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私の本棚

又吉直樹さん 自分の人生を見つめ直す―

あの作家や著名人はどんな本を読んでいるのか、読書好きには気になるお話をうかがうこのコーナー。
今回のゲストは、芸人・又吉直樹さん。
読書好きとしても広く知られる又吉さんがセレクトしたテーマは「無人島で読みたい本」。
さあ、又吉さんはどんな本を選んだのでしょうか。

登壇者プロフィール
又吉直樹(またよし・なおき)さん
1980年大阪府生まれ。株式会社よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属のお笑い芸人。お笑いコンビ「ピース」として活躍中。『キングオブコント2010』準優勝。舞台の脚本も手がける。著書に『カキフライが無いなら来なかった』『まさかジープで来るとは』(以上せきしろとの共著、幻冬舎)、『鈴虫炒飯』(田中象雨との共著、幻冬舎)『第2図書係補佐』(幻冬舎よしもと文庫)『東京百景』(ヨシモトブックス)がある。
又吉直樹(またよし・なおき)さん

テーマ:無人島で読みたい本

告白
告白
著者/編集:町田康
出版社:中央公論新社
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「告白」 笑いと苦悩の共存

又吉さん人はなぜ人を殺すのか。河内音頭でうたいつがれる、実在の大量殺人事件「河内十人斬り」をモチーフに綴られた1作です。
ひとりの人間の人生を描くなかで、その自意識過剰なところが読んでいて共感ができます。結局その人間ってなんや、生きるってなんやそういうテーマでやっているんで。小説としてもめちゃくちゃ好きな小説なんですが、自分の人生もう1回みつめられるという意味でも深い小説です。

コインロッカー・ベイビーズ
コインロッカー・ベイビーズ
著者/編集:村上龍
出版社:講談社
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「コインロッカー・ベイビーズ」 ここではない世界の教典

又吉さん1970年代の日本を舞台に、コインロッカーで生まれたキクとハシを主人公とした物語です。清濁併せ呑む世界観が圧倒的な1作です。
「コインロッカー・ベイビーズ」というひとつの世界観というか、自分がいきてきた世界ともちょっと違うし未来でもない、「もうひとつの物語の世界」にはいっていって小説を楽しめるところに醍醐味があります。読み終わったときに得るものもとても大きいです。

辻
著者/編集:古井由吉
出版社:新潮社
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「辻」 圧倒的な日本語の表現

又吉さん連作の短編集なんですが、それぞれの「辻」で堆積している記憶と、その「辻」自体が記憶しているいろんな人の記憶が混入しているといううかわったつくりになっています。複層的なつくりになっているうえに、短い文章の濃度がとても詰まっています。時間をかけてゆっくり読みたい本です。そういう意味で無人島にもっていくのに最適な本なんじゃないかと。うわーっと読んでいくというよりは余韻を味わいながら読んでいくことをおすすめしたいので時間が結構いるかなと。旅行にもっていくのにも最適な本ですね。

去年の冬、きみと別れ
去年の冬、きみと別れ
著者/編集:中村文則
出版社:幻冬舎
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「去年の冬、君と別れ」 ジャンルを問わない傑作

又吉さん中村文則さんは、デビューのときからずっと好きで、読み続けている作家さんです。この作品は叙述ミステリーといわれるところの、楽しめる仕掛けもあって物語も動くし、芥川の地獄変の要素がはいっていたりと僕の好きなものがちりばめられているというだけでも面白いんですけど、それにも増して文学の世界を掘り続けているところに魅力を感じます。
文学の起源ってたぶん人間のことから書き始めたと思うんです。人間はどうあるべきかということをずっとみんな書いていたんだと思うんです。それがそこそこ掘れていわゆる純文学や近代文学にたどりつき、その先の展開として、エンターテイメント性のある、現代の潮流にひろがっていったのかなと。そんな中で中村さんってひたすら、みんなが掘り続けて、これ以上掘られへんっていうところをひとりたたき続けているという印象が僕はあるんです。普通のミステリーや叙述トリックの小説でいったら数行で終わらせていいところをページを割いて人間を丹念に描こうとしている。そういう中村さんがずっとやってきたことを磨き続けながらも新しい物語性を取り入れていっているところに魅力を感じます。何度読んでも発見があり飽きません。

舞台
舞台
著者/編集:西加奈子
出版社:講談社
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「舞台」自分についての物語

又吉さん西さんの小説は、読みやすさ、全員に届く言葉で書くことを意識されていると思うんですが、そこに潜んでいるテーマはたぶん人間が生きていくなかで誰もがぶちあたることだと思うんです。そういった「誰もがぶちあたること」を真剣に見つめたりするのはすごいしんどいことなので、普通の人はうまくはぐらかしたりとか、数学でいったら途中の式は分からんけど数式をあてはめたら答えがでるというようなカンタンな方法でそれを乗り越えているのではないかと。それ自体は別に否定しないんですが、「誰もがぶちあたること」にちゃんと向き合って描かれているのが本作だと思うんです。この作品を正面から読んでいくとしんどいなあと感じる人もいると思うんですが、逆に「誰もがぶちあたること」にちゃんと向き合って答えだしている小説というのはほとんどないと思います。西さんからはジャンルのにおいがしないというイメージがありますが、そこに心ひかれますね。

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