を触って、「ゴワコワしている」「大きなうちわのような耳がある」「長くて自在に動く鼻がある」というようなもの。たしかに、女性誌の連載や時事ものは、身近な話題でサクサク楽しめるので、入門編にもピッタリです。ぜひ、何冊か読んで、広くて多彩なしりあがりワールドを堪能してくださいネ。DEEPデスヨ!
【波多野絵理】


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