楽天ブックス 著者インタビュー

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 この11月、20年ぶりに「日本銀行券の改刷」が行われる。いわゆる「新札切り替え」だ。10,000円、5,000円、1,000円札、それぞれの図案が新しくなる(肖像が誰になるか、知ってますよね?)。そこで人々の間では、こんな噂が静かに広がっている。「早く新しいお札に交換しないと、古いお札が使えなくなるらしい」「いや、それどころか銀行に預けていたお金が自由に下ろせなくなるかもしれない」「2,000円札だけは切り替わらないから、持っていたほうがいい」……。日銀は噂の打ち消しに必死だが、年金問題や来年のペイオフ解禁を控えて、国民には「せっかく蓄えた財産が、国に奪われるのではないか」という不安感が広がる一方だ。それというのも、昨年出版された『預金封鎖』がきっかけ。「国はタンス預金を狙っている」と、ズバリと核心を突いてベストセラーとなった。その著者・副島隆彦氏が、今度は「税金」に正面から切り込んだ。題して『老人税』(祥伝社)。発売直後から重版が続いている。

プロフィール

副島隆彦さん (そえじま・たかひこ)
1953(昭和28)年、福岡市生まれ。早稲田大学法学部卒。外資系銀行での為替業務担当を経て現在、常葉学園大学教授。評論家。アメリカの政治思想、法制度、金融・経済、社会時事評論の分野で画期的な研究と評論を展開する。昨年発表した『預金封鎖』 『預金封鎖 実践対策編』(祥伝社)が大反響を巻き起こす。他に同社から『悪の経済学』 『逆襲する「日本経済」』 『墜ちよ!日本経済』 『金融鎖国』を上梓。世界と日本の経済を精細に分析し、日本が採るべき国家戦略を鋭く提起しつづけている。主な著書に『属国・日本論』(五月書房)『世界覇権国アメリカを動かす政治家と知識人たち』(講談社)などがある。

インタビュー

−−今度の作品も、刺激的なタイトルですが。
副島さん英文で表記すれば、Old Folks’ Tax ――オールド・フォークシズ・タックス。日本の老人資産家たちの財産を、国すなわち政府が奪い取りに来ています。だから皆さん、用心しなさい、というメッセージを籠めたものです。
−−どうして老人の資産が狙われるのでしょうか。
副島さんその前に、財務省が発表した数字について説明しておきましょう。今年の3月末時点で、国債や政府借入金など“国の借金”が、総額で703兆1478億円に達したと言っています。国民1人当たり、550万円の借金を背負っている計算になりますね。
−−えーっ、そんなに!
副島さんこの借金、つまり日本国の累積財政赤字は、まもなく1,000円兆円に達します。普通国債が約500兆円、政府の長期借入金が300兆円、各県など地方政府の借入金が180兆円。合わせてざっと1,000兆円です。政府財務省としては、これらの財政赤字を解決しなければいけない。そこでとりあえず、半分ぐらいを「老人資産家への課税」で穴埋めしようと企てている。なぜならご承知のとおり、日本の個人資産の70%は、60歳以上の老人が所有しているからです。
−−なるほど。たしかに日本の場合、個人の金融資産が約1,400兆円あって、そのうち6割くらいを現金と銀行預金が占めているといいますよね。新聞で読んだ記憶があります。
副島さんそうですね。以前に比べれば目減りしてきたとはいえ、日本人の貯蓄率は高い。アメリカ人のように、自分の資産を投機的に使うことはまだまだ一般的ではありません。だから個人の手元に資産が退蔵されているわけです。それに、表に出せないお金といいますか、いわゆるタンス預金。これが約20兆円あるといわれています。ですから、国は財政赤字を解決するために、こうした国民の個人資産を標的にする。とりわけ、現在は高齢者が蓄えた金融資産が獲物になっているということです。
−−前作『預金封鎖』で書かれた、「国はタンス預金を狙っている」という言葉そのものですね。本書『老人税』では、その方法として国が税金の制度をどのように操るかということが詳しく述べられていて、とても興味深く読みました。
副島さん税制改正の動きは、複雑なようでいて、大きな視点で見ればいたって単純です。まず税制調査会という首相の諮問機関があって、俗に「政府税調」と呼ばれていますが、これが課税強化の司令部。税制を改正する場合、この政府税調が審議して答申を出す。するとその答申を受けて、今度は自民党の政務調査会にある「自民党税制調査会」が党内の意見をまとめる。そうして翌年度に向けた「税制改正大綱」ができあがる、という仕組みになっています。この間の動きは、折にふれて新聞でも報道されますから、納税者である国民はチェックしておくべきでしょうね。本書では、そうした報道資料や政府税調の答申を適宜紹介していますから、よく目を通していただきたいと思います。
−−それで気になった見出しがあるんですが、《「年金」にさえも触手を伸ばす「政府税調」の企て》。これって、お年寄りには切実な話では……。
副島さん政府税調は「公的年金等控除」と「老年者控除」を縮減すべきだ、と答申にはっきり謳っています。分かりやすく言うと、定年退職した老人で、年間所得が1,000万円以上ある裕福な人たちからは、その年金に対して今までの倍近い税金を取ろうということです。すでに4年前から、在職老齢年金制度といって、収入に応じて年金がカットされてきました。この傾向は、今後ますます強まるでしょう。
−−もうひとつ、お年寄りが気になる相続税の課税が強化される、とも書かれていますが。
副島さんこれも政府税調の答申ですが、相続税の最高税率を70%から50%に引き下げる。
−−えっ、それじゃあ「増税」ではなくて「減税」ではないですか。
副島さんところが本当の狙いは、最高税率を引き下げる代わりに、相続税を「薄く広く」負担する仕組みにして、課税対象の件数を従来の2倍にしようというものなんです。政府税調のトップが、そのように明言していますからね。そうすると、それまで相続税を払わなくてすんだ人たちにも納税義務が生じることになります。大金持ちならぬ小金持ち老人が狙われている、と言ってもいい。
−−ははー。やることが巧妙というか、ずる賢いというか。
副島さん国家というものは、その秩序を維持するためならば、なりふりかまわず動きます。ただし、いきなりあからさまに実行することはない。一例を挙げれば、消費税は1989年の4月1日から施行されましたが、政府税調が「一般消費税大綱」というものをまとめたのは1978年。10年以上かけて実現にこぎ着けたわけです。その間、与野党間でさまざまなせめぎ合いがありましたが、ともかく新しい税が導入された。このときの消費税は3%でしたが、それからまた10年たって、現在の5%になったんです。
−−へー、合計で20年ですか。ということは、今、私たちの目の前で起きていることは、たとえ些細な動きでも、油断できないわけですね。そういえば、今年から消費税の表示方法が「総額表示」に変わりましたが。
副島さんそれは重要な指摘です。詳細は本書をお読みいただくとして、今回の総額表示方式には、国が目論む新しい税制の意図が隠されている。それだけは申し上げておきましょう。
−−新しい税制、ですか。ううっ、気になる!
その著作をお読みになったことがある方ならお分かりのとおり、副島隆彦さんといえ ば、遠慮会釈のない一刀両断ぶりで定評のある「暴き系言論人」(ご本人によるキャッチフレーズ)。講演会でも怒鳴りまくるわ、机を叩くわというウワサが……。さぞや コワモテ・大迫力の人なのだろうと正直ビビっておりました。ところがお会いしてみると、時にジョークも交えたお話しぶりは紳士的にして理路整然、しかも分かりやすい。「人間は正直でなければいけないと思います。税金の本というと、悪賢い節税対策ばかりですが、これは税務署に嘘をつけと言っているようなものでしょう。そう思いませんか」と意外(?)なこともおっしゃいます。さらに、本書の「あとがき」には、それこそ「正直に」、副島さんがローンを組んで買ったという別荘の話も 書かれています。難しい税金問題も、この人の手にかかれば、ものすごく身近なものに感じられました。

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